アナキンの親友になろうとしたら暗黒面に落ちた件   作:紅乃 晴@小説アカ

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レン騎士団って結局何やったんや…?

 

 

ホスの格納庫へ飛び込むことになったアナキンとルークのジェダイ・ファイター。

 

そこへ飛び上がるよう降りた二人へ、通信を受けていたカーリスト・ライカン将軍が到着した二人のジェダイへと挨拶を交わす。

 

ライカン将軍は、現エコー基地の司令官であり、前衛部隊が帝国軍と交戦してる最中に脱出の手筈を進める任務も請け負っていた。

 

そんな彼と言葉を交わすルークを他所に、アナキンは感じ取った愛おしいフォースを辿ってスノースピーダー用の格納庫から更に奥へと歩みを進める。

 

そこで目撃したのが黒いトルーパーに銃口を突きつけられたパドメとレイアだった。

 

「よくも僕の家族に…銃口を向けたな…!!」

 

宙に浮かばされ身動きが取れない中、アイデンは想像を絶する力で首が締め上げられてゆく中、地獄の底から響いてくる声がベッタリと鼓膜から脳へと張り付くように響く。

 

首元がギシギシと音を軋ませ、気道が完全に塞がれている。その痛みと苦しみはアイデンが持つ屈強な戦士としての意思や志しを根こそぎ捻じ伏せ、彼女の意識を断ち切るには充分すぎる効力を発揮した。

 

指先だけで相手の命を刈り取れそうなほど、その手を震わせるアナキン。その思考は薄暗く、冷たいものに支配されそうになっていた。

 

「アナキン!!」

 

ふと、声がアナキンへ降り注ぐ。

 

「お父様!!ダメ!!」

 

パドメの声に続くように響くレイアの声に、ハッと意識を取り戻したアナキンは力んでいた指先をほどいた。驚くほど素早くフォースは飛散し、その圧力から解放された黒いストームトルーパーは糸が切れた人形のようにその場に倒れ込む。再び動く様子はない。アナキンのフォースグリップで完全に意識を絶たれたのだろう。

 

パドメは一歩手前で防ぐことができたことに安堵しながら、息を荒げるアナキンのもとへレイアと共に駆け寄った。

 

「大丈夫、私とレイアは大丈夫だから…」

 

息を整えるアナキンは、自身の内に湧き上がってきたフォースへの衝動を強靭な精神力で何とか抑え込む。いつもこうだ、とアナキンは心の内で毒づいた。家族に危険が及ぶと後先を考えず、目の前の事しか見えなくなる。昔から治らない部分であり、過去から付き纏う闇そのものだとアナキンには思えた。

 

この衝動に駆られた時、いつも脳裏に浮かび上がるのはムスタファーで自身のライトセーバーに貫かれた親友の最期の姿だ。

 

嫌な記憶。だが、決して忘れる事がない記憶だ。アナキンは張り付くイメージを振り払うように小さく息を吐き出してから、こちらの心配をするパドメへと向き直る。

 

「パドメ、なぜ君がここにいる…?」

 

レイアやルークが反乱軍に何かしらの形で加担していることは、父であるアナキンも把握はしていた。だが、妻であるパドメがよもや反乱軍に属しているとは、ボガーノで修行していた時でも聞いたことがない情報だった。追いついてきたルークも驚いた様子でパドメとレイアへ視線を彷徨わせていた。

 

「皇帝が元老院を解散させたことは知ってるわよね?帝国の圧政も力を増している。帝国内の提督たちは血眼になって武勇を上げようと、各地を戦場にしているのよ?」

 

現にナブーも攻撃を受けた、とパドメは続ける。ナブーのボランティアガードや、反乱軍から志願された防衛隊に加えて、グンガンの前リーダーであったボス・ナスから正式に指名され新たなリーダーとなったジャー・ジャー・ビンクスの指揮のもと、グンガンの戦士たちもナブー防衛戦線へ加わり、帝国を退けたという。

 

事態を重く見たパドメが行動するのは必然だろう。ホスに到着した時は司令官のライカン将軍と共に頭を抱えるレイアの姿が印象的であった。

 

「それにアナキン?娘が一人で立ち向かうのを黙って見ているなんて、私ができると思う?」

 

「君らしいと言えば、君らしいよ。パドメ」

 

妻の行動力とバイタリティはしっかりとレイアに持っていかれたと思っていたが、彼女もまだまだワンパク王女様のままだった。

 

困ったように笑うアナキンに、パドメが微笑みを送る中、いい雰囲気を邪魔するようで悪いが、と後ろに控えていたハン・ソロがごほんと咳払いし、チューバッカが小さく声を上げた。

 

「あー、失礼。お取り込み中すまないが、何?レイアの父親はラーズのおやっさんで、ミス・アミダラは嫁さんってことか?」

 

