アナキンの親友になろうとしたら暗黒面に落ちた件 作:紅乃 晴@小説アカ
「あーくそ!!ああも敵が多かったら船を上げてもシールドを展開する前に落とされちまうぞ!」
ハンのファルコンとボバのスレーヴⅠが停泊する発着場へとたどり着いたレイア達であったが、その場はベスピンの抵抗勢力と帝国軍の銃撃戦が繰り広げられている激戦区だった。
抵抗勢力を指揮するランド・カルリジアンにハンが「よくも帝国に俺たちを売ったな」と文句を言うが、今はいがみ合っている場合じゃない。それにハンもランドからファルコンを巻き上げた経歴や、諸々の悪どいことをしていたので正直に言えばどっちもどっちであった。
「帝国はどれだけの戦力をここに持ち込んだというの!?」
「そりゃあ、惑星ひとつ制圧できる分だろ!!軌道上にはスターデストロイヤーが艦隊で待ってるんだからな!」
「ご親切な情報どうも!!」
ボバの大声にハンが開き直った様子で叫んだ。ブラスターの閃光が辺りで火花を散らし、ファルコンの足元に隠れながら銃撃戦に応じるチューバッカも不満げな吠え声を轟かせた。
「あぁ!わかってる!!」
だからそんなに喚くな!とハンがチューバッカを抑えるが、彼が吠えたのはこの状況に対する文句ではなかった。「え?何?後ろを見ろって!?」ハンが振り返ると、そこには新たに投入されたウォーカーが向かってきていた。
だがおかしい、そのウォーカーからパイロットが降りてくるではないか。
「AT-AT?いや、あれは…伏せろ!!」
ボバがヘルメットに備わる望遠レンズでその独特なシルエットを捉えたと同時に、その場にいる全員に伏せるよう指示を出した。ランド達も伏せた瞬間、AT-ATから放たれた巨大な光は眩い閃光と化して飛翔し、クラウド・シティのタワーひとつを容易く粉砕したのだ。
「なんだありゃあ!?」
瓦礫と粉塵が辺りに降り注ぐ。レイアとパドメがグッと出そうになる悲鳴を抑えながら耐える中、ハンがとんでもない破壊力を持つ兵器に目を剥いていた。
「AT-A-SPATだ!!くそ!帝国め!あんな兵器を出して喜ぶか!変態め!!」
「ボバ!!口が悪いですよ!!」
昔から父に似た口調をよくパドメに注意されたが、今はそれどころではない。現れたウォーカーはとびきりにヤバイ兵器だった。
偵察型用のウォーカーに、MS-1連動式重ターボレーザー砲を取り付けていると言う帝国きってのビックリドッキリメカだ。
バランスをとるため元車両と砲の向きが正反対。そのシルエットはボバから見ても一目瞭然だった。
しかも噂に聞けば、その頭部にくっ付けた主砲を発射すると、コクピットが放熱のために摂氏120度に見舞われるというクソッタレな仕様になっているため、操縦手が避難しなければならない。
が、実戦に投入してみると、ぶっ放したらすぐに一目散に逃げることができるので、一撃離脱戦法を取ることが多い自走対戦車砲としてはある意味理に適った構造であることが判明した故に、帝国軍は拠点制圧作戦で数機のAT-A-SPATを運用していたのだ。
「あんなもの食らったらひとたまりもないぞ!?ファルコンのシールドなんて紙切れみたいなもんだ!!」
帝国のデストロイヤーの対空砲を掠めるだけでブザーがなるシールドだ。あんなとんでもない重ターボレーザーなんて食らえば、ファルコンは文字通りスクラップと化すだろう。もちろん、スレーヴⅠのシールドでもあのレーザーに耐えれる代物ではない。
ボバは立ち上がるとブラスターを構えるレイアとパドメの元へと走った。
「レイア、俺がスレーヴⅠに向かってカノンで奴を倒す。そのあとはなるべく敵を引きつけるから、お前たちはあのスクラップで全速力でベスピンを離脱しろ」
宇宙に脱して、ハイパースペースにさえ入れば、なんとでもなる。ボバがそういうとレイアは信じられないものを見るような目でマンダロリアンのヘルメット越しにボバを見つめた。
「そんな、ボバは…!?」
「元は俺が蒔いた種だ。賞金稼ぎとしてのケジメはつけなければならない」
「ダメよ!!一緒に逃げましょう!?貴方だけが残るなんて…!!」
「行くんだ!レイア!!ミセス・アミダラ、彼女を…オイ、ロクデナシ!!彼女を頼むぞ、約束しろ。彼女を守ると」
爆音とレーザーの火花が散る中、ボバはヘルメットを脱いでその端正な顔立ちをハンへと向けて問いかけた。ハンはしばらく、ボバの目を見つめてから、ファルコンのタラップを下ろすスイッチを押し叩いた。
「わかった。約束する」
ダメよ!!そう言うレイアをパドメとチューバッカがファルコンへと運び込んでゆく。ランド達も共に離脱できればいい。全員が頷くとそれぞれが離脱する船へと乗り込んでゆく。
「ボバ、フォースと共にあらんことを」
