機動戦士ガンダム~白い惑星の悲劇~   作:一条和馬

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U.C.0083.10月30日

 現世から隔離されたこの場所だが、一応は軍が管轄する施設と言うだけあって、戦闘関連の話題の噂に関してはよく耳にする事があった。

 とはいっても、各地で小規模ないざこざがある程度で、どこも暇を持て余しているらしい。

 この時期の事件と言えば『デラーズ紛争』だが、何年か前にある筈だったエリク・ブランケ率いる“インビジブル・ナイツ”の“水天の涙作戦”があるが、どうもどっかでフラグが折れたらしく、そう言った噂は流れてこなかった。

 いやまぁ実を言うとガンダム戦記はPS2版のやつしかやった事ないので、水天の涙作戦がどういうのかは知らないのだが。

【テリー・オグスター獄中の個人日誌より抜粋】



第05話【ジオンの戦士達】

~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~

 

 目が覚めた時、“男”は自分が良く知る“空想上の世界”にいた。

 

 彼は根っからの“ジオニスト”と呼ばれる人種。

 腐敗した地球連邦に憤りを覚え、打倒の為に立ち上がったジオン公国に憧れと羨望の眼差しを向け、また、モビルスーツのデザインに関してもコスト重視の手堅い設計の連邦のジム系より、創意工夫を感じるジオンのそれにロマンを感じていた。

 

 故に、最初に“男”の意識が目覚めた時、目の前に静かに横たわる“ザク”を見た時、彼は大層喜んだ。

 

 期せずして、憧れの世界の、憧れの陣営にいたのだ。

 

「しかし、奇妙な世界だ……」

 

 ガンダム2号機のコックピットの中で、連邦の制服に身を包んだジオンの兵が一人呟いた。

 

「ガトーがソロモンの海に散り、デラーズもア・バオア・クーで戦死……。それだけかと思えば何故か08小隊がトリントンにいる。やれやれ、これでは過剰だと思っていた『戦力増強』も少々頼りないかな……?」

 

 “男”の目が覚めた時、一年戦争は既に終わっていた。

 

 自分がガンダムを打倒し、歴史に大きな爪痕を残す……事は叶わなかったが、それでも“男”は諦めなかった。

 

 赤い彗星という“器”を借りた“男”は奔走した。休戦協定後も各地で奮戦するジオン兵となんとか渡りを付け、“本来のデラーズ・フリート”に近い戦力を味方につけた。そう、彼は“エギーユ・デラーズ”であり、“アナベル・ガトー”でもある“シャア・アズナブル”だった。

 

『“大佐”。友軍が敵の後詰部隊と会敵したそうです』

 

 霧の向こうをゆっくり歩いてくる機体があった。イフリートと呼ばれるモビルスーツの一機“イフリート・ナハト”だ。

 

「うむ。……しかしあの基地にはソロモンで暴れ回った“不死身の第四小隊”のエースパイロットがいると聞いた。“彼”一人に任せて良いものだろうか……」

『それならば、我ら“インビジブル・ナイツ”にお任せを』

「しかし、まだ君達を舞台に上げる予定ではなかったのだがね……」

『客の期待には、サプライズを以て答えなければなりますまい。……それに、“大佐”からお誘い頂けなければ、我らはもうとっくに“星屑”になっていたかも知れないのです』

「しかし、君達まで捨て駒の様に扱うなど……」

「“大佐”は星の屑作戦成就の事だけを考えてくだされば良いのです。……それでは」

 

“男”に気を使ってくれたのか、イフリート・ナハトのパイロットはそこで言葉を区切り、霧の中へと消える。

 

~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~

 

「でやあぁぁぁぁぁっ!」

 

コウ・ウラキが操るガンダム1号機のビームサーベルが目の前の敵へと振り下ろされた。

陸戦型ゲルググはビームナギナタの刃でそれを正面から受け止める。

 

「馬力ではこちらが上の筈なん………うわぁっ!?」

 

 しかし鍔迫り合いの最中、陸戦型ゲルググは後退。そのまま霧の中へと姿を隠す。

 

『足を止めたら的になる事を理解しているな。ウラキ、キース! 相手は相当な手練れだぞ、隙を見せるなよ!』

『そ、そんな! アレン中尉をやったドムだってまだ仕留められてないのにでありますか!?』

『ビビるなキース! それこそ敵の思う壺だ! 連中の目的がただの時間稼ぎである事を忘れるな!!』

「では、このまま突撃しますか!?」

『…よし、次に奴が来たら俺が組ついてでも動きを止める! 二人で2号機を追え! エレドア少尉!』

『3時の方向!距離20!……ん!?いや待て! 11時方向からもう一つ! 早いぞ!』

 

