U.C.103
「……夢か」
硬いベッドから身を起こしたジョナサン・クレインは、自身の過去を夢で追体験していたことを悟った。
まだ彼が地球連邦軍でモビルスーツパイロットをしていた頃に巻き込まれた“ガンダム強奪未遂事件”は戦後停滞していた連邦軍組織図を大きく震撼させた。
その中の一つが、“ティターンズの結成”である。
ジオンの様な反地球連邦思想を持つテロリストを鎮圧する独立治安維持部隊、という名目だったが、実際はアースノイド、つまり地球生まれのみで構成されたエリート達がスペースノイドや他の連邦の一般兵すらゴミの様に扱う、最低最悪の独裁者の傀儡だった。
どういう訳か、そんな兆しをいち早く感づく事が出来たジョナサンは軍を辞め、フリージャーナリストとして点々としている中で、テリー・オグスターという男に興味を引かれた、というのがU.C.0083以降の彼の主だった人生である。
彼の経緯はさておき、今はテリー・オグスターの歴史だ。
一年戦争中に身柄を連邦軍に拘束されていた彼のデータが不自然なまでに抹消されていた事実は未だ謎だが、センセイであればその答えも知っている気がする。そんな自信がジョナサンの内にはあった。
「今日はグラナダを移動しながら取材してみんかね?」
朝食にと出されたトーストとコーヒーを食べ終えた後にそう切り出したのは、センセイだった。
「私は構いませんが、よろしいので?」
「今から語るのは、独裁を敷いたティターンズを壊滅させた英雄達の話ではない。その中で地球を“あんな風にしてしまった”男の過去。その核心に迫るものだ」
それに、私はドライブが趣味でね。そう付け足したセンセイは古びたシャツの上からコートを一枚羽織り、アパートから出て行ってしまう。ジョナサンが急いで後を追うと、センセイは既にアパート一階の車庫の前まで移動していた。錆び付いたシャッターを開けると、年代物のクラシックカーが姿を見せる。
「……君は“シーマ・フリート”をご存知かね?」
グラナダ市内を車で移動し始めてから、数分の沈黙の後、センセイはようやくその重い口を開いた。
「旧ジオン軍の士官、シーマ・ガラハウが自信の部下である海兵隊や、一年戦争後に各地でゲリラ活動を繰り広げていた残党を共に結成した宇宙海賊の事ですか?」
「そうだ。連邦にティターンズ結成を後押しさせた、諸悪の根源……と、言われている」
「ティターンズの悪行が明るみになった今では、それはただの言いがかりの一つでしょうね」
「その通り。彼女らは……方法は褒められたものではないが、少なくともザビ家よりははるかにスペースノイドの未来を案じ、自身の自由と未来の為に戦っていた……」
こうしてまた、センセイはぽつぽつと語り出した。
~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・
第01話【脱獄】
U.C.0087
一年戦争終結から7年の歳月が経った。
「23番、面会だ」
「面会だって? 今まで一度もなかったのに?」
真っ白な独房にも慣れ、窓の外に見える宇宙空間も珍しくなくなっていた俺にとって、それは久しぶりの『外の刺激』だった。
「偉い人だ。待たせるんじゃないぞ」
「お前のお袋でも来てるのか?」
「生意気言うな!」
面会室へと移動する途中で看守を煽ってみるが、殴られなかった。いつもなら殴られる筈なのに。そう考えた俺は本当に“偉い人”が来ている事を察した。
「……くれぐれも粗相の無いようにな」
「あいよ」
いつもは俺や他の囚人たちを見下している看守の様子がおかしい。変に緊張している様だ。しかし俺は「良いものが見れた」くらいの気持ちでスルーし、面会室の扉をくぐる。
「……初めましてだな、テリー・オグスター君」
「なっ!? アンタは……ッ!」
面会室の強化ガラスの向こうにいたのは、一人の軍人だった。
スキンヘッドに特徴的な丸いサングラスをかけた、大柄な男性。
極めつけは、黒い連邦の制服。
「私は地球連邦軍独立治安維持部隊“ティターンズ”のバスク・オム大佐だ」
「……どうも」
「まぁ、かけたまえ。少し話をしよう」
バスクに促されるまま、俺は対面の椅子に着席する。
何故だ? 何故バスクがティターンズの名を出して、俺の目の前にいるんだ?