ファルコンに乗り込む寸前、パドメがボバへそう言葉をかけると、彼はニヒルな笑みを浮かべてから父から譲り受けたマンダロリアンのヘルメットを被って二丁のブラスターを構えた。
「俺は俺の流儀しか信用してないんでな」
背中に備わるジェットパックで空を飛翔し、ボバは押し寄せるトルーパー達を両の手に持つブラスターで一掃して、スレーヴⅠへと滑り込む。独特なコクピットへと入ると、すぐに機首に備わるレーザー砲を起動させて、ターゲットであるAT-A-SPATへ狙いを定めた。
レーザーの重い発射音が響く。スレーヴⅠから発射されたレーザーはパイロットが操縦していないAT-A-SPATを次々と吹き飛ばした。後ろを見ればファルコンやベスピンの船が飛び立ってゆくのが見える。
途端、ボバの体が激しい揺れに襲われた。モニターを見ると、AT-A-SPATの他に通常のAT-ATもこちらに向かってきているのが見えた。
スレーヴⅠのエンジンはまだ暖まっていない。レーザーで応戦するが、数の違いが大きすぎる。
「くっ…ここまでか…!!レイア…ルーク…!!」
数台のAT-ATに囲まれた状態の中、ボバは操縦桿を握りしめながら襲いかかってくるウォーカーたちの攻撃に備えた。
だが、ウォーカーたちのレーザー砲が火を拭くことは無かった。二足歩行のAT-ATのコクピットを、緑色の砲火が穿ったのだ。突然の攻撃にコクピットが丸ごと吹き飛んだウォーカーは、足だけを残してしばらく佇むと、音を立ててその場に崩れ落ちた。
「TIE・ファイター…?敵同士でやり合ってるのか!?」
ボバがスレーヴⅠから降りた先で見た光景は、頭上を編隊を組んだTIE・ファイターが飛び交い、連携してウォーカーや、クラウド・シティの住民へ危害を加えていた帝国軍の兵士たちを吹き飛ばしていたのだ。
戸惑いが隠せないボバの先へ、ガスの雲を裂いて現れた輸送船の小隊が降り立つ。後部のハッチが開いたと同時に、帝国兵と同じ白い装甲服を着た兵士たちが降りてきて隊列を組んだ。
「降りろ降りろ!!降下ポイントを確保するぞ!」
指揮する色付きのボーダーラインや、カラーリングが施されたトルーパーの指示のもと、帝国兵よりも統率された動きをする兵士たちはすぐにベスピンの街中へと進軍してゆく。TIE・ファイターの攻撃によって乱された帝国兵たちを蹴散らしながら進む兵士たち。
その違いは一目でわかった。降り立った部隊が身につける装甲服は、型は古いものだが明らかな〝クローントルーパー〟の装甲服だったからだ。
「ボバ・フェットだな、よくぞここまで耐え忍んだ」
「お前たちは…兄弟なのか?」
「俺はエコーだ。この見た目の通り、体のほとんどはサイボーグだがな、あっちはクロスヘア、テック、レッカーだ」
第二部隊として降り立ったのは、サイバネティクス手術を受けた歴戦のクローン兵士であるエコーだ。彼が指差す方にも、年老いているが貫禄があるトルーパーたちがいる。
彼らが指揮をするのはクローン兵ではなく、騎士団や帝国が管理する地域から志願してきた者たちだった。彼らは精鋭であり、老兵でもあるクローン兵からの訓練を受けており、民間人からの応募で集められた兵士とは思えない統率性と戦闘力を備えていたのだ。
「ブラスト分隊は東側のターミナルを確保だ!行け行け!!」
クローントルーパーの装甲服を着た兵士たちが電撃的にベスピンのクラウド・シティに展開し、帝国軍を打ち破る光景。それはファルコンで離脱したレイアたちも目撃していた。
「これは…」
なぜ、ストームトルーパーと、クローントルーパーが戦闘を起こしているのか。まるでクローン戦争時代にタイムスリップしたような感覚に陥るパドメの横で、ファルコン号へ一つの通信が入った。
《久しぶりですね、アミダラ議員》
「ウルフ・ユラーレン!!」
そこに映し出されていたのウルフ・ユラーレン提督だった。
彼は共和国時代のクローン戦争から戦う古強者であった。戦時中は共和国宇宙軍の提督としてヴェネター級スター・デストロイヤー<レゾリュート>を指揮し、将軍であったアナキンとたびたび行動をともにした。
厳格なユラーレン提督は、無謀で自由奔放な性格のアナキンの行動に悩まされることも多かったが、ジェダイ・ナイトの勇敢さを高く評価していた。
クローン戦争が終わり、新たに銀河帝国が誕生した後、ユラーレンは宇宙軍を退役して帝国の情報管理局の副長官となっていたのだ。
《帝国軍では副長官ではありますがね。今では帝国軍…というべきかもわかりませんが》
「どういうことなのです?」
怪訝な顔をするパドメの顔を見てから、ユラーレンは咳払いをしてから、現在の状況を率直に伝えた。
