アナキンの親友になろうとしたら暗黒面に落ちた件   作:紅乃 晴@小説アカ

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新たなる希望

 

 

デス・スター破壊作戦から二日後のことだった。

 

オビ=ワン・ケノービという偉大なマスターを失ったアナキンは、デス・スターを破壊して祝賀ムードとなっている反乱軍から離れた場所で、偉大なるジェダイマスターの死を悼んで瞑想を続けていた。

 

「父さん」

 

座禅を組むアナキンの周りには、岩や小枝、枯れ葉が浮かび上がっており、アナキン自身も座禅の姿勢のまま空中にゆらりと浮かび上がっている。それを見たルークが驚くほどに、自分の父のフォースは衰えていなかった。絆を絶っていたというのが嘘に思えるほど、父はフォースとの通い合いを成立させていたのだ。

 

ルークの声に呼応して、アナキンの周りに浮いていた岩が緩やかに降りると、アナキンもその身を地へと下ろしてから、瞑目していた眼を開く。

 

「少しは、気持ちの整理がついた気がするよ。ルーク」

 

修理工の時から着ていた作業着から、オビ=ワンが愛用していたジェダイのローブを身に纏うアナキンは、穏やかな顔でルークへそう言った。

 

 

 

 

 

 

 

オビ=ワンを亡くした直後の父は、正直に言えば見ていられないほど荒れていた。あれほどまでに精神が乱れていた父を見たのはルークは初めてだった。

 

帝国の追手を振り切り、ヤヴィン4へとたどり着いたルークたちは、デス・スターの設計図の解読から得られた弱点への一点攻撃を作戦として、ヤヴィン4から出撃する反乱軍と共に出撃したのだ。

 

ハンはジャバ・ザ・ハットへの支払いがあったためタトゥイーンへと戻る決断をしたが、アナキンはルークと共にデス・スターの破壊作戦への参加を打診。急遽用意されたXウイングを駆って破壊作戦へと加わったのだ。

 

ジェダイであるルークと、その扉を再び開きつつあったアナキンの機動力は凄まじく、クローン戦争時のようにジェダイ・ファイターを筆頭とした反乱軍がヤヴィンに迫るデス・スターを強襲。

 

そして反撃に出てきたのは、ダース・ヴェイダーが駆るTIE・アドバンストX1と、レン騎士団が駆るTIE・インターセプターだった。

 

反乱軍がTIE・ファイターとの交戦を始める最中、ジェダイとシスの空中戦は苛烈を極めた。デス・スターのトレンチ(溝)へ降りるアナキンたちのファイターを追って、ヴェイダーたちもトレンチへと入る。

 

狭く制限されたトレンチを、レッドリーダーやゴールドリーダーが信じられないような速度で駆け抜け、その上でアナキンたちはヴェイダーたちと空中戦を繰り広げていたのだ。

 

若きエースであったウェッジ・アンティリーズや、ビッグス・ダークライターの活躍もあり、反乱軍はトレンチにあるハイパーマター反応炉へと通じる換気ダクトへの攻撃を開始する。しかし、直径わずか数メートルしかないダクトへ攻撃を遂行するのは並みのジェダイでも至難の技であった。

 

ゴールドリーダー、そしてレッドリーダーという手練れのパイロットが挑むが、どれもが失敗に終わる。最後の希望でウェッジとビッグスがトレンチランに挑む中、アナキンはヴェイダーやレン騎士団の相手を一手に引き受け、ルークへ援護に向かうように指示を出す。

 

だが、アナキンの巧みな防衛網を掻い潜ったカイロ・レンがダクトへと迫るルークたちを追うこととなった。ビッグスが犠牲となり、ウェッジも被弾し戦線を離脱する。

 

カイロ・レンのTIE・インターセプターが迫り来る中、絶望的な状況だったルークを救ったのは、タトゥイーンへ向かっていたはずのハンのミレニアム・ファルコンだった。

 

カイロ・レンの機体をトレンチの外へと弾き出したハンに導かれ、ルークは見事にダクト内へプロトン魚雷を命中させる。

 

ヤヴィン4の目前へと迫ったデス・スターは、それを指揮するウィルハフ・ターキン総督と共に宇宙の塵へと帰ったのだった。

 

