「ねぇ、あのさ」
「各部動作チェックOK。火器管制システムも問題なし」
「あの、急いでるとは言ったけど少しお話をですね……」
「ブースター接続確認したッス。いつでもいけるッスよ!」
「ちょっとタンマまじで」
『おいアンタら! モビルスーツデッキで何を勝手して……うわぉ』
ブリッジらしき場所から通信を送ってきたシーマが絶句していた。
そりゃそうだろう。
曰く“テリー・オグスター専用”で開発されたというこのガンダム、ブラックサレナのコックピットには座席が三つ存在し、俺が座るメインシートの左右にサブシートが一つずつある訳なのだが。
サブシートの位置がメインより少し高いからか、丁度俺の視界の両端に二人のふとももが見えるのだ。それもほぼ間近に。パイロット用ではなく整備兵用のノーマルスーツなんで実際よりゴツゴツしてるのがちょっと残念で……じゃないそれはさておきだ。
「ちょっと邪魔なんですけど」
「仕方ないじゃないッスか。こうでもしないと正確なデータ取れないって先輩がゴネたもんで……」
「これじゃ全天モニターの利点を自分から投げ捨ててるようなモンじゃないのか?」
「さっき言ったでしょ? 私達は君がいなければ一年戦争でとっくに死んでいた身……つまり命を捧げる覚悟はとっくに出来ているのよ!?」
「ウチは別にどっちでもいいんスけど」
「俺の命巻き込まれてるの分かってらっしゃる?」
『で、帰ってきて10分も経ってないのに出ていこうとするその理由を聞かせてはもらえないかねぇ?』
「サイド6に行ってティターンズに捕まった人質の救出だ」
『サイド6!? ここからどれだけ距離があると思ってるのさ!?』
「ブラックサレナのスペック上なら問題ないよシーマちゃん」
『シーマちゃんはやめろ恥ずかしい。……まぁ、そのリヴァーレなら確かに問題ないだろうけどさ』
「この子、さっきブラックサレナって改名したんスよシーマちゃん」
『だからシーマちゃんやめろって言ってるじゃないのさ撃ち殺すよ!?』
この二人は恐ろしいと思った瞬間である。まさかあの“宇宙の蜉蝣”の異名をもつシーマ・ガラハウをちゃん付けした上でペースを乱すとは。
『……で、よしんば人質を救出した後はどうするのさね?』
「お尋ね者だからな……ここに戻ってきちゃダメか?」
『だろうと思ったよ……。どの道アルカディアはここから一週間は動けないんだ。好きにしな』
「恩に着る……ハッチ開けてくれ!」
『だとさ! ほっぽり出してやりな!』
シーマの命令によりハッチが開き、脚部にブースターを装備したブラックサレナがカタパルトに接続される。
「進路クリア確認ッス!」
「さぁ飛ぼうじゃないか私達の愛の結晶! 行こうじゃないか初めてのデート!!」
「テリー・オグスター! ブラックサレナ発進するぞ!!」
カタパルトから射出された直後、ブースターを最大出力に。急加速により身体にGかかかる。
「くっ……!」
「あばばばばば……」
「いひひひひ……あはははーーーーっ!」
ディジェとは比べ物にならない加速だった。ブランクがあるとはいえ、パイロットの俺がこうなのだ。非戦闘員の二人は平気ではなかったらしい。右隣のチカはなんか泡吹きそうな勢いだし、左のイリーナは変なスイッチが入ったのか、ケタケタ笑ってる。怖い。
「サイド6までの進路固定……凄いな。ここから半日もかからないのか」
いやちょっと待って欲しい。
俺は約半日の間、両脇の太ももの誘惑に惑わされながら狭いコックピットに詰められなければならないのか!?
