機動戦士ガンダム~白い惑星の悲劇~   作:一条和馬

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第38話【ソロモンの亡霊】

 

 ソロモンを総攻撃する連邦の“チェンバロ作戦”は無事に成功し、ソロモンは“コンペイ島”と名を改めた。

 

 俺のプロトタイプ・ガンダムとアムロのガンダムもそこで改修を受け、関節部分にマグネット・コーティングを採用。運動性の向上に成功した。

 

 

「で、このプランを試してみたいんだけど……」

「い、良いですけど……」

 

 

 俺が持ってきた『新プラン』に対し、グラン博士は微妙な反応を見せた。

 

 その名も“セイバー・フィッシュ・カスタム”。略してSFC。ゲーム機じゃないぞ?

 

 “カミカゼ”を作っている時に余ったセイバー・フィッシュのミサイル・ポッドをそれぞれ両肩と両足の四カ所に装備する現地改良型だ。

 

 戦っていて思ったのだが、俺はよくビームライフルを投げ捨てる“癖”があった。

 

 どうも「斬った方が早い」という安直な思考に陥る様で、手持ち以外の遠距離兵器がどうしても必要だったのだ。

 

 また、セイバー・フィッシュのパーツを流用していると言うことで、戦場で弾切れを起こしても容易にパージ出来る点から考えても非常に有用な筈なのだが、我らの技術主任殿の表情は優れない。

 

 

「グラン博士。何が不満なんだ?」

「い、いえ、そ、そのですね……あ、安直だなと」

「安直ぅ?」

 

 

 それの何がいけないのだろうか?

 

 

「カ、カミカゼやトロイア・ドッグには、じゅ、従来のモビルスーツ運用とはかけ離れた、ざ、斬新な設計思想がありました……が、こ、この改造プランは凡人でも思いつくようなシンプル過ぎる案なので、そ、その……や、やる気でないなぁと……」

「遊びで戦争やってんじゃないんだぞ!?」

 

 

 あまりにも幼稚すぎる理由に俺は思わず天を仰いだ。

 

 

「……一応聞くけど、どういうのならやる気でるのさ?」

「む、胸にライオンのパーツでも着けます?」

 

 

 いらねぇよ。

 

 

~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~

 

 

「亡霊、ですか?」

「そうだ。ソロモン……コンペイ島周辺の艦隊が次々と謎の攻撃で撃墜されている」

「謎の攻撃……ん?」

 

 

〈ラーーーーーーーーー……〉

 

 

 ホワイトベースのブリッジでブライトから報告を聞いたアムロはその時、“声”を聞いた。

 

 

「今の声……?」

「アムロも聞こえたのか!?」

「ブライトさんも……?」

 

 

 アムロとブライトだけではなく、ブリッジのクルーの何人かも顔を歪ませ、皆同じ方向に目を向けていた。

 

 

「僕、見てきます」

「頼めるか?」

 

 

 そこからの行動は早かった。

 アムロを乗せたガンダムはコンペイ島に駐留していたホワイトベースから発進し、宇宙へと飛び出した。

 

 

〈ラーーーーーーーーーーー…〉

 

 

『アムロ!』

「テリーさん!?」

 

 

 謎の“声”に導かれたのはアムロだけではなかった。

 “SFC”に換装したテリー・オグスターのプロトタイプ・ガンダムが横に並ぶ。

 

「テリーさんもあの“声”聞こえましたか!?」

『あぁ、例の“亡霊さん”からだな! どうするつもりだ!?』

「分かりません……でも、確かめないと!」

『アレックス含めて他のモビルスーツは出せないらしい! 敵だと俺たち二人でなんとかするしかないぞ!!』

「でもこの感覚……僕は、どこかで……?」

 

 

 記憶を頼りに“感覚”の正体を探る。

 

 

 その時、宇宙が光った。

 

 

~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~

 

 

〈ラーーーーーーーーーーー…〉

 

 