 

 

 

オビ=ワンを称える墓石の前へとやってきたアナキンとルーク。

 

爆散したデス・スターをみたアナキンの中に、かつてのナブーの危機や、クローン戦争で感じられた勝利の美酒というような感覚は渡来しなかった。

 

あったものは、オビ=ワンという家族同然だった人物の死という悼と、虚しさだけだった。

 

ルークとレイアが生まれて今まで、アナキンはタトゥイーンで多くの人と出会った。ジェダイだった頃には得られない人との繋がりや、信頼関係、金を用いた商売、時にはギャンブルごともあった。

 

立ち上る暗黒面の誘いが、ジェダイだった時と比べて驚くほど遠いものに感じられた。人としての人理を生きた中で得た教訓は、ライトサイドとダークサイドという明確に分かれた二つの道よりも、はるかに大きな中道をアナキンに指し示していたのだ。

 

故に、アナキンは自分に問いかける。こうやってフォースとの絆を取り戻した理由は何か。オルデランや、デス・スターで感じた心臓を掴まれるような感覚はなんなのか。ダース・ヴェイダーという闇の向こう側にみた〝何か〟。

 

オビ=ワンの敵討ちや、ヴェイダーに殺されたジェダイたちを思って、ライトセーバーを取ったわけではない。ただ、ここで眼を背けてしまえば、自分が自分で無くなってしまうような感覚がアナキンの中に生まれていたのだ。

 

「父さんは、これからどうするつもりなの?」

 

「…修行を再開する。こうなった以上、父さんも無視をしていられない。それにタトゥイーンに戻ればオーウェンたちにも迷惑がかかるしな」

 

ルークの問いかけにそう答えたアナキンは、腰に下げたライトセーバーを取り出した。オビ=ワンが愛用していたライトセーバーだ。

 

丁寧にそれを持っていた布で包んでから、墓石の前へ安置すると、アナキンは眼を閉じてフォースを流した。すると、オビ=ワンのライトセーバーを包んだ布は、ゆっくりと裂けた地中へと深く埋葬されてゆく。もう会うことができない師への弔いだった。

 

それを見つめたルークを背に、アナキンは立ち上がる。

 

疑問は多く残った。

 

実際にデス・スターを攻めてわかったが、帝国は最新鋭のバトルステーションであるデス・スターを守る気はなかったように思えた。

 

こちらの戦力も、スカリフの戦いで大きく削られていたとは言え、デス・スターの護衛にインペリアル級スターデストロイヤーが出てきてもおかしくないはずだった。なのに、護衛艦は愚か、戦闘機の数すら明らかに足りなかった。

 

まるで、デス・スターを落としてくれと言わんばかりの采配だ。

 

共和国を亡きものとした皇帝の用意周到さとは思えない杜撰な防衛網だったことに、アナキンは腑に落ちない感覚を持っていた。

 

そもそもの話、なぜデス・スターの設計図を反乱軍が手にすることができたのか?ゲイレン・アーソという男が開発者であるというなら、皇帝は何故、裏切り者である彼に眼を光らせなかったのか?あれほどの致命的な欠陥を、皇帝が見誤ることなどない。共和国時代、パルパティーンの側にいたアナキンだからこそ、彼の思慮深さや、観察眼の鋭さは身に染みて理解している。

 

今の帝国の在り方は、虫穴だらけだ。統治がうまく行ってるように見える、砂上の城とも言える。

 

それに、ヴェイダーが刃を振るったあの時…オビ=ワンが自ら死を選んだ行動にも、何か意味があるのかもしれない。

 

とにもかくにも、アナキンの中に生まれた疑問の答えを得るためには、再びフォースとの絆を得て、戦いの場に身を置く必要があった。

 

「まずは、落ち着けるところを探さないとな。反乱軍について行っても、修行を再開できるとは思えない」

 

「僕も共に行きます。このままでは…カイロ・レンは愚か、あのレン騎士団を倒すこともできません」

 

ルークもアナキンと同じ意見だった。フォースでもライトセーバーのテクニックでも、カイロ・レンは愚か、彼が率いるレン騎士団に対処することも難しいだろう。一から修行をし直す必要があった。