~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・
テリー・オグスターがシーマ・フリートの母艦アルカディアから発進した数時間後。
サイド6コロニーの一つ、リボー。
そこ場所は一年戦争時代、中立地帯でありながら地球連邦軍が秘密裏に新型ガンダムNT‐1アレックスを建造していたコロニーである。それを嗅ぎつけたジオン部隊の侵入により一度コロニー内部でモビルスーツ戦も行われたのだが、今はその爪痕も消え去り、街の人々は次第にその光景を過去のものとして忘れようとしていた。
「また明日も来ますね、店長」
「おう!」
“ワイズマンのパン屋”という看板のかかった店から出てきたのは、金色の長い髪をなびかせた一人の小柄な女性だった。両手で抱えた大きな紙袋には焼き立てのパンがぎっしりと詰められており、香ばしい小麦の香りが女性の鼻孔をくすぐる。すると口内には自然と涎が溜まり、胃袋は空腹を知らせる為の警鐘を鳴らしだしてしまうのは最早自然の摂理とも言えよう。
「ちょっと摘まみ食いしても……怒られないよね?」
実はダイエット中の彼女は自分に言い聞かせながら帰路を外れ、市外から少し離れた自然公園のベンチの一つに腰かけた。紙袋からチーズ入りのパンを取り出し一口頬張ると、たちまちに頬が緩む。今の彼女にとって数少ない至福の時間の一つだった。
「今日もいい天気ね……」
気候の管理されたコロニーに生まれ育った者からは出ない感想だ。成人する少し前までは地球に住んでいた彼女にとって、人工とはいえ荒れていない空というのはなんとも心を落ち着かせるものであったのだ。木々のざわめきや微かに聞こえる小動物のさえずりも、かつて戦場に立っていた彼女の荒んだ心を少しずつ癒してくれるようで……。
「はぁ……はぁ……はぁ……はぁ……あっ! マナさん! こんな所で何してるの!?」
「あら、アル君じゃない。こんにちは」
女性……マナに話しかけてきたのは、ハイスクールの学生であるアルフレッド・イズルハだった。相当長い距離を走ったからか、足を止めるや否や肩で呼吸しながら必死に息を整えている様子だった。
「今日はパン屋でバイトの日でしょ? 遅刻なんてしたら店長怒っちゃ」
「今はそれどころじゃないよ! ティターンズがマナさんを探してるんだ!」
「はい……?」
「ここは危ないよ! とりあえずバーニィの所へ行こう!」
「ちょ……ちょちょちょアル君!?」
アルフレッドに強引に引っ張られたマナは落とした紙袋を拾う間もなく来た道を戻る事になる。“ワイズマンのパン屋”の看板を掲げた店のドアを破る勢いで開いた。
「おい遅刻だぞアル! 全く自分から手伝いたいなんて言うんだから時間くらい……あれ、マナさん買い忘れかい?」
店には客がおらず、カウンターの向こうに店長らしき青年が一人いるだけだった。ネームプレートには“バーナード・ワイズマン”の文字が。
そんな彼に対し、アルフレッドは聞く耳持たずにマナをカウンターの奥へと押し込んでから店長の耳元に顔を近づける。
「ティターンズが凄い剣幕でマナさんを探してるんだよ……! 嫌な予感がするんだ。バーニィ匿ってあげてよ!」
「ティターンズが? マナさん何か心当たりは?」
バーナード・ワイズマン……バーニィの言葉にマナは無言のまま首を横に振るしかなかった。
それもそうだろう。一年戦争後軍を辞めた彼女は今の今まで一般人としての生活を送ってきた。朝は洗濯して、昼は買い物をして、夜は家族と食事を楽しむ。何の変哲もない日常を送っていたというのに、ジオン残党の討伐を目的とするティターンズに捜索される理由がない。
「分かった。何とかしよう。とりあえずアルはマナさんと一緒に……マズい隠れろ!!」
「きゃっ!」
「うわっ!」
何かを察知したバーニィはカウンターの床の隠し扉を開き、その中にマナとアルを押し込んだ。
マナにとって、バーニィは一年戦争時代に同じ部隊で戦っていた仲間だ。が、後から聞くとジオンの兵士だったのだが、中立コロニーに核ミサイルを撃とうとした事から連邦に寝返ったのだという。その時の工作員の計らいでバーニィはここでの市民権を獲得し店も構えさせてもらったのだが、その名残からか、この店にはこういった“仕掛け”がいくつもあったのだ。
「いてて……マナさん大丈うわっ!?」
「しーっ! アル君は黙ってて!」
「でもあの、これは……」
「男の子が恥ずかしがらない!」
