アナキンの親友になろうとしたら暗黒面に落ちた件 作:紅乃 晴@小説アカ
デス・スター内部。
エネルギーシャフトにかかる通路の上で、剣戟が響き合う。皇帝が玉座から高みの見物をしている中、光刃を振りかざしたヴェイダーの一撃を、アナキンは巧みな剣捌きで受け流す。たった数秒の攻防で、幾つもの斬撃が飛び出し、スパークとプラズマのぶつかり合う音が辺りに散った。
「ログ!!」
受けた斬撃の威力を殺さず、回転するように刃を振るったアナキンと、剣を構えたヴェイダーの刀身が鍔迫り合いを起こした。スパークの光の奥で、アナキンが骸のようなヴェイダーのマスクを見つめながら声を詰まらせる。
「その名は私には何の意味もなさんと言ったはずだ!!アナキン・スカイウォーカー!!」
ヴァーパッドの型から繰り出される超攻撃的な連撃を、アナキンは型を自在に変え、防御と虚構、受け流しを織り混ぜ、体を飛躍させ、飛び跳ね、極地へも達そうとする斬撃の尽くを躱した。玉座から見下ろすパルパティーンも、その鮮やかな殺し合いを見て楽しんでいた。
息をすることも忘れてしまいそうな、濃密な攻防。その一閃を打ち払って後ろへとバックステップをしたアナキンは、床に手をつきながら悠然と剣を構えるヴェイダーを睨みつけた。
「僕は君を殺した。あの日、ムスタファーで戦ったときに。たしかに僕がライトセーバーで貫いたんだ」
忘れることはない。あの溶岩に照らされた光景を。彼の身をライトセーバーで貫いた感覚を。その全てをアナキンは覚えている。
「だからこそ、魂を失い、フォースの器となった君の肉体を終わらせる責任が僕にはあるんだ。君と世界を繋ぎ止めるものを、今度こそ断つ!!」
「やってみせろ、アナキン・スカイウォーカー。それこそがフォースへの反逆と知れ!!」
大口を叩いたな、とヴェイダーは義肢にフォースを送り込み、硬いデス・スターの床を踏み抜く。硬く打ち付けられたはずの床に足跡を穿つほどの力を見せ、ヴェイダーは巧みにセイバーを振るうアナキンへと肉薄する。
「選ばれし者など笑わせる!!所詮貴様も、人としての運命から逃れられぬ、あの男と同じよ!!失うことを恐れ、ジェダイであり続け、ジェダイを終わらせたあの男と!!」
「ログは偉大なジェダイだ!!」
「弱き者だ!故に私という存在がある!!」
「勝手なことを!!」
まるで神話のシスとジェダイの戦いの再現だ。積み上げてきた研鑽と技力を持って命を削り合う戦い。その均衡が傾く兆候は見えない。アナキンもヴェイダーも、互角の戦いを繰り広げる。
「すぐに決着はつく。皇帝のしもべとなったカイロ・レンが貴様の息子を討ち取り、そして貴様もその後を追うのだからな!」
膝をついたアナキンめがけて振り下ろした光刃。それを受ける先にあるアナキンへ、ヴェイダーは勝ち誇ったような声色で言葉を発したが、受け取ったアナキンの顔が揺らぐことはなく、逆に笑みを持ってヴェイダーの一撃を弾き返した。
「さて、どうかな!!息子のルークは、僕よりも往生際が悪いぞ!!」
▼
アナキンと別れ、パルパティーンの傀儡と成り果てたカイロ・レンと戦うルークもまた、佳境を迎えていた。底知れぬダークサイドの力を持ってして、カイロ・レンはクロスガードライトセーバーを振り、防御に徹しようと構えたルークの身を吹き飛ばす。
フォースの力も上乗せされた斬撃を殺しきれず、ルークの体は優に数メートルを滑空し、帝国の堅牢な壁に身を叩きつけられる。鉄がひしゃげた音と、回路が破壊されたことで起こったスパークの火花が、痛みで床にうずくまったルークに降りかかった。
「カイロ・レン…!!目を覚ますんだ!!」
衝撃で肺の中の空気の殆どが絞り出されてしまったルークは、勇み足で向かってくるカイロ・レンへ何度目かになる言葉を投げる。しかし、彼は止まることなく進み続け、膝をつくルーク目掛けてセーバーの切っ先を向けた。
「これで終わりにしてやるぞ、ジェダイ!!遊びはここまでだ!!」
切っ先を構えたカイロ・レンは、そのままルークの顔を貫こうとセーバーを突き出す。相手はライトセーバーを展開すらしていない。
あまりにも無防備であり、非力。
