アナキンの親友になろうとしたら暗黒面に落ちた件   作:紅乃 晴@小説アカ

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気になることはあったけどあえて試練として残しておくね!

 

 

 

 

 

「銀河を長いこと旅してきた中で、多くの悲惨な現状を目にしてきました。ジェダイなくしてフォースのバランスは保たれない」

 

 

銀河の探索者と呼ばれるロア・サン・テッカは、惑星エルベにある簡素な自宅にやってきた旧友にそう言葉を告げた。

 

かつて共和国に代わって台頭した銀河帝国時代の只中。テッカはジェダイが反逆を犯したという皇帝の主張を信じず、常に真実の探求を続けた。

 

経験豊富な旅人ゆえ、テッカは銀河辺境領域を巡る探索者だった。

 

エンドアの戦いで銀河連邦が誕生したのち、テッカは銀河の星々に関する情報を連邦に提供し、新政府の統治に貢献した実績を持っている。

 

帝国の官僚たちと反乱軍の司令官たち、そして皇帝が永遠に破棄した銀河評議会の議員たち。足並みが揃わない彼らからしても、テッカの情報は大きな助けとなった。

 

銀河連邦軍、そしてジェダイやシスと言った思想に囚われない新たなるフォース感応者たちの在り方が形作られてゆく中で、テッカは追い求めていた真実と出会った。

 

 

「ログ・ドゥーラン卿、ジェダイや…いや、シス。ダークサイドとライトサイドの教えとはこの銀河にもはや必要はないものなのでしょうか?」

 

 

フォースを信奉する者らしいシンプルな客間に招かれた相手、ログ・ドゥーランはテッカの問いかけを真っ直ぐに聞いていた。

 

テッカがログと出会ったのはエンドアの戦いからしばらく後のこと。レイアとハンの息子、ベンが生まれた年であった。

 

テッカがジャグーにあるジェダイ寺院の調査に赴いたタイミングで意図してなのか偶然なのか、彼はフォースの深淵たる結末と出会ってしまったのだった。

 

 

「ロア・サン・テッカ。君が言う通り、たしかに世界にはジェダイやシスと言った思想を依代にしたい者もいるのだろう。君のようにな?」

 

 

そう告げたのはログではない。彼が佇む場所の前にある椅子に座る人の良さそうな顔つきをした老人が茶を啜りながら答えたのだ。

 

その顔をテッカは忘れたことはない。今、自分の家に訪れているのは紛れもなくシス・マスターであるはずの「ダース・シディアス」なのだ。

 

 

「ふむ、いい茶を使っているな?輸入先はロザルかね?」

 

「ええ、シディアス卿。あそこは長閑な農地があります。騎士ブリッジャーはいい商いを見つけたものです」

 

 

銀河連邦となった後、騎士の座を後任に譲ったエズラ・ブリッジャーが故郷であるロザルに戻り、父と共に農地改革と行政復興を行なったのは有名な話だ。

 

ガイバークリスタルの名産地でもあるが、それよりも名を馳せているのが豊かな土壌と環境で育てられた茶葉である。最高級品になれば末端価格がとんでもない額になるゆえ、僻地であったロザルは目覚ましい発展を遂げているとか。

 

 

「マスター・シディアス。貴方は悪名高きシスの暗黒卿であったのでしょう?共和国を滅ぼし、ジェダイを滅ぼし、銀河帝国を築き上げた貴方がどうして権力や欲望を捨ててでも銀河連邦を静観できるのでしょうか?」

 

 

いつの日か、ジャグーで出会った二人の賢者…いや、かつて銀河を恐怖と力で支配していた皇帝に、テッカは恐る恐ると問いを投げかけたことがあった。

 

するとシディアスは、彼が知るどんな顔よりも穏やかな笑みを浮かべて答えた。

 

 

「それに勝るものを見つけたからだ、ロア・サン・テッカよ」

 

 

その言葉には纏わりつくような嘘や嫌悪感はなく、どこか晴々とした感覚さえ込められていた。フォース感応者から見たら、シディアスから溢れるフォースは驚くほど穏やかである。

 

 