「……」
「7年前の資料と比べると随分と大人になったじゃないか」
「社会復帰に向けて労働と勉学に勤しんでいたもので」
バスクから見定める様な視線を感じながら、俺は即答した。
俺はこれまで“テリー・オグスター”として生きていたのだが、どういう訳か“ガンダム”を目の前にした時に“前世”とも言うべきか、とにかく“自分ではない自分”の記憶を取り戻した。
それはこの“宇宙世紀”がフィクションとして扱われている21世紀の地球にいた頃の記憶だが、今となってはここが地続きの未来なのか、はたまた異世界なのかも見当が付かない。
重要なのは、“この世界”が作り物ではない……体重を預けている椅子も、部屋の四方の白い壁も、目の前のバスクも現実のものであるという事と、俺が“前世の記憶”を取り戻した時にこれまでの“テリー・オグスターとしての記憶”を綺麗さっぱり忘れてしまった事だ。
何とか騙し騙しで一年戦争を切り抜けた訳だが、これからも“前世の知識”にある“機動戦士ガンダムの記憶”だけで生きていくのは困難だと判断したのが、必死に勉強を始めたきっかけでもある。その点で見れば、窮屈とは言え独房生活も悪いものではなかったと言うべきだろう。
「結構。これならすぐにでも“使えそう”じゃないか」
「話が見えません、大佐」
「そうだろうな。まずは君に感謝の言葉を述べさせてもらわねばならない」
「感謝……?」
全く意味が分からなかった。俺がティターンズのバスクに感謝される様な事をしたとでも言うのだろうか? 何処かもわからない宇宙に浮かぶ刑務所の中で?
「7年前だ。君はジオンのデギン公王とレビル将軍が接触して和平交渉を行っている最中に単身突撃し、そのせいでジオンはコロニーレーザー……ソーラ・レイを発射。和平交渉が無茶苦茶になり、我々は残ったジオン軍との最終決戦に入った」
「今更弁解するつもりはありません」
「いや、私はこれに“感謝”している、と言っているのだよ」
「は?」
「当時の君の真意はさておき、だ。ここで和平が成立しなかった“おかげ”で、我々は地球連邦政府に宣戦布告をしたジオンを……反乱分子を弾圧する合法的な名目を得たのだよ」
「……!」
なんてこった、最悪だ。
ティターンズを誕生させない為の苦渋の策が、巡り巡ってティターンズが産声を上げるきっかけになってしまうとは。
「結成に7年も掛かってしまったのは誤算だったがね」
「……それで何です? 俺をそのティターンズってのにスカウトしに来たんですか?」
「端的に言うと、そうだ」
「なっ……!?」
「まさかとは思うが、命令違反を犯した上で戦端を開いた君は、間違いなく即銃殺刑もありえたのだ。それも7年もこんなぬるま湯の様な刑務所で世間が忘れるまで“保護”していた意味を考えた事が無かったのかね?」
「……」
強化ガラスにうっすらとだが、苦虫を嚙み潰したような表情をする自分の顔が映った。
「表立った君の戦歴は消去させてもらったが、ティターンズに入れば当時の……いや、それ以上の地位を約束しよう」
「……断ると言ったら?」
「死んでもらう」
「……」
「冗談だよ。ティターンズは基調を“黒”にした部隊だ。……そう、君が乗っていた“ガンダム”にあやかってね。私は君をリスペクトしているのだよ」
「……しかし」
「まぁ、混乱するのも当然だろう。一日待ってやる。それまでに答えを出す事だな、ティターンズに入るか、保留されている銃殺刑を受け入れるかを」
「……」
進退窮まったとはこの事だ。嫌な話だが、こんなもの一択しか答えがないようなものだ。
ティターンズに入るか、死ぬか?
