アナキンの親友になろうとしたら暗黒面に落ちた件   作:紅乃 晴@小説アカ

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誉あるならず者達

 

 

 

「おいおい、正気かい?二人揃って」

 

惑星ロザルでの、ノーバディたちとの交渉を終えたルークたちを乗せたアウトライダーの中で、操縦をLE-BO2D9ドロイド、通称リーボに任せた密輸業者であるダッシュ・レンダーは、客室で唐突に話を持ってきたスカイウォーカー親子の言葉に頭を抱えた。

 

密輸業者ダッシュ・レンダー。

 

彼はハン・ソロと同じく、銀河の端から端までを改良型YT-2400貨物艇<アウトライダー>で銀河系を駆け巡っていた。

 

ホスの戦い以前のダッシュは、あくまで中立の立場を守ろうと努めたが、やがて苦戦を強いられている同盟軍のために食糧輸送の任務を引き受けるようになっていた。

 

彼らの秘密基地での任務を任されたダッシュはホスへの配達を行っていたとき、帝国軍による攻撃が開始され、ダッシュは反乱軍と帝国の戦いになし崩し的に巻き込まれてゆくことになる。

 

時には勇敢にも無人のスノースピーダーに乗り込み、帝国軍のAT-ATウォーカーに対する遅延作戦に参加し、時にはルークやアナキンを狙う暗殺ドロイドIG-88を追ってオード・マンテルへと駆け抜けた。

 

そして、ダッシュとスカイウォーカー親子は、共にボサンのスパイを支援し、帝国軍の貨物船<スプローサ>から第二のデス・スター計画の情報を入手することに成功したのだった。

 

その後もダッシュはルークたちを手助けし、コルサントにあるプリンス・シゾールの宮殿に潜入した。

 

後に「スカイフックの戦い」と呼ばれる帝国首都の上空で激しい宇宙戦から生還した後、ダッシュは反乱軍の一員としての人生に別れを告げ、密輸業者へと戻っていたのだ。

 

「ああ、だからアウトライダーの脱出艇を貰いたい。君たちは艦隊前で僕たちを射出してから、全速力でハイパードライブへ入ってアウター・リムの端まで逃げてくれればいい」

 

反乱軍内部でも伝説的な活躍を見せたダッシュに対して、アナキンはどっかりと船内の椅子に座ったまま立ち尽くすダッシュへと告げる。

 

「報酬は前払いで3万クレジットだ」と付け加えるが、ダッシュにとってみたらそれどころの話ではなかった。

 

「だから待てって!金の問題じゃねぇよ!」

 

飲料水が入るボトルが乗っているテーブルを乱暴に叩いたダッシュは、心の起伏すら見せないアナキンとルークにひどく苛立った。

 

ダッシュ自身がそこまで気がかりになっていることは、アナキンたちのことだった。

 

デス・スターは建造の真っ最中で、外には艦隊がウヨウヨいる。しかも皇帝まで視察に来てる。バンサの毛一本でも抜けれる包囲網じゃない。そんな渦中に脱出艇で突入するなど、自殺行為どころか、死にに行くようなものだ。

 

「聞いてくれ、ダッシュ。僕らが皇帝やヴェイダーのもとに行くことは宿命なんだ」

 

「そんな宿命なんてクソ食らえだ。ジェダイだのシスだの意味わからん存在より、俺にとってお前たち二人は友だ。友がみすみす死にに行く様を、黙って見てろというのか?!」

 

《僭越ながら申し上げさせて頂きますが、貴方達二人がデス・スターに単身で乗り込み、生還する可能性は…0.0000001%にも届きません。つまり…死にに行くようなものです》

 

コクピットでアウトライダーの操縦を担う忠実なドロイドの相棒リーボは、短気だが信頼性は高かった。ダッシュの副操縦士および補佐の役割を担っている。

 

当初、リーボは訪れた宇宙船の安全標準を検査するために使用されていたが、検査の間、ある貨物船がリーボを載せたまま、エッセレスを離陸してしまったのだ。

 

他にすることがなかったリーボは、この船の機械工として働き始め、幾度と無く主人を変え、彼を所有した密輸業者たちはそのたびに新しい能力を追加していった。

 

そして、リーボは最終的にダッシュ・レンダーの手に渡った。

 

