アナキンの親友になろうとしたら暗黒面に落ちた件   作:紅乃 晴@小説アカ

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フォースの覚醒

 

 

 

5ABY。

 

武官派の帝国軍の残党兵と、反乱軍とクーデター派により勃発した、艦隊戦。

 

通称、ジャクーの戦い。

 

武官派の帝国軍を追い詰めた戦いは、双方の総力戦となり、このジャクーの地には反乱軍の船も、帝国軍の船も沢山落ちた。

 

あの戦いから30年近く経過し、墜落した船は荒凉としたジャクーの地に鋼鉄の鉱山を築き上げた。ジャクーに住う人々にとって、その鉱山から得られるパーツは貴重であり、このニーマ・アウトポストでも多くのゴミ漁りが鋼鉄の山へと上り、型落ち寸前のジャンクパーツを集め回り、その日の食い扶持を稼ぐために奔走していた。

 

砂漠と荒野が広がるジャクーではあるが、その禁欲的な大地は他の要素も呼び込んでいた。フォースへの信仰を共にした遺跡だ。不運なことに、その遺跡の真上にスターデストロイヤーの一隻が墜落しており、歴史的な価値があった寺院の殆どがその鋼鉄の塊によって押し潰されてしまっていた。

 

信仰者たちの誰もが寺院の再建を諦め、この30年の間にジャクー各地に聖域を築き上げたのは必然であった。

 

誰もが近づかず、風化したフォースの寺院の跡地。

 

そこへ墜落したスターデストロイヤーの残骸の壁に、レイは張り付いていた。

 

 

 

 

緑色の遮光レンズと強烈なジャクーの日光から身を守るために身につけるマスクや、砂漠用の衣装。腰のポーチに備えるワイヤーを手際よく残骸の突起へと引っ掛けて、厚手の手袋越しにするりするりと残骸の跡を降りてゆく。

 

目的はこの鋼の山脈の地下深く。デストロイヤーの残骸を降ったレイは、腰に下げているライトセーバーを取り出した。

 

それは父と彼の親友となったルーク・スカイウォーカーと共に試練を終え、手にしたライトセーバーだ。緑光のライトセーバーをライトのように照らしながら、まるで導かれるようにポッカリと開いた洞窟を進む。

 

しばらく暗闇を歩くと、人工的に整えられた霊廟にたどり着いた。ライトセーバーをしまい、レイは手製のセンサーを起動する。あたりに測定用の光が瞬くと、手に収まるセンサーに霊廟のマッピング映像が映し出される。そのマッピングデータに従って霊廟を進む。

 

スターデストロイヤー墜落の影響であちこちの柱や通路が痛んでいたが、レイは体を縮こませ、くねらせ、狭い通路や穴を通り、やっとの思いで目的の場所へと辿り着く。

 

そこには不可視の力で浮かび上がっている〝ファインダー〟があった。レイがセンサーを確認してから頬を吊り上げた。

 

「あった」

 

小さく息をつくようにレイは呟くと、宙に浮かぶファインダーの元へと近づく。そっと手をかざし、フォースでのアプローチをかけた。ファインダーはさまざまなデータが格納された端末であり、フォースを扱うものしか触れることができない代物だ。不正な手順で取り出そうとすれば、そのファインダーは即座に自壊する。

 

レイがフォースを送り込むと、宙に浮かぶファインダーは緩やかに動き出し、そしてレイの手へと収まった。

 

 

 

 

 

 

 

霊廟から再びデストロイヤーの鉱山を登って、レイは自身が潜って行った入り口へと帰ってきた。早朝まで夜営して出発したというのに、もうジャクーの太陽は傾き、空は茜色に染められつつあった。

 

「見つけたわ、D-O」

 

相棒であるドロイド、D-Oにそういうと、一輪車のような体躯をしたドロイドは電子音を奏でながら主人の帰還を喜んだ。

 

父と母がインプットしてくれたD-Oは、幼い頃からのレイの友達だ。ちゃんと生き物の友達もいるけれど、フォースの訓練を終えて早々に旅に出た自分に付き合ってくれるのはD-Oくらいだ。

 

だが、レイは寂しくはなかった。

 

母も父も知っているし、時には船の中で通信もしている。帰る場所がちゃんとある旅というのも、楽しいものであった。

 

しかし、なぜレイは旅をしているのか?フォース感応者であり、卓越したライトセーバーセンスとフォースを持つというのに、彼女は連邦軍への入隊も、レン騎士団への加入も断った。

 

きっかけは、アカデミーのグランドマスターであった「アナキン・スカイウォーカー」の死だった。

 

連邦創設に携わったパドメ・スカイウォーカーと共に、ルークやカイロ・レンと共にアカデミー発展のために尽力した。

 