床の下は緊急時に一時的に身を隠す為のスペースだが、一人用であった為か二人入るのには少々手狭だった。そしてマナを下敷きにアルが覆いかぶさる形になったのだが、アルの頭部はマナの豊満な胸の上に落ちてしまったのだ。
「あわ……あわわ……」
「…………」
今年で18になる思春期のアルフレッド少年には強すぎた。その証拠に顔はゆでだこの様に真っ赤になっていたのだが、当のマナ本人は恥ずかしがる様子を見せていない。身を引いたとはいえ、彼女はこれでも士官学校で優秀な成績を修め、実戦でもそれ相応の実績を残したれっきとした軍人だったのだ。
「何かあった時は私が守るから。怖がらなくていいよアル君」
「もが……」
平和ボケしていた頭のスイッチが切り替わったマナは、既にアルフレッドを気遣う余裕すら見せていた。頭を抱きながらアルを落ち着かせようとするが、実はそれが逆効果になっているのは本人には知る由もない話だ。
「…………」
耳を研ぎ澄ますと、店のドアに付いたベルが鳴る音が聞こえた。誰かが入ってきたのだろう。
「やぁ、いらっしゃい軍人さん。小腹でも空いたのかな?」
「この女を探している。知らないか?」
どうやら本当に“追っ手”が来たようだ。
バーニィの唸る声が聞こえる。恐らく写真か何かを見せられているのだろう。
「ウチの常連客ですね。彼女が何か?」
「反乱分子だよ。エゥーゴって名前くらい、聞いた事あるんじゃないか?」
「えぇ、テレビで聞いた事あります。でもそういうの、ジオンの生き残りの集まりなんでしょ? 彼女、そういうタイプには見えないんだけどぐわっはぁ!?」
バーニィの悲鳴と同時に何かが崩れる音がした。ここからでは分からないが、恐らく殴られたのだろう。
「えぇおい兄ちゃんよ。俺達ティターンズをただの連邦軍と一緒にするんじゃないぞ」
「な……なにを……ッ!」
「舐めた口聞くのもいい加減にしろって言ってるんだ。知ってるのか知らんのか、事実だけ言えばいい!」
「さっき家に帰ったよ! これで満足かはうぁっ‼」
「嘘付くんじゃねぇ! 俺達は今その家からこっちに来たんだぜ。この女が家にいないこと位分かってらぁ!」
「よせジェリド中尉」
「だがよカクリコン! コイツの目、明らかに俺達に喧嘩売ってやがるぜ」
「口の中切っちまったら喋れなくなるだろと言ってるんだ。おいパン屋の兄ちゃん。アンタ若いが、この店初めて何年だ?」
「……一年と半年ってとこかな?」
「そうかい。念願の夢がかなって幸せなところ悪いんだけどよ。協力してくれないとさ、俺達も穏便には済ませられんのよ……ねっ!」
「ぐっ……ああああああっ!?」
「あーあ。これじゃ当分の間パンは作れそうにないな。で、どうなんだい兄ちゃん? 何か思い出したんじゃないの?」
「分かった! 分かった言うよ! 自然公園の方に向かっていった! それ以上は本当に知らないんだ! だから許してくれ!」
「その辺には別動隊がいたな。ジェリド、確認してくれ」
「あいよ。……聞こえるか? ジェリド・メサ中尉だ……………あぁ、分かった。そちらに合流する」
「どうだった?」
「そいつの言葉は確かだ。公園に落ちてた鞄の中に、ターゲットの私物を発見したんだとよ」
「じゃ、ここを出ていった後ってのは本当なのか。……ご協力ありがとうよ兄ちゃん。今すぐ医者に診てもらえりゃ、休業は二週間くらいで済むだろうよ。束の間の休暇を楽しみな」
「……お気遣い、どうも」
「……」
「おい、どうしたジェリド?」
「なんだか不愉快なプレッシャーを感じるんだ……」
「へっ。コロニーにはスペースノイドがわんさかいるからな。地球の新鮮な空気を吸ってない連中なんて、そんなもんだろ」
「……それもそうか」
「それじゃ、邪魔したな。……おう、このパン、中々美味いじゃないか」
ティターンズらしき男の二人の声と足音が遠のくのが聞こえた。
「……アル。マナさん、出てきていいぞ」
それから数分経っただろうか。それとも数時間か……。永遠とも思えた沈黙を破ったのはバーニィの声だった。床に偽装した扉を開くと、いつもと変わらぬ、木目調のパン屋の天井がマナ達をいつもの様に見下ろしていた。
「バーニィ!」
先に隠し部屋から這い上がったアルがバーニィに駆け寄ったのが分かったマナが急いでその後を追うと、カウンターに背中を預けているボロボロになったバーニィの姿があった。頬には青い痣が出来ており、左手の指が何本か、曲がってはいけない方向に曲がっている。