その前にはアウター・リムを旅するコメディアンの所有物となっていたこともあり、ユーモアのセンスも習得していたのだった。ダッシュはリーボに高度な修理技術と操縦技術を与え、長距離シグナル・チャンネルを備えたコムリンクを内蔵させていた。

 

そんなリーボが冗談を言わずにそう台詞を導き出した以上、アナキンたちが平然と言った事の内容がどれほど気が狂っているものか、言わずとも理解できるほどであった。

 

興奮気味のダッシュに、アナキンは極めて冷静でリラックスするような口調で彼に言葉を放つ。

 

「ダッシュ。頼む、僕は行かなきゃならないんだ。ヴェイダーが、僕を呼んでいる。彼は…僕の親友だった男だ。止めなくてはならない。ああいう風にしてしまった責任が、僕にはあるんだ」

 

「僕もだよ、ダッシュ。スカイフックの戦いで、カイロ・レンと会った。彼は生きていた…けれど別人のように変わっていた。レン騎士団の仲間の声すら届かないほどに。僕が言って話せば彼を取り戻せる。彼には、騎士としての信念が残っているはずだ」

 

アナキンとルークが言うヴェイダーと、カイロ・レンの話くらいダッシュも十分に知っていた。なにせスカイフックの戦いで現れた帝国勢力を指揮していたのがダース・ヴェイダーであり、その勢力の戦闘機パイロットとして前線にいたのがカイロ・レンだからだ。

 

彼らの強さは並大抵のものではない。何の素養もない相手が挑んだ瞬間に、そのカリスマ性と力強さで瞬く間の内に消え去ってしまうことになるだろう。

 

無謀な戦いだ。そんなものに命をかける意味がどこにある。そう心の中で吐き捨てるダッシュに対して、アナキンもルークも決して折れない意志を持った眼で訴えかけてくる。情に弱いダッシュだ。何の関わりもないはずだったのに、何度反乱軍やルークたちのために命を張ったことか。

 

その眼にダッシュは弱かった。

 

「わかった!わかったよ!そんな目で俺を見るな…あー…ったく。リーボ、エンドアまでの最短航路を計算してくれ。だがトラクタービームに捕まる距離はダメだ。ギリギリまで近づいて…この二人を下ろす」

 

そう言ったキャプテンに、リーボは半ば呆れながらも了解と返して座標のセットを始める。感謝しようとする二人に、ダッシュは待ったをかけて加えるように条件を放った。

 

「約束しろ。二人揃って生きて帰ってこい。これが果たされなかった場合、反乱軍に毛が生えないくらいに賠償金を請求してやるからな」

 

「….ありがとう、ダッシュ」

 

「それから、まずは前払いで3万。それがなきゃ話はなしだ。忘れるなよ?」

 

それだけ言い残してから、自身もコクピットへと入ってゆく。ダッシュの後ろ姿を見つめてから、アナキンは困ったような笑みを浮かべて呟いた、

 

「そう言うと思ったよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

森の月、エンドア。

帝国軍トランスポート基地付近。

 

「エネルギー発生装置までかなり距離があるわ。警備も厳重よ」

 

道中、イウォーク種族の熱烈な歓迎と関係改善というイベントがあったハン率いる破壊工作部隊は、帝国軍の基地や施設が一望できる高台まで迫っていた。

 

双眼鏡を覗くレイアの言葉通り、エンドアからデス・スターへ放射されるエネルギー発生器までの道のりは決して楽なものではない。

 

「なぁに、心配ないさ。俺とチューイでもっとやばい場所に飛び込んだことがある」

 

「その時はどうしたんだ?」

 

自信気に言うハンの言葉に、森林に溶け込みやすい色彩のマンダロリアン・アーマーを身に纏うボバが鋭い質問をすると、何度か言葉を濁してからハンは答えた。

 

「あー…まぁ、成り行き任せってところだ。うまくは行ったぞ?」

 

「当てにならない経験則をどうも。まったく…」

 

「おい?着いてくると言ったのはお前だぞ?賞金稼ぎ」

 

「俺はお前がレイアを危険な目に遭わせないために同行しているだけだ、ロクデナシめ」

 

「下らないことで口論するのはやめなさい、二人とも」

 

