機動戦士ガンダム~白い惑星の悲劇~   作:一条和馬

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第一章第四幕~第13独立部隊篇~
第25話【陽動作戦開始】


U.C.0079

 

「………」

 ジャブロー攻略作戦は失敗したものの、脱出には成功した“赤い彗星”ことシャア・アズナブル。

 

 彼は現在ザンジバル級戦艦で宇宙へと上がり。たった二隻で移動をしていた連邦の新造戦艦“木馬”と“黒木馬”の追跡任務に就いていた。

 

 しかし。

 

「……やられたな。木馬と黒木馬は囮だ」

「は? 大佐。今、なんと?」

 

 横にいたザンジバルの艦長がシャアに問いかける。

 

「連中は囮だよ、艦長。本命の連邦主力艦隊は今頃集結して別の場所を目指しているだろうさ」

「では、グラナダにコースを向けているのは、偽装工作だと仰られるので?」

 

 航路を見ると明らかだった。かの二隻は地球の重力圏から脱出するや否や、まっすぐ月へのコースをとっていた。

 月にはキシリア・ザビが治める月面都市グラナダが存在する、ジオン軍重要拠点の一つだ。

 当初はそこが目標だと全会一致で追撃していたのだが、ここにきて赤い彗星は違和感の正体を掴んだらしい。

 

「だろうな。だが、見逃してやる道理もない。この近くにジオンの部隊はあるか?」

「ドレン大尉の指揮するムサイ三隻が本艦と木馬たちの対角線上におります」

「ドレンか……つくづく縁があるな。通信は繋がるか?」

「試してみます。おい!」

 

 艦長が通信官の方へと移動し、話を始めた。

 

 待ち時間の間に、シャアは後ろでずっと黙っていた人物に声をかけることにした。

 

「グラン博士。彼女とモビルスーツの方の調子はどうだ?」

「あ、は、はい!」

 

 グラン博士と呼ばれた細身の技術士官が驚いたように飛び上がる。

 どうやら、急に話しかけられた事で気が動転してしまったらしい。

 

「そう畏まらないでくれ」

「も、申し訳ありません……」

 

 謝罪を一つ入れた後、彼は言葉を続けた。

 

「サ、サレナ少佐ご本人は軽傷で済みましたが、イ、イフリート・ダンの方は騙し騙し、といった所でしょうか。う、動かすだけなら問題ないのですが、サ、サイコミュ装置とEXAMシステムの方が不調で、ジ、ジャブローの時のように全力を出すのは不可能ですね」

 

 しどろもどろに答えるグランだが、彼は過度に緊張している訳ではなく、普段からこういう話し方だった。

 

「二体のガンダムを翻弄した、という話だったな。修理はどのくらいで完了する?」

「つ、月のフラナガン機関から専用機材を持ってきて頂かないと、し、修理は不可能ですね。た、ただ……」

「ただ?」

 

 シャアが聞き返した、その時だ。

 

「大佐! ドレン大尉と通信、繋がりました!」

「そうか! すまんな博士。話の続きは後ほど聞こう」

「は、はい……」

 

 申し訳なさそうに下がるグランを尻目に、シャアは通信官のいる場所へと移動する。

 

「やぁ、ドレン。元気そうだな」

『大佐こそ! またお会いできるとは思っていませんでしたよ! やはり大佐は宇宙(そら)がお似合いですな!』

「ありがとう。所でドレン、一つ頼まれて欲しいのだが……」

 

~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~

 

『緊急連絡! 前方にジオンの哨戒部隊と思われる艦隊を確認! 機動部隊は至急各機体へ搭乗して下さい! 繰り返します!』

「流石にすんなり通してはくれないか!」

 

 ホワイトベース隊と共に第13独立部隊に配属になった俺たちフォリコーン隊は、早速宇宙でジオン軍に進路を阻まれてしまった。

 

 が、これは“囮部隊”としては成功だ。連中がこちらに釘付けになれば、それだけ連邦軍主力艦隊は消耗を抑えて本命であるソロモン宙域まで進軍が出来る。

 

「こちらテリー! 発進準備OK!」

『グレン01も大丈夫だ!』

『リーフ01、いつでも行けます!』

 

 ジャブローでの戦いで壊滅してしまったシャード分隊は部隊員の補充が出来ず、分隊そのものが消滅してしまった。

 

 “シャドー”ではなくあえて“シャード”としてちょっとオシャレ感を演出した中々気に入った名前だったのだが、クロイとヨーコと一緒じゃないシャード分隊なんて同じ物とは言えないので、一人で戦うのは悲しくはあっても後悔はない。

