アナキンの親友になろうとしたら暗黒面に落ちた件   作:紅乃 晴@小説アカ

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運命の赴くままに

 

 

 

コルサント。

 

別名、インペリアル・センターとも呼ばれるこの惑星は、帝国政府の首都惑星であり、銀河系社会の中心地だった。

 

惑星全体を覆うように形成されるギャラクティック・シティと呼ばれる都市の中では、エアスピーダーやスターシップの往来が旧共和国時代と変わることなく流れている。

 

そのコルサントにある皇帝の座するインペリアル・パレスは、元はジェダイ・テンプルであったが、共和国とジェダイが崩壊し、銀河帝国が樹立した際、皇帝であるシーヴ・パルパティーンの皇居として改築され、今は古きジェダイ・テンプルの面影は残されていなかった。

 

「シディアス卿、計画は順調です。大提督はベスピンへ」

 

その皇居の中、多くのジェダイマスターたちが通っていた長い通路の中。通路には皇居護衛に選別されたトルーパーたちが立ち並んでおり、陽の光を利用した自然照明は松明へと変わり、悠然だったその場に陰影を下ろしている。

 

その中を、真っ黒な外套を翻させながらヴェイダーはシスの暗黒卿であり、皇帝であるダース・シディアスこと、パルパティーンと共に歩んでいた。

 

パルパティーンはシディアス卿が身につける顔を隠すほどの外套を身につけておらず、旧共和国時代と変わらない大らかな外見をした〝最高議長〟の姿のまま、ヴェイダーの隣にいた。

 

「ヴェイダー卿、そなたにあの者を託して正解だったか、それとも時代のフォースにそぐわぬ者のままか、見定めるときだな」

 

皇位継承者と表向きは語りながらも、その実は幾人ものフォース感応者の母体を利用したデザインベイビーの一人。

 

そもそも、そのデザインベイビーの話にパルパティーンは乗り気ではなかった。帝国を打ち立て、ジェダイを一掃したパルパティーンの胸にあったのは、満足感ではなく虚無だったからだ。

 

帝国政府の運営にすら興味を示さないパルパティーンに、帝国運営のために子孫を残す提案をしたのは側近たちであった。パルパティーンが倒れれば、そのカリスマ性で打ち立てられた形は簡単に崩壊するだろう。その名を引き継ぐ者は必ず必要であった。

 

だが、名も思い出せぬ血を引き継ぐ彼の者たちの中に、パルパティーンの目を引く者は誰一人として居なかった。

 

そんな中、隣にいるヴェイダーが一人の子孫に興味を示した。それがフォースの導きであったのかは定かではないが、ヴェイダーは生まれ落ちたその者を鍛えた。アプレンティスではなく、一人の戦士として。

 

やがて、その者は自らをカイロ・レンと名乗り、騎士団を作り上げた。皇帝が見向きもしない帝国の秩序と市民を守るためと謳って。はからずとも師となったヴェイダーに倣うようにマスクを被った。

 

「カイロ・レンは優秀ですとも。彼には多くのフォースが宿っている」

 

パルパティーンの呟きに、ヴェイダーは当然と言うように答えた。カイロ・レンは優秀な戦士だと断言できる。彼を一人前の戦士として鍛え、共に逆らうジェダイを屠り、その力を帝国の秩序と平和を守るために示し続けた。そして、今彼は新たな選択をしようとしている。

 

彼ら騎士団を〝道化〟であるスローンの元に付けたのは正解と言えただろう。

 

「だが、マスター・ドゥーランには劣る」

 

そのヴェイダーの満足げな声に、パルパティーンは一石を投じる。途端、ヴェイダーの声は不機嫌なものとなり、フォースも鋭さを増した。

 

「ドゥーランは死にました、シディアス卿。彼は満足して果てたのです」

 

そして同時に、彼はその先にある未来を放棄した弱者だ。フォースの導きに従えばいいものを、かの者はその役目を放棄して〝選ばれし者〟と揶揄された友を守ることを選んだ。故にログ・ドゥーランという男は死に、その代替としてダース・ヴェイダーが生まれたのだ。

 