《反乱です、いや、クーデターというべきでしょう。レン騎士団を中心に、銀河各地で帝国兵や将校たちが武官たちへの反抗作戦を開始したのです》
彼らはやり過ぎました、と彼は続けてパドメに話した。ターキン総督やヴェイダー、レン騎士団が築き上げたモラルを瞬く間のうちに崩した。このままでは帝国の内政は一気に崩れることになる。
「そうなる前に、前体制派閥の貴方たちが立ち上がったということですか?」
《議員、間違っても貴方達反乱軍の企てに加勢する勢力だとは思っていただきたくない。我々は帝国の秩序と正義を守るために立ち上がったのです。打ち崩すのではなく、内部から変えるために》
そう言って帝国軍の軍帽を下げたユラーレンの通信は終わりを告げる。
パドメたちがファルコンのコクピットから空を見上げると、大気圏スレスレを飛んでいる彼の船が、レゾリュートの形がはっきりと見えていた。
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炭素冷凍室から場所を変えたアナキンとダース・ヴェイダーは、大きなガラスがある中央シャフトに繋がる部屋の中でライトセーバーをぶつけ合っていた。
ヴァーパッドの型から繰り出される幾千の攻撃の全てが必殺。アナキンは師匠から学んだソレスの型を駆使して防衛に徹し隙を窺うが、超攻撃型のヴァーパッドに付け入る隙はない。
一閃を避けて身を翻したアナキンだったが、避けたと同時に次の攻撃が飛んでくるのだ。ライトセーバーで受けるが、体勢は大きく崩されて、必然的にアナキンはヴェイダーとの距離を取った。
「アナキン・スカイウォーカー。お前は昔から変わらず臆病なままだ。失うことを恐れ続けている。いつ、その手からこぼれ落ちるかわからないものを守るために躍起になっている」
電子音で構成される声帯が、不気味なまでに低い声を発していた。そこにかつての友の面影はない。まるで機械が決められた文字の羅列を読み上げているようにも思えた。
呼吸音だけが静寂の中に響き、アナキンはプラズマの刃を構えたままジリジリとヴェイダーの動きを見極める。
「目を覚ませ、アナキン・スカイウォーカー。お前の生きる道は私と同じだ。選ばれし者としての責務を果たす義務があるはずだ。お前は選ばれたのだ、フォースの意思に」
同時に繰り出される連撃。数秒の中に凝縮された光刃の一閃を潜り抜け、躱し、打ち払い、切り抜ける。
身体中が悲鳴を上げているようだった。
相手の動きは無駄な部分を削ぎ落とされており、相手の手足や首を切り裂くことに特化している。そんな相手の一撃を紙一重で躱していく作業をアナキンはとてつもない集中力の中で実行していたのだ。
「フォースは、自然にあふれるエネルギーそのものだ。運命や宿命を指し示すのは、僕ら人間の主観で決め付けている側面に過ぎない…!!フォースはもっと自然で、どこにでも溢れているんだ…!!それを運命の意思だとして、受け皿になる在り方は間違っている!!」
幾つかの剣を受け止めた中で発生した鍔迫り合い。ライトセーバーのスパークに顔を照らされながら、アナキンは必死にヴェイダーへと言葉を放ったが、暗黒卿は聞く耳など持たずに更なる闘争の火を燃やした。
「そうしなければ、この銀河は滅ぶぞ。選ぶ余地など存在しないのだ、アナキン・スカイウォーカー」
選んでいてはキリがない。ヴェイダーの言わんとしてることはアナキンと十分に理解した。ダゴバでの修行は肉体面よりも、感じ方や思考のパターンを身につける修行となったのだ。
「バランスを保つために、私たちはこの世に降り立ったのだ。ライトサイドと、ダークサイドのバランスを保つために…!!」
「違う!!そんなものに、人の命は左右されない!!人にはそれを切り開く力がある!!フォースには存在しない力だ!!」
ライトセーバーがぶつかり合うスパーク。鍔迫り合うアナキンの言葉に、ヴェイダーはその剣で振り払うようにソレスの型から繰り出される攻撃をいなす。
「ならば、お前はなぜジェダイとして戻った。なぜライトセーバーを握った。お前もまた、そのフォースに導かれた故にだろう。アナキン・スカイウォーカー」
なぜ、ライトセーバーを再び握ることにしたのか。
なぜ、閉ざしていたフォースの感覚を、絆を再び取り戻したのか。
なぜ、彼はこの場に来たのか。
ジェダイという枠組みの中で英雄となったアナキンに、ヴェイダーは問いかける。何のために戦うのか。ジェダイとして戦場へとアナキンは戻ってきたのか。
「僕は…僕は…」
引き絞るようなアナキンの声であったが、彼は大きく息を吸い込んでライトセーバーを構える。その姿はデス・スターで剣舞を交わし合ったジェダイマスター、オビ=ワンと同じだ。
(君が感じる使命は、本当に必要なものか?)