一度は命懸けでティターンズ結成を阻止しようとした身、そのティターンズに加担するなど言語道断な訳だが、バスクはそんな俺を尻目に退出しようとして、一度足を止めた。
「そうだ。君の恋人……マナ・レナと言ったか」
「!?」
「今は軍を辞めてサイド6で暮らしているよ。ティターンズに入るのなら勿論、再会出来るだろうね」
「なんで軍を辞めたマナの所在を知っている……!?」
それは直感だった。
「フフフ、一日だぞ」
問いには答えず、バスクは面会室から去った。
だが、答えは出た様なものだ。
俺が従わない場合、マナ・レナの身に危険が迫る……?
~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・
「……」
考える時間、という名目で与えられた一日。
ティターンズと言う組織の権化の様な男のバスクの事だ。ここで焦燥感とマナの命を天秤の片側に置いてやれば、俺がどうにかなるだろうと思っているのだろう。
しかし“リスペクト”と来るとは思わなかった。
どこまで本心かは分からないが、ここはひとまず従うフリをして、マナと接触したら逃げるか……? いや、仮に逃げたとしてもそこからの算段がない。連邦と言わずとも、せめてティターンズの目が届かないバックボーンを手に入れることが出来れば……。
答えに辿り着けない問題を頭の中で延々とループさせてから、半日。
不意に“答え”の方からやってきた。
「な、何者だお前達はうわぁーッ!?」
看守の叫びと、銃声。そして足音が複数外から聞こえてきたのだ。
「なんだ?」
「おい、なんだよ今の音!?」
どうやら幻聴ではないらしい。隣の独房からも異変に気が付いた囚人の声がする。
「敵襲だ!」
「例のエゥーゴってのか!?」
「いや違う! 海賊だ! ジオンの亡霊共がやってきたんだよ!」
武装した看守達が独房の前を移動していく。
「おい看守さんよ! なんで海賊がここを襲うんだ!?」
「お前は黙ってろ囚人! 混乱に乗じて逃げようなんて考えるなよ!」
「開けてくれる前フリ?」
「ふざけるんじゃない!」
ダメもとで聞いてみたが、やはりダメだった。
“この世界”ではデラーズ紛争が起きなかったせいか、ジオンの海兵隊であるシーマ・ガラハウの艦隊がそのまま“宇宙海賊シーマ・フリート”を名乗り連邦の施設を荒らして回っている、という噂を聞いた。
しかし解せない。
ここはただの囚人収監施設。それも連邦軍人を拘束する所謂“政治犯”が収監される場所だ。ジオンの連中が襲うメリットなんて想像も……。
「……バスクか!?」
ティターンズのバスク・オム襲撃が目的なら、辻褄が合う。
連邦施設とは言え、軍艦を襲うよりははるかに楽だという訳だ。なるほど考えたな。
そう思っていると、独房のドアロックが解除される音がした。
囚人を逃がして施設をパニックに陥れてからターゲットを撃つ。うむ、素晴らしい計画だ。ならば俺はこれに乗じて逃げさせて……。
「おっと、アンタがテリー・オグスターかい?」
「……そうだけど」
「クライアントに頼まれてねぇ。アンタを助けに来たんだよ」
「……はい?」
現れたのは、ノーマルスーツを着た女性だった。連邦のものではない。ジオンの上級士官様にカスタムされたスーツ。
しかし待って欲しい。彼女は今、何と言った?
「私はシーマ・ガラハウ。拘束してでも連れてこいって言われてるんだが、大人しく着いて来てくれると助かるんだがねぇ」
「誰が?」
「時間がないんだよ! 首輪付けて欲しいのかい!?」
「わ、分かった従うよ!」
シーマ・ガラハウの剣幕に圧されて、渋々了承してしまった。
くそっ。今日の俺ほぼ一択の二択を迫らせ過ぎじゃないか!?