皇帝が追い求める存在など、もはやこの世界に、この宇宙にひとかけらとも残っていない。にも拘わらず、パルパティーンは探し求めている。探せば見つかると信じ続けている。

 

すると、パルパティーンはヴェイダーへとフォースを放った。その目は黄金色に輝いている。ヴェイダーもまた、義手となった手にフォースを纏い、皇帝から放たれる圧倒的なフォースに対抗する。

 

そう、〝対抗〟できてしまっていた。

 

「抜け殻が喋るものか。彼は生きておる、そなたはその器でしかない」

 

「何をそこまで求めるのですか、あの者に」

 

「全てだ、ヴェイダー卿」

 

バチリ。皇帝から放たれるフォースが稲妻へと変異する。ヴェイダーはライトセーバーを抜き放ち、その稲妻を真っ赤なプラズマの刃で受け止めた。眩い光を打ち払い、ヴェイダーはその光刃をパルパティーンの眼前へと向けた。

 

周りのトルーパーたちが皇帝に仇なすヴェイダーへブラスターを向けた瞬間、数十人のトルーパーたちの首が一斉に絞め上がり、足が地から離れ浮き上がった。

 

「その男の意思などフォースの意思の前には無益です。シディアス卿」

 

睨み合うパルパティーンとダース・ヴェイダー。二人はフォースの牽制を続け、やがてパルパティーンの目が黄金色から元の色彩へと戻った。同時に、ヴェイダーが絞め上げていたトルーパーたちも地に下された。全員が既に意識を失っており床へと倒れ伏せたが命は刈り取っていない。

 

「そなたは変わらぬな。あの時のまま、何一つとして。進歩も、後退もない」

 

パルパティーンは、そのヴェイダーの姿を見て落胆した。彼には憎悪も怒りも喜びもない。彼を突き動かすのは常にフォースだ。フォースの意思と導きで彼は歩み続ける。

 

あの日、ムスタファーの溶岩によって焼き切られた彼を助けた時から、ヴェイダーは常にフォースの意思のまま動き続けている。その鎧の内にあるものは〝人〟ではなく、フォースだ。

 

ヴェイダーの中に〝彼〟は居ない。

 

「行くのか?ヴェイダー卿」

 

外套を翻して通路の先あるターミナルを目指すヴェイダーにパルパティーンは語りかけると、ヴェイダーは振り返ることなく、機械によって構成された声を紡いだ。

 

「ええ、運命が私を呼んでいるのですよ、シディアス卿」

 

もはや師と弟子という関係すら破綻している。ヴェイダーは、パルパティーンに生かす価値があるから殺すことはない。そしてパルパティーンもまた、ヴェイダーに利用価値を見出しているから殺さない。

 

二人は皮肉にも利害関係が一致している故に、共にいるのだ。

 

通路を歩んでいくヴェイダーの後ろ姿を見つめながら、パルパティーンは深く息をつく。だが、これでいい。彼の行く未来に、自分が求めるビジョンが映っているのだ。パルパティーンは通路を行き、一人コルサントの夜景が見えるバルコニーへと出た。

 

「フォースの意のまま…そなたは変わらぬ。あの日から…故に、ワシは焦がれるのだ。その先を見たそなた自身を」

 

そう呟くパルパティーンの視線の先では、一機のTIE・アドバンスドが飛び立ち、コルサントの軌道上に浮かぶスターデストロイヤーへと向かっていくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「行くのか、マスター・スカイウォーカー」

 

ダゴパで受けた修行は、多くを学ぶきっかけとなったと、荷物をジェダイ・ファイターへ積み込むアナキンは痛感していた。

 

暗黒面。ヨーダや、ドゥークーが体験した暗黒面の修行をルークと共に行ったのだ。

 

多くのビジョンを見た。

 

自分がダース・ヴェイダーになっていたビジョンを。パドメとオビ=ワンを斬り殺す自分を。そして、友と刃を交わした過去を。

 

その修行の最中、ルークは出会ったハンや、妹であるレイアの苦痛をフォースを通じて感じ取ったのだ。アナキンもだ。それに、アナキンには娘の苦痛だけではない、懐かしくもある何かを感じたのだ。

