アナキンの親友になろうとしたら暗黒面に落ちた件 作:紅乃 晴@小説アカ
お待たせしました。更新再開です。
「総督、オルデラン星系に到着しました」
ヴェイダーとストームトルーパーに囲まれたまま、デス・スターの展望室へと連れてこられたレイア姫は、そこから覗くオルデランを見据える人物に心当たりがあった。
囲まれていた包囲網が解かれ、レイアは手錠をされた手を下げたまま、勇ましく展望室で待っていた男の元へと歩み寄ってゆく。
「ターキン総督。ヴェイダーの鎖を握っていたのはやはりあなただったのね。連れてこられたときにあなたの悪臭を感じたわ」
「最後まで魅力的ですな、オーガナ姫。あなたの処刑命令書にサインするのが私にとってどれだけつらいことだったか分かりますまい」
わざとらしく肩を落とすターキンの目は、その素振りと似合わない冷酷な色に染め上がっていた。凍てつくような眼光を前にしても、レイアは臆することなくターキンを睨みつける。
「あなたにその責任を負う勇気があるとは驚きです」
「…レイア姫、処刑の前にあなたをこのバトル・ステーションの完成を祝うセレモニーにご招待したかったのですよ。これでもはや皇帝に逆らう星系はなくなるのです」
見なさい、この堅牢なステーションをと大きな素振りであたりに手を指すターキン。たしかに、このステーションは大きい。惑星クラスという破格のバトル・ステーションなど、現実的に考えても圧倒的な防御力と機能性を兼ね備えていることは明白だった。
だが、それでも宇宙すべてを掌握するには足りない。それをレイアは分かっていた。
「それは間違っています、総督。こぶしを握り締めれば握り締めるほど、多くの星系が指の間をすり抜けていくのよ?」
「それも、このステーションの力を知るまでです。実は最初に破壊される惑星を選んだのはあなたなのですよ」
ターキンの放った言葉に、レイアははじめて表情を変化させた。唖然とする彼女を尻目に、ターキンは暗闇の宇宙に浮かぶオルデランの星を再び見つめる。
あの星は、レイアにとって故郷同然の場所だ。豊かな自然と、調和と平和を愛する民たちが住む美しい星であり、それを支配しようとする帝国にとっては目障りな星でもある。
「あなたが反乱軍基地の場所をなかなか教えてくださらないので、私はあなたの故郷であるオルデランをこのステーションの破壊力をテストするための実験台として選んだのです」
「やめて!オルデランは平和な惑星よ!?武器もありません!!」
「では、他の標的をお望みか?軍事目標でしょうか?それならば、その星系の名を言いなさい」
取り乱したレイアに、ターキンはさらに詰め寄る。彼女の顔から色が抜け落ちてゆくのが手に取るようにわかった。ターキンの凄みは、その目にあった。手を出すまでもなく、ゆっくりと見えない手でレイアの首を締め上げてゆく。
「姫、この質問にも飽き飽きしたのでこれで最後にしましょう。反乱軍基地はどこですか?」
トドメとも言えるターキンの声に、レイアは幾つか口を噤んでから、観念したように息を吐いた。
「…ダントゥイーンよ。基地はダントゥイーンにあるわ」
その言葉を聞いて、ターキンは満足そうに笑みを浮かべる。後ろに控えるヴェイダーは何も言わないまま、機械的な呼吸音を響かせていた。
「ふむ。聞いたか、ヴェイダー卿?素直な女性だな。───作業を続けろ。準備でき次第砲撃するのだ」
「なんですって?!」
無情に言い放たれたターキンの言葉に、レイアは今度こそ驚愕する。取り乱すレイアを、ターキンは一瞥してから鼻で笑った。
「お人よしにもほどがありますな。ダントゥイーンは遠すぎて効果的な見せしめにはならないのですよ。しかし心配は無用だ。反乱軍の友人たちもすぐに始末してくれる」
デス・スターのレーザー砲にエネルギーが充填されてゆく。眩しいとも思えた光が一閃すると、五つの緑色の極光がデス・スターから放たれ、その光は一直線にオルデランへと降り注ぎ……ほんの僅か、一瞬のうちに美しいオルデランの星を吹き飛ばしたのだ。
「ああ…なんてこと…」
白い炎と光を撒き散らしながら宇宙の屑と化したオルデランを目の当たりにしたレイアは、愕然とその光景を見つめることしかできなかった。
すっかりと威勢をなくしたレイアを見て、ターキンは後ろに控えるストームトルーパーへ指示を出した。
「進路をダントゥイーン方面に向けろ。姫君は用済みだ。独房へ連れて行け」
幽霊のようなおぼつかない足取りで展望室を後にするレイアを見送ったターキン。その後ろにはまるで暗闇を形取ったようなマントを地に下ろしているヴェイダーが佇んでいた。
「…これで満足かね?ヴェイダー卿」
ターキンが片腕を軽く上げると、爆散した塵を映していた展望室の映像がパラパラと崩れ落ちてゆき、立体映像が瞬時に崩壊した。同時に、オルデランを映していた展望室のガラスがスライドすると、本来ある展望室が姿を現す。
その景色には、爆散したはずのオルデランが美しさを保ったまま、星の大海のなかを悠然と浮かんでいる。その近辺には、数隻のスターデストロイヤーが浮かんではいたが、オルデランは〝爆発〟などしていなかった。
「彼女はオルデランが破壊されたと錯覚したでしょう。苛烈な拷問と投獄、あの精神状態では精巧にできたホログラムと実物の区別はつきますまい」
「私としては、星一つを見せしめに破壊したほうがデス・スターの脅威性を知らしめる機会にはなるとは思うのだがね」
不服そうに言うターキンに、ヴェイダーはマントを翻して星の海に浮かぶオルデランを目にしていた。すでに包囲網は構築されつつある。平和主義を貫いていたオルデランだが、その星の議員であるレイアが反乱分子との繋がりを見せたのだ。