 後方から“目”の役割をしていたホバートラックから警告が飛んでくると当時、霧の向こうから紫色のモビルスーツが現れ、そのままバニングの乗るジム改に突撃。姿をくらませた。

 

『なにぃ!?』

「バニング大尉!」

『俺に構うなウラキ! 行け! キース! ウラキのケツを守ってやれ!!』

「くっ…! 行くぞキース!」

『お、おう!』

 

 上官を援護したい気持ちは確かにあったが、ここで足止めされてはそれこそ今までの“犠牲”が無駄になる。ウラキはなんとか己に言い聞かせ、キースの乗るザクを連れて追撃を再開した。

 

『こちら8小隊のカレン! “スカート付き”を一体殺った!』

『カレン中尉! 私も2号機を抑えに行くわ!』

『ヒータ少尉も連れていきなマッケンジー大尉! 行けるかい少尉!?』

『任せてくれ隊長! 行くぞクリス!』

『えぇ!』

 

 

~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~

 

 

「状況は⁉」

「バニング小隊、08小隊が海岸線沿いでジオン残党軍と会敵、交戦中です!」

「ぬぅ……流石終戦からずっと暗躍していただけあって、逃げるのは得意という事か……!」

 

 初撃のミサイル攻撃で航行不能に陥ったアルビオンのブリッジで、シナプスは焦りの表情を隠せずにいた。

 

 

「艦長! マッケンジー大尉から入電! 2号機の確保に成功!」

「核弾頭は⁉」

「確認します!」

 

 

 “2号機確保”という言葉にクルー達の表情が和らぐが、シナプスは内に抱える不安をどうしても拭えなかった。

 

 

「妙だな……あそこまで完璧に2号機を奪取しておいて、大気圏脱出用シャトルを破壊された程度で諦めるのか……?」

 

 

~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~

 

 

「やっぱりな……! 連中、核弾頭とバズーカだけ持って乗り捨てやがったんだ!」

 

 ウラキやクリス達が海岸に到着した時、ガンダム2号機は切り立った岩を背に横たわっていた。一応、中にパイロットがいる可能性を考慮して一番実戦経験が豊富なヒータが2号機に生身で接近すると、中は完全にもぬけの殻だった。

 

『爆発物が仕込まれていないかちゃんと確認するのよ』

「いや、それらしいものはないな」

 

 コックピット内部の計器を確認しながら、ゆっくりと2号機を立たせるヒータ。

 

「しかし厄介だぞ。目立つ“目印”だけ置いて雲隠れされた様なモンだ」

『では、周囲の警戒を再開します!』

「無駄だよルーキー。わざわざモビルスーツを置いていったんだ。近海に脱出艇を用意していたと考えた方が良い。とりあえず“2号機奪還”という最低限の任務はこなせたんだ」

『それに、カレン中尉達はまだ戦闘中みたいだし、そっちの援護をした方が良さそうね』

「よし、今度はオレが先導だ! ジオン共にこのガンダムを乗り捨てた“勿体なさ”ってのを叩き込んでやらねぇとな!」

 

 

~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~

 

 

「……よろしかったのですかな?」

 

 

 ユーコン級潜水艦の艦長がそう切り出したのは、核弾頭搭載のバズーカ砲と“大佐”を回収し、オーストラリア近海から移動を開始し始めた頃だった。

 

 

「何がかね?」

「新型モビルスーツの件です。アレの確保こそ、本作戦の“肝”だと思っていましたが」

「モビルスーツ一体とバズーカ一つだけで比べれば、遥かに軽く運ぶのが容易だろう?」

 

 

 対して“赤い彗星”の制服に着替えた“大佐”は表情を変えずに続けた。

 

 

「殿を買って出てくれた同志の為にも、“星の屑作戦”はなんとしても成功させなければならない。それに、核を撃つだけなら他のモビルスーツでも代用できる。南極条約締結前の戦闘を知らない訳ではないだろう?」

「初期型のザクですか。……まさか“大佐”自ら?」

「必要に迫られればな。が……気にする事もあるまい。どうせ“アニメの世界”だ」

 

 

 最後の一言は誰の耳にも届くことはなく、オーストラリアの海の中に沈んでいった。

 




一言近況報告的な

Gジェネレーションクロスレイズがとても時間泥棒です。
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