「ん?もうこんな時間か今日はここまで、気を付けて帰るんだぞ」
今日最後の授業が終わり、教師が教室から出ていく。
退屈だった授業が終わり各々帰り支度を始める者や部活へ向かう者がいる中、廊下側の一番後ろの俺の席に向かって来る者が一人。
「なぁすまねぇケント!」
「ん、どうした?」
そして俺の目の前に来るや否や両手を合わせ、頭を下げるのは友人の神谷条だ。
「今日掃除当番変わってくれ!」
「は…なんでだよ?」
「今日バイトの人が風邪で休みで人手が足りないから変りで出てくれないかって店長から連絡あってさ…頼む!!もちろんタダでとは言わないから!」
と言い彼のバイト先であるカフェの無料クーポン券を机にだしてきた。
「はぁ…仕方ない、分かったよ」
「サンキュー!!んじゃよろしく」
まるで台風の様に教室から出て行くと、廊下から「廊下を走るな!」と教師のお叱りが飛び交った。
「全く…」
「ケント帰ろー、てか神谷君なんだったの?凄い慌ててたけど」
カフェの無料クーポンをしまうと次は既に帰り支度を終えた六花が目の前に来ていた。
「ごめん六花…さっきジョーに頼まれて掃除当番変わったから先に帰っててくれ…」
「そうなんだ、私も手伝おうか?」
「いや大丈夫だ、ありがとう」
「分かった、んじゃ家で待ってるね」
「おう、気を付けてな」
名残惜しいが教室から出ていく立花に手を振り、掃除当番代行として掃除に取り掛かった。
「何故だ…何故俺ばっかり…」
掃除当番を引き受けてから既に二時間半も過ぎた。
「いやぁ結城が居て助かった!もう大丈夫だ!気を付けて帰るんだぞ!」
「い…いえいえ…了解です」
掃除自体は順調に終わった。
だがその後に教師達に呼び止められ授業で使う教材の準備を手伝わされたり、備品の在庫測定を手伝わされ挙句の果てに電球交換までやらされた。
「はァ…クソ…もう二度と掃除当番は変わらないからな…地震?…違う…まさか!?」
「ケント!!」
誰もいなくなり茜色の夕日に染まる教室から荷物を持ち、いざ帰路に着こうとした瞬間、地響きと共に窓から見える街に巨大な怪獣が現れ、グランモバイラーのグラディオンも反応した。
「あぁ怪獣だな…こんな時に出てこなくても…クソ!秒で決めるぞ!ウェブダイブ!!グラディオン!!」
「え…嘘…」
「響が…古いPCに飲み込まれた…」
怪獣が現れ街が大混乱のなか売り物の古いPCの画面にグリッドマンと名乗る訳の分からない存在が、いきなり記憶喪失の響を飲み込んだのを響の友人内海将と目撃し、只々唖然とすることしか出来なかった。
「内海君私…夢でも見てる?…」
「た…多分現実か?夢であって欲しいが…クッこの地響き…」
「もしかしてグリッドマン!?」
慌てて店の外に出るがビル等により状況を確かめる事が出来ない。
「ここからじゃよく見えない…もう!!」
「おい!宝多危ないぞ!?」
たまらず高いビルに駆け上がり、屋上から状況を伺う。
「あれが…グリッドマン…」
「すげー…怪獣映画みたいだ…」
燃え盛る街と向かい合う怪獣と巨大化したグリッドマン。その風景は内海君が言う様に映画の世界に恰も自分がいる様な錯覚に陥ってしまう。
「な…なぁ…宝多…」
「なに?」
「蒸気機関車って空を飛べたっけ?…」
「銀河鉄道じゃあるまいし、こんな時に何を馬鹿な事…を…嘘…」
内海の視線を辿り上空を見上げると、確かに蒸気機関車がこちら目掛け飛んでいる。
「ハ…ハハハ…もう訳わかんねぇ…」
「わ…私も…」
「見つけ…って今回は怪獣二体か?なんだあのウルトラマ〇みたいな奴は敵か?」
「分からない、だが邪悪な気配はない」
「それじゃとりあえずあっちの明らか怪獣を倒すぞ!ウェブダイブチェンジ!!グラディオンファイターモード!!」
ケントの掛け声と共に蒸気機関車だったグラディオンが変形し、何時もの人型になり怪獣の目の前に着地した。
「な…なんだお前は?」
「な!?コイツ喋った!?…」
後ろにいるウルトラマ〇に気を取られた隙をつかれ、怪獣が口から火球を撃ちだした。
「甘い!グランシールド」
シールドで防ぎきったが数発の火球が街の方に飛んで行ってしまった。
「やべぇ…邪魔だ!ウルトラマ〇グランバルカン!」
「ドワ!?」
ウルトラマ〇を射線からどかし胸部からグランバルカンを放ち火球を打ち消すが、二発うち漏らし落ちた場所から巨大な火の手が上がってしまった。
「クソッ…グラディオン決めるぞ!」
「あぁ分かった」
「グランブレード!ブレイクザーン!」
グランブレードを構えそのまま怪獣との間合いを詰め、怪獣を両断した。
「被害が広がっちまった…」
両断した怪獣の消滅を確認し、ウルトラマ〇の方に体を向ける。
「お前…一体何者だ?」
「それはこちらのセリフだ、ウェブダイブナイトではないな」
グラディオンとウルトラマ〇が問いを問で返す中、ウルトラマ〇の左手首から光状の剣が現れた。
「殺気?グラディオンこいつやる気だ」
「油断するなケント!」
グランブレードを構え、グラディオンとウルトラマ〇の両者が一気に間合いを詰めた。