「悪いなアル。店、閉じといてくれ」
「わ、分かった!」
「とりあえず奥の部屋に! 傷の手当てをしないと……!」
店の戸締りをアルフレッドに任せ、マナはバーニィに肩を貸しながらカウンターの向こうにある厨房へと移動した。手近な椅子に座らせると、常備している救急箱から包帯と各薬品を取り出し、慣れた手つきで最低限の手当てを済ませる。
「くっそ……ティターンズの連中め。いつになく張り切ってたな……」
「ごめんなさい……私が素直に捕まっていれば……」
「バカ言うんじゃない。連中に捕まれば、マナさんがこれより酷い目にあうのは分りきってる事さ」
「そう……そうね。助けてくれて、ありがとう」
「ん、今ので傷のほとんど治ったね」
「お調子者。奥さんに言いつけちゃうぞ?」
「それは勘弁してくれ!」
束の間の平穏。しかし一度張った緊張の糸は中々ほどけず、すぐに厨房に重い空気を蘇らせた。
「……反乱分子、って言ってたわよね?」
「連中の事だ。どうせ何かのこじつけに決まってる。それに案外……元ジオンの俺を探してるのかも知れないぜ?」
「だったら、バーニィも逃げないと!」
そう言ったのは戸締りを終えて厨房に入ってきたアルフレッドだった。律儀に内鍵も閉めながら彼は続ける。
「マナさんもバーニィも何も悪い事してないのに捕まるなんて絶対変だ」
「そうだな。反地球連邦組織なんてものが生まれるのも納得だ」
「今度は連邦と戦うの?」
「俺達はもう軍人じゃないだアル。……とりあえず、今は身を隠すことが先決だな……」
腕の痛みでしかめっ面になりながら移動したバーニィは厨房の奥の扉を開き、その先の廊下の床に手を伸ばす。今度は地下へと繋がる階段の様だ。
「この部屋は?」
「衣裳部屋って所かな。奥に資材搬入口直通の隠し通路もある。……アル、お前はここまででいい。家に帰るんだ」
「でもバーニィ! そんな傷じゃ……」
「おいおいアル。俺はあのガンダムと戦って生き残ったバーニィ様だぜ? 指の二本や三本動かないくらいで死なないよ」
「それに私もいるわ。大丈夫、ドックに行けば輸送船の一つくらいある筈よ。ティターンズって言ったって所詮実戦経験のない連中の集まり。無敵の宇宙戦艦の元艦長マナさんの敵じゃないわ」
「……分かった。今度も必ず帰って来てよ!」
「おう!」
「えぇ!」
こうしてアルを残して地下階段を下りたマナとバーニィ。連邦軍仕様のノーマルスーツと護身用の拳銃を用意するのだが……。
「あ」
「どうしたマナさん?」
「私のサイズのノーマルスーツ、ないのね……」
「あっ」
マナは所謂『少女体型』だ。それでいて平均的な成人女性よりバストサイズが大きいため、連邦軍時代の制服やノーマルスーツも特注品となってしまう。
「しかし、ノーマルスーツがないと……」
「いえ、大丈夫よ。こんな脂肪の塊、押し込んじゃえば……うっ」
結局最小サイズに無理矢理身体を押し込む事で事なきを得たのだが、息苦しさは隠し切れなかった。マナの額に自分でも分かるほどの大粒の汗が流れ始める。
「じゅ、準備万端!」
「どうやらあんまり保ちそうにもないし、早く脱出するとするか!」
~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・
「見えた! リボーコロニーだ!」
アルカディアから出発して11時間と22分が経過していた頃。俺達はサイド6コロニー“リボー”近海宙域へと到着していた。リボーコロニーに来たのは7年前。あの時はバーニィを助けるためにセイバーフィッシュで正面ゲートから入って行った訳だが、今回は海賊が作ったモビルスーツを駈るお尋ね者。同じ手は使えないだろう。
「コロニー近辺でブースターは危険ッスからね。この辺で切り離しましょう」
「あぁ、頼む」
「帰りに必要なんだから、近くのデブリにでも固定しておくのよ? 座標の記録も忘れずに」
「はいはい……それ、先輩でも出来るッスよね?」
「あー、私は記録で忙しいの手が離せないわぁ」
「せめてコンソールに手を置いて言って欲しいッス」
ぶつくさと文句は言いながらもチカの手際は素早かった。道中の小隕石を横切る際に二本のブースターが本体から切り離され、飛び出した鉤縄付きワイヤーが隕石とブースターを固定する。
「警備隊の姿、見えないッスね」
「チチデカ助手君。戦時中の癖が抜けてないんじゃない?」
「チカ・ジョッシュ」
「資材搬入口から侵入するぞ」
