アナキンの親友になろうとしたら暗黒面に落ちた件 作:紅乃 晴@小説アカ
「がはっ!!」
開け放たれたブラスタードアから、ライトセーバーを持ったルークが転がるように飛び出してきた。額には汗を流し、着こなしていたトルーパーの装甲服も胸部と腕部、そして脚部と体の動きの妨げにならないところ以外脱ぎ捨てている。
まるで、クローン戦争時代のジェダイの姿そのものだな。ルークをフォースプッシュで吹き飛ばしたカイロ・レンは映像でしか見たことがないクローン戦争時の映像と、今のルークを照らし合わせる。
炎のように揺らめくクロスガードライトセーバーを手首のスナップで一回転させてから、対ライトセーバー戦を想定した「マカシ」の構えを取る。
「その程度か、ジェダイ。他のパダワンの方が歯応えがあるぞ!」
「くっそ!!カイロ・レン!!」
立ち上がって攻め立てるルークの一撃を簡単に受けたカイロ・レンは、受けたライトセーバーの光を逸らすように円を描いた剣閃を払い、ルークの動きを封じる。今度はこっちだ。そう言わんばかりに対ライトセーバー戦に特化した動きは容易くルークを窮地へと追い込む。
デス・スターの通路の中、オビ=ワンから教わった防御の型である「ソレス」を駆使して剣を捌くルークだが、攻勢を続けるカイロ・レンの攻撃に返す術を見いだせていない。
なんとか隙を生もうと振りかざされたカイロ・レンのライトセーバーをタイミングを合わせて弾き返したルークは、一気に攻めようと身をかがめる。だが、彼ははじき返したはずの一撃の反動を上手く利用した上で、後ろから振りかぶった様子で再び真っ赤な光の刃をルークのライトセーバーへと叩きつけた。
「どうした、攻めないのか?その型は守りに徹するわけではない。相手の攻撃を守りで受け、その攻撃の隙を的確に突く型のはずだ」
より大きな力で弾かれ、後退を余儀なくされたルークへ、カイロ・レンはクロスガードライトセーバーの切っ先で床に焼け跡の尾を引きながら近づいてゆく。苦し紛れに放ったルークの袈裟斬りを上体を捻るだけで避ける。次いで繰り出される切り払いも避ける。返ってきた三撃目を振り抜かれるタイミングに合わせて弾き返すと、無防備になったルークへ、外套を翻して鋭い回し蹴りを放つ。
ドロイドたちが磨いた床を背で滑るように這うルークに歩み寄りながら、カイロ・レンはあまりの拙さに苛立ちをあらわにしていた。
「どうした?それとも私の攻撃に隙がないとでも言うか?それなら、お前に待つのは死だけだ!!」
容赦のない赤い閃光がルークへ襲いかかる。必死の抵抗を見せているが、ルークの実力が襲いかかるカイロ・レンに届いていないことは、その場にいる誰の目から見ても明らかだった。
「ルーク!!」
レイアが悲鳴のような声を上げるが、その行先はレン騎士団の戦士たちによって塞がれていた。ハンもチューバッカも、もう一人の騎士に睨みつけられて、苦戦を強いられるルークの手助けに向かうことができない。
レン騎士団の掟の中で、騎士とジェダイとの戦いに加勢する無粋な真似は禁じられている。交渉を失敗した以上、帝国の規律に準じて、歯向かうジェダイは撃滅しなければならない。
レン騎士団の中でも、カイロ・レンは最もその掟を遵守してきた騎士だ。彼の激情とも言えるライトセーバーの技は多くの歯向かってきたジェダイや反乱分子を屠ってきた。そんな彼の戦いに水を差す真似は許されない。
故にレン騎士団の騎士たちは、その戦いの決着がつくまで加勢も妨害もせず、ひたすらにレイアとハンたちの行動に目を光らせていた。
(くそっ…!!)
