アナキンの親友になろうとしたら暗黒面に落ちた件   作:紅乃 晴@小説アカ

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帝国の陰謀

ジオノーシスの地下工場の中。

 

幾つもの柱を足場にして飛び交うトリラは、黄色の光を放つライトセーバーを携えて、一気に足場から飛び降りた。眼下では巨大なコンベアの上で同じ色のライトセーバーを振るうカルと、赤い二対のライトセーバーを翻すマリコスが剣舞を閃かせてぶつかり合っている。

 

トリラが飛び降りてくることを察知していたマリコスは、カルをフォースプッシュで押し出し、振り返り様に飛びかかってきたトリラへ回し蹴りを繰り出す。

 

「トリラ!!」

 

足場を飛び回るアタルの型を使うトリラが吹き飛ばされたのを見たカルは、腰を落とし再びマリコスへとライトセーバーを振りかざす。

 

「その程度か!!」

 

「マリコォォス!!」

 

ブレードをぶつけ合い、弾かれ合う。プラズマで形成させる刃は膨大な熱エネルギーと、アーク波を放って辺りを照らし、往々にして激しい剣戟が繰り広げた。

 

「フォースの乱れを感じるぞ。お前はまだジェダイに縋り付いてるのか?あの戦争で死んだマスター・タパルの背を見て!!」

 

「黙れ!!」

 

セーバーのスパークを挟み、ニヤリと笑みを浮かべるマリコスを睨み付けるカル。だが、その力量差は遥かであり、マリコスの余裕さを崩すには力は及ばなかった。剣戟を重ねる中で、マリコスは距離を置くと、フォースの力で両の手に携えていた赤いライトセーバーを空中に浮かして弧を描かせてゆく。

 

「何者でもあり何者でもないと唄うノーバディが笑わせる。貴様は所詮、古き思想から脱却できずに足掻く、哀れな童にすぎん!!」

 

腕を組んでそう吐き捨てるマリコス。その隙を逃すまいとメリンが緑炎の魔術をぶつけるが、彼は宙に浮くライトセーバーを翻してメリンの放った魔術を尽く討ち払った。

 

カルは歯を食いしばりながら硬い鉄の床を蹴ってマリコスへと駆ける。ライトセーバーの切っ先から放つ突き、そしてそこから手首のスナップで放つ横なぎ、真上に構えた袈裟斬りと放つが、その全てをマリコスは躱し、足の踏ん張りが疎かになったカルの刃をすくい上げるように払った。

 

「カル!!」

 

地に転がるカルを援護するシアのブラスターの一撃は、マリコスの背後へと伸びるが、彼はその閃光に一瞥もくれずライトセーバーを振るってシアのブラスターを弾き飛ばした。

 

「その程度の覚悟でフォースの夜明けなど、片腹痛い!!」

 

シアは自分の迂闊さを呪った。メリンもトリラも、マリコスが放つダークサイドの力に太刀打ちできていない。カルも打ち付けられた体を庇いながら立ち上がるが、その実力差は火を見るよりも明らかであった。

 

「さぁ、どうする。カル・ケスティス。お前にその道を選ぶ覚悟が本当にあるのか?」

 

肩で息をするカルへ、真っ赤なライトセーバーの切っ先を向けるマリコス。そんな彼を見据えながらも、カルもまた刃を収めていたライトセーバーを起動し、構えた。

 

「覚悟ならある…!!」

 

「ならば、その覚悟と共にここで果てるがいい!!」

 

一閃、二閃。カルの構えたライトセーバーに斬りかかるマリコスの刃は、彼の体を揺らして、ライトセーバーを揺るがし、そして3撃目でカルの防御の型を完全に崩した。決定的な隙だ。ライトセーバーを構えたトリラが駆けながら叫ぶ。シアも、メリンもだ。彼女たちがカルを守ろうと体を向かわせるが、それでもトドメの一撃を振るうマリコスの方が早い。

 

カルの背中にいるBD-1が悲鳴のような電子音を奏で、カルは迫り来る赤い光を前にグッと身を固めることしかできなかった。

 

静寂。ライトセーバーの一撃が放たれてどれだけ経ったのか。だが、驚くほどにカルの体に痛みと熱さが迸ることはなかった。恐る恐ると目を開くと、そこには斬りかかろうとしていたマリコスのライトセーバーの刃が、まるで時間を止められたように存在していた。

 

光が蠢くことで、カルはようやくマリコスのライトセーバーが不可視の力で押し留められていることを知る。

 

後ろ踏みで迫ろうとしていた赤い光刃から逃れたカルは、マリコスの後ろで手を差し伸ばしている人影を見つけた。

 

「これはこれは…モール卿。お前が自ら出てくるとは」

 

マリコスは振るっていた刃をまるで何かから引き抜くように振るって、後ろへと振り返る。そこには、マリコスの刃へフォースの力を送っていたモールの姿があった。

 

格好は、クローン戦争の時に発足したノーバディが身につけていたテンプルガードの戦闘服のままだが、その至るところは継ぎ接ぎだらけで、彼の顔を隠していたマスクもない。老齢となったモールは目を細めながら、力のあるマリコスを見つめる。

 

「答えろ、タロン。お前はここで何を〝任されていた〟?」

 

「そこまで知っているなら、答える理由はないであろう?モール卿、お前がノーバディからモールに戻った日から、こうなることは予見できていたはずだ」

 

「答えろ、〝マスター〟は本気なのか」

 

声色にフォースを織り混ぜて、モールは問う。彼がマスターと呼ぶのは、後にも先にも二人だけだ。蓄えた髭に手をやりながらマリコスはモールの思惑を読み解き、得心がいったように頷く。

