アナキンの親友になろうとしたら暗黒面に落ちた件 作:紅乃 晴@小説アカ
「うっ…」
鈍痛の中、目を覚ます。アナキンが見た光景は、まるで猛烈な力で吹き飛ばされた有様となっていた皇帝の玉座であった。
体に降りかかった瓦礫を振り払いながら立ち上がる。さっきまで毅然と在ったはずの室内は、完全に荒れ果てている。
配管は折れ、至るところから空気やガスが漏れ出しており、壁に備わるコンソールパネルからは火花が散っていた。
「父さん…」
「ルーク、カイロ・レン…」
声に振り返ると、そこにはルークと、彼に肩を借りるカイロ・レンの姿があった。彼らもまたボロボロの出立であり、この場が凄まじい衝撃波に見舞われたことを物語っている。
アナキンは、何かに導かれるように瓦礫が散乱した部屋を歩む。
天井から剥がれ落ちた調度品を躱しながら玉座の近くへと進むと、衝撃波の爆心地のような跡の場所で、横たわっているシディアスを抱き抱えるヴェイダーの姿があった。
いや、もうアナキンは気がついていた。
ヴェイダーから流れ来る懐かしいフォース。それは紛れもなく、ログのものであった。彼が抱くシディアスは、自身のフォース・ライトニングの影響を受けたせいか、顔の半分が焼け爛れており、深くかぶっていたフードもずれ落ちていた。
ログの腕の中で、シディアスは目を覚ました。
「あぁ…やぁ、ログ。戻って…きたのだな…」
『「はい、議長」』
かすれた声で呟くシディアスの声に、ログは頷いて答えた。すでにヴェイダーの生命維持装置は破壊されており、人工声帯も呼吸器も機能していないはずなのに、凛とした生前のログの声が響く。
その声を聞いて、シディアスは小さな笑みを浮かべた。
「そなたが…余の元へ戻ってくるのを…ずっと…待っておったぞ…」
『「お待たせしてすみません。議長、あなたに教えを乞う時が来ました」』
「うむ…そうであろう…そなたはやっと…余の弟子、〝ダース・ヴェイダー〟となるのだな…」
その先に共に歩む道があるなら、その時はどうか導きを——。ジェダイ聖堂を破壊する前、ムスタファーで死する前に交わした会話をシディアスは思い出す。彼が再び戻ったその時、ログは自分の弟子となると約束した。
その約束を彼は忘れていなかったのだ。
ああ、それだけ聞けて…満足であった。
今まで抜け落ちていた何かが、シディアスの中へと戻ってきた。足りていなかったものをようやく彼は取り戻したのだ。
「…さぁ…共に行こう…ログ。フォースの真なる意味を見つけるために…」
『「ええ、貴方とならどこまでも付き合いますよ」』
そう言葉を残して、シディアスはゆっくりとまぶたを下ろした。まるで眠りに落ちるように。その肉体を膝をついて抱くログの元へ、アナキンは歩みを進める。
「……ログ」
近づくたびに、彼への想いがあふれた。謝りたいことも、怒りたいことも、喜び合いたいことも。ログ、僕の子供はちゃんと育ったよ。パドメとも仲良く過ごしているよ。君のおかげで、母も穏やかな時の中で逝くことができたんだ。
伝えたいことが溢れて、そして何を言えばいいか見失ってしまうほど。
「ログ…僕は…僕は…っ」
言葉を選べずに、アナキンは膝を落とした。自然と、その頬には涙が伝っていた。止めようのない思いが溢れる。
『「ありがとう、アナキン」』
ぐちゃぐちゃになっていた思考に、その声は染み渡るように届いた。顔を上げる。そこには確かにヴェイダーがいたはずだった。漆黒の外套と、骸のようなマスクを身につけていたはずの騎士は、ジェダイローブを身につけた温かな肉体へと変わっていた。
あの日の、親友であったログ・ドゥーランが、そこにいた。
『「あの時はすまなかった。お前にはいつも、辛い思いをさせてしまっていた」』
「違う、ログ。君がいたからだ。君がいてくれたから…僕は〝こうやって〟生きていることができたんだ」
君がいなければ、僕はもっとひどいことをしていた。君がいなければ、僕は自分を許せなかった。君がいなければ、僕が〝ダース・ヴェイダー〟となっていた。