ハンにとって、アナキンはタトゥイーンで腕が凄まじく立つ修理工というイメージで固定されていた。反乱軍に入ってから、シスやジェダイのことを本格的に知った身であるから、そんな修理工のオヤジさんが過去のクローン大戦の英雄的なジェダイ・マスターであり、反乱軍の中核を担うレイアや、ジェダイであるルーク、そしてアミダラ将軍の家族と来ている。

 

大抵のことには驚くつもりはなかったが、今回ばかりは例外だなと、ハンは小さく肩をすくめた。

 

「ハン、すまない。お前との約束を…」

 

「ああ、申し訳ないと思ってくれてるだけ充分さ、ラーズのおやっさん。できれば今すぐにでもファルコンをオーバーホールして欲しいところだけど…」

 

そうハンが続ける前に、基地内が大きな揺れに見舞われ、あとを追うように地響きのような轟音が基地の前線方向から聞こえてくるのがわかった。雪の塊を受けたR2とC-3POが「嫌な予感がします」と電子音声を垂れ流した。

 

「そうも言ってられんか」

 

《シールド発生器がやられた!!総員、基地を放棄!直ちに脱出せよ!》

 

基地内に前線からの通信が入る。アナキンはレイアとパドメの肩を抱いて二人を抱き寄せる。しばらくはまた離れ離れになるだろう。けど、必ずまた会う。この抱擁は、そのための約束だった。

 

「ハン!レイアとパドメは任せるぞ!ルーク!一緒に行くぞ!帝国が基地内に来るのを足止めする!」

 

「ああ、任せてくれ。ラーズのおやっさん」

 

ジェダイのローブを翻して前線方向へルークと共に駆けて行くアナキンを、パドメが声を上げて呼び止めた。

 

「アナキン!気をつけて」

 

「パドメも。レイア、母さんを頼むぞ」

 

「任せて、お父様」

 

母譲りの力強い返しをするレイアに、アナキンは笑みを送るとライトセーバーを腰から引き抜き、弟子であり、息子であるルークと共に前線へ再び駆け出したのだった。

 

 

 

 

 

 

「大提督、ウォーカーが反乱軍基地のシールド発生器を破壊しました」

 

ホスの攻略の艦隊の旗艦。

 

インペリアル級スター・デストロイヤー<キメラ>のブリッジで側近の報告を聞き終えた青い肌の男は、その真っ赤な目を流すように伏せて、側近の報告にうなずく。随分と手間取ったとは思えたが、問題はあるまい。憎き反乱分子の基地を吹き飛ばすことができるのだから。

 

「よろしい。では予定通り、基地内部へトルーパーたちを投入しろ。将校以外は捕虜とする必要はない」

 

チスの男性である、ミスロー二ュルオド、通称〝スローン大提督〟は、真っ白な帝国軍服とたっぷりの階級章がついた胸元を勇ましく張りながら後ろに手を組んで簡潔にそう述べた。

 

「どうせ、あの基地と運命を共にするつもりで戦っていた者たちだ。殺せ」

 

その赤い目に見せられた側近は恐怖に顔を強ばらせながらも、一礼を返して足早に伝令を下すため通信室へと踵を返した。早々に衛星上からの掃射で反乱軍共を一掃しても構わないが、それではまた散らばった敵を探す羽目になる。

 

奇襲は愚かな身内のせいで失敗に終わったものの、得られるものは多いだろう。反乱軍もそこまで周到に逃げる算段をつけられるとは考えにくい。つまり、敵基地へ手早く侵攻し、残っている者たちから向かう先を聞きだす術はいくらでもあろう。

 

「さて、君たちにも働いてもらうぞ?そのためにわざわざ辺境の惑星から召集したのだからな」

 

足元で士官たちが忙しなく動き回る中、スローンはブリッジから一望できるホスの惑星を見つめる。その脇には、クローントルーパーのエリート分隊である「パージ・トルーパー」を従え、黒と灰色を基調にした戦闘服を身につける尋問官たちが静かに佇んでいた。

 

「承知しております、スローン大提督。任務は必ず」

 

ナインス・シスターであるマサナ・タイドが一礼すると、スローン大提督は彼女ら尋問官で構成された組織〝シス・ストーカー〟の面々を一瞥してから、踵を返してブリッジを後にした。

 

スローンが去った後、パージ・トルーパーたちを従えて格納庫へ向かおうとするナイシス・シスターは、通路の反対側に立っていた騎士団へ目を向ける。

 

「随分と不服そうだね、サー・カイロ・レン?今回の任務は騎士団のお気に召さないのかい?」

 