勝ったと心の内で確信した瞬間、突き進んでいたセーバーの切っ先は、まるで壁に打ち当たったかのように塞き止められた。
「な…っ!?」
その光景を見て、カイロ・レンはマスクの下で目を見開く。ルークはありったけのフォースを手に宿し、〝素手〟でカイロ・レンが放ったライトセーバーの切っ先を受け止めていたのだ。
正気じゃない。プラズマの塊であるライトセーバーを手で受け止めるという発想ができるなんて、しかもそれを躊躇いなく実行するなど。
その恐れにも似た驚きの最中、カイロ・レンはルークの背後に幻視した。長髪と蓄えた髭を備えるジェダイ・マスターの霊体がそこに立っているように見えた。
自分が最期に会った、賢者であるマスター・クワイ=ガン。彼は怒りに身を委ねているカイロ・レンへ穏やかなフォースを手渡し、ルークの肩へ手を添えた。
「カイロ・レン!!戻るんだ!!」
手の一点に収束させたフォースが辺りに広がる。セーバーごと押し切られたカイロ・レンの体はふわりと浮き上がり、今度は彼が大きく吹き飛ばされ、轟音を立てて壁へと叩きつけられた。
めり込んだ体がしばらく壁にへばりつき、体の力を失ったカイロ・レンの肉体は、紐が切れた操り人形のように地面へと倒れた。
火傷を負った手を向けるルークが、倒れたカイロ・レンを見つめてから張り詰めていた息を吹き出し、呼吸を整える。まったく息ができなかった。それほどまでに集中したフォースの扱い。ライトセーバーを素手で受け止めるなど、普通では考えられない事をやってのけたのだ。
しかし、ルークには確信があった。絶対に受け止められると信じることができた。その確信の根源がなんであれ、ルークはその力を持ってしてカイロ・レンの一撃を受け止めたのだ。
ふと、ルークは立ち上った影を感じ取った。
視線をあげる。そこにはマスクが砕け、素顔を晒したカイロ・レンが立っていた。
「我が…負ける…そんな…我は…俺は…」
すぐにルークもライトセーバーを手に取るが、光刃を出す前にその感覚は消え去った。カイロ・レンから立ち上った暗い影。その影が苦しんでいるように見えたからだ。苦しげな声でうめくカイロ・レンは、膝を落とし、何かに抗うように頭を掻き毟る。
ふわりと、懐かしい匂いがした。これは、幼い頃にレイアと共に修行を積んだ、ナブーにあるジェダイ寺院の……。
「俺の…俺の体から…出て行け!!」
咆哮があがる。カイロ・レンの肉体から立ち上っていた影は、断末魔の悲鳴を上げて吹き上がり、やがて飛散した。瞬きをしてルークは目にした光景を改めて見たが、飛散した影の姿はない。
強すぎるダークサイドの力が生み出した幻影だったのか。
影が去ったあと、息を切らして手をつくカイロ・レンの元へと、ルークはゆっくりと歩み寄った。
「カイロ・レン」
「ルーク…スカイウォーカー…」
「戻ったのかい?」
息も絶え絶えなカイロ・レンに語りかける。彼はなにも言わず、四つん這いになったまま顔を下に向けている。噛み締めるように手を握りしめて、乱れた呼吸の中で、彼は呟いた。
「長い悪夢だったよ…ジェダイ。とても長い悪夢だった」
「まだ間に合う。カイロ・レン。共に行こう」
まるで懺悔するかのような言葉に、ルークはピシャリと告げた。その懺悔など許さない。許す時間もない。ルークは項垂れたままのカイロ・レンへ手を差し伸ばす。彼はもう、ダークサイドの傀儡でも、パルパティーンの操り人形でも無かった、
「俺は…多くの過ちを犯した。その罪は背負わなければならない…」
差し伸べられた手を一瞥し、カイロ・レンはゆっくりと立ち上がる。砕け散ったマスクの断片を壊れないように持ち上げ、見つめた。
これは自分が強くあるための仮面。あるいは象徴。あるいは変化のための楔であり、同時にその縋った心がパルパティーンを呼び込むきっかけともなった。そのかけらを、カイロ・レンは握る手を緩めて地へと落とした。
これに頼るのは最後だ。素顔を取り戻したカイロ・レンは、隣に立っているルークの目を見る。
「その罪を贖罪したとき、その手を取ると約束しよう。ルーク・スカイウォーカー」
「あぁ、わかった」
短い、けれど多くの思いを持った言葉を交わした二人はライトセーバーを腰へとしまい、歩み出した。向かう先は、皇帝が待つ玉座だ。