 

だが、問題は修行場だ。

 

ナブーの奥地に作ったジェダイ寺院もあるが、自分たちはすでに帝国に見つけられている。クワイ=ガンや、アナキンの妻であり、ルークの母でもあるパドメや、ナブーの人々に被害を出すわけにもいかない。

 

しかし、ルークはまだ修行中の身であり、アナキンは久しく閉ざしていたフォースと通い合わせたばかりだ。手ごろな修行場など、知るわけもなく───。

 

「なら、打ってつけの場所があるよ」

 

そう言いながら、アナキンとルークの前に姿を現したのは、二人と同じくライトセーバーを腰にぶら下げている人物。

 

シスでもジェダイでも、反乱軍でも帝国でもない、〝フォースの夜明け〟を追い求める中立組織「ノーバディ」のメンバーである「カル・ケスティス」と、「トリラ・スドゥリ」だった。

 

カルが肩に背負うドロイド、BD-1がホログラムをアナキンとルークの前に投影する。それは、どの天体図にも載っていない、幻の星だった。

 

「ボガーノ。俺たちノーバディの本拠地だ。どの天体図にも、星系図にも載っていない星だよ」

 

「私たちの目的は、あなた達をこの星に呼ぶことにある」

 

カルの言葉の後にトリラも続き、彼女は手に持っていたコムリンクを起動させると、そこにはジェダイ時代から知る旧友のマスターが投影された。

 

《マスター・スカイウォーカー。戻られると信じていました》

 

「マスター・シア…懐かしいですね」

 

《あの大戦の後、貴方は行方を眩ませてしまいましたからね。帝国の通信を傍受していたときは驚きました》

 

マスター・イーノ・コルドヴァのパダワンであり、マスターでもあるシア・ジュンダ。久々の再会を喜んでいる彼女であったが、アナキンは怪訝な顔つきになる。

 

「モールの率いる組織か?」

 

「知ってるなら話は早い」

 

あんた達に見せたいものがある。そうカルとトリラが言うと、彼らの後ろへヨット型の宇宙船「スティンガー・マンティス」が降り立った。深く言葉を交わす必要はないだろう?とカルがマンティスへ二人を誘う。

 

たしかに、この場にいても反乱軍に引き止められるのが関の山だ。祝賀ムードの彼らには申し訳ないが、邪魔が入らない修行場が手に入るならこちらとしても申し分はない。アナキンはルークと顔を合わせると、反乱軍を指揮する決意をしたレイアと、巻き込まれながら尽力してくれたハンに心の中で謝罪して、カル達が手を伸ばすマンティスへと乗り込むのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そうか、マスター・オビ=ワンは〝理解していた〟か…。

 

 

 

 

 

そう捉えてよろしいかと。彼はフォースの使い手であると同時にクワイ=ガンと同じく賢者でもありました。

 

 

 

 

 

ヴェイダー卿。奴の死は其方の未来に変化を与えたかね?

 

 

 

 

 

いえ、マスター。未来は限りなく〝そこ〟にあります。ターキンがデス・スターと共に散った事実も、そこに帰結するかと。マスターが待ち望んだ未来は、そう遠くないものになりましょう。

 

 

 

 

 

そうか。よい……よいぞ。私は、19年という長い月日を待った。その待った時間を、裏切らない結果となることを願っているとしよう。ヴェイダー卿、おそらくターキンが押さえていた武官が多くの銀河に現れることになろう。だが、貴公は今までと同じように動いてもらおう。頼むぞ?

 

 

 

 

 

仰せのままに、マスター。

 

 

 

 

これで、望む条件はすべて揃った。バランスを取り始めていた世界は再び動き出す。あとはフォースの導くがまま。アナキン・スカイウォーカー……そなたが真にフォースに選ばれた人というならば、余の元へと参じるが良い。さすれば、余が望む未来を掴むこともできよう…。残光の形を取り戻すために、な。

 

 

 

 

 

 

 

シナリオを練り直すのを許せるか?

  • 細かい描写も見たい
  • ログの心の移り変わりを見たい
  • とりあえずエンディングまで突っ走れ

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