「畜生! ついにこの日が来てしまった!!」

 

 

 ソロモンの亡霊。

 

 そう呼ばれる存在の正体を、俺は知っていた。

 

 

 ララァ・スンの駆るモビルアーマー“エルメス”

 

 “光る宇宙”の正体はエルメスの操るサイコミュ兵器“ビット”だ。

 

 

 一年戦争において、恐らく一番後年の歴史に影響がある日だ。

 

 ララァ・スンの“死”はシャア・アズナブルの心に深い傷を負わせ、後に『地球寒冷化作戦』を思いつかせる原因となる。

 

 それだけは何としても阻止せねばならない。

 

 この“事件”さえなければ、アムロとシャアが袂を分かつ理由が無くなるのだ。

 

『見えた! 尖がり帽子!!』

「ッ!」

 

 装備の関係で重くなったのを差し引いても“感度”の差でアムロが先に“尖がり帽子”ことエルメスを発見してしまう。

 

 こればかりはどうしようもない。

 

 ならば俺に出来る事は何か?

 

 さっさと戦闘を終わらせ、どうにか穏便にシャアとララァを見逃す。これに尽きる。

 

 

<!>

 

 

「来た!」

 

 

 言葉が走った方向にビーム・ライフルを放つ。

 

 小規模の爆発。

 

 ビットを一基撃破。

 

 

「最初からタネのバレている手品など!!」

 

 

 右肩のミサイルを三発発射する。

 

 狙いはエルメス本体だ。当然、察知しているであろうララァはビットでそれを迎撃。

 

 だが、俺の狙いは最初からビットただ一点。ミサイルを撃ち落とす為に足を止めたビットに立ち続けビームライフルを打ち込み、更に二基ビットを破壊した。

 

 

<!>

 

 ビットとは違う“感覚”が上から一つ。

 

 

「やっと戦場で会えたな! シャア・アズナブル!!」

 

 

 それは“本物”の赤い彗星が乗る、専用カラーのゲルググだった。

 

 

「折角の機会だ! 手合わせ願おうじゃないか!!」

 

 

 ララァが死んだのは、彼女とアムロ、シャアによる三つ巴にセイラさんが紛れ込んだからだ。

 

 ララァを助ける為の手段の一つは……ここで俺がシャア・アズナブルを止める事。

 

 

「チッ! 他の雑魚兵とは明らかに動きが違う!!」

 

 

 ノリス・パッカードとの戦いは、08小隊の面々のお陰で何とか勝てたもの。

 

 ジャブローで戦ったイフリート・ダンは部下であるヨーコの決死の特攻で何とか追い返せたもの。

 

 バーニィとの戦いはそもそも“倒す”のが目的ではなかった。

 

 そして先のソロモンで倒したアナベル・ガトーは、不意討ちのようなもの。

 

 つまり、正面切って単機でエースパイロットと勝負するのは、これが最初だった。

 

 

「なんて皮肉だろうな……!」

 

 

 この宇宙世紀時代に“シャアのそっくりさん”のテリー・オグスター君に憑依する形で転生し、最初にガチンコ勝負するエースパイロットが“本物のシャア”とは!

 

 シャアのゲルググが放つビーム・ライフルを避けながら、ミサイルをばら撒く。

 

 先読みして攻撃している筈だが、赤い彗星は時に敢えて誘う様な動きを見せながら全て回避していた。

 

 

<!>

 

 

「ッ!?」

 

 

 そこに更にビットによる援護射撃。

 

 アムロが何基か撃墜した様だが、まだ残ったのが俺の周りを飛んでいた。

 

 

「アムロと対話しながら俺と戦うシャアの手助けまでするか! 全く、覚醒したニュータイプってのは怖いな!!」

 

 

 ビット目掛けてミサイルを発射する。

 

 今度は撃墜せず、ビットはミサイルを回避。

 

 

「それも読んでいる!」

 

 

 間髪入れず、自分の撃ったミサイルを後ろからビームライフルで貫いた。

 

 爆発に巻き込まれ、ビットが更に一基……いや、二基撃墜!