必ず、ここで決着をつける。その決意を胸に。
▼
エンドアの森の戦いは混戦を極めつつあった。イウォークの襲撃に加え、クーデター派の帝国軍が乱入。
ストームトルーパーと、クローントルーパーの戦いを目にしたイウォークたちが戸惑ったような声を上げた。
反乱軍もクーデター派へと加勢し、形勢は一気に膠着状態へと陥った。
「進め!!敵の陣形を崩すんだ!!」
隊長であるハンの声に従い、誰もが戦っている。そのハンの後ろ、頭を倒そうとブラスターを構えた帝国軍の高官。次の瞬間、ハンの脇すれすれをかすめるブラスターが火を吹き、彼を狙っていた高官は胸を穿たれ、絶命した。
「気を付けろよ、ロクデナシめ」
二丁のブラスターを回転させて腰のホルダーへと収めるボバの物言いに、ハンはうんざりしたような顔をしてから、お返しと言わんばかりにブラスターを無造作に構えて撃つ。すると、今度はボバの背後にいたトルーパーが倒れた。
「そっちも気を付けろ、賞金稼ぎ」
一方、レイアはシールド発生器へと繋がる施設の扉を開けるために奮戦していた。
「R2!メインゲートの扉を開けません!今すぐにゲートの正面に!!」
通信機で呼びかけるレイア。その視線の先で、赤色のライトセーバー同士が、苛烈な銃撃戦の最中でぶつかり合っていた。
「裏切り者め!!貴様も帝国の理念に反するか!」
「その理念を捨てたのは貴様達だろう!!帝国市民の命すら厭わない貴様達に与える慈悲などない!!」
尋問官であるシス・ストーカー。
帝国市民を守るために結成されたレン騎士団。
それぞれの戦士がフォースの力に身を委ね剣舞を繰り出す。三人の尋問官を一人で相手とるサー・マレックは、矢のように放たれる尋問官たちの斬撃をいなし、大立ち回りを演じている。
「減らず口を!!」
リーダー格の尋問官がセーバーを振るった。その隙をマレックは見逃さない。振りかざされたセーバーを紙一重で避けると同時に、注意が散漫となった片割れの尋問官へセーバーを振るう。マスクに覆われた二つの頭部がエンドアの森へと転がった。
「ふん、邪魔者が消えて清々した。これでこの星の支配権は私一人のものだ」
「そうはさせんぞ、悪魔め」
仲間を失っても動じない尋問官を相手に、マレックは二刀のライトセーバーを逆手に持って構えた。
「邪魔な騎士団など、最初から要らなかった!!お前達さえいなければ、ダークサイドの力に市民をひれ伏せさせたものを!!」
「市民あっての帝国!市民の繁栄あっての秩序だ!!それすら忘れたか!!」
枯れ葉が敷き詰められた地を蹴ってぶつかり合う二人は、放たれたブラスターを弾き返し、剣閃を凌ぎ合う。横なぎ、突き、袈裟斬り、横払い。多くの剣を競い合わせ、互いに化かし合う。そして、その均衡は突如として崩れた。
「従わない者は処断するだけだ!!」
大振りになった尋問官のライトセーバーを掻い潜ったマレックの一撃が、最後の尋問官の胸を貫いたのだ。信じられないと言った目をして自分の有様を見た尋問官は、マレックがライトセーバーを切ったと同時に倒れ、動かなくなった。
「その支配欲が、シスそのものを滅ぼしたのだ。なぜ、それを分かろうとしなかった」
二刀のライトセーバーを腰に収め、マレックは誰に言うでもなく一人言葉を走らせる。すぐそこでは、トランスポートを制圧したローグワンと、ウォーカーを奪ったジンたちが応援に駆けつけていた。
これでエンドアの森の戦いは終止符を打った。月のように浮かぶデス・スターを見つめながら、マレックは小さく呟く。
「お前達は、道を踏み外したのだ。帝国者としての道をな」
シナリオを練り直すのを許せるか?
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細かい描写も見たい
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ログの心の移り変わりを見たい
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とりあえずエンディングまで突っ走れ