二人のやり取りを聞きながら、宇宙港から離れた位置にある工業用資材搬入口へと機体を移動させる。
「む、いかん。人だ」
「ここは私に任せてもらおうじゃないか。左腕の操作をこっちに回してもらうよ」
資材搬入口に侵入するや否や、ノーマルスーツの作業員を二人確認した。俺と同時にその人影に気が付いたイリーナがコンソールを弄るとブラックサレナの左手の指から白い球体が飛び出し、作業員を襲う。非殺傷兵器のトリモチランチャーか。
「エアーが無くなる前に見つけてもらうんだな」
「わっ、今の言葉サラッと言えるの格好いいッスね」
どこかで聞いた様な台詞を口にしながら更に奥に進むが、程なくして行き止まりに辿り着いてしまう。ここから先はブラックサレナでは進めないだろう。
「この先は一人で行く。二人はここで待っていてくれ」
「見つかって戦闘になったら、私達じゃブラックサレナのポテンシャルは引き出せないからね。悪いけど援護はないと思って頂戴」
「了解だ」
「それと今の自分がどんな格好をしているのかも忘れない様にしとくッスよ」
「格好……?」
チカに指摘されて自分の視線を下げると、そこでようやく思い出した。着の身着のまま、つまり今の俺はティターンズのパイロットスーツに身を包んでいるという事だ。これなら普通の連邦兵には撃たれる心配は少ないというものだ。
「なら、これを利用するほかはないな……」
ブラックサレナから離れた俺はコロニーのドアのロックを解除し、中へと入った。流石にと言うべきか、移動して五分と経過しな内に連邦軍の兵士を発見。念の為にヘルメットのガラスをスモークモードに切り替えてから接近する。
「すまん、人を探しているんだが……」
「あ、えっと……大尉! お疲れ様です!」
どうやら俺は大尉の隊章が付いたノーマルスーツを着けていたらしい。随分と昇進してしまったものだ。
「20代前後の小柄で金髪の女なんだが、心当たりはあるかね?」
「大尉らが追っているというターゲットの事でありますね!? 他の反乱分子と合流し市外から脱出したとの事です!」
「他の反乱分子だと? 場所は分るか?」
「この道を真っ直ぐに向かった所が、推測されているポイントです」
「分かった。そこは私が見てこよう。コロニーから脱出を画策しているとすれば、他にも仲間がいるかもしれん。君達は市内に戻ってそちらの捜索に回ってくれ」
「構いませんが、よろしいので?」
「君は何の権限が合って私に意見しているのかね?」
「も、申し訳ありません大尉!」
「分かればいい。早く行きたまえ」
「りょ、了解であります!」
素早く敬礼をした連邦軍兵士たちがその場を去っていくのを見送りながら、ホッと一息。
……というか、別にこの格好ならシャアの真似しなくても良かったな?
そんな事を思いつつ、銃を片手にマナと反乱分子なる人物がいると思しき通路を進んでいく。
しかし、反乱分子と言うのはどういうことなのだろうか? まさか俺が知らない間に、マナはエゥーゴに協力者として……いや、それだとバスクに目を付けられた時点でバレているだろう。ここはティターンズに追われていると察知したマナが誰かの協力を得てここまで逃げ延びたと考えるべきだが……。
「ッ!」
「くそっ!?」
丁度その時だった。曲がり角からノーマルスーツに身を包んだ二人組が急に現れ、片方が俺に銃を向けてきた。俺と同様にヘルメットをスモークガラスにしている為誰かは判断出来ない。
「見つかったか!?」
「ん? その声……」
「マナさん逃げろ!」
「バーニィさん!!」
マナ? それにバーニィだって?
「ちょ、ちょっと待て! 俺は敵じゃない!」
「ティターンズの言葉なんて信用できるか!」
「あぁ、くそっ!」
こっちの話に聞く耳すら持つ様子もない。バーニィと思しき人物の初撃をなんとか回避した俺は後退し、廊下の角に身を隠した。
「俺の声が分からんのかバーニィ! マナ・レナ!」
「今の声……? バーニィさん待って!」
「あん?」
マナの方は気が付いてくれた様で、銃声が一旦止む。
更に警戒を解く為、ヘルメットを外し、銃もその場に投げ捨てて二人の前に素顔を晒した。
「久しぶり、だな……」
「テリー君……?」
「テリー!? お前こんな所で何してんだ!?」
「事情の説明は後だ。まずはここから逃げないと……」
「近づかないで!!」
しかし、状況はスムーズには進行しなかった。
バーニィから銃を奪い取ったマナが、その銃口を俺に向けてきたからだ。