星に帝国軍がやってきて、その内政を調査することになるのも致し方あるまい。
「ターキン総督。貴方の悪い癖だ。いたずらにこの基地の最大値を見せしめる。たしかに各星系を震え上がらせることは可能でしょう。しかし、武器というのはここぞという時に見せるからこそ、相手の心をへし折る唯一の武器となるのです」
力こそ屈服させる最大の武器だと、ターキンはクローン戦争の時から考えてきた。善悪に人間的な感情を入れず、常に合理的であり、常に効率性を考えてきた彼だ。デス・スターの力を示せば、効率よく相手に恐怖を植え付けることができる。
だが、それは言ってしまえば「こちらには星一つを破壊できる術がある」というカードを相手に見せることになる。
力が強いカードは確かに絶対的な地位を保つが、どの理にも、それを覆す道筋が用意されているものだ。だからこそ、そのカードを切る瞬間は見極めなければならない。
そして、それはオルデランを破壊する今ではないのだ。
「では総督。私はオルデランへ向かいます。彼女の故郷だ。彼らが反乱軍と通ずる何かを知っているはず。本当に反乱軍が〝ダントゥイーン〟にいるかという言葉も踏まえて、ですが」
「ああ、任せるぞ。ヴェイダー卿」
マントを翻して展望室を後にするヴェイダーを見送ってから、ターキンは展望室から宇宙を目にする。
自身が力と痛み、恐怖で相手を支配するというなら、ヴェイダーはそのすべてを屈服させる何かを持っているのだろう。握っていた手から溢れる手汗を指で擦りながら、ターキンはヴェイダーの行動の意味に思考を巡らせた。
ダース・ヴェイダー。
シスの暗黒卿。
フォースの暗黒面を司り、真紅のライトセーバーを振るうその姿は、恐怖の象徴たる存在にふさわしい。その存在がこの銀河にいるという現実だけで、銀河を震え上がらせるものだとターキンには思えてならない。
だが、彼を取り巻く激情とも思える在り方とは違い、ヴェイダーから降りてくる帝国の理念というものは実に堅牢であり、紳士的な側面を有しており、それはターキンにとっても予想外の側面をもたらした。
彼自身が打ち立てたターキン・ドクトリン思想。
ヴェイダーは、それを逆手に取ったように、帝国傘下になることに難色を示す惑星と交渉を進めたのだ。
ターキンの過剰とも言える規律の遵守と、それに反する者たちの粛清と弾圧、虐殺という恐怖の看板を着せて、その水面下で帝国に有利な条件を飲ませて僅かな自治権とほんの僅かの自由という飴を与えて飼いならす。
それも、ジェダイの生き残りを根絶やしにするために銀河中を駆け回る役目に徹しながらだ。
その手腕は皇帝の傀儡と成り果てたと噂される物とはかけ離れた異常性をターキンに味わわせていた。ライトセイバーを翻して、暗黒騎士さながらに戦う側で、優秀な統治者として管理も怠らない。ターキンにとって敵に回したくない者は誰かと問われれば、間違いなく皇帝とヴェイダー卿をあげるだろう。
中でも、ジェダイの生き残り…いや、クローン戦争時から〝ジェダイ〟の在り方からはかけ離れた組織である「ノーバディ」との戦いは激戦であったと聞く。
ヴェイダー卿と彼らは幾度と剣を交えている。
いわく、フォースの夜明けを目指す存在として、ジェダイでもシスでもない勢力として力をつけてゆく「ノーバディ」にはターキンも何度も煮え湯を飲まされてきたものだ。
そして、本格化しつつある反乱軍との戦いが苛烈を極めている。
銀河帝国の圧政に反対していた一部の帝国元老院議員たちが、銀河系各地で散発的に展開されていた帝国への反抗活動を密かに支援し、活動を結びつけるネットワークを構築している。
それは共和国再建同盟へと発展し、反乱同盟軍と呼ばれる軍事組織が結成されることとなった。
彼らは反帝国派の力を借りて軍事力を整えて、帝国軍へのゲリラ戦を展開している。
反乱軍は目の上のタンコブと言えるほど邪魔な存在だ。
こちらが悪くない条件で帝国の傘下に入るよう交渉を続けていた惑星や国家を根こそぎ反乱軍へ迎え入れ、帝国側に付くなど悪魔の所業と言わんばかりにネガティブキャンペーンを展開してくるのだ。
レイア姫のこぼした情報で反乱軍の息の根を止められることを願うばかりだ。しかし、ターキン自身の直感が訴えてくる。〝ダントゥイーン〟に自身が望む物は何もない、と。
ターキンは息をつくと、発進した探索船からの情報を得るために、足早に司令部へと足を向けるのだった。
どうも、作者です。随分とお待たせしてましたが、かなりシナリオが迷走してしまったことと、最新話を無かったことにしたことをお詫びいたします。
正直、続けるかどうかもかなり悩みましたが、定めた結末に向かわせるためにシナリオを再構築したり、スターウォーズの映画を見いたりし、インスピレーションを受けて手直しを続けてきましたので、更新を再開しようと思い、最新話を更新いたしました。
ひとまずは、エピソード7までは頑張って描きたいと思いますので、皆様よろしくお願いします。
シナリオを練り直すのを許せるか?
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細かい描写も見たい
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ログの心の移り変わりを見たい
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とりあえずエンディングまで突っ走れ