脳裏を過ぎるフォースと言葉にヴェイダーが顔をしかめると、その前に立ったアナキンは真っ直ぐとヴェイダーを見た。
「僕はジェダイではない!!」
はっきりと口にして、声にしてアナキンは自身の意思を明確に言葉とした。ジェダイは、あの日、ムスタファーの戦いの後にやめた。今の自分に、そんな高尚な名はない。フォースを感じとり、そしてライトセーバーを振るう……ただの……。
「僕は、お前を止めるためにやってきた、〝ただのアナキン・スカイウォーカー〟だ!!!!」
青と赤の光刃をぶつけ合いながらアナキンが叫んだ。あの時とは違う、と。そしてヴェイダーとの距離を開けた瞬間だった。
「よく言ったぞ、アナキン・スカイウォーカー」
天井を円状に切り裂いて飛び降りてきたのは、赤と黒の体色に覆われた一人の戦士だった。
着地した姿勢から立ち上がった彼は、身につけてきたフードを下ろす。その下から出てきたのは、体の模様が織りなす独特な風体と、頭から生える角だった。
モール。
この世界で死ぬ運命から脱した彼は、最初のノーバディ(誰でもあり、誰でもない)となり、銀河中を駆け抜けてきた。ログが予言した共和国の終わりに備えて。
「帝国の軍勢がこちらに向かっている。お前の娘や妻は我々の同志が保護した。目的は達したぞ、スカイウォーカー。ここは俺に任せてくれ。あの人のことも」
レン騎士団と協力してベスピンの市民の救助に現れたノーバディたちは、トルーパーたち共に進撃し、囚われの市民たちを解放しているだろう。同じく、アナキンの家族たちもだ。
「モール…」
「後のことを頼むぞ、アナキン」
振り返らずに言うモールに、アナキンは何も言わずにその場を後にした。本当は残って、ログの在り方をどうにかしたかったが、モールのフォースを感じ取ったアナキンは、そのすべてを諦めたのだ。
それほどまでに、この老齢となったモールの体から溢れるフォースは力強い何かを宿していたのだ。
「モールか…久しいな」
何一つとして口調も声色も変えることなく、ましてや懐かしさなど微塵もないヴェイダーは、現れたモールへライトセーバーを構えながらそう言った。
「お前は俺を見つけてくれた。真っ暗な暗闇と怒りしかなかった世界から連れ出してくれたんだ」
シス…ダース・シディアスに拉致される形で地獄に叩き落とされ、怒りと憎しみでしか動かなかった自分を見つけた男は、紛れもなく目の前にいる姿に変わり果てていた。そのフォースから一切、自分を見つけてくれた恩人の気配を感じとることはできなかった。
「お前から受け取った使命は果たした。だから、今度は俺が見つける番だ」
静かにモールは言うと、腰に備わるライトセーバーを引き抜き、ゆっくりとヴェイダーに見せつけるように構え、両刃の黄色い光刃を出現させた。
「それもまた、フォースの導きならば」
躊躇いなく、敵対行動をとったモールを〝処理〟するために動き出したヴェイダーに、年老いたモールはライトセーバーを回転させながら受けて立った。
赤と黄色の光刃の向こう側。骸のマスクをかぶった姿を見つめながら、それでもとモールはヴェイダーに言葉を投げた。
「たとえ道半ばで倒れようとも、ログ…お前自身の夜明けに繋がるなら、本望だ」
すべては…。
フォースの夜明けのために。
シナリオを練り直すのを許せるか?
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細かい描写も見たい
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ログの心の移り変わりを見たい
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とりあえずエンディングまで突っ走れ