アナキンの親友になろうとしたら暗黒面に落ちた件 作:紅乃 晴@小説アカ
惑星、ダゴバ。
アウター・リム・テリトリーのスルイス宙域に属した沼とジャングルの惑星であるその星は、豊かな生態系とフォースに満ち溢れ、都市やテクノロジーは存在せず、人の手が入っていない未開の自然が広がっていた。
クローン戦争の最中、ジェダイのグランド・マスター・ヨーダは、フォースに導かれ悪の洞窟で未来のヴィジョンを見た。
クローン戦争終結時、予見されていた未来が実現すると、オーダー66を生き延びたヨーダはダゴバに身を隠し、長い隠遁生活を開始したのだった。
「ジェダイは…滅ぶべくして滅んだのじゃよ。マスター・スカイウォーカー」
訪れたアナキンと、その子供であるルーク。彼らに対して、ヨーダはまるで贖罪のように言葉を綴った。古く倒れた巨木の根に居を構えたヨーダは、豪雨が降りしきる中、揺らぐ焚き火に目をやりながら過去を思い返す。
結局のところ、ダゴバで見た未来の予見を知っていてもなお、ジェダイ・オーダーの破滅とシスの台頭を防ぐことができなかった。あの瞬間から、今までの全てが間違いだったと思えるほど、ヨーダの心は疲れ切っていたのだ。
「ワシらジェダイは、それに気がつくのが遅すぎたのじゃよ。ワシは…パルパティーンを、いや…ダース・シディアスを暗殺する瞬間も、奴から逃げたときも、それに気づくことができなかった。情けない話じゃ…こうやって、ダゴバに逃げ込み、袂を別けた弟子に諭され、ようやく我らの過ちに気が付くことができたなぞ…」
そう言うヨーダの横には、同じく老齢となり、ノーバディや伯爵という地位すら捨てたドゥークーが居た。
彼もまた、世界の在り方やフォースと向き合うことに疲れ切っていた。
ダゴバでヨーダと出会うことを決めたのは、ジェダイとシス、そしてノーバディという地位を駆けたことで得た知識を、ヨーダに伝えると同時に、これから先のフォースをどう見つめるか、瞑想する目的もあった。
「今更…!!それを言って何となると言うのですか…!!」
ヨーダの言葉に、アナキンは激昂したように言葉を吐く。そんな父を見ることは初めてであった。ルークは父のフォースの乱れに驚きを隠せないまま、それでもとヨーダに問いかける。
「しかし、ジェダイ・オーダーを再建できれば、新たなる平和の守護者として…」
今では、立ち位置は違えど多くのフォースの感応者がいる。カルや、トリラ、そしてモールたち。彼らを説得すれば、より良いジェダイ・オーダーを再建できるとルークは考えていた。
だが、その考えにかつてのグランド・マスターとその弟子は、首を横へ振った。
「その考え自体が我々の傲りだったのだよ、若きスカイウォーカーよ。平和の守護者として立つことがジェダイの真の役目だと決めつけ、見方を固定化したのがそもそもの間違い。フォースを通じてあらゆる側面から物事を見つめるのが務めであった。しかし、我々はそれを放棄したのだ」
そう答えたドゥークーの言葉に、ルークは酷く既視感を覚える。それではまるでナブーで争い事から遠ざかろうとしたマスター・クワイ=ガンと何も変わらないではないか。ルークは苛立ちに似た感情を抱いた。
「では、ジェダイは世捨て人になれと?」
「そう言ったこともフォースの導きかもしれん」
「しかし、世界は変わり続けてます。急速な変化は混乱と、不安と、争いを生む。それを無くし、より良い平和な未来へと足掛かりを、踏み台を作るのがジェダイ・オーダーの役割では?」
そう告げたルークの言葉に、ドゥークーは少し驚いてから、懐かしそうに目を細める。
〝いかにもだ。だからこそ、変革が必要なのだよ。もはや共和国もジェダイも、腐敗や慢心を生み出す発生装置にすぎん〟
〝しかし、貴方が行おうとすることは世界を急変させます!急ぎすぎた変化は人々を置き去りにし、不安と、混乱、争いを呼びます!〟
フォースの瞑想の最中で交わした言葉が遠い過去にある。ドゥークーは、用意したダゴバのハーブで作った茶を木彫りの器に注ぎながら話し始めた。
「かつて、多くのジェダイの中でもたった一人、マスター・ヨーダと別れた道を歩んでいた私にそう言ったジェダイがいた。彼はとても優れたジェダイであり、あらゆる側面をフォースを通じて見つめ、そして思考し続けていた」
その者は、ジェダイの中ではあまりにも異質で、浮き上がるほど特別な存在にも思えた。まだドゥークーがジェダイ・オーダーから抜ける前のこと。彼は暗黒卿であったはずのダース・モールの心の奥底を紐解き、そして理解したのだ。ジェダイとしてあるまじき行為だというのに、彼はそれを是として考え、そして行動に移し、誰もが予想だにしてなかった結果をもたらした。
彼は、多くを見つめていた。ライトサイドも、そしてダークサイドすらも。
「ログですね」
思いふけるドゥークーへ、アナキンは察したように答えを投げる。その言葉に、息子であるルークは困惑した様子だった。
「父さん…?」