 

「暗黒面が強くなっておる。息子と共にゆく道は修羅だぞ?お主に伝えたいことは多く、学ぶことも多い」

 

「残って、修行に専念しろと言うのですか?マスター・ヨーダ。それでは、ジェダイと何ら変わりません。世捨て人と何も」

 

ヨーダの忠告に、アナキンはそう返した。全く、父が父なら息子も同じだわいとヨーダは呆れたように肩を下ろしたが、ここで修行に付していれば必ず後悔することになるとアナキンは知っていた。

 

何よりも愛する者を大切にする。ジェダイの掟には絶対にないことを大切にしろと言った友のためにも、アナキンはここに留まる選択などしない。

 

「時代は、我らとシスの闘争を望んでいないのかもしれんぞ?マスター・スカイウォーカー」

 

《だが、それこそ見えぬ未来の思う壺ではないか?》

 

ドゥークーの声にそう返したのは、アナキンではなかった。3人が意識を向けると、ダゴバの池のほとりに腰掛けている一人のジェダイマスターがいた。彼の体は半透明で、青白いフォースに満ち溢れていた。

 

霊体となったクワイ=ガン・ジンがそこにいたのだ。

 

《アナキン、私の教えを忘れるな。フォースは常に、お前と共にある。未来ではなく、今もな》

 

「マスター・クワイ=ガン…」

 

フォースを感じ、ルークが師の死に悲しみを抱いた。ナブーで彼が霊体となったとき、ルークとアナキンたちにも悲しみのようなイメージが溢れたが、事実が目の前に現れた途端、ルークの悲しみは現実のものとなった。

 

目に涙をにじませるルークに、クワイ=ガンは優しく微笑みを送った。

 

《悲しむな、若きパダワンよ。時が来たのだ。オビ=ワンと同じように》

 

「マスター・クワイ=ガン。オビ=ワンはなぜ…」

 

アナキンの問いにクワイ=ガンはしばし言葉を濁した。彼の問いはもっともだ。なぜ、あのときオビ=ワンは一人でダース・ヴェイダーへ挑んだのだ。勝ち目のない戦いとも、彼は賢者であり偉大な男だった。そんな彼が、何の勝算も計画もなく無謀に挑むはずがない。

 

《彼はフォースに殉じたのだ、アナキン。君と同じように、彼もまた憂いていたのだ》

 

その言葉に、アナキンは目を見開く。まるで自分が感じ取った感覚を見透かしているように。クワイ=ガンは若きあの日に出会った時と同じように、アナキンの肩に手を置いた。

 

《故に君は知らねばならん。君を導くフォースの行先を。アナキン、フォースと共にあることを忘れるな、いついかなる時も》

 

そう言って、クワイ=ガンの霊体はゆっくりと消え去る。感じ取ったフォースは遠く、はるかへと過ぎ去っていくようにも思えた。

 

「父さん」

 

「行こう、ルーク。運命の呼ぶがままに」

 

ルークの言葉に答えたアナキンは、そのままジェダイ・ファイターへと乗り込み、軌道上に浮かぶハイパースペースユニットへと上昇していった。

 

「厳しい戦いになる」

 

「だが、新たな夜明けの始まりです。マスター・ヨーダ」

 

ダゴパで二人を見送るヨーダに、ドゥークーはそう答えた。この未来を予見したからこそ、ドゥークーは一人、ヨーダの元へと訪れ、アナキンとその息子を鍛えたのだ。ここで自分たちに課せられた役目は終わりを迎えたのだ。

 

「そうじゃの、ドゥークー。我らが閉ざした帳〝とばり〟に昇る新たな夜明けじゃ。それを見つめることもまた、残ってしまった我らの役目じゃろうて」

 

遠くなってゆく光を見上げながら、ヨーダもそう呟く。光が消え去り、ダゴパに自然の音が響く。やがて、二人の人影はフォースへと溶け合い、誰もいなくなったのだった。

 

 

 

 

 

シナリオを練り直すのを許せるか?

  • 細かい描写も見たい
  • ログの心の移り変わりを見たい
  • とりあえずエンディングまで突っ走れ
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