アナキンの親友になろうとしたら暗黒面に落ちた件   作:紅乃 晴@小説アカ

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誤字報告いつもありがとうございます。
感想もありがとうございます!!パルパルの人気に毎回笑ってますw


極寒の地での戦い

 

 

 

前線が崩壊したホスの積雪上の戦いは混沌を極めていた。

 

ウォーカーによって破壊されたシールド発生器はすでに意味を成しておらず、前線で防衛戦を維持していた反乱軍も、捨て身で撤退していく兵士たちの時間を稼いでいた。

 

だが、帝国の攻勢は凄まじく、掘られた塹壕で構築されていた防衛線は突破され、ストームトルーパーの軍勢はスノースピーダーが置かれる格納庫まで迫っていた。

 

「退け!ここはもう持たないぞ!」

 

特別偵察部隊「シュライクス」の一員であるカルアン・イーマットがホスの戦いに巻き込まれたのは悲運だった。

 

本来なら反乱軍の合流地帯や移動先を偵察し、安全を確保することにあったが、彼らが乗り込むはずだった船がウォーカーの放った流れ弾に命中してしまったのだ。新たな脱出船に乗り込むために格納庫へと戻ってきた彼らは、防衛線を突破してきたトルーパー部隊と遭遇。

 

なし崩し的に敗走する反乱軍を援護する形で戦線へ入ったカルアンは、ヤヴィンの戦い直後に帝国に捕らえられた時と同じよう、死を覚悟していたが、彼らに銃口を向けていたトルーパーたちが固まったようにブラスターの引き金の指を下ろした。

 

「ジェダイだ!!」

 

誰かがそう叫ぶ。カルアンたちも跳ね返ったように後ろへ視線を向けると、二人の人影が宙返りを打ってカルアンたち反乱軍の兵士たちの頭上を飛び越えた。

 

鉄を焼くような音と共に立ち上がった二本の光の刃を見た途端、敵であるトルーパーたちは恐れ慄くようにブラスターの雨を落としたが、その剣閃が閃くたびにビームはことごとくはじき返され、無造作にブラスターを構えていたトルーパーたちへと襲い掛かった。

 

カルアンは雪上を駆け抜けてブラスターを弾き返す若者、ルーク・スカイウォーカーの隣へと躍り出ると、ルークの死角からブラスターを見舞おうと構えていたトルーパーを打ち抜いた。

 

「スカイウォーカー将軍!援護します!」

 

カルアンの大声で沸き立った反乱軍兵士たちも、現れたジェダイに続くようにブラスターを撃ち放ち、攻勢を続けていたトルーパーたちを一挙に敗走へと追いやるには充分だった。

 

「君たちは先に退却を!!」

 

帝国軍からのブラスターを弾くアナキンの怒声のような声に、反乱軍の部隊長たちが撤退するように声を上げる。相手の攻勢の意を削いだとはいえ、物量では圧倒的に帝国軍が勝っている以上、基地防衛の意味を失った反乱軍がなすべき事は、少しでも多くの人員や物資を逃すことにあった。

 

「父さん!!トルーパーがくる!!」

 

ルークの声に応じて、アナキンはブラスターからの防衛に焦点を置いた型「シエン」を駆使して、次々と押し入ってくるトルーパーたちが放つブラスターの光を押し返し、機銃を設置しようとしている兵士たちをフォースプッシュで押し倒してゆく。

 

そろそろ頃合いかと二人が判断しようとしたとき、閉じかけていた格納庫の扉を巨大な爆発が包み、その黒煙から真っ黒な帝国軍の宇宙船が現れ、トルーパーたちの上を飛び越えて旋回すると、後部ハッチを開いた状態でアナキンたちの前に止まった。

 

「見つけたよ、ジェダイ!」

 

間髪入れずにその船から、漆黒の装甲服に身を包んだパージ・トルーパーたちと共に、ナインス・シスターが飛び降りてくる。目元を隠すシールド越しに見える眼はギラギラと光っていた。

 

「尋問官か!」

 

「お前たちを八つ裂きにし、ワンパの餌にしてくれる!」

 

独特な声色で向かい合ったアナキンにそう吐いたナインス・シスターは、ダブル=ブレード回転式ライトセーバーから、真紅の光刃を出現させて構えた。

 

半分がルークの方へ向かったパージ・トルーパーたちの残りが、ナインス・シスターの背後からアナキンへブラスターを放つ。その閃光を弾くアナキンの隙を突いて、ナインス・シスターがアナキンへ飛びかかった。

 