もう何度床に転がされた…!?立ち上がりながら、ルークはライトセーバーを構える。師であるオビ=ワンから聞いていたが、彼から教わった「ソレス」という技は、対ブラスターや、対武器に関しては無類の防御性と強さを誇る構えとなるが、対ライトセーバー戦だけは相性が悪かった。
防御に重きを置くソレスでは、ライトセーバー戦に特化した相手と対峙した際、その攻防が長引く危険があったからだ。現に、オビ=ワンが過去に戦った時は戦いが長期化し、相手を逃す隙を与えてしまうという失敗をしてしまったこともあるほどだ。
だが、今のルークにはソレスでカイロ・レンの攻撃を受けながら勝機を狙うことしか叶わなかった。
認めたくはないが、ライトセーバーテクニックでは確実に目の前にいる敵の方が上だ。ここで功を焦ってソレス以外の型に移れば、ルークの未熟さと相まって即斬殺されることは明白だった。ひたすらにガードを続けて、針の穴のような隙をつく勝機を待つことしか、今のルークにはできなかった。
そして、そんな隙を見せるほどカイロ・レンも甘くない。ライトセーバーばかり防御するルークの注意が散漫になった瞬間に、今度は腹部へ拳を数発打ち込む。
むせて完全に動きが止まったルークを、蹴り飛ばして転がす。
何度も繰り返した攻防だった。すでに息も絶え絶えのルークを見つめて、カイロ・レンは今度こそ、その未熟な腕ごと切り落とし、胸に炎のような赤い刃を突き立てようと両手で柄を持ち、いつでもその一撃が出せるよう準備を整えた。
「はぁ…っ…はぁ…っ…オビ=ワン…?」
だが、ルークはカイロ・レンを見ることはなかった。横を見て戸惑った様子を見せる。気がつくと、ルークと戦っていた中で自分たちは格納庫の近くまで戻ってくるハメになってしまったようだ。
下部の格納庫にも繋がる深い穴の向こう側。視線を向けていたルークに倣うようにカイロ・レンも視線を彷徨わせた。その先には深くフードをかぶったジェダイと、自身の上の人間であるヴェイダー卿が、凄まじい速さで剣技を重ねていた。
ルークと自分の戦いが子供のチャンバラに思えてくるほど、その戦いは自分たちが目指すセーバーテクニックの境地であるようにも思えた。
数合の打ち合いを終えて、肩で息をするジェダイ。その彼が、ブラスタードア、深い穴の向こう側で呆然とこちらを見ているルークの姿に気がつく。
「ルーク…アナキン。フォースと共にあらんことを」
ヴァーパッドの構えをするヴェイダーへ視線を戻すと、オビ=ワンはニヤリと笑みを浮かべ、ライトセーバーをまるで騎士が盟約を誓うように、自身の前へと捧げるように構えた。
そこで出来た隙を、ヴェイダーが見逃すわけがなかった。セーバーを構えたオビ=ワンへ、真っ赤なライトセーバーを走らせ…そしてジェダイのローブだけを切り裂いた。
セーバーを捧げるように抱えていたはずのオビ=ワンの姿が、まるで煙のように消えたのだ。
ローブと、彼が長年愛用したライトセーバーを残して。
「オビ…」マスターァアアアァアァア!!!」
オビ=ワンの悲鳴が聞こえたような気がした。声を上げようとしたルークの思考が、それを制する叫び声によって飛散した。気がつくと、ルークの視界の横で、下の格納庫まで繋がる大穴を躊躇いなく飛び越えた一人の影が、オビ=ワンのローブを踏みつけて確認するヴェイダーへと向かっていくのが見えた。
「アナキン様…!?」
「父さん!?」
アナキンを追ってきたC-3POの驚愕と同じタイミングでルークも驚きを隠せなかった。普段はタトゥイーンの修理工であったはずの父が、たった一足で奈落の穴のような大穴を軽やかに飛び越えて手を翳していたのだ。
オビ=ワンのローブから引き寄せられたのは、彼が愛用していたライトセーバーだった。その武器をフォースの力によって手に取ったアナキンは、憤怒に誘われるままライトセーバーの光刃を滾らせてヴェイダーへと斬りかかる。
「貴様!!よくもオビ=ワンを!!」
