アナキンの親友になろうとしたら暗黒面に落ちた件   作:紅乃 晴@小説アカ

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宿命の戦い 1

ベスピンのクラウド・シティにある船の発着場にたどり着いたレイアたちだったが、すでにそこにはクラウド・シティの住民たちを不当な形で拘束し、我が物顔で闊歩しているストームトルーパーたちで溢れかえっていた。

 

物陰に身を潜めると、ボバは腰の小物入れから小さな玉を取り出して目につかないように転がす。小型カメラとセンサーが内蔵されたその玉を通じ、ヘルメットに備わるカメラを下げたボバは当たりを見渡した。

 

「くそっ、こっちにも帝国兵が」

 

発着場は特に警備が厳重であった。愛機であるスレーヴⅠも、ハン・ソロのミレニアム・ファルコン号の周りには多くの兵士たちが警戒するようにうろついている。

 

ブラスターを引き抜くが、ここで騒ぎを起こせば数の暴力に晒されることは明白だった。

 

「で?俺たちを助けたくせにノープランか?賞金稼ぎさんよ」

 

吠えるウーキーのチューバッカと、ハンに呆れたように言われたことがボバのシャクに触った。振り返りながら怒気に満ちた目でハンを見る。残念ながら、その睨みに近い目つきはヘルメット越しでハンに見えることは無かった。

 

「黙ってろ荒くれ者、レイアや彼女の母がいなければ、貴様は今頃炭素冷凍だったぞ!!」

 

その声が致命的だったことを、ボバは賞金稼ぎになって初めて後悔することになった。警邏していたトルーパーに発見されたと同時に、ボバのすぐ脇にある建物の壁から火花が走ったのだ。

 

条件反射のようにブラスターで応戦し、こちらに気がついたトルーパーはなんとか片付けたが、芋づる式に他のトルーパーもこちらを感づいている。打ち倒したトルーパーのブラスターをハンたちの方へと蹴りやると、彼らもブラスターを握って反撃へと転じた。

 

「くそ!だから俺は賞金稼ぎが嫌いなんだ!!」

 

「うるさいぞ、ロクデナシめ!元はと言えばお前がさっさとハットに金を持っていかないからであってな!!」

 

「口よりも手を動かしなさい!!」

 

「 「やってるよ!!」 」

 

レイアの悲鳴のような声に二人揃って答えながらブラスターの引き金を引いて、引いて、引きまくる。

 

二丁拳銃のボバが恐ろしく早い速度でトルーパーたちを屠ってゆくが、その数は減るどころが増える一方だ。このままでは発着場に着く前にジリ貧となってやられてしまう。

 

そんな激戦の中、ベスピンのガス雲を突き破って、一隻の真っ黒な船がボバたちの頭上を通り過ぎた。

 

「なんだ!?」

 

駐留されていたTIE・ファイターをなぎ倒して爆発が起こる。幾人かのトルーパーたちが爆風で吹き飛ばされる中、悠然と空いたスペースへと降り立った黒い船。その下部に備わるハッチが開いたと同時に、二人の黒い騎士甲冑姿の男がタラップから降りてきた。

 

「まったく、うちの団長は無茶をするよ」

 

「今回ばかりは貴公に同感だな、せめて一口二口、説明はほしかったな」

 

タラップを硬いブーツで叩くような足跡を奏でて降りる二人は、そんな軽口で言葉を交わし合いながら、クラウド・シティの地へ足を踏み入れた瞬間に腰に携えていた真っ赤な光刃のライトセーバーを起動させて駆け出した。

 

「レン騎士団…!?」

 

援軍…とは言い難い。この作戦に彼らは要請されていない。そして何より、彼らは銃口を向けた先ではなく、真っ直ぐにクラウド・シティの住民たちをいたぶるトルーパーたちに向かって駆け出していたのだ。

 

