機動戦士ガンダム~白い惑星の悲劇~   作:一条和馬

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最終章
【終戦】


 U.C.0093

 

『状況報せ! アクシズはどうか!?』『依然地球に向けて加速中!』『ブライト大佐より入電! 指揮権を本艦に移譲との事!!』『ラー・カイラムが落ちたってのか!?』『慌てるな! ラー・チャターよりロンド・ベル全艦へ! 作戦は続行!! なんとしてもアクシズを地球に落とさせるな!!』『アクシズに取りついた機体がいる!! アムロ大尉のνガンダムだ!』『後続の連邦艦隊到着まで後四〇分!』『遅すぎる!! 連中は地球を見殺しにするつもりか!?』

『大尉! ここは僕に任せて、アムロさんの援護を!!』『死ぬなよ!』

 

 

 

 小惑星アクシズ。

 

 一年戦争から度々続いた争いの中でも重要な意味を持つ戦場の一つ。

 それが今、“本来の歴史”通りに地球へと向かっていた。

 

 小さな違いと言えば、こうしてアクシズの上から地球を眺めている俺が“シャア・アズナブルではない”という事だろうか。

 

「!」

 

 コックピットの中で感傷に浸っていると、背後から鬼気迫る勢いのプレッシャーが押し寄せてきた。あのシルエットは見間違えることはない。アムロ・レイの駈るνガンダムだ。

 

『テリー!!』

 

 乱雑な挨拶と共にビームライフルの光が飛来。それを回避しつつ急接近すると、向こうも間髪入れずにビームサーベルを抜いた。二本の閃光が交差する。

 

「連邦が腐りきっている事は知っている筈だアムロ! それを何故止めようとする!?」

 

 νガンダムをアクシズから遠ざける様に更に肉薄しながらの剣戟。考える前に感じたまま、動く。

“あの”νガンダムにはサイコフレームが搭載されていない。一対一なら勝機はある筈だ。

 

『お前の思考は直線的過ぎる!』

 

「ロンド・ベル以外に連邦の艦隊が集まっていないのが証拠だ! ここでアクシズを落とさなければ、更なる悲劇が待っているのだぞ!?」

 

『これがそうだと!』

 

「何もわかっては……なんだ!?」

 

 上からのプレッシャー。νガンダムの盾に蹴りを入れ、その反動で交代すると、一条のメガ粒子の光が降り注いだ。

 

「サザビー!? シャアか!!」

 

『ニュータイプは神などではない! その世迷い言で何億という命を見殺しには出来ないな!』

 

 νガンダムとサザビーが並び、俺の前に対峙する。

 これは正しくない歴史だ。

 

「シャア! 本来ネオ・ジオンを率いる立場にあるはずの貴様が、何故ロンド・ベルに肩入れする!?」

 

『今の私は、人の革新を信じている! こんな事をしなくても、人類全てに叡智が授けられる日が来るはずだ!』

 

 だが、それで良い。

 後の時代には、きっとこの二人は必要なのだ。

 だからこそ、俺は“シャアの代わり”を決心したのだ。

 

「アクシズを落とそうとした貴様が言うことか!?」

 

『私はそんな事はしない!』

 

「だろうさ! ララァ・スンも、カミーユ・ビダンの心を殺させず、ここまでやってきた!だが歴史はそのままだったのだ!」

 

『貴様の未来予知とやらは、単なる価値観の押し付けでしかない!』

 

『俺たちで止めるぞ、シャア! これはかつての戦友としての最後のけじめだ!』

 

「くそっ……くそっ! アムロとシャアがなんだってんだ! こっちはガンダム乗ってんだぞ!」

 

 機体に内蔵されたサイコフレームが俺の昂りに反応し、緑色のオーラを放つ。

 もう後戻りするつもりなど無かった。

 

 しかし、こうも思ってしまうのだ。

 

 

 

 

 

 どうしてこうなった、と――――。


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