初撃を受け止められたアナキンは戸惑う様子なく、手を素早く引いて二連の斬撃を繰り出すが、これもヴェイダーのライトセーバーによってはじき返された。
ならばとアナキンはフォースと一体となって、ヴェイダーの背後へロンダートするように飛び越えた。完全に背後をとったアナキンが、着地と同時にセーバーを振り抜く。
しかし、その一撃が届くことはなかった。
「なんだ、その拙いライトセーバーの剣線は。死ににきたか」
ヴェイダーは義手である腕部へフォースを送り込み、簡易的なシールドとして扱ったのだ。オビ=ワンのセーバーが届かない。わかっている。しかしそんなこと関係ない。アナキンは己の奥にある憤怒を解放するようにヴェイダーのライトセーバーを切り払ってから再び斬りかかろうと姿勢を沈めて地を蹴った。
「父さん、だめだ!!」
強化材質で作り上げられた床が、アナキンのフォースによって強化された脚力によってひび割れ、耐えられなくなった粒が散弾のように後ろに降りかかる。
だが、ルークは咄嗟の判断でヴェイダーに斬りかかろうとしていたアナキンをフォースで手繰り寄せた。
そのルークを仕留めようとカイロ・レンがライトセーバーを振りかざして迫ろうとした。その時だった。
「船が入ってくるぞ!?」
ファルコンが停泊している格納庫へ、一隻の船が無理やり押し入ってくるのが見えた。アナキンを手繰り寄せたルークは、憤怒に震える父を押さえつけて、火花を散らしながら格納庫へ押し入ってきた船の衝撃から身を守った。
着陸とはお世辞にも言えない操縦。その船の後部ハッチはすでに開いていて、船が安定したと同時にハッチにいた二つの人影がルークに襲い掛かろうとしていたカイロ・レンや、レイアたちを捕らえる戦士たち目掛けて飛び降りた。
「行きますよ、カル!」
「ああ、わかってるよ。トリラ!」
そう言葉を交わした二つの影は、着地すると同時に懐から取り出したライトセーバーを起動させる。現れたのは黄色の光刃であり、その光だけで彼らが何者かを示すには十分な力を発揮した。
「〝ノーバディ〟か!!」
レン騎士団の言葉を合図に、降り立った二人の〝ノーバディ〟は、カイロ・レンや他の騎士たちと交戦を開始する。解放されたレイアやハンたちも、雪崩のようにあらわれるストームトルーパーたち目掛けてブラスターを放ちながらアナキンを抑えるルークの元へと駆け寄ってきた。
「離せ!!ルーク!!」
ルークの下で叫ぶアナキン。だが、ルークは離すつもりはなかった。あのカイロ・レンよりも上の敵だ。オビ=ワンですら敵わなかった相手に、ブランクのある父が勝てるはずがない。
「ハン!船を!!」
黄色のライトセーバーを振るう二人の戦士をルークは見つめる。彼らも相当の手練れだ。カイロ・レンの攻撃を難なく跳ね除ける男性は、相当なフォースの使い手だと一目見るだけで分かった。
ファルコンのエンジンに火が入ったことを確認してから、ルークは父を引きずるようにタラップへ上がると、傍に落ちていたトルーパーのブラスターをフォースで手繰り寄せ、狙いを定めて撃ち放つ。この光弾はヴェイダーがいる部屋のブラスタードアを誤作動させた。
逃すまいと追ってくるヴェイダーがブラスタードアの向こう側に消えていく。
「ヴェイダァアアアァアァア!!」
暗黒卿が見えなくなる直前に、アナキンが獣のような慟哭を放った。ファルコンのハッチが閉まる。それを確認したハンとチューバッカは、脇目も振らずにファルコンをデス・スターから脱出させたのだった。
シナリオを練り直すのを許せるか?
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細かい描写も見たい
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ログの心の移り変わりを見たい
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とりあえずエンディングまで突っ走れ