すれ違いざま、彼ら二人が駆け抜けただけでその直線上にいたトルーパーたちが次々と切って捨てられ、倒れてゆく。

 

苦し紛れに放つブラスターを難なく跳ね返しながら、その撃った張本人のトルーパーの軍勢を文字通り一刀両断して、レン騎士団の二人の騎士は手に待つライトセーバーの切っ先を帝国兵へと向けた。

 

「貴様ら、よくもやったな。帝国市民に危害を加えるとは…そこまで落ちたか、下衆ども!」

 

撃て!!そうトルーパーの隊長が悲鳴のような声を上げると二人の騎士へありったけのブラスターが降り注いだ。その渦中の中を舞うように光刃を閃かせて閃光を弾き返す二人。

 

もはやハン・ソロやレイアに構っている場合ではなくなった。救援の通信を受けて帝国側は地上に降ろしていたAT-STも二人へ差し向ける。

 

ブラスターとライトセーバーが組み合わさった独特の武器を手にする騎士と別れた騎士マレックは、2本目のライトセーバーをフォースで手繰り寄せて向かってくるAT-STへと駆け出した。

 

馬鹿め!生身の人間がウォーカーに勝てるものか!その場にいる誰もが安直にそう思っていた。機械の塊であり、二足歩行のウォーカーには重ブラスター砲の他にもミサイルやロケットランチャー、果てには機雷も搭載されている。いくらライトセーバーを使おうが、所詮は人間でしかない騎士に何ができる。

 

しかし、彼らは侮った。フォースの力とダークサイドの力。それらを併せ持ちながらも帝国の市民を守るためにセーバーを振るう信条を守り続けている彼らの実力を。

 

駆ける騎士マレックは、AT-STが重ブラスター砲を放つと同時に飛び上がると、フォースの力に身を委ねて、ウォーカーを飛び越えるような鮮やかな跳躍を魅せる。

 

頭上を通り過ぎた辺りで、マレックはウォーカーの精密回路が密集している装甲板をライトセーバーの一閃のもと切り開き、着地と同時に切り開かれた装甲へ短く、細く、力が込められた〝フォース・ライトニング〟を打ち込む。

 

途端、制御回路に想像を絶する過電流が流れ込んだAT-STは瞬く間のうちに火に包まれ、コクピットがある特徴的な頭部が跡形もなく吹き飛んだ。

 

その間、わずか数秒の出来事であった。

 

誰もが唖然とする中、奇しくもレイアたちの前に陣取ることになった二人の騎士は、まばらに撃たれるブラスターの光を弾き返しながら物陰からこちらを窺うレイアたちに言葉を発した。

 

「お前たちを助けるわけではない。だが、俺たちは今は身内争いで手一杯だ。だから俺は何も見ていなし、何も知らない」

 

ブラスターを光刃で弾き返し、一体となっている銃口を構えてトルーパーを倒す騎士。彼がそういうと、レイアたちは互いに顔を見合わせてから一気に発着場へと駆け出した。

 

「…感謝します」

 

すれ違い様にレイアから言われた感謝の言葉。彼女たちは帝国市民でもないし、帝国の体制に不満を抱いて反乱を起こす危険分子の内の一人だ。

 

だが、その時は確かに彼にとって彼女たちの在り方は心地よいものとなっていた。

 

雨霰のように降り注ぐブラスターの全てを跳ね返した彼は、閃光が止んだ一瞬の隙にライトセーバーを投擲。ロケットランチャーを構えようとしていたトルーパーの手元に、回転する真っ赤な光刃が直撃した。

 

同時にロケットに引火、爆発。

 

多くのトルーパーたちがなぎ倒されてゆく中、フォースの力に沿って手元に帰ってきたライトセーバーを構えて、漆黒の騎士は全員を見下ろせる場所で声を上げた。

 