彼の老後は後任の教育に注力し、パドメが亡くなった半年後に、彼女と同じく親族に見看られながら、穏やかにその人生に幕を閉じた。

 

転機となったのはレイが17歳の時であった。

 

アナキンの孫であったベンや、息子のルークたちと共に、アナキンの遺品の整理をしている時、彼女は一つの「ファインダー」を見つけたのだ。老齢を迎えたアナキンが、一人旅に出てそのファインダーを持ち帰ってきたのだとルークに聞いた彼女は、スカイウォーカー家に頼みファインダーを譲り受けた。

 

そして幾度の試しを繰り返し、ついに彼女はファインダーの謎を解き明かしたのだ。

 

《よく見つけたぞ、我が孫娘よ》

 

サバイバルキットから取り出した簡易食料をじゅうじゅうと音を立てるフライパンの上で膨らませる。

 

特定のフォースを流し込むことで起動したファインダーからは、穏やかな顔つきの老人が楽しそうな様子で浮かび上がっていた。ファインダーに格納されていたものは、ある人物が記録したホログラムだった。それも鮮明に。

 

ファインダーは銀河各地にあり、その痕跡を辿ってゆけばフォースの全てを記録した、フォース・ファインダーが完成するというものだった。

 

レイが旅に出たのは、そのファインダーを全て集め、フォースの全てを記録したファインダーを完成させることだった。それがアナキンの夢であり、自分の目指すものだと思ったからだ。

 

《見てくれ、この壁画にはフォースの印が描かれている。何千年前のものだ。まだライトサイドとダークサイドが明確化される前のものだろう。あくまで〝書物〟の中ではな》

 

老人は遺跡の壁を指し示しながら興奮した様子で壁画の内容を解説しており、レイは数冊目になったノートを開くとフライパンで作ったパンもどきをかじりながら老人が説明する内容を的確にメモしていく。

 

《だが、そなたも気づいておろう。この壁画に描かれているものと同じものが、過去の寺院にあったということを。つまり、ジェダイとシスが分かれる前と思われていた時代に、すでにライトサイドとダークサイドの対立があったということだ》

 

なんですって?レイは残ったパンもどきを口の中に放り込むと、食い入るように浮かび上がるホログラムを見つめる。アカデミーでも、古伝史としてライトサイドとダークサイドの歴史を学ぶが、ホログラムの老人が言うことが正しいなら、その歴史がひっくり返る大発見だ。

 

だが、と老人が他の壁画を見せるとその大部分が真っ白に削りとられていた。

 

《不可思議なことに、それを示す壁画が塗りつぶされておる。何者かの手によって。我々はその背景を探す必要があるようだな》

 

レイは残念そうに息を吐いてから、手に持っていたメモを砂の上に投げ出す。そうは簡単に真実を明かすことは難しい。3年に届きそうな旅の中でレイが学んだことであった。

 

さて、と老人が言う。彼はどのファインダーでもその言葉から、レイへのメッセージを残していたのだ。

 

《次のヒントを出そう。〝遠き黄昏の中、白壁の島でそなたを待つ〟。レイ、そなたを楽しみにしておるぞ》

 

レイは投げ出したメモを拾い上げて、消えたホログラムが言っていた言葉をメモし、他のページからヒントに沿う要素に目を走らせると、満足したように笑みを浮かべた。

 

「やったわ。ついに手がかりを掴んだわ」

 

雲を掴むような感覚だったものが、現実味を帯びてきた。レイは嬉しさと興奮で、乱雑にサバイバルキットを袋へと詰め込み、愛機であるXウイングの後部座席へと放り込んだ。

 

ルークから譲り受けた機体は、型落ち品であるがきっちりとメンテナンスされており、快適性もよかった。シートを倒せば寝床になる。屋根がないのが玉に瑕だが、その場合は洞窟や屋根になるものを現地で調達すれば問題ない。

 

ジャクーを出発する準備を進めていたレイは、ふと背後に懐かしいフォースを感じ取った。

 

「君の探究心は、どうやらお爺さん譲りのようだね、レイ」

 

耳に届いた言葉に、レイは振り返る。そこには、青白い光を放つ、半透明な霊体……アナキン・スカイウォーカーが立っていた。

 

「マスター・スカイウォーカー…?」

 

ジェダイローブに身を包む霊体のアナキンはレイに微笑むと言葉を紡いだ。

 

「君がここにやってきたら、渡して欲しいと頼まれたんだ。ついておいで」

 

なぜ?彼がここにいるのか。そんな疑問すら持たせる間も無く、アナキンはジャクーの荒野を進み出した。レイは見上げるD-Oと顔を合わせると、慌てて荷物を腰に巻いて先をゆくアナキンの後を追った。

 

