機動戦士ガンダム~白い惑星の悲劇~   作:一条和馬

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『MEN OF DESTINY』

 

U.C.103

 

「ちょ、ちょっと待ってください!」

 

 初めて、センセイの話を途中で区切ってしまう。

 

 それほどまでに違和感を顕著に思える言動を“彼”がしていた事を知ってしまったからだ。

 

「どうした?」

「彼は……テリー・オグスターは当時連邦の一軍人ですよね? それが何故、コロニーレーザーの存在を……?」

「それに関しては、わからん」

 

 

 センセイは、はっきりとそう言った。

 

 

「そもそも、彼の言動はたまに常軌を逸脱していた。所属する第13独立部隊の艦長達でも全く知らされていなかったサイド6のNT-1アレックスと核攻撃への迅速な対応の提案。宇宙要塞ソロモンへの“着ぐるみ侵入作戦”。特に後者は赤い彗星が……“本物”のシャア・アズナブルがソロモンに居ないと“確信”していなければ思い付いても実行に移そうなどと思わないはずだ。それを」

「やり遂げた、と」

「うむ」

 

 

 センセイの言葉に驚愕し、絶句してしまう。

 

 所以は分からぬが、テリー・オグスターは“未来”を知っていたのだ。

 

 

「馬鹿な話だと思うかもしれないが、テリー・オグスターは“悲劇”を回避したかったのかもしれない」

「悲劇を回避……? 地球にアクシズを落とした、あの男がですか!?」

 

 

 地球を人の住めない“白い惑星”に変えた男。

 

 作物は勿論、当時地球に居た生命体の三割を一瞬で死に至らしめ、その後の“核の冬”で更に多くの人命を奪った男。

 

 そんな男が、未来を“知っていた”上でアクシズを落としたと?

 

 笑えない冗談にも程があった。

 

 

「……皆がそう思うだろうから、この話を十年以上誰にも言わなかったのだ」

「あ……」

 

 

 しかし“真実”を知るというセンセイの目は、あくまでの誠実だった。

 

 そして自分はその“真実”を知る為にやってきた、というのを改めて思い出す。

 

 

「申し訳ございません、センセイ。折角の貴重なお話を遮る様な事を……」

「構わんさ。我々は“本当の未来”を知っているからそう言える。彼が“未来”を知っていた云々はさておき“今の未来”を知らなかったのは当然だろう。……知っていれば、あの“白い惑星”を自らの手で誕生させた等と分かっていれば、私ならすぐに自害してしまうかもしれない……」

「……」

 

 

 しばしの沈黙が続く。

 

 時計の針は既に、21時を過ぎていた。

 

 

「さて、話も大詰めだ。“テリー・オグスターの一年戦争”を締め括ろうじゃないか」

「こんなに長くなるとは、思いませんでしたがね」

「一日で語りきれる程の人生を送っていた訳じゃないさ」

 




あとがき。

 こんにちは、一条和馬です。


 遂にソロモン篇が完結致しましたね。


 更に転生系の華とも言うべき『歴史改変』を今回本格的に行いました。


 それが『0083』組の『シーマ・ガラハウの離反』と『アナベル・ガトーの敗北』です。不死身の第四小隊は出したかったから出しました。


 個人的に0083は宇宙世紀OVAで一番好きなので早く出したかったと言うのもありますが、後のデラーズ紛争どうなるのか自分でも心配です。


何を隠そう、一年戦争篇以降はまだ曖昧にしかお話を組んでおりません(滝汗)




 それはさておき、ララァ・スンの死亡フラグを見事に叩き折り、また序盤からずっと付き纏われていたオリジナルキャラ、『サレナ・ヴァーン』との決着も着きました。


 もう登場しないので裏話をぶち込みますが、彼女は開始当初には影も形もなく、また、一年戦争篇も『ルナツー出発』~『チェンバロ作戦』まですっ飛ばす予定でした。


 一年戦争篇は所謂『プロローグ』なので特別視していなかったのですが、気が付けば随分長い序章になってしまいました。


 とまれ08小隊に臨時入隊出来たのも、ジャブロー篇が出来たのも、アレックスに乗ってバーニィのザクと殴り合い出来たのも全て彼女のお陰だという事です。


 さて、後はア・バオア・クーで大暴れして終わり……なのですが。


 この作品を最初からご覧になっている皆様は当然ご存知と思われますが、この作品は「ガンダム世界に転生したからご都合主義で暴れ回ってハッピーエンドにしてやるぜ!」ではなく「ガンダム世界に転生したらかハッピーエンドにしようとしたけど紆余曲折あってアクシズ落としたぜ!!」な作品です。毎回落下阻止されるアクシズ君の気持ちにもなってあげて!


 ……困った事に想定より“良い奴”になってしまったのでこのままではアクシズ落とさないで終わりかねないのですが、ちゃんと落とさせるのでご安心(?)下さい。


 それでは次回の第一章終幕のあとがきで、また会いましょう。


 君は生き残ることが出来るか!

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