父が名を出したのは、母が語ってくれた人物の名だった。父と母、そしてオビ=ワンやクワイ=ガンとも共通だった友人であり、最大の理解者であったと聞く古き友。彼はクローン戦争で父の身代わりとなって死んでしまったと聞く。
「ログ・ドゥーラン。かつて、ジェダイ・オーダーにいた若く、強く、そして聡明なジェダイであった」
「彼はマスターになる素質があった。誰よりも偉大な。そんな彼を追い込んだのは、僕たちジェダイ・オーダーだ」
深い信頼と、思いが篭るフォースとは裏腹に、アナキンの顔は酷く怒りと悲しみに満ちているようにも見えた。
ログ・ドゥーランの話は、母は常に父がいない場でルークやレイアに語ってくれた。一度レイアがログの話を父にしてしまった時がある。その時の父は酷く動揺し、取り乱していた。泣いている父と、そんな父に寄り添う母を見た結果、ルークもレイアも、父の前でログの話をすることは一切無かった程に。
「怒りに満ちておるな、マスター・スカイウォーカー。だが、その怒りを我々は受けなければならない。咎とも言えよう」
ヨーダの言葉に、アナキンの怒りが収まることはなかった。彼にとって、その言葉を発していい者はジェダイには居ないのだ。自分を含めて全てが、彼をあのような末路に追い込んだ者たちだから。
「ログ・ドゥーランは見抜いていたのだ。ジェダイ・オーダーが本質的なジェダイの思想から外れていると言うことを…いや、そもそもジェダイとシスという思想すら、彼は違った視点を持って見つめていたのかも知れん」
「その、ログ・ドゥーランは…どうなったのですか」
母が語ることがなかったログの最期。彼はアナキンとオビ=ワンから、グリーヴァス将軍の討伐の最中に殺害されたと聞いている。だが、誰に、どうやって倒されたのか、なぜ倒れてしまったのか、その真相をパドメは決してルークたちに語ることはなかった。
「彼の名はまさに動乱の記録だ。クローン戦争末期、ダース・シディアスによるクローンの反逆があった。多くのジェダイが死んだ。そして、そのジェダイ抹殺を先んじて行ったのが…」
「やめろ!!!」
ドゥークーの語りを止めたのは、アナキンだった。見るからに顔を青くし、息を荒くするアナキンの姿。
彼にとって、忘れたくても忘れられない罪。
まだ覚えている。
彼を…親友だと信じていた相手を貫いた感触。
声や、フォースの感覚すらも。
その全てがアナキンの背に重くのしかかっていた。乱れる呼吸を整えるアナキンを見つめて、ヨーダは小さく息をつく。
「彼は殉じたのだ。ジェダイとして。クローン戦争で歪み切ったジェダイの思想を断つため」
今になって理解できる。彼はシスや暗黒面に落ちたわけではない。殉じたのだ。シディアスが言った言葉通り。ログ・ドゥーランはその身を賭して、ジェダイの時代に終止符を打つこととなったのだ。
「そんな…では、ジェダイとは…シスとはなんなんですか?」
震える声で、ルークはかつてのグランド・マスターへ本質を問いかける。では、ジェダイとは?シスとは?滅びるべくして滅びたジェダイと、この世の全てを恐怖と暴力で支配下に置くダークサイドと、どういう違いがあって、どんな世界が真に求めるべきものなのか。ルークは分からなくなってしまった。ヨーダは言葉を選ぶように瞑目する。
「フォースのライトサイドとダークサイド。その中道には、多くの運命が渦巻いておる。全てを二つに分かつことなど不可能なのじゃ、若きスカイウォーカーよ」
「では、どうすればいいんですか?」
「伝えることじゃ」
ヨーダは簡潔に、ルークへ伝える。
「学んだことを伝えればよい。強さ、技術。それに弱さ、愚かさ、失敗も」
かつての自分たちはそれを怠った。成功とジェダイの思想ばかりに傾倒し、自分たちが犯した過ちの全てをフォースの冥界へと閉じて、それから目を逸らし続けた。滅ぶべくして、ジェダイは滅んだ。
ならば、自分たちの務めは滅びを避けることでも、ましてやそれを不死鳥の如く蘇らせることでもない。
「失敗は最も大切じゃ。失敗は最良の師となる。わしらは追い越されるために存在する。それこそがすべてのマスターの真の責務なのじゃ」
そう言って、ヨーダはアナキンとルークを見つめる。そして、その彼らを後ろから見つめる〝古き友〟にも。
「そのために、ぬしらはここへ導かれたのじゃ」
では、最後の修行を始めよう。グランド・マスターは二人に告げると、かつての弟子であるドゥークーと共に立ち上がる。
これが自分たちにとって、最後の役目だった。
シナリオを練り直すのを許せるか?
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細かい描写も見たい
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ログの心の移り変わりを見たい
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とりあえずエンディングまで突っ走れ