ソウル的世界に行った結果wwww   作:ズブロッカ

1 / 7


この先、二次創作があるぞ


哀れな男

 

 突然だが俺は死んだ。享年22歳。

 

 就職先も決まり、そろそろ大学も卒業といった季節に死んだ。自宅でだらけながらゲームしていたら心臓発作を