背後で跳ね返されたブラスターの餌食となったトルーパーたちの崩れ落ちる音が聞こえる中、ナインス・シスターとアナキンは数度の剣戟を交わしてからセーバー同士をぶつけ、鍔競り合う。

 

「その動き…やはりお前たちは〝ジェダイ〟か!」

 

「元はそうさ。だが、我々は新たなる力を手にした。ジェダイでは太刀打ちできない、暗黒面の力だ!」

 

光刃を押し返すナインス・シスターに、アナキンは押された反動を使って宙返りを打つと、距離をとっては、かつての師が構えていた弓を弾くような構えを主とする「ソレス」を構え、ナインス・シスターと向き合った。

 

「その感情に頼った力では、僕には勝てないぞ!!かつての暗黒卿たちがそうであったように…!!」

 

「ほざけ!!」

 

回転式のライトセーバーを高音を奏でて振り回しながら、シィイと歯をむき出しにして闘志を露わにするナインス・シスターは、回転するライトセーバーをそのまま投擲する。

 

その一閃を斬り返すと、ナインス・シスターは飛び上がり、フォースで投げたライトセーバーを引き寄せる。着地と同時に放った一撃を、アナキンは難なく受けそらした。横なぎの一撃、そこから振り抜く一閃、その全てを受けては逸らし、相手の動きを見極める。

 

クローン戦争当時では、攻撃主体の型を多用していたアナキンであったが、タトゥイーンでの隠居生活や、ルークとの修行の中で自分の在り方を見つめ直した彼は、攻撃と防御を両立する方向へと舵を切ったのだ。

 

ソレスの達人でもあったオビ=ワンの姿を思い返しながら、ナインス・シスターからの攻撃を受け流すアナキンは、剣劇の最中で彼女の戦闘スタイルを読み解き、その決定的な隙を見極めて、一閃を振るった。

 

「あ゛ぁっ!!」

 

その一撃は、セーバーを握るナインス・シスターの腕を切り落とした。腕と共に無造作に落ちるライトセーバーを、アナキンは遠くへと蹴り飛ばし、切り落とされた腕を抱いて膝をつくナインス・シスターへライトセーバーの切っ先を向ける。

 

「終わりだ、降伏するんだ」

 

その力は圧倒的だった。奥では勇ましく挑んだパージ・トルーパーたちを返り討ちにしたルークが辺りに注意を払ってからライトセーバーを収める姿が見える。ブラスターを持ったトルーパーたちもあらかた片付けた様子だった。

 

二人のジェダイに囲まれるナインス・シスターは悔しそうに顔を歪めながら、震える目をアナキンへと向けた。

 

「我々に敗北という言葉はない…!!」

 

その瞬間、再び轟音が響く。ナインス・シスターたちが乗ってきた船を押し除ける形で格納庫へ新たな帝国の船が降りてきたのだ。

 

着陸と同時に開くハッチから、硬いブーツの足音を響かせながら、3人の黒い影がゆっくりと降りてきて、アナキンとルークを睨みつけた。

 

「カイロ・レン…!!」

 

「また会ったな、未熟なジェダイ」

 

3人の長であるレン騎士団の筆頭騎士、カイロ・レンは雪上に降りると、腰にかけているクロスガードライトセーバーを手に取り、そこから真っ赤な光刃を立ち上らせた。

 

「この前より僕の力は倍になっていると知れ!」

 

「いいだろう。その傲慢が命取りだ」

 

その言葉を交わした刹那、ルークはライトセーバーを起動させて向き合うカイロ・レンへとブレードを翻した。弾け合うような剣戟を開始したルークとカイロ・レンを見て、若かりし頃の自分がフラッシュバックするアナキンは、振り返した記憶を追いやりながら声を上げた。

 

「よせ!ルーク!相手を…ぐっ!?」

 

その声を許さなかったのは、カイロ・レンの後ろに控えていた二人の騎士だった。ナインス・シスターをフォースで船側へと引っ張った騎士マレック・レンは、共に真紅のライトセーバーを握り、アナキンへと襲い掛かったのだ。

 

数撃の剣舞を重ねて、アナキンははっきりと自覚する。この二人は先ほどの尋問官とは比べものにならないほど強敵であると。

 

アナキンが型をジュヨーへと切り替えると、二人の騎士はそれぞれ距離を取る。マレック・レンの手からフォース・ライトニングが放たれ、アナキンは眩い稲妻をライトセーバーで受ける。

 

その隙をついた残りの騎士が近づくが、アナキンは空いた手でフォース・ライトニングを放つマレックを吹き飛ばし、襲いかかってきた騎士の一撃を弾いた。だが、それは悪手だったとアナキンは気がつく。

 

弾いた相手のセーバーの根本には銃口が備わっており、弾いたと同時にその銃口はアナキンを捉えていたのだ。カウンターのように繰り出されたブラスターの一閃は、アナキンの頭部目掛けて繰り出された。

 

(アナキン!!)