「銀河は広いぞ?なにせまだまだ我々も探求の戸口にすら立ってないのだからな」

 

 

アウターリム・テリトリーの外側、まさに未確認領域の先へと足を踏み入れたシディアスを待っていたのは、多くの発見と驚きであった。

 

その全てをまとめろと言われたらパルパティーン議長時代の数倍の時間が掛かるほど。

 

それでも銀河は際限なく広がっている。帝国時代にあれほど枯渇していたのが嘘のように思えるほど、世界は驚きと新しい出来事に溢れているのだ。

 

本来なら、シディアスもそのお供をするログも、この世界に関わるつもりは毛ほども無かったのだが、事情が少し変わっていた。

 

 

「ジャグーのジェダイ寺院に立ち寄っていたのはある種の手掛かりを得るためでもある」

 

 

実際、ログもパルパティーンもそれを知るためにこの銀河系へと舞い戻ってきたのだ。

 

 

「シスやジェダイと言った思想に縋る者たちの末路、とでも言うべきことかな?今君たちが血眼になって調べている惑星を丸ごと兵器にした基地も〝始まり〟に過ぎない」

 

 

この老人は、いったいどこまで「見えているのか」。テッカは少し恐ろしくなった。本当は全ての結末を知っているのではないかと思えるほどに。

 

しかし、ならば問わなければならない事もある。

 

 

「では、なぜシディアス卿自身がその始まりを止めにならないのですか?」

 

 

ふと、テッカに言われてシディアスは驚いた顔をしてから愉快そうに笑った。たしかにそれはそうだな、と。そうすれば幾分か、銀河連邦という国づくりは穏やかで健やかな政治をすることができるかもしれない。

 

だが、繁栄に甘んじさせるほどこちらは手を貸すつもりもなかった。

 

それにと、シディアスは飲み終えたカップを机に置いてほくそ笑む。テッカの背中に冷たい何かが走る。その笑みはシスの暗黒卿と言えるほど邪悪さを纏う攻撃的な笑みであった。

 

 

「我々が終わらせれば、何も得ないだろう?故に試練と訓練を与えるのだ。新たなる息吹に」

 

 

これは酷な話だ、とテッカは思った。彼らからすれば銀河の危機すら試練になってしまうのか。

 

今を駆ける、シスでもジェダイでもない新たなフォースの命たちを〝目覚めさせる〟ための試練と。

 

 

「この時代にもジェダイは必要なのだと、そなたは言ったな?だがそれを決めるのは過ぎ去った我々ではない。ましてや年老いた者たちでもない」

 

 

今を生きる若者と、それを見つめた者たちが後の世で語り継ぐことで決まるのだよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

霞のようにフォースと一体となって消えた旧知の二人を思い返しながら、テッカは惑星エルベの道を歩く。

 

予言通り、若く力のある彼らがやってきた。

 

それだけで、銀河の探究者であったテッカは満足していた。伝説のジェダイと、伝説のシス。二人の賢者が言った試練に立ち向かう勇者たちがいる。

 

それだけで充分だ。

 

 

「さて、ベン。それにポー。君たちが望む情報を渡そう。それは君たち…そして銀河連邦とこの銀河にとっての試練となるだろう。私はその行先を見つめさせてもらう」

 

 

首からぶら下げたデータ端末を訪れた若者二人へと託す。それがテッカに与えられた役目だ。

 

外で騒ぎが起こった。

 

悲鳴が上がる。

 

この場所が「ファースト・オーダー」にバレたのだ。

 

なぜバレたのかは問わない。しかし、これが試練であることに変わりはない。

 

戸惑う二人を部屋から追い出し、テッカは終えた役割をじっと見つめる。かつてシスの賢者が座っていた席には誰もいない。

 

 

 

 

フォースと共にあらんことを。

 

 

 

 

誰もいない部屋の中でテッカがそう呟く。

 

外の騒ぎはいつのまにか聞こえなくなっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シナリオを練り直すのを許せるか?

  • 細かい描写も見たい
  • ログの心の移り変わりを見たい
  • とりあえずエンディングまで突っ走れ

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