しばらく砂丘の尾根を歩くと、荒れた岩肌の洞窟の入り口へと辿り着く。口を開けた洞窟を見つめるレイの隣で、アナキンは腰に手を当てて辺りを見渡した。

 

「ここだ」

 

そして、そっとアナキンが手をかざすと砂漠や砂に覆われていた洞窟の中が揺れ始めた。砂は波が引くように下がってゆき、岩肌しかなかった洞窟内に、フォースの陣が描かれた床が姿を現す。その中央には、大きな石造りの箱が安置されていた。

 

「開けてみなさい」

 

戸惑ったように、しかしフォースの囁くままに石造りの箱へと向かうレイに、霊体のアナキンは手をやって開けるように促す。

 

砂埃を落としながらレイが箱の蓋を開ける。そのには、一本の筒状の何かが布に包まれて保管されていた。手にとって、丁寧に包まれた布を外してゆく。

 

「これは…ライトセーバー…」

 

手にずっしりと重みを感じさせるそれは、見慣れないライトセーバーだった。ルークのものでも、アナキンのものでもない。だが、とても古く、多くの思いがこもったライトセーバーであることはわかる。

 

「マスター・スカイウォーカー。これは誰のライトセーバーなのですか?」

 

「それは、次の手がかりの場所にたどり着いたらわかるとも。フォースが君を導いてくれる」

 

さぁとアナキンはレイが向かうべき次なる地へと指し示す。しばらくレイはアナキンの顔を見つめてから、腰のポーチに手に入れたライトセーバーをしまい、その場から歩き出した。目的地はすでに決まっている。

 

「さぁ、行くがいい。君の行く先はフォースに満ちているぞ?レイ」

 

夕陽に包まれるジャクーの地を、D-Oと共に歩くレイの背中を見つめながら、アナキンは目を細めながら呟くと、緩やかに流れた砂塵と共にフォースの中へと溶けてゆくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その惑星のほとんどは海面だった。大きな岩の島が点在しているが、その殆どが火山性の島であり、Xウイングを降ろす場所すらない。

 

その中でも、一際大きな島があった。岩肌が緑で覆われたその島に近づくと、Xウイングを下ろすには十分な広さの場所を見つけた。D-Oの補助を受けて着陸させたレイは、コクピットからするりと降りる。

 

森から出てきた小動物の奇異の視線を感じ取りながら、レイはコクピットの後部座席からポーチを取り出し、腰に巻きつけると一心不乱に坂道を登り始めた。

 

地面に敷き詰められた石造りの階段はとても古く、あたりには朽ちた遺跡が点在している。ここには、太古のジェダイ寺院があったのだ。もはや過去の繁栄は窺えるものではないが、今のレイには関係のないものだ。

 

息を切らしながら険しい山を登ってゆく。やがてレイは小さな広場へと出た。あたりには原始的な家屋が点在しているが、人らしい気配は感じない。慌てて隠れる小動物くらいしかいなかった。

 

レイは急に足を止めた。

 

フォースのうねりを感じ取った。

 

レイは導かれるままに草原を進むと、森の外れ、崖から海を眺めるように立つローブを着た人影を見つけた。こちらに背を向けているその人物をレイがじっと見つめていると、視線に気がついたその人が振り返った。

 

フードをかぶっていて顔は見えなかったが、レイはその人物が誰かを知っているような気がした。

 

「ここに辿り着くとは、正直思ってはいなかったな。…君の名を聞かせてくれないか?」

 

彼が問いかける。レイは、腰に下げたポーチから、ジャクーでアナキンから託されたライトセーバーを取り出し、フードをかぶった相手に差し出して答えた。

 

「レイよ。レイ・パルパティーン」

 

これからいったい、どんな冒険が待っているのだろう。

 

レイの心にあったのは、新たなる旅路への期待と、楽しみであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アナキンの親友になろうとしたら暗黒面に落ちた件。

 

END

 

 

 

 

 








書き切りましたあああああああああ!!!
ありがとうございます!!!!!!!
これにて、アナキンの親友になろうとしたら暗黒面に落ちた件は終わりとなります!!ここまで読んでくださった皆様、本当にありがとうございました!!紆余曲折あった話ではありましたが、思い描いたエンディングにたどり着けてホッとしております。これも感想やお気に入りをしてくださった皆様のおかげです。

本当に、ここまで応援してくれた皆様、ありがとうございました。楽しんでくれた皆がいなければ完結できませんでした。

これからもスターウォーズの広大なストーリーは続いてゆくでしょう。その新たなるサーガを僕もファンとして楽しみにしていきたいと思います。これからもスターウォーズストーリーを楽しんでゆきましょう。

それでは

May the force be with you.



シナリオを練り直すのを許せるか?

  • 細かい描写も見たい
  • ログの心の移り変わりを見たい
  • とりあえずエンディングまで突っ走れ

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