 

どこからから声が聞こえた。アナキンはその瞬間に全てのフォースの感覚を研ぎ澄ませた。体を地へと放り出した彼は、フォースの流れに身を任せて人体の力では再現できない動きで雪に弧を描き、体を回転させて迫りくるブラスターを躱したのだ。

 

下から正眼の構えのようにライトセーバーを握るアナキンに、二人の騎士は警戒心をさらに跳ね上げて真紅のブレードを構えるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

氷を掘って作られたトンネルの中で、赤と青のライトセーバーがぶつかり合っていた。

 

くそっ!ルークは心の中で毒付きながら、降りかかるカイロ・レンからの一閃をなんとか受け切っていた。本来なら修行を重ねた「マカシ」を駆使して挑みたいが、攻撃の巧さや隙のなさはカイロ・レンが上回っているため、防御に特化した「ソレス」を織り交ぜることによって、ルークはなんとかカイロ・レンとの攻防に追いすがっていた。

 

トンネル内の氷をライトセーバーが溶断し、二人が剣閃を重ねた後には幾つもの傷跡が壁や床に刻まれていた。

 

素早くライトセーバーを振りかざしたルークへ、一合のもと幾つもの攻撃が叩き込まれ、息を合わせた攻防の中でルークとカイロ・レンは鍔競り合った。

 

「その程度か…?ジェダイ!!」

 

赤と青の光がカイロ・レンの漆黒のマスクに映り込む。ルークは押されるライトセーバーを力任せに押し返し、フォースプッシュでカイロ・レンを押し出そうとしたが、彼の動きはそれより早かった。

 

押し返したルークの隙を突いて放った蹴りが見事に命中すると、ルークは通路の出口まで吹き飛ばされ、無造作に放置された物資用コンテナに体を打ち付けた。

 

カイロ・レンは体を打ってうずくまるルークへクロスガードライトセーバーを投擲する。その光景を見たルークは必死に投擲された一撃を弾くと、コンテナを飛び越えて再び格納庫へと着地した。

 

その時だった。

 

「スターファイターか!?」

 

重ブラスター砲の発射音が轟くと、アナキンを囲んでいた騎士は素早く防御態勢へと入った。現れたのは、ルークやアナキンたちが乗っていたジェダイ・ファイターだった。

 

「いいぞ、R5!!」

 

笑みを浮かべるアナキンへ、操縦を司るR5やR2は軽快な電子音を奏でて、コクピットキャノピーを開く。アナキンの声に従い、ルークもすぐに飛び上がって、二人はドロイドが自動操縦するファイターへと乗り込むと、そのまま格納庫から一気に離脱していった。

 

ルークが振り返ると、そこには真っ黒な外套をはためかせながらこちらを見つめているカイロ・レンの姿があった。そして、それはすぐに見えなくなる。真っ白な銀世界を背に置いて宇宙へと離脱するアナキンたち。

 

カイロ・レンとの技量の壁に悔しさを噛み締めるルークを他所に、アナキンは二人の騎士から難を逃れた時に聞こえた微かな声を思い返していた。

 

(惑星ダゴバへ向かえ。そこでお前たちを待っている人がいる…フォースと共にあれ)

 

「オビ=ワン…?」

 

その声は、あまりにも自分がよく知っているものであった。だが、彼はもういない。デス・スターで、あのシスの暗黒卿によって倒されてしまったのだから。心配そうに電子音を奏でるR5に「大丈夫だ」と答えて、アナキンは操縦桿を傾ける。

 

「父さん、反乱軍の合流ポイントに向かうの?」

 

「いいや、違う。惑星ダゴバへ向かう」

 

驚くほどの即答だった。ハイパースペース用のユニットにドッキングする父に続くルークは、その返事に首を傾げた。

 

「ダゴバ?あの星に反乱軍の基地なんて…」

 

「古い知り合いがいる。そんな予感があるんだ」

 

ルークの戸惑った声にアナキンは答えると、二人のファイターは、そのまま尾を曳く星々の景色を飛び越えて、ハイパースペースへと飛び込んで行くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

シナリオを練り直すのを許せるか?

  • 細かい描写も見たい
  • ログの心の移り変わりを見たい
  • とりあえずエンディングまで突っ走れ

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