機動戦士ガンダム~白い惑星の悲劇~   作:一条和馬

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『一日の終わり』

 

 

 

U.C.0103

 

「モビルスーツ単機で特攻? センセイ、それは流石にお話を盛り過ぎでは?」

 

「では七機くらい居たなら信じたかね? 残念ながら事実だよ。一年戦争終盤、彼と“もう一人の誰か”が単独でジオン公国軍の最終兵器“ソーラ・レイ”を強襲。アニメじゃないんだ。もちろん止められるはずもなく、結果として地球連邦艦隊はレビル将軍含めた全体の“六分の一”を消滅させられ、決戦前の再編を余儀なくされた……」

 

「ア・バオア・クーでの戦い……連邦軍は“星一号作戦”と呼んでいたものですね」

 

「そうだ」

 

「しかし解せませんね。聞く限りテリー・オグスターは“和平交渉に入っていたジオン軍側を独断で刺激し、ソーラ・レイを撃たせた重罪人”です。そんな彼がグリプス戦役以降まで生きていられるとは到底思えません」

 

「悪運の強い男でなぁ……。ソーラ・レイの周りで囲まれた状態で、連邦軍主力艦隊が総攻撃をするまでの約6時間の間、粘りに粘って中破で済んだのだよ」

 

「意味が分かりません……」

 

「それでも一年戦争中は一番損害を受けたというのだから驚きしかない。そして無事連邦軍に回収された訳だが、彼を待っていたのは禁固40年の刑だった」

 

「和平交渉をズタズタにしたのですから、即射殺じゃないだけ温情だと思いますが……」

 

「そう。“あの時”即射殺していれば、少なくとも地球が“あんな事”にはならなかっただろうよ」

 

 

 そう言ってセンセイと共にフォン・ブラウンの都市の向こうに見えた“白い惑星”に目を向けた。

時折“かつての地表”の覗かせはするが、それすらも真っ白に変わってしまった、死の星。

 

 

「だが君が本当に聞きたかったのは“ここから”なのだろう?」

 

「えぇ。“グリプス戦役”に二度に渡る“ネオ・ジオン抗争”。その“真実”を、是非」

 

「今の話だけでも、彼が大量虐殺を行う“兆し”があったように思えるが?」

 

「所詮歴史の“点”に過ぎません。私が知りたいのはですねセンセイ。“線”なんです。彼が辿った足跡全てです」

 

「ふむ……その真実に対する貪欲さ……やはり君を選んで正解だったようだ」

 

「“こんなもの読者は求めていない”と何度も企画を跳ね返された者の末路ですよ」

 

「それは“歴史を都合よく書き換えたい者”の言葉だよ。大衆を動かすには重要だが、だからといって後世にまで“嘘”を教えれば、また歴史は繰り返すだろう」

 

「この十年、戦争は起きていないんですよ?」

 

「一年戦争が始まるまで半世紀は戦争が無かったのだ。歴史なんてそんなものだ」

 

「あ……」

 

 辛辣ではあるが、確実に“的を得た”発言に思わず口を紡いだ。

 

「……だが人一人の“足跡”を語るには、一日は短すぎる。続きはまた明日で構わないか?」

 

 

 センセイに促され時計に目を向けると、時刻は既に夕刻を過ぎていた。

 

 

 ……“夕日”というものを人類が見る事が出来るのは、果たして何百年後になるのだろうか。

 

 

「そうですね。それでは本日はこの辺で。また明日の朝お伺いします」

 

「うむ……あぁ、そうだジョナサン君。宿泊先は決めているかね?」

 

「今から探します」

 

「経費は?」

 

「フォン・ブラウンに来るまでしか出してもらえませんでしたよ。実費です」

 

「なら、丁度いい。隣の部屋を好きに使いたまえ」

 

「よろしいのですか?」

 

 

 それは願ってもない話だった。

 今からホテルを予約しようとしても、土地勘のない自分ではまずタクシーを捕まえる必要があった。運よく一件目で止まれれば良いが、そんな保証もなく、また情けない事に懐も潤っているとは言えない。従軍時代の乾燥した軍用食ですら恋しく成る程に生活に詰まっていたのが現実である。

 

 

「言ってなかったかね? 私はこの“アパート”の大家なんだ」

 

「初めて聞きました」

 

「やれやれ。君は一体私の何を知ってここまで来たのかね?まぁいい。机の上にある赤い鍵がそうだ。前の住民の家具がそのまま残ってるが気にしなくて良い。なんなら気に入ったものは持ち帰ってくれても構わんよ」

 

「それは……見てから考えます」

 

「遠慮しない所は評価する」

 

「遠慮なんて言葉、十年振りに聞きましたよ」

 

「それもそうだ。では、また明日」

 

「はい、お休みなさい」

 

 

 センセイに別れを告げ、すぐ向かいの部屋の鍵を開ける。

 

 

 直後に後悔した。

 

 

 住民が居ない、とは聞いていたが“いつから居ない”か聞きそびれたのだ。

 

 埃塗れになった部屋の中で茫然と立ち尽くす事約10分。仕方なく寝室周りだけ片付け、ほのかに臭う固いベッドの上で一夜を過ごした。

 

 その夜は久しぶりに、従軍時代の夢を見た。

 

 

 忘れもしないU.C.0083。

 

 今では考えられない灼熱のオーストラリアの大地に降り立った、“あの日”の事をーー。

 

 

 




あとがき


遅れてもーーーーーーーーーし訳ない。一条和馬です。


ちょっと色々事情が重なりまして(活動報告にあるので割愛します)三カ月ハーメルンのサイトを開く事も叶いませんでした。ほぼ日刊更新の記録が、しかも最終回で途切れる等なんたる勿体なさでしょうか。


それはさておき、本来サクッと終わる筈だった“一年戦争篇”にようやくピリオドを打つ事が出来ました。


作中で“センセイ”が申す通り“テリー・オグスター”君の活躍はグリプス戦役、つまり“Zガンダム”以降が本番です。下地をこれでもかという程にねるねるねるねしたので、きっと明日以降の私が上手い事火を通してくれると信じています。


しかし更新が滞っていた理由の一つとして“0083篇が何も思い付かない”と言うのがありましたが。それは先日リアルの友人(種世界でエスコンやACでやりたい放題してるあの人です)と会話してる最中にビビっと来たものがあるので、それをチマチマ書いていこうかな、と思います。


それと一年戦争篇完結記念、という訳ではありませんが、登場人物などをまとめた自分用の設定資料を作品の冒頭に差し込もうと思います。このあとがきが完成してからまとめようと思っているので、今時点では何もしてません。Z篇以降のネタバレがあるので、それを引っこ抜いて再編しないといけないのです。


とまれ、一旦とは言え、完結。
しかし、もちろん戦いは続きます。
あの後「テリー君どうなっちゃうの?」とか「なんや最後の意味深なズッコケ三人組」とかあると思いますが、ちょっとでも続きを楽しみにして頂ければと思います。


それでは長時間のご視聴……じゃないな、ご読了、ありがとうございました。

最後もこの言葉で〆ましょう。


君は生き残る事が出来るか!?


一条和馬
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