 

『ではテリー少尉から順次出撃していってください! ……え!? か、艦長! ホワイトベースより、後方の追撃部隊を振り切る為、前方の艦隊を速攻で片付けないかと提案が来ています!』

『ブライト艦長の考えに従いましょう! パイロット各位にもそう伝えて!』

『りょ、了解! 各機へ! 本艦後方に敵の追撃部隊が確認されました! 各機はホワイトベースの機動部隊と連携し、前方の敵艦隊を速やかに殲滅して欲しいとの事!』

 

 相変わらず、全部会話が筒抜けなんだよなぁ。

 

「了解だ! ハッチ、開けてくれ!」

『ハッチ開放! カタパルト接続!』

 

 コダマちゃんの言葉に続き、目の前のハッチが開き、眼前に広大な宇宙が広がった。

 

『進路クリア! 発信どうぞ!!』

「テリー行きます!!」

 

 蹴り落とされた忌々しい記憶を思い出しながら、宇宙に戻る。

 ホワイトベース隊の機動部隊は既に部隊を展開させていた。

 

「流石、実戦経験が違うと動きも機敏になるな……!」

 

 アムロに至っては出撃はおろか、ムサイ不意打ちの為に単独で行動を開始している始末。

 

「ま、そうするよな」

 

 戦術に関する話では言えば、アムロの判断は正しい。

 

 が、それ以前に目の前に広がるのはアニメでも見た光景だ。

 

 唯一の障害と言えばイレギュラーな存在である例の白いイフリートだが、それがいないのなら俺は後ろで見ているだけでも勝てる筈。

 

「しかし戦場であればこそ、パイロットの立つ瀬があるというもの!」

 

 ジャブローを脱した時、俺は誓ったのだ。

 

 

 

 この宇宙世紀世界の“歴史”を変える。

 

 

 

 だが、その為には単純に俺自身の力量の向上も必要だ。

 

 眼前のジオン兵には悪いが、踏み台になって貰わねばならない。

 

「各機へ! ホワイトベースのアムロがムサイに強襲を掛ける様だ! 俺達は真正面から突っ込んで派手に暴れて連中の目を釘付けにする! ついてこい!!」

『『了解!』』

 

 二機の先行量産型ジムと、四機のセイバーフィッシュ部隊を引き連れたV字の編隊飛行でジオン艦隊へと突撃する。

 

 ……ふむ、しかしこれをするとなると、やはり後年の“アレ”が欲しくなるな。

 

「後でアムロに相談してみるか……」

 

 そんな事をぼそりと呟いた後、戦闘が始まった。

 

 元々数的不利をものともせずに突破したホワイトベース隊に、俺達の加勢でその差が埋まったのだ。

 

 負ける要素がなかった。

 

 

~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~

 

 

『敵をかく乱させる為に、サイド6に寄港、ですか』

「はい」

 

 モニターに映るフォリコーンの艦長、マナ・レナに対して、ブライトは頷いてから続けた。

 

「我々の目的は陽動と悟られない様に移動しながら、最終的にソロモン攻略艦隊に合流する事です。ここいらで中立コロニー地帯のサイド6に寄ればジオン側も混乱するだろうし、何より、時間稼ぎになります」

『仮にジオンと会敵しても、戦闘は避けられると……。分かりました、その手で行きましょう』

「では、ミライ。進路をサイド6に向けてくれ」

「……了解」

「……そう言えばマナ艦長」

『どうしました?』

「いえ、その……階級的にはそちらが上ですのに、本当に自分が指揮を執っても宜しいのでしょうか?」

『あぁ、その事ですか。構いませんよ。……所詮私の階級なんて、お飾りですし……』

「中佐……」

 モニターの向こうに見える彼女の顔には陰りがあった。

 明らかにジャブローで言われた事を気にしている。

 

『そ、それに! 私は年齢でも実戦経験でもブライト艦長には勝てていないので、こういった判断はお任せした方が良いかなと思っているんです』

 

 でも、とマナは続ける。

 

『何かあった際の責任はきっちり私が負います。それが正しい“上官”ですからね!』

「ありがとうございます」

『それでは』

「えぇ」

 

 フォリコーンとの通信を終え、正面を見据えるブライト。

 

 目の前には小さく、コロニーの集まる宙域が見え始めていた。

 

「サイド6見えました!」

「よし、進路そのまま! 13独立部隊はこれよりサイド6へと寄港する!!」

 

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