アナキンの親友になろうとしたら暗黒面に落ちた件 作:紅乃 晴@小説アカ
———数週間前。
アウター・リム・テリトリーのどこか。
MC80スター・クルーザー。
一般的にモン・カラマリ・スター・クルーザーと呼ばれる反乱軍の主力艦である。
帝国宇宙軍が使用したくさび型のインペリアル級スター・デストロイヤーと対称的な外見を形成するモン・カラマリ・クルーザーは卵形の突起に覆われた流線型の船体をしていた。
外見に似合わず、モン・カラマリ・クルーザーはターボレーザー砲やイオン砲、トラクター・ビーム発生装置、シールド発生装置といった高度な武装を施されている。
他にも医療船やフリゲート艦艇が飛び交うXウイングの中を航行しており、その艦隊の旗艦ともなっている<ホーム・ワン>はギアル・アクバー提督の指揮下の船であった。
「皇帝は致命的ミスを犯しました。攻撃のときです」
ホーム・ワンのブリーフィングルームに集まった反乱軍のパイロットや戦士たちの前で、元老院議員であり、パドメや死亡したオーガナ議員とも盟友であるモン・モスマ最高指導者が口火を切ってそう言い放った。
中央にある投射装置が駆動すると、緑の月エンドアの周回軌道上に浮かぶ第二のデス・スターの立体映像が全員の前で映し出された。
「ボサンのスパイの情報、そして反武官派の帝国軍の協力のもと、建造されている新しいバトル・ステーションの正確な座標が掴めました。このデス・スターの攻撃システムはまだ未完成であることも分かっています」
ジオノーシスで建造された鋼材が運び出されたことから察知された第二のデス・スター。それはまだ完成まで程遠く、中枢部の建設と一部の外殻が組み立てられている最中だ。
加えて、帝国艦隊は反乱軍に加えて各惑星で反旗を翻したクーデター派の帝国勢力を相手にすることで手一杯であった。その戦力の多くを銀河全域に散らばっており、防御も比較的手薄となっている。
「しかし何より重要な点は、皇帝自身が建設の最終段階視察のため、デス・スターを訪れているということです。……この情報を手にするまでに、反乱軍も、そしてクーデター派の帝国軍人も、多くの者が犠牲となりました」
そう悲しげに噛み締めるように言ったモン・モスマはその場を指揮官であるアクバー提督に譲り離れる。
魚人を思わせる独特な外見をしているモン・カラマリ種族であるアクバー提督は、浮かび上がるデス・スターのモニターを見つめた。
「見ての通りデス・スターは森の月エンドアの周回軌道に浮かんでおる。デス・スターの攻撃システムは未完成であるが、その防備メカニズムは極めて強力である。…すなわち、森の月エンドアから放射されるエネルギー・シールドに守られているのだ」
浮かび上がるモニターには、森のエンドアから放たれるエネルギー・シールドで覆われたデス・スターの姿があった。
ヤヴィンの戦いで討ち取ったデス・スターは、強力な攻撃性能を持っていたが、今回は圧倒的な防御力をどう崩すかが課題となってくる。
「まずは森の月エンドアへ降りて、エネルギー・シールド発生装置を破壊。シールドが消えたと同時に艦隊がデス・スターへ攻撃を仕掛け、突入部隊が建造中のデス・スターへと突入。中央のメインリアクターを破壊し、デス・スターを完全に破壊する」
「第二デス・スターは、武官派閥や今の帝国にとっての強力な圧制装置になります。ここで討たなければ、デス・スターは完成し、惑星を破壊できる恐怖で銀河系は帝国に支配されることになるでしょう」
アクバーに続くように声を上げたのはパドメだった。集まった最高指導者の一人となったパドメは、ここから先に続く世界を築くにしろ、まずは第二のデス・スターを破壊しなければならないと訴えた。
惑星を跡形もなく吹き飛ばす力を秘める兵器を武官派が手中に収めれば、彼らはさらなる暴力と恐怖で銀河系を征服することを目論むはずだ。
「デス・スター突入部隊には、カルリジアン将軍が志願している。エンドアへは、鹵獲した帝国軍のシャトルを使い潜入する。貨物船を装い、部隊をエンドアへと送り込み、山間部にあるエネルギー発生装置を破壊するのだ」
