機動戦士ガンダム~白い惑星の悲劇~   作:一条和馬

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第21話【哀 戦士(前編)】

 

「連邦軍のモビルスーツ!? 爆破しきれなかったヤツがあったか!」

 

 友軍の撤退を支援する為に岩陰から飛び出したサレナ・ヴァーンの乗るイフリート・ダンの目の前には、地球連邦軍製のガンダムの量産機“もどき”が一体立ち竦んでいた。

 

 どうやら、こちらの不意接触を強襲と勘違いして思考がフリーズしてしまっているのだろう。

「ふん、新兵が乗っていると!」

 

 バックパックにマウントしていた逆刃のビームサーベルを抜き取る。

 

「まずは、一つ!」

 

 振り下ろす。

 だが、その一閃がモビルスーツを切り裂く事は無かった。

 

「なんだ!?」

 

 それどころか、何かの衝撃に襲われて、イフリート・ダンの方が後ろに仰け反る。

 

 振り上げた切っ先が、半ば程から吹き飛ばされていたのだ。

 

 即座に周囲を見渡す。

 

「もう一機居たか!」

 

 目の前のと同じタイプ、バズーカを装備した“もどき”の砲身が、丁度イフリート・ダンのコックピットに向けられている最中だった。

 

「良い腕をしているが、そこからなら味方も射線軸にあるのよ!」

 

 イフリート・ダンの右回し蹴りが、目の前の“もどき”を揺らした。

 射線上に味方が入った事で、一度バズーカを下ろすもう一方の“もどき”。

 

「その判断が誤りだったな!」

 

 目の前の“もどき”を踏み台にし、上昇。

 一瞬で、バズーカ持ち“もどき”の視界から外れる。

 

「この剣が両刃である意味をその身をもって味わえ!!」

 

 半ばで折れた逆刃のビームサーベルの刃を逆へ。

 実体剣ならば、半分折れた所で範囲が狭まるだけだ。

 接近して斬るには、これだけで充分だった。

 

 

 モビルスーツ一体分の体重を乗せた、縦一文字斬りが炸裂した。

 

 

「今度こそ、一つ……!」

 

~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~

 

 目の前で、ジムが爆発した。

 

「クロイ……?」

 

 クロイ・チョッコーが乗っている筈のジムが、頭から縦に一刀両断された。

 

「クロイイィイィィィィィィィ!!」

 

 ビームライフルを照準も付けずに乱射する。

 

<このプレッシャーは……ッ!>

 

 “また”あの女の思念が飛んできた。

 ビームは、回避されてしまった。

 

<感動の再会とも言うべきかな! ガンダム!!>

 

「なんだと!」

 

 ビームサーベルを引き抜き、接近。

 

 クロイを殺した逆刃のビームサーベルの一本は、破壊された。

 

 いや、アイツが命懸けで一本道ずれにしてくれたんだ。

 

 このチャンス、逃しはしない!

 

 白いイフリートが背中から引き抜いた逆刃ビームサーベルが、俺のガンダムが振り下ろしたビームサーベルと鍔ぜり合う。

 

<君を地球に蹴り落した時に私は満たされた……つもりだった! だが、思い返す度に後悔したのよ……“もっといたぶってやれば良かった”ってね!!>

 

「何を言って……!」

 

<私の為に生きていてくれてありがとう! また私に会いに来てくれてありがとう! また私に殺されて頂戴!!>

 

 イフリートがブースターを吹かしながら突進しようとする。

 

「同じ手が通用すると思うな!」

 

ビームサーベルを両手持ちにし、刃を逸らす様に構え直した。

 直進しようとしていたイフリートがいなされ、ガンダムの後方へと飛んでいく。

 

<何ッ!?>

 

 時代劇などで見る、侍が相手の攻撃を刀で“流す”動作だ。

 

 普通にビームサーベルで斬り合っていたら出来なかっただろうが、向こうが突撃してくるだけなら、もしやとは思っていたのだ。

 

「こっちだって訓練ばかりやってる新米じゃないんだぞ!」

 

 戦場で強敵と戦う緊張感は、既に体験済みだ。

 

 コイツもそうだが、俺は既に08小隊の皆と共にノリス・パッカードのグフ・カスタムとも相対しているのだ。

 

 そして俺はそこでもう一つ学んでいる。

 

 “戦場で戦っているのは、一人じゃない”!!

 

「ヒータ! ミドリ!!」

 

『おうよ!!』

『援護します!』

 

 二人の返事の後すぐに、ジム・ライフルによる銃弾の嵐が白いイフリートを襲う。

 

<また邪魔するつもり!?>

 

 ガンダムと同じか、それ以上の装甲のあのモビルスーツには実弾の効果が低い。

 

 だが、俺の目的は“向こうの気を逸らす”事だった。

 

 察してくれた二人に心の中で短く礼を言いながら、俺は地面に投げ捨てたビームライフルを拾い上げた。

 

<そう言う事!>

 

 しかし、俺がガンダムを振り返らせた時には、白いイフリートは岩陰の向こうへと姿を消していた。

 

 

「逃がしはしないぞ!」

 

『待ちやがれテリー! 目的は敵を追い払う事だろ!?』

「アイツをこのまま逃がす方が危険だ!!」

 

 ヒータの忠告を無視して、俺は一気にガンダムをジャンプさせて岩を飛び越えた。

 

「二人はヨーコを連れてフォリコーンの近くまで後退しろ!」

『テリーくん!』

<一人で行くなんて、さっきと考えてる事違うじゃない!>

「俺もそう思う!」

<え!? 今、もしかして……!>

 

 

 最後にミドリが変な事を口走っていたが、良く聞こえなかった。

 

 

 それよりも、俺が白いイフリートを追う事しか頭になかったからだ。

 

 

~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あいつを、追わないと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~

 

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