何も言わないでいたレン騎士団の筆頭騎士であるカイロ・レンへ、ナインス・シスターは挑発するような口調で告げる。その言葉に思うところがあったのか、カイロ・レンの横に控えていた一人の騎士が苛立った様子で武器に手をかけて歩み出た。

 

「貴様…!!」

 

「よせ。無用な争いは許さんぞ」

 

激昂しかけた部下を、カイロ・レンは冷静な声で宥める。今は反乱軍の掃討作戦中。仲間内の無用な争いは避けなければならないし、そのためにカイロ・レンは騎士団を率いているわけでもなかった。その態度を見て、ナインス・シスターはつまらなさそうに鼻を鳴らした。

 

「忠義か、正義感か。立派なものだけれど、この作戦でそんなものが役に立つとでも言うのか?」

 

「…我々騎士団の存在意義は、帝国自治内の秩序と正義、そして弱者の剣となり盾となることだ。断じて貴様たちのように争いを好み、血を好み、戦いを欲しているわけではない」

 

淡々と答えるが、カイロ・レンの言葉には綻びがあった。デス・スターが破壊され、帝国の統治力が乱れる中、その余波は騎士団にも深く影響した。与えられる任務には今までは考えられなかった残虐性が増え、市民に畏怖されるような真似を強要される。

 

レン騎士団の本質は秩序と平和、そして正義を守ることだ。間違っても戦いや殺人を楽しんだり、無力な人々を虐げるものではない。帝国の指揮官からそう言った圧力があるたびに、カイロ・レン本人が出向き、交渉や対抗措置を取っているものの、その対応にも限界はあった。騎士団から今の帝国のやり方について行けず去る者もいた。

 

それを脆弱だと唾棄して、シス・ストーカーたちは意地汚い笑みを浮かべる。

 

「我々もまた帝国の繁栄と支配を可能にする者たちだ。サー・カイロ・レン。お前は〝あのお方〟の教えについていけず、見捨てられたのだ。貴様など…結局、その騎士団も神輿でしか…」

 

ナインス・シスターがそこまで言葉を走らせた瞬間、カイロ・レンはその場でクロスガードライトセーバーを引き抜き、揺らめく赤い炎を立ち上らせる。

 

「騎士団を侮辱することは誰であろうと許さんぞ。それを弁えろ、尋問官ども」

 

鋭く放たれたフォースの濁流は凄まじく、ナインス・シスターは僅かに身動きを封じられ、彼女の後ろにいたパージ・トルーパーたちは踏ん張って耐える事しかできず、中にはその圧力に耐えきれずに膝を着く者もいた。

 

冷や汗をかくナインス・シスターを一瞥すると、カイロ・レンは出したライトセーバーをしまい腕を組んだ。その漆黒のマスクから覗く眼光が、彼女の浅はかな思考を貫くように射抜く。

 

「他所の者の意思は関係はない。俺は俺のやり方で帝国の在り方を示す。ただそれだけだ」

 

「……いいさ。その結果はすぐにわかる」

 

行くよ、とカイロ・レンのフォースから解放されたトルーパーたちを連れて格納庫へと向かう尋問官。彼女らの後を見送ると、横へ控えていた騎士である「マレック」が怒りをあらわにした様子で具申した。

 

「サー・カイロ・レン。彼らシス・ストーカーのやり方は義に反します!あれではまるで、人の怒りや憎悪そのものだ」

 

「わかっている、サー・マレック。我々騎士団が帝国の秩序と正義とするなら…彼らストーカーは帝国の怒りと恐怖の体現者だ」

 

尋問官は、レン騎士団が躊躇うような残虐性のある任務を好み、市民を差別し、恐怖させ、従えさせている。自分たちの指針とは雲泥の差であり、それはまさに暗黒面のあり方そのものだとカイロ・レンには思えた。彼らは純粋に悦楽と欲望を満たすためだけに行動している。例え任務であったとしても、そこに悦楽を覚えればそれは仕事ではなく快楽殺人と同義だろうに。

 

まったくもって愚かだ。暗黒面を知るゆえに、カイロ・レンはその力に溺れる彼らを唾棄する。その恐怖と力を振りかざして、その先に何があるのかをまったく理解できていない。

 

なぜ、彼らのような組織を帝国は作ったのか。それを知るのは皇帝とその側近であるヴェイダー卿だけだ。

 

「しかし…彼のやり口は…あまりにも非道です」

 

マレックの悲しむような声にカイロ・レンは頷くと、目の前に広がる真っ白なホスの惑星を見つめながら答えた。

 

「ああ、そうだ。故に、この場に我々がいるのだ」

 

 

 

 

 

シナリオを練り直すのを許せるか?

  • 細かい描写も見たい
  • ログの心の移り変わりを見たい
  • とりあえずエンディングまで突っ走れ

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