「我が名は騎士ブリッジャー!誇り高き、エフライム・ブリッジャーの息子だ!悪族へと落ちた帝国兵ども!騎士の名に誓い、帝国市民の盾となり剣となるため、お前たちの蛮行を止める!!」

 

反対側にはフォース・ライトニングでAT-STを無力化してゆくマレック。そして正面にはブリッジャー。カイロ・レンの側近であり、彼に次ぐ強さを騎士団で誇る二人は、そのまま狼狽るトルーパーたちに向かって駆け出してゆくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ベスピンへ到着したアナキンたちは、フォースの感覚を頼りに気配が感じられないクラウド・シティ内部を進んでいた。

 

クラウド・シティはベスピンの大気中に浮かぶ都市だ。限られた土地の中にある建物は複雑に入り組んでいて、扉も通路も多く、その行先は多分岐している。

 

そんな複雑な都市形成を成しているというのに、アナキンたちが歩む道はまるで一本道のようだった。他の通路は扉とシャッターで閉じられており、進む道はどう動いても一方向しかない。

 

そして、アナキンたちが感じるフォースはその進む先から発せられていた。

 

「父さん」

 

ルークの言わんとしていることをアナキンは理解していた。これは明らかな罠だ。ダゴバでマスター・ヨーダやドゥークーが懸念していた通り、このフォースの感覚は自分や息子であるルークを誘っている。

 

だが、そんなこと百も承知だ。

 

実の娘や妻が危険な目に合っている以上、二人に立ち止まる理由はない。それに、アナキンが感じている感覚、とても懐かしいようなフォースは進むにつれて強くなっていた。

 

ふと、アナキンたちが長い通路に差し迫った時、閉じられていた正面にある扉がゆっくりと開いた。そこには、真っ黒な外套を身につけ、顔を覆い隠すマスクをしている男が立っている。

 

カイロ・レンだ。

 

彼の背後には黒の装甲を身につけるパージトルーパーの他に、ナイトシスターの姿も見られた。ただ、彼らはすでに息絶えていた様子だった。両手と頭部を失っている尋問官の姿は、カイロ・レンが扉を潜ったと同時に自動で降りる扉の向こう側へと消えてゆく。

 

「父さん、先に行って」

 

影が立ち上がったように佇むカイロ・レンを前に、ルークが父の前へと出た。ルークとカイロ・レンの間には因縁めいたフォースが漂っている。アナキンはその決意に満ちた息子の声に従うよう、空いている別の通路へと走っていった。

 

二人は何も言わないまま、ほぼ同時に身につけていたマントを脱ぎ、青と赤のライトセーバーを起動させる。

 

「待っていたぞ、ジェダイ。お前の真意を確かめるために」

 

それはもはや宿命だった。カイロ・レンが今の帝国の敵になろうが、指針は変わらない。帝国市民に危害を加える者が帝国だろうが反乱軍だろうが関係ない。目の前にいるジェダイでも、容赦はしない。

 

ルークも応じるようにライトセーバーを握りしめ、二人は狭い通路の中、じりじりと距離を詰めて前へと出た。

 

 

 

 

 




ロザルとキャッシークへの重圧的な帝国の支配が行われておらず、市民や先住民への配慮がされた管理体制が敷かれる。

オーダーを離れ、ノーバディとなっていたケントー・マレックは引き続きヴェイダー卿に仕えていたが、残存するジェダイ討伐時に命を落とす。

一方、帝国との交渉をする父と共にいたエズラは、フォース感応者として勧誘された。

亡き父の意思を継いで帝国に入ったギャレン・マレック、帝国の体制に不満を抱いていないエズラ、そして父であるパルパティーンから見放されたカイロ・レン。

3人は共にヴェイダーからの試練や訓練を受けたのち、帝国市民を守るために騎士団を結成したのだった。

シナリオを練り直すのを許せるか?

  • 細かい描写も見たい
  • ログの心の移り変わりを見たい
  • とりあえずエンディングまで突っ走れ

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