 

「ああ、本気だとも。でなければ、こんな辺境の地でコソコソと準備などするものか」

 

そう言い終えたマリコスの背後に、帝国軍の輸送船が轟音と共に降りてきた。無理やり船体を入れたため、老朽化した工場のパイプや柱が落ちてくるが、マリコスはそれらを全く気にせずに開かれたハッチへと乗り込み、モールやカルを見渡した。

 

「いいか、これが〝序章〟となる。その先にあるものが真なる世界か、それともフォースの夜明けか。その答えを得る時を楽しみにしているぞ」

 

不敵な笑みを残したマリコスは、閉じられてゆくハッチの奥へと消えてゆき、帝国の船は再び轟音を上げて地下工場から地上、そして宇宙へと飛び立ってゆくのだった。

 

「モール…」

 

「俺にも気になることがあってな。だが、奴がここにいた事が、何よりの答えだ」

 

マリコスが去った先を見上げるモールに、シアが話しかけるが、彼は落ちている破片の一つを拾い上げてから答えた。

 

「彼は、ここで何をしていたというの?」

 

「作っていたのさ。新たなる兵器を」

 

その言葉に、シアは顔を暗くさせた。シアたち、チームマンティスが幾月もかけて調査していたもの。噂程度の話しか掴めなかった物の断片が確かにここにはあった。

 

モールが取り出して起動する電子端末に浮かび上がったシルエット。そこには、帝国の第二のデス・スターのデータが映し出されていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

アウター・リム・テリトリー。

 

惑星ベスピン

 

アノート宙域に属した大型のガス巨星であるこの星は、居住に適した大気層もあった。

 

ベスピンのガス層は貴重なティバナ・ガスの源で、複数の採鉱施設でガスの収集や製錬が行われていた。クラウド・シティもそうした施設のひとつで、雲の中に浮かぶ巨大なメトロポリスだった。

 

そのクラウド・シティの中で、今はハン・ソロの悲鳴が響き渡っている。

 

ホスから脱したハンのファルコン号は、ハイパー・ドライブが故障していたため彼は「かつての友人」ランド・カルリジアンが所有するガス採取コロニー・クラウド・シティに進路を取った。

 

だが、その足取りを賞金稼ぎであるボバ・フェットは気づいており、ボバは逃亡者たちの追跡を始めた。

 

カルリジアンがハンたちの到着の直前に帝国の〝スローン大提督〟の圧力に屈し、クラウド・シティの中立を遵守するという条件で取引に応じたことを明かした。スローンは彼らを拘束し、ハンから反乱軍の合流ポイントを聞き出すだけ拷問し、その悲鳴がクラウド・シティの施設内にこだましていたのだ。

 

「ソロの身柄は了承した。だが、レイア姫やアミダラ議員の身柄の話は契約違反だ」

 

幾人の護衛であるトルーパーを引き連れる青い肌と赤い目をしたスローンに、ボバはマスク越しに物申す。

 

ボバの目的はジャバ・ザ・ハットから依頼されたハンの身柄を抑えることにある。そして、旧知の仲であるレイアとパドメの救出も密かに企てていたが、その目論見は目の前にいるスローンの一声によって潰えようとしていた。

 

「勘違いするなよ?賞金稼ぎ。君のクライアントは私だ。彼女たちの身をどうするかは、私が決める」

 

「ヴェイダーから俺は任務を受けた。レイア姫やその関係者がいた場合はヴェイダーの元に送り届けるまでが、俺の仕事のはずだ」

 

だからクライアントはアンタではない、とボバははっきりとスローンへ告げた。ハン・ソロを追っていたボバの目的は事実であるが、レイアやパドメは想定外もいいところだった。その場合は依頼者へ送り届ける手筈となっている。この賞金稼ぎとしての仕事の依頼口は、ダース・ヴェイダーからの直々の依頼のはずだ。だが、スローンは憎たらしい笑みを変えず、見下すような目つきのままボバへと告げた。

 

「ならそうなったことを伝えるために、君一人でヴェイダー卿のもとへ向かうがいい」

 

それだけ伝えると、スローンは踵を返してトルーパーたちと共に施設の奥へと消えてゆく。あとを追おうと踏み出そうとしたが、失った片手を義手に変えたナインス・シスターたち尋問官によって行手を遮られる。

 

「これ以上、スローン大提督は話すことは無いよ」

 

報酬が欲しいなら大人しく引き下がることだね、威圧的な物言いで告げるナインス・シスター。腰に視線を落とせば、その手には回転式ダブル=ライトセーバーが握られている。周りにいるパージ・トルーパーたちも同じように戦闘態勢を取っていた。

 

ここで事を起こすのは得策ではないな。

 

「承知した」

 

短く告げると、ボバは装甲服とスカーフをなびかせて通路を歩み出した。ハンのことは知ったことではない。彼はハットとの約束事を違えた愚か者だ。

 

だが、レイアはちがう。

 

彼女がハン・ソロと共にいたことはボバにとっては全くの想定外であった。

 

ナブーの幼少期から知る彼女を捨て置くことは、ボバにはどうしても出来なかった。彼女の頼みでボバは父に頼み、スカリフの激戦区にも赴いたほどだ。

 

なんとかして彼女と母親であるパドメを逃さなければ。心の奥底で思考を続けながら、彼は賞金稼ぎらしく、時がくる事を待つのだった。

 

 

 

 

 

 

 

シナリオを練り直すのを許せるか?

  • 細かい描写も見たい
  • ログの心の移り変わりを見たい
  • とりあえずエンディングまで突っ走れ

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