あまりにも無謀な作戦だ、とその場にいる誰もが思った。エンドア周回上はデス・スター建造のため帝国軍艦隊が張り詰めており、その防衛網も完璧だ。
加えて、エンドアに降りるためにはエネルギーシールドを解除させる必要がある。ここで貨物船が偽物だと察知されれば、デス・スターの破壊作戦が失敗することになる他、集結した反乱軍の勢力も危険にさらされることになるだろう。
「で?そんな危険な任務には誰が赴くのですか?」
そう言ったのは、ハン・ソロの隣に座っているレイアだ。これほどの危険な任務、かなりの実力者でなければ危険すぎる。すると、説明をしていた反乱軍の高官が、レイアの隣に座るハンを見つめた。
「ソロ将軍、部隊のメンバーは集まってるかな?」
驚いた顔をしてこちらをみるレイアを置いておき、ハンは少し困ったような口ぶりで答える。
「あー、部隊は揃ってるんだが…貨物船のパイロットが足りていなくてな」
「なら、俺が着こう」
ハンの言葉に真っ先に反応したのは、マンダロリアンのヘルメットを脱いで話を聞いていたボバ・フェットだった。ハンがボバを見上げるが、彼は当然と言わんばかりの表情をしている。
続くようにチューバッカが共に行くことをハンに告げた。
「きついぜ?二人とも。やめておいた方が…」
「お前のようなロクデナシ一人に任せておく方が危険だろ。だろ?チューバッカ」
ハンの言葉に喧嘩を売るような口調であるが、ボバの言い草はいつものことで、ブラック・サンとの戦いでも、彼はハンやルークとは抜群のコンビネーションを見せていた。ボバの言葉にチューバッカも同意するように唸り声を上げる。
「現在2名」
面白いと言わんばかりにほくそ笑むハン。その隣にいるレイアも共に行くと告げた。他の指導者たちが少し言いたげな顔をしたが、パドメが了解と告げる。
自分の娘だ。
止めても黙ってついて行くだろう。自分もアナキンが行くならそう言っていただろう。
「スカイウォーカー将軍は?」
「彼らは交渉に赴いています。アクバー提督。ジェダイの騎士は平和と秩序の使者です。彼らもまた、我々の戦いに力を貸してくれるでしょう」
そう言ってパドメは湧き立つ反乱軍の戦士たちを見つめる。アナキンとルーク。あの二人がこの作戦の要になるのは必定だ。
故に二人も、それに備えた交渉をするために銀河を飛び回っているのだから。
▼
アウター・リム・テリトリー。
惑星ロザル。
カイバークリスタルが採掘できる惑星であり、帝国政府が樹立した初期の頃から帝国との通商を行う惑星。
かのレン騎士団に所属するサー・ブリッジャーの生まれ故郷であるこの惑星には、古くから存在するジェダイ寺院も存在していた。
「君と話せてよかったよ。アソーカ」
「私もよ、マスター」
ベスピンでの決起。レン騎士団を主としたクーデター派閥の多くは銀河各地へと点在しており、このロザルもクーデター派の拠点となっていた。
友好的な国交から一転し、帝国アカデミーかTIE・ファイターの生産工場のスタッフとして働くかの二択を武官派の帝国軍に迫られたのと、ロザルを制圧しようとした帝国軍を撃退したノーバディたちの活躍によって、ロザルにある帝国施設のほとんどを無傷に回収することができたクーデター派は堅牢な防衛基盤を作り上げ、武官派の侵入を許すことのない惑星へと成長させたのだ。
アナキンとルークがロザルに訪れたのは、第二のデス・スター破壊作戦の際に、反乱軍側に協力してくれるようにノーバディを説得するための交渉が理由であった。
だが、彼らもクーデター派と共に武官派によって虐げられている市民を救うために奔走している身だ。
銀河周辺に散乱している帝国軍の勢力の注意を逸すことはできるだろうが、破壊作戦に手を回せるかと聞かれれば、答えは難しいものであった。
「わかっている。こちらも無理に協力してくれとは言わない。だが、時が来ればそうなる」
今のノーバディをモールに代わって率いているアソーカ・タノに、アナキンは共に発着所へ向かいながら言葉を交わした。
「ダークサイドの影響が大きくなっているのは確かね。例の尋問官…シス・ストーカーが各地からエンドアに集められている話も聞くわ」