「ターゲット確保。これより撤退するよ!」
「撤退? バスク・オム暗殺に来たんじゃないのか?」
「ティターンズのバスクがここに居るのかい!? ……いや、欲を出し過ぎるのは良くないね。悪いけど今回は無視さ」
「本当に俺を連れ出す為だけの計画だってのかよ!?」
「詳しい話はクライアントから直接聞きな!」
それからのシーマの行動は迅速だった。予め内部構造を調べていたのだろう。7年も過ごしていた俺よりも軽い足取りで移動するのに追いつくのが精一杯だった。それに曲がり角を一つ曲がる度に屈強な男達が増えてくるとなれば、こちらも黙る他ない。両脇を男二人に、手前をシーマに守られる形で移動していると、程なくノーマルスーツが置かれているロッカールームの前へと辿り着いた。周囲には魂が旅立った警備兵たちの亡骸が漂っているだけで、生存者の気配はない。
「ノーマルスーツを適当に拝借しな!」
そう言われてロッカールームに押し込まれた俺は、一番近いものを取る。
「げっ」
手に取ったのは、真っ黒なノーマルスーツ。ティターンズのパイロットが使用するものだ。
「これは流石に……」
「早くしな!!」
「えぇい、ままよ!」
選り好みしている余裕などないのだ。そう心に言い聞かせながら、ノーマルスーツを装着する。まるで自分の体に合わせて作られたかの様に馴染む。まさか俺がティターンズに入る前提で用意したものでは? という思考が頭に過るが、それを振り切って外へ。7年の間に技術が進歩しただけ、そう思いたい。
「……いい趣味してるよ」
「急いでるんだろ!?」
「そうだけど……さ!」
当然の様にシーマには呆れられるが、交換している時間はない。武装した連邦の兵士がすぐそこまで迫っていたからだ。
「お急ぎください、シーマ様!!」
「分かってるよ! ほら、アンタもさっさとしな!」
「おう!」
シーマとゴロツキみたいなジオン兵二人に護衛される、ティターンズの格好の俺。
不思議な光景だなとは思っていたが、俺の意識はすぐ別の事へと誘導されてしまった。
「アンタは私と一緒のモビルスーツに一緒に乗ってもらうよ!」
「こいつにか? ……って、ん?」
資材搬入用ゲートに我が物顔で停められていたのは、二機のディジェだった。
ディジェは旧ジオンのゲルググや、エゥーゴの最新型モビルスーツ、リック・ディアスのデータを基に地球の反地球連邦組織“カラバ”がアムロ・レイ先導の元開発したモビルスーツの筈だ。時期的にも技術的にも何故これがここにあるのか、全く解せない。
「コックピットは頭部にあるよ、着いてきな」
「コイツ、名前なんて言うんだ?」
「ディジェってんだ。詳しい話はクライアントにでも聞きな」
やはりディジェで合っているのか。
しかし俺の救出を依頼したというクライアントというのは一体誰なのか、皆目見当もつかない。
謎ばかりが先行し過ぎてしまっている気がするが、今の俺が足踏みをしている場合ではないのは確実だった。シーマの尻を追いながら、彼女が一年戦争時代に使用していたゲルググMと同じ配色にカラーリングされたディジェのコックピットへと身体を滑り込ませる。
「7年振りにモビルスーツのコックピットに乗ってみてどうだい?」
「全天モニターの初期型になら乗った事はあるが、これはダンチだな。まるで宇宙にそのまま放り出されている気分だ」
「その内慣れるさ。さぁ、とっととずらかるよ!」
シーマ機同様、ゲルググMと同じ色に塗り替えられたディジェにジオン兵二人が乗り込み、火が入るのを確認したシーマはそのままディジェを発進させた。7年振りにコックピットから見る宇宙は、なんというか、寒い。
しかし、感傷に浸っている暇はなかった。ここはまだ敵地の敵地。
「おい、建物の向こうから何か来るぞ!」
「あんだけ派手に暴れたんだ。むしろ遅いくら……しまった!」
遠目で見ただけなのではっきりとは確認していないが、施設の向こうから赤い戦艦が飛び出してくるのが確認できた。
見た事のない戦艦だが、何となくペガサス級に見える、赤い戦艦だった。