いつもの流れで口論を始めたハンとボバのやり取りをうんざりした様子で諫めたレイアは、後方で周辺偵察をする指揮下の部隊長へ声をかけた。

 

「アンドー将軍、どう攻略するか案はありますか?」

 

ローグ・ワン〝ならず者たち〟を率いるキャシアン・アンドーは、側でトランスポート基地を双眼鏡で確認しているボーディーの肩を叩いた。

 

「ボーディー、警備はどんな感じだ?」

 

「AT-STとAT-AT、うわぁAT-A-SPATまでいるぞ…人員も配置も完璧。はっきり言ってかなり厳重だ」

 

発着場や停泊地がある以上、ウォーカーもごまんと居るのは明白だった。しかも帝国きってのビックリドッキリ変態兵器まで完備されている。相手はここの防衛にかなり本気のようだ。

 

「まぁ、もっと分の悪い戦いはあったさ」

 

「楽じゃ無さそうだな。ちょっときついだろうが、なんとかなる。行けるよ」

 

《スカリフの敵中突破よりはマシに思えますね》

 

そういうのは、ローグ・ワンの部隊に所属する戦士たちだった。スカリフの戦いで一度破壊されたK-2SOは、キャシアンが持っていたバックアップのおかげで復活を果たしており、その漆黒の体を他の兵士たちと同じように屈めさせながら、キャシアンたちの言葉に合わせるよう軽口を叩く。

 

とにもかくにも、まずはあのトランスポート基地をどうにかしなければ先に進んでもジリ貧になるだけだ。「よし」とキャシアンが言葉を紡ぐ。

 

「装備を整えろ。持てるものは何でも持っていけ。攻撃時間まで時間はない。すぐに打って出る」

 

そう言った瞬間、その場にいる全員が準備を始めた。ライフルを肩にかけ、サーマルデトネイター(手榴炸裂弾)を持ち、イオン魚雷をかき集める。キャシアンは奥にいたリーダーたちを呼び集めた。

 

「メルシ、パオ、ベイズ、チアルート。君たちに部隊をそれぞれ預ける。それを率いてトランスポート基地周辺に展開。エネルギー発生器から距離をとって、こことあそこ。適切な位置にたどり着いたら…派手にぶっ放なそう。なるべく分散して、敵の戦力を引き裂く。十人を百人、百人を千人に見せるんだ」

 

少ない人数を多く見せて敵を撹乱する。ローグ・ワンの得意な戦術だ。装備も潤沢であり、敵もスカリフの防衛網に比べたら遥かにお粗末だ。

 

「〝失うもののない戦士が鋭い棒を手にすれば、無敵だ〟」

 

キャシアンの隣にいるジン・アーソが、かつて共に戦った戦士の言葉を思い返すように言う。自分たちはそうやって、幾度も戦場をかけて勝利を積み重ね、希望の火を大きくしてきた。

 

「敵はきっとエネルギー発生器の周りに待ち構えている。私たちの目的がそこだと知っているから。けれど、他の場所はそうなるとは思ってもいない。エネルギー発生器とは関係ない場所が攻撃されるなんて考えてもいない。だからそこを突く」

 

愛銃となったブラスターを腰に差したジンが立ち上がると、他の部隊の仲間たちも一斉に立ち上がった。

 

「みんなが撹乱している間に、私とキャシアンとボーディー、K-2SOで敵のウォーカーを奪う。ソロ将軍の部隊は、その間にエネルギー発生器の破壊を」

 

「わかった。じゃあ、あんた達が派手にぶっ放した後に動くとしよう」

 

ハンの言葉に頷くと、ローグ,ワンは一斉に山道を降りてゆく。これでトランスポート基地からの増援を気にする必要はなくなった。彼らが騒ぎを起こしている間に、山中を抜けて、一気にエネルギー発生器を破壊する。

 

「ソロ将軍、イウォークの部族長が」

 

そう思案していると、イウォーク達と会話をしていたC-3POがハンに報告をした。

 

「なんて言ってる?」

 

「丘の上に秘密の抜け穴があると」

 

 

 

 

 

 

シナリオを練り直すのを許せるか?

  • 細かい描写も見たい
  • ログの心の移り変わりを見たい
  • とりあえずエンディングまで突っ走れ

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