「今回の作戦で、僕らは大きな一手を打つ。危険な戦いになるだろう。けれど、為さなければならないことだ」
その言い草は、クローン戦争時代を思い出させるものだった。アナキンはそう言って危険な敵地へと乗り込んでゆくジェダイであった。誰よりも勇ましく、誰よりも強く向かうマスターの背中を見て、アソーカは悲しげに目を細める。
「皇帝を…パルパティーン議長を倒すの?」
彼にとって。アナキンにとって皇帝は…パルパティーン議長は特別な存在であった。帝国の皇帝だからと言って切り捨ててるほど割り切れる相手でもない。そのアソーカの思考に気がついたのか、アナキンも足を止めてアソーカを見つめる。
「わからない。けど、向き合わなければならないことは確かだ。かつて、ログがそうしたように」
皇帝を倒すのが目的ではない。そもそも、そればかり考えてジェダイも反乱軍も、誰もが皇帝の考えを理解しようと動かなかった。
あの時は、何もかもが既に手遅れだった。
ナブーの戦いで始まり、クローン戦争の火蓋が切って落とされた段階で、もう手のつけられないところまで来てしまっていたのだ。
誰もが時代の流れと、暗黒面に押し流されている中、ログだけは流れに疑問を持ち続け、皇帝であったパルパティーン議長の在り方を見つめ続けたのだ。フォースの囁きに向き合って。
フォースの呼びかけに耳を澄ます。そしてそれを正しい道か、悪しき道かを考え戦う。それが彼の示した道であり、これから先を示す重要なものにもなる。
アナキンも、その在り方を信じようと決めたのだ。
「変わったわね、アナキン。前まではフォースの導きに従っていた。けど、今は自分で道を決めて戦ってる」
アソーカの言葉に、アナキンはグッと目を閉じる。瞑目するような顔つきにアソーカが首を傾げるが、アナキンにとってはそれが心に抱えた暗黒面の……後悔の一部だった。
「僕は…僕は止めなきゃならない。ログを…ああしてしまったのは僕たちジェダイの責任だ。彼がジェダイに終止符を打つまでにあんな姿になってしまったというなら、僕は彼に取り付いたフォースと決着をつける」
誰よりも自分の隣に立ち、誰よりも背中を押してくれた親友。彼がああなってしまうまで気が付けなかった自分が、本当に親友だと言えるのだろうか。パドメとの愛を育む代償として、自分はログをフォースの器にしてしまったではないか。
考えれば考えるほど、後ろに引きずられるような感覚に襲われる。後悔と悲しみが心に重くのしかかる。
「…アナキン。その道が、ヴェイダーを倒すことになっても?」
アソーカの声に、アナキンは目を開いて前を見据えた。後悔は重く、悲しみも迷いもある。けれど、それでも前に進まなければならない。ずっと迷いの連続だった。分岐と選択の連続だった。そして選び抜いた道にアナキンは立っている。
失いたくないものを守るために。
確固たる決意を胸に。
「それが、彼を救う道だと言うならね」
そう答えたアナキンたちの先に、一隻の輸送船が停泊していた。それはハン・ソロが乗るミレニアム・ファルコンを製造したコレリアン製の輸送機、YT-2400BT貨物船…通称「アウトライダー」であった。
「父さん。準備ができたよ」
船の持ち主であり、密輸を専門にする男「ダッシュ・レンダー」と共に発進準備を進めるルークに、アナキンは手を振ると隣にいるアソーカに別れの言葉を告げた。
「アナキン。…どうか死なないで」
「フォースの夜明けを祈るよ、アソーカ」
古き友であり、弟子であった彼女に別れを告げたアナキンは、タラップへと足をかけるとアウトライダーはロザルを飛び立って行くのだった。
帝国の影編は、とりあえず本編を書き終えてからゆっくり描いていきます。
シナリオを練り直すのを許せるか?
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細かい描写も見たい
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ログの心の移り変わりを見たい
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とりあえずエンディングまで突っ走れ