 

 

「残り二基!! つおっ!?」

 

 

 ミサイルの爆発の中から飛んでくる赤い影。シャアのゲルググがビーム・ナギナタを構えこちらに突っ込んできた。

 

 シールドを投げ、一瞬の油断を突いた所でその場から移動する。それと同時に左手でビームサーベルを引き抜き、回転する様に投擲。

 

 やはり、ビットやファンネルの様な遠隔操作兵器に対する必殺と言えば“コレ”だろう。

 

 

「ビーム・コンヒューズ!!」

 

 

 ビット、全基撃墜。

 

 

~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~

 

 

「あの黒いガンダムもやるものだな……!」

 

 

 ゲルググのコックピットの中でシャア・アズナブルは戦慄していた。

 

 こちらの攻撃を全て回避するだけに留まらず、新型兵器ビットに的確に対処していたのだ。

 

 特に最後の一撃……ビーム・サーベルのIフィールドでビーム・ライフルのビームを拡散させてビットを破壊する行為など“ビットの存在を知っていないと思いつかない対処の仕方”である。

 

 どうやってか事前に調べたか、或いはその場で即興で思いついたかはさておき、目の前のガンダムが“白いガンダム”に匹敵するレベルの強敵である事は容易に想像が出来た。

 

 

「チッ……ララァの援護に行かねばならんというのに!!」

 

 

 黒いガンダムの脚に装備されたミサイルを避けながら、シャアは歯嚙みする。

 

 ライフルにミサイル、そしてサーベルを織り交ぜる多彩な攻撃は実に厄介極まりない。

 

 

「これだけの攻撃を同時にこなすか……あのパイロットはララァと同等のニュータイプだとでも言うのか!?」

 

 

 ビーム・ライフルの偏差で発射。

 

 一発目、回避。

 

 二発目、回避。

 

 三発目、爆発。

 

 

「やったか……!? いや、違う!」

 

 

 当たったのは、ガンダムの肩に装備されていたミサイル・ポッドだった。

 

 直前にパージし“敢えて”破壊させたのだ。

 

 敵の狙いを察知し、すぐさまその場から移動する。

 

 が、一瞬遅かった。ガンダムのビーム・サーベルが肉薄し、ビーム・ライフルを手に持っていた右腕を肩部分から切断されてしまう。

 

 

「まだだ! まだやられんよ!!」

 

 

 背中にマウントしていたシールドを捨て、機動性を確保。

 

 どうせ残った左手にはビーム・ナギナタが握られている。後生大事に抱えても使えなければ意味がない。

 

 

「私とて意地というものは持っているつもりだ!」

 

 

 ビーム・ナギナタを振り回しながら黒いガンダムへと肉薄するシャア。

 

 

 その時だった。

 

 

<!!>

 

 

「なにっ!?」

 

 

 言葉が、走った。

 

 

 シャア・アズナブルは“この時点”ではニュータイプとしての覚醒は果たしていない。

 

 故に、アムロやララァ、テリーの“思念”を感じる事は不可能だった。

 

 

 だが今。

 

 

 このソロモンに、ニュータイプでないシャアがはっきり感じれる程の“悪意”が近づいていたのだ。

 

 

「今のプレッシャーは一体……?」

 

 

 周囲を見渡す。

 

 黒いガンダムもこの“悪意”に気が付いた様で、こちらへの攻撃を止めていた。

 

 

『た、大佐!』

「ララァか!?」

 

 

 それどころか、ララァのエルメスと白いガンダムすら戦闘を中断する始末。

 

 

『アレは……“あの人”はとても危険です!』

「あの人……?」

 

 

 “悪意”をひしひしと感じる場所にカメラを向け、最大望遠。

 

 

「あれは……イフリート・ダン? ……サレナ・ヴァーン少佐なのか?」

 

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