アナキンの親友になろうとしたら暗黒面に落ちた件 作:紅乃 晴@小説アカ
インペリアル級スター・デストロイヤー<キメラ>のブリッジへと戻ったスローン大提督は、逃げ去ったクーデター勢力の後を見つめながら思考に耽っていた。
「本格的なクーデターか。どうするつもりだ?スローン大提督殿?」
その背後にいるのは、ジオノーシスでカルやトリラたちをあしらって帰還したタロン・マリコスがいた。銀河の星々を見つめるスローンに、マリコスは臆面なくそう言った。
スローンは視線を外に向けたまま、マリコスの問いかけに答える。
「予定に変更はない。向こうが蜂起してくるなら都合がいいではないか。この際に、帝国の力の強さを示し、弱く腐ったところを切り落とせばいい」
「だが、あっちにはレン騎士団やノーバディ共がついている。いいのかね?」
マリコスの言葉にスローンはさして興味を抱かなかった。
反乱分子のクイーンとプリンセスを取り逃がしたのは痛手ではあったが、クーデターを引き起こしたユラーレン率いる勢力は、総勢合わせても武官派の戦力の四割にも届かないほどだ。帝国領内には多くの武官がいる。時間さえあれば鎮圧するなど容易であろう。
「構わんよ。理想と利潤の区別すらつかぬ騎士たちなど利用価値も少ない。故に、君たちのような力を誇示する存在がいるのだろう?タロン・マリコス」
スローンの手元には、シスの力を使役できる「シス・ストーカー」が残っている。タロン・マリコスを含め、その多くは歴戦の強者。恐るものなどない。
スローンは手元にある保存媒体を手で遊ばせながらほくそ笑む。
「ならば、臆することはあるまい。我々には新たなる叡智もある故にな」
起動した記憶媒体には、第二となる最強最悪の破壊兵器のデータが浮かび上がっていたのだった。
▼
「第二のデス・スター…ですか」
ヴェネター級スター・デストロイヤー<レゾリュート>。そのブリッジに招かれたパドメは、ユラーレンの言葉に耳を疑う。
信じがたい話ではあるが、あの星一つを容易く破壊できる兵器が、皇帝から武官派へ建造指示が発せられていたことをユラーレン提督一派は突き止めたのだ。
「まだ我らも断片的な情報しか入手できておりません、議員。だが、武官派閥がデス・スター規模の兵器を手に入れればやることは決まっています」
「力と暴力による銀河の支配ですか」
そのパドメの言葉にユラーレンは頷く。あれほどの強大な力を手に入れれば、武官派の帝国勢力が各星系を制圧にかかるのも時間の問題と言えよう。それに、帝国のお膝元でもあるコルサントでも不審な動きが見受けられた。
「プリンス・シゾール…その背後にあるブラック・サンも動き出しています。我らはまず彼らを抑え、来るべき日に備えます」
貴方たちを保護したのは、あくまで服務規定に則ったまでです、とユラーレンは口上を述べる。ファルコンに乗ってきたレイアやルークも、ベスピン制圧時に逃れてきた避難民扱いだ。長年付き合いのあったアナキンの親族と聞いた時は耳を疑ったが、彼は私情を業務に差し込むほどの愚者ではない。
そう取り繕うようにいうユラーレンに、パドメは優しげな笑みを浮かべる。
「ユラーレン提督、感謝します。願わくば、貴方たちと共に歩みたかった」
「ならば、帝国に下るべきですな」
パドメの政治的な手腕を駆使した交渉であったが、その開幕をユラーレンは軍人らしい言葉で切って捨てた。
「提督、わかっているはずです。私たちが立ち上がり、なすべきことは何かということを」
「我々は腐っても帝国軍人ですよ、議員。反乱分子になる気はさらさらない」
そもそも、ベクトルが違うのですとユラーレンは言葉を続けた。反乱軍は帝国を倒して共和制への回帰を望んでいるはずだ。先行きの見えない政治政策に乗るほど、自分たちは落ちぶれていない。