“敵”を確認したシーマが険しい顔をしながら冷や汗をかく。その顔をドアップで見るのは中々辛いので控えて頂きたいのだが。
「厄介な連中が近くにいたんだねェ……! “あの女”の情報も完璧じゃ……いや、あえて黙ってた感じかい!」
「旧型の様に見えるが、そんなに厄介なのか?」
「ま、随分と悪趣味な改造されてるからそうは見えないだろうけど、アレはアンタの“古巣”だよ」
「なんだと? アレはフォリコーンだとでも言うのか!?」
加速して離脱を開始するディジェのコックピットから連邦の軍艦を凝視する。グレイファントムやアルビオンなどのパーツで近代改修されたと思しき赤い船体には所々に金色の模様が施されており、おおよそ軍艦には見えない。
「……うっ!?」
久しぶりのモビルスーツの加速による負荷に身体が驚いたのか、それともまるで寝取られた様な様変わりを見せたフォリコーンに不快感を覚えたのか理由までは分からないが、嫌な感覚が俺を襲った。
~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・
「なんだこの不快なプレッシャーは……あのモビルスーツからか?」
ペガサス級強襲揚陸艦フォリコーンⅡの艦長兼モビルスーツパイロットを務めるティターンズの将校、シャロ・ル・ロッド大佐はキャプテンシートに座りながらそうひとりごちた。
「シャロ様。シーマ・フリートのものと思われるモビルスーツは逃走を図っている模様です」
「こちらを見た途端一目散、か。地球圏を騒がす海賊共とてこの名家たる私を見ればそう判断するのは宇宙の真理というものだ。だが、逃がしてはやらん。本艦で追撃し、今日こそ盗人共のアジトを割り出してくれる。総員第一戦闘配備! ライラ・ミラ・ライラのモビルスーツ隊を先行出撃させろ!」
「困るなシャロ大佐。ティターンズでない者に作戦を任せると言うのは」
この艦の中で、シャロ・ル・ロッドという男は唯一にして絶対の存在だ。フォリコーンⅡの乗組員には誰一人として彼に逆らう事はしない。そんな彼に同等な意見を述べられるとすれば、同じティターンズで同じ階級であるこの男、バスク・オムくらいである。
「適材を適所に配置出来ないなら、エリート部隊の名が廃るというものだ、バスク大佐」
「一番槍をかね?」
「言葉の綾というものだよ。第一、スペースノイドなど槍は槍でも“投げ槍”程度の価値しかない」
「フッ……やはり君をティターンズに招いたのは正解だったよ」
「前任の庶民……ミドリ・ウィンダムは優秀な女だったが、私の言う事を素直に聞かない女ではなかったしな。その点スペースノイドには最初から期待していない分、気持ちが楽というものだ」
「優秀なパイロットだったはずだが、どうしたのだ?」
「名家たる私の命令で、木星の僻地に飛ばしてやったさ。今頃薄暗い探査船の中でヒモみたいなナヨナヨした研究員の慰み物にでもなってるだろうよ」
「ライラ隊、敵モビルスーツと接触。戦闘開始しました。シャロ様のモビルスーツの手配も完了との事」
「先を見据えた報告、ご苦労コダマ君。庶民にしては頑張っていると評価してやらんでもない」
「ありがとうございます」
わざわざ席を離れてシャロにそう報告した通信官は一礼を捧げた後、再び機械的な足取りで持ち場へと戻る。部下を完全に手名付ける様子は、ティターンズとして理想の将兵であるとバスクは関心するばかりだった。その裏で何が行われているかは彼の知る由ではないし、本人は些かも興味を示さない。ティターンズとはそういう組織だった。
「よし、では私もモビルスーツで出撃する。発進後は艦砲射撃で援護に徹しろ。私に充てるなどというヘマはしないだろうが、ライラ隊については気にするな。スペースノイドの女など替えはいくらでも聞くからな!」
「了解いたしましたシャロ様。ご武運を」
「戦果を期待しているぞ、大佐」
「私が出世してティターンズの長になる歴史的第一歩を特等席で見れる事を光栄に思うのだな、バスク大佐」
ティターンズの総司令であるバスクにすら傲慢な態度を崩す事無く、キャプテンシートから離れたシャロはモビルスーツデッキへと姿を消した。