彼がいたからこそ、自分は息子や娘、妻という家族と愛を知って、生きてこられたんだ。礼を言うべきは自分の方だと言うのに。
彼は笑って首を横に振った。礼を言うのはこちらの方だと言って。
『「…みんなが俺を見つけてくれたんだ。だから、アナキン。お前はもう幸せになっていいんだ」』
「ログ…」
彼は宇宙が見える窓を見つめる。視線の先では、帝国軍の勢力を跳ね返し、反撃に出た反乱軍や、クーデター派の姿が見える。旗艦である船を抑えられ、統制が乱れた武官の帝国軍が破れるのも時間の問題だ。
『「見えるか、アナキン。フォースの夜明けがくる。あとの世界は、お前たちに託すぞ」』
その言葉と同時に、デス・スターが激しい揺れに包まれた。崩壊していた部屋の天井から、ぶら下がっていた機械部品や、瓦礫が落ちてくる。その様子を察したルークが、膝をつくアナキンの肩に手を置いた。
「父さん!デス・スターへの攻撃が始まった!早く脱出を!」
きっとハンたちがシールド発生装置を破壊したのだろう。デス・スター内部への攻撃が始まれば、この場にいる自分たちも危険にさらされる。ルークの言葉を理解したアナキンが迷ったような目でログを見た。
「ログ、君を置いていくなんて…」
そう言うアナキンに、ログは穏やかな顔つきのまま答えた。
『「安心しろ、アナキン。もう大丈夫だ。フォースを探せ、そこにいつも、〝俺たち〟はいる」』
さぁ、行け。ログの言葉をアナキンは噛み締めるように聞くと、カイロ・レンに肩を貸すルークを連れて部屋の出口へと向かう。向かう最中、一際大きな揺れと瓦礫が崩れるような音が響いた。
アナキンが振り返る。
さっきまでログとシディアスがいたはずの場所は、もう影も形も残っていない。まるで最初から誰も居なかったような静寂があった。
「ありがとう…ログ。………さようならだ」
言葉を残して、アナキンはこちらを呼ぶルークが待つエレベーターへと向かった。もう心にしこりはない。彼を探す幻影もない。
アナキンの中に残ったのは、彼との別れを終えた故人を思う心だけだった。
闇には、寒さ。
光にも、寒さ。
老いた太陽は熱を生まぬが、
温もりは吐息と命にある。
命にはフォースがあり、
フォースには命がある。
そしてフォースは、永遠にある。
目が覚めると、そこは船の中であった。
小さな船。
皇帝になってから慣れ親しんでいた豪勢な船とは違い、必要最低限な機能と、人を星から星へと運ぶ機能しか持たない大きさ。
コックピットから見える景色は、見たことのないものであった。色鮮やかな彩色がうねりを上げて入り混じり、温かな光がこの身を照らしてくれている。
まるで、陽だまりの中にいるような心地よさがあった。すべてにフォースが溢れている。
ふと、隣の席に目を移す。
そこには、操縦桿を握る…若き日のログが、あの時の姿のまま座っていた。
彼は、何も言わないままだった。
ただこちらを見て微笑み頷くと、前を向いて船を進め続けてゆく。
これから、この船と共に果てのない旅が始まる。
いまだ足を踏み入れたことない世界への大いなる旅路。
フォースの真の意味を知るための、探求の旅。
フォースの夜明けがくる。
その心地の良い高揚感を胸に、私もまた船の行き先を見つめる。
星は続いている。
フォースは永遠に。
この道は果てなく続く。
行こう。
その果てのない旅路を見つめるために。
シナリオを練り直すのを許せるか?
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細かい描写も見たい
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ログの心の移り変わりを見たい
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とりあえずエンディングまで突っ走れ