そして、帝国政府を打ち倒すつもりでもないのだ。これはクーデターだ。武官派の強行的な政策に異を唱えて自分たちは立ち上がっている。
そして、その点をパドメはよく理解していた。
「ならば、中身を変えるということに関して興味はありません?」
そう言って彼女は以前から試行していたある方針をユラーレンに見せた。
途端、彼の顔色が変わる。
パドメはこういった場面を幾度と乗り越えてきた傑物だ。彼女の打ち出した施策については、すでに多くの賛同を得ている。名簿の中には、反乱軍の名だたる高官の名も刻まれていた。
「……詳しく聞きましょう、議員」
ある種の確信を得たパドメは、目つきを変えたユラーレンとの〝過激ではない〟交渉を始めてゆくのだった。
▼
コルサント。
インペリアル・センター内部。
「目が覚めたか、わが息子よ」
朧げな意識が回復した時に飛び込んできた声に、カイロ・レンは目を見開いた。マスクはない。素顔のまま、彼は手足を固定されて吊るされていることに気がつく。
目の前には真っ黒なローブに覆われた老人が立っていた。その黄金に光る目を、カイロ・レンはよく知っていた。
「シーヴ・パルパティーン…いや、シディアス卿と呼ぶべきですか?」
自身の〝父親〟であるはずの男。現帝国の皇帝であり、宇宙の覇権を握ったシスの暗黒卿だ。目つきを変えずにいるカイロ・レンに、シディアスは笑みを浮かべて彼の武勇を称えた。
「そなたは、余の想像を超える成長を見せた。素晴らしいぞ。余の目に適うものはおらぬと思ってはいたが…そなたをヴェイダー卿に託して正解であったな」
「何が目的ですか。俺はもう、あなたの息子という居場所に興味はありません」
ダークサイドの誘いを、カイロ・レンは真っ向から跳ね除けた。そんなものに縋るほど愚かではない。あくまで手段、戦うための術と自分の中で答えを出している以上、シディアスがいかなる揺らぎをかけてもカイロ・レンは折れることはない。
「その目、そなたの師とよく似ておる。よく鍛えてあるな。よいぞ、そなたの魂はまさに最適なものとなった」
だが、それは〝彼個人の意識〟である。
その生まれの起源の全てをシディアスは把握していた。
生まれ落ちた後のことには興味はなかったが、その手前まで目を光らせていたからこそ、シディアスは手に入れた〝息子〟の完成度に喜びを覚えた。
「故に、ワシからそなたに贈り物を贈ろう」
黄金の目がカイロ・レンの双眼を見据える。シディアスは掌でカイロ・レンの頬を緩やかに撫でると、言葉を続けた。
「オーダー・エグゼキューズを実行せよ、わが僕となれ」
途端、カイロ・レンの様子が一変した。まるで争うようにグッと顔をしかめ、苦しむ様子を窺わせる。汗をかいて、身体中が拒絶反応を起こしていたが、それに争うことはできない。
彼は、デザインベイビー。
言うなれば、クローンたちと同じ出自だ。
ならば、彼らと同じように〝制御下に置くこともできる〟。
シディアスが発した言葉は、カイロ・レンへ生まれる前から刻まれていた呪詛であった。
拘束が解かれ、地面に落ちるカイロ・レンは、そのままシディアスの足元で首を垂れた。
「わかりました…マスター・シディアス…」
完成された〝しもべ〟となったカイロ・レンの様子を見たシディアスは、薄暗いホールの中で笑い声を響かせる。
もう直ぐだ。
もう時は来た。
全てが最終段階へと入る。
あとは……私が取り戻すだけだ。
失った、彼のすべてを。
シナリオを練り直すのを許せるか?
-
細かい描写も見たい
-
ログの心の移り変わりを見たい
-
とりあえずエンディングまで突っ走れ