アナキンの親友になろうとしたら暗黒面に落ちた件   作:紅乃 晴@小説アカ

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アナキンは立派なジェダイマスターになった……とでも、思っていたのか?

 

 

 

極寒の地である惑星ホスの表層は、ウォーカーで押し寄せる帝国軍と、エコー基地のシールド発生器を死守する反乱軍の抵抗によって激戦区と化していた。

 

堅牢なウォーカーの装甲に対抗すべく、反乱軍側で用意されたスノースピーダーが低空飛行で飛び交い、AT-STや対空兵装を持ったトルーパーたちがウォーカーの足へワイヤーを掛けようとしているスピーダーを撃破しようと躍起になっている。

 

そのエコー基地の激戦区より後方。エコー基地の地下ドックでは、爆撃や重レーザー砲による地響きによって、氷のトンネルのあちこちから小さな氷塊や、雪が降ってきていた。

 

どっさりと落ちてきた雪を頭に乗せたチューバッカは、ファルコン号の点検口から上半身を上げて不満げに吠え声を上げる。

 

「喚くな、チューイ!部品がないのはわかってたことなんだから、文句を言うな!」

 

ファルコン号の下では、溶接機材を持って突貫の修理を行なっているハン・ソロがいて、ヒステリックに吠える相棒へ落ち着くように声を上げたが、それでもチューバッカからの不満の声は収まることはない。

 

「ああ、お前がそう言うなら俺も文句を言いたいね!デス・スターの破壊作戦から3年、なし崩し的に反乱軍と一緒にいたが、もう我慢の限界だし、ジャバ・ザ・ハットに借金は返さなきゃならないし、たどり着くまでに指名手配されてる!おまけにファルコンの整備を受け持ってくれるはずのラーズのおやっさんが行方知れず!まったく大したもんだな!」

 

自分をこの鉄火場に巻き込んだ張本人だと言うのに…まぁ、デス・スターでルークやラーズのおやっさんを助けたのは、自分の意思ではあるが。とはいえ、そのために三年間も帝国の追撃を反乱軍と共に逃れる羽目になり、ジャバ・ザ・ハットに約束していた報償金すら届けられていない。

 

届けようにも、ファルコン号のハイパードライブ用のコンピュータが今までに無いほどヘソを曲げているときている。反乱軍の整備員も何度かファルコンを見ているが、アナキンの手で魔改造されたスクラップ相手になす術もなく、アナキンの次にこの船を熟知しているハンとチューバッカが自ら整備を行なっている有様だった。

 

スパナを雪山へと投げ捨てるハンに、チューバッカは顔をしかめながら小さく唸り声を上げた。

 

「ラーズのおやっさんは仕方ない?ああ、そうだろうな。今頃ジェダイとかいうオカルトにハマってるだろうぜ!そら、はやく手を動かせ!敵は待ってくれないぞ!」

 

出来上がったらこんな危険な惑星からさっさとエスケープだ!!そう言ってハンが再び点検口に顔を突っ込もうとした時だった。

 

「ハン!」

 

後ろから声をかけられて、ハンは顔を下ろす。梯子の下へとやってきたのは息を切らし、肩を上下させているレイアだった。手に持っていた工具を腰へ仕舞い、ハンは梯子から一気に雪の地面へと降りる。

 

「レイア、状況はどうなってるんだ?」

 

「よくないわ。ウォーカーからの攻撃が始まった。今はまだシールド発生器と反乱軍の同志たちが持ち堪えているけど…時間の問題ね」

 

「ああ、だろうな。シールド発生器が破壊されれば軌道上からスター・デストロイヤーの砲火に晒されることになるだろうしな」

 

そうなればどうなるか。想像することはたやすい。きっとエコー基地は跡形もなく吹き飛ぶことになるだろう。ここが地下とは言え、衛星上からの攻撃なら、この程度の地下施設など、岩盤ごとめくり上げることになる。

 

シールド発生器が要となっている以上、時間の猶予は少ない。基地外側に展開するイオン砲から放たれる攻撃により、衛星上のスター・デストロイヤーの動きを封じられているとは言え、シールドが消えれば手の施しようもなくなる。

 

「殿を担ってくれる同志たちには…なんと言えば…」

 

結果、シールド発生器を死守する部隊は、真っ先にその犠牲となる。レイアや反乱軍のリーダー格の者たちがその作戦を決定した段階で、そうなることはわかっていた。それでも、今前線で防衛網を築き、戦っている兵士達は自ら志願して戦場へと赴いたのだ。

 

気を落とすレイアの肩をハンは優しく手をやって安心するよう笑顔を向けた。

 

「そう気を落とすなよ、レイア。奴らもそれを知ってる上で、その任務に志願したんだ。レイアや後方部隊は、とにかく脱出することだけを考えるんだ」

 

そう言うハンへ、レイアは「わかっているわ」と頷く。ヤヴィンの戦いから、彼女は反乱軍と共に多くの惑星や国、世界を見てきた。中には、帝国によって苦しめられる人々もいた。だが、同時に帝国のもたらした秩序を壊さないでくれと願う人々もいた。

 

そんな市民からすれば、反乱軍はようやく整えられた秩序を壊す異端者に過ぎず、早々に星を後にすることも少なくはなかった。

 

帝国のもたらした物は、レイアが想像していたものよりも遥かに強大だった。整えられたインフラや、通貨市場。市民を蔑まず、市民を守るために逆賊と戦う兵士たち。それを指揮するレン騎士団。市民たちにもたらされた恩恵は、過去の共和国政府が霞むほど潤沢であり、満ち足りていた。

 

……果たして、自分たちは一体何のために戦っているのか。

 

秩序と正義、自由を示すために希望を持って戦っていたというのに、その希望は驚くほど小さくなってしまっている。レイアは、自分の戦うための意義を見失いつつあった。

 

「レイア」

 

そんな彼女を導く存在が現れたのは、帝国の追跡を逃れ、このホスに身を隠した頃だった。

 

声をかけられた方へ振り返ると、そこにはこの極寒の地には似合わない壮麗な姿の女性が居た。

 

「お母様!」

 

パドメ・スカイウォーカー。

 

反乱軍では親しまれている〝アミダラ〟で通っている彼女は、駆け寄ってくる愛娘に微笑みを送る。彼女が反乱軍に加わったのは、占拠されたオルデランの議員であるベイル・オーガナ議員からの要請があったからだ。

 

議員としても旧友の仲であるパドメは、当初はアナキンのこともあり、反乱軍への援助は陰ながら行なっていたものの、本格的な参加への言及は避けていた。

 

だが、事は一年前に動いた。

 

比較的、穏やかな制圧を受けていたオルデランの帝国軍が突如として虐殺や市民への圧力をかけ始めたのだ。それに抗議したベイル・オーガナ議員は、帝国軍によって処刑された。

 

この件の指揮を帝国から任されたのは、ミスローニュルオド…通称〝スローン大提督〟。

 

現在、デス・スター破壊による帝国上層部の空白の座席に手をかけている有力な帝国軍人であり、その性格は残虐非道だ。彼は反乱軍を一網打尽にするような計画は立てず、小規模ながら確実な殺戮を選択し、反乱軍を敗走へと追いやっていた。

 

そして、彼が息巻くと他の帝国武官も揃って帝国が今まで施策してきた体制を逸脱するような、権力を振りかざす体制へと踏み出したのだ。

 

その歪みは瞬く間のうちに帝国勢力内へと伝播し、今まで秩序と平和を約束していた帝国の統治にも影響を与え始めている。帝国とは対等の政治体制を保守してきたナブーにも、その脅威は迫った。

 

パドメが反乱軍に加わったのは、その無法者たちを断罪し、旧体制の帝国士官たちとの交渉に挑む目的もあったのだ。

 

「第二部隊も範囲網を突破したわ。私たちもそろそろ発ちましょう」

 

すでに後方部隊の半分がホスから脱出し、合流ポイントで待つ反乱軍の艦隊へ合流するためにハイパースペースへと入っている。パドメやレイアを乗せる船も間も無く出航する手筈だ。

 

「動くな」

 

パドメがハッと息を飲む。パドメの背後にいたのは、メタリックブラックの装甲服を身につけたストーム・トルーパーだった。しかもただのトルーパーではない。装備から見て洗練された兵士であり、その動きも他の兵士たちと比べれば雲泥の差がある物だった。

 

インフェルノ隊、隊長であるアイデン・ヴェルシオは銃口を構えたまま通信機をつける。

 

「こちらアイデン、反乱軍基地で要人を捕らえた。連行する」

 

彼女がパドメたちのもとにたどり着いたのは偶然であった。父であり、司令官でもあるギャリック・ヴェルシオ提督から送られた通信をもとに、地上へ下ろしていたTIE・ファイターで、降りてきたジェダイ・ファイターを追跡したアイデンは、反乱軍の秘密通路を発見。

 

精鋭であった反乱軍の兵士を打ち倒した彼女は、地下のトンネルを進んでこの場へとたどり着いたのだ。

 

「なるほど、帝国軍の特殊部隊ってわけね」

 

「どうやってここまで…」

 

「誰かに道案内でもしてもらったのか?」

 

手を上げても砕けた口調をやめないハンに、アイデンは苛立った顔をヘルメット越しに向けながら低い声を上げた。

 

「黙れ。じきにシールド発生器も破壊される。多くの反乱分子を逃すことになるが、中核であるお前たちを捕らえればあとは烏合の衆だ。なんとでも…」

 

その言葉は、突然遮られた。アイデンの身は驚くほど速く宙へと浮かび上がり、その場で固定されたように止まった。なんだこれは…。体が動かない。それを自覚してから、アイデンは自分の呼吸が止まっていることに気がつく。

 

壮絶な力で首を締め上げられ、アイデンはヘルメットからくぐもった声をあげた。

 

「がっ…はっ…!?」

 

かろうじて動く腕が、与えられない酸素を求めてばたつく。そのアイデンの背後。ローブを身に纏った影が、腕を彼女へと掲げていた。

 

フォースグリップで、彼女の首を締め上げていたのは…アナキンだった。

 

 

 

 

 

シナリオを練り直すのを許せるか?

  • 細かい描写も見たい
  • ログの心の移り変わりを見たい
  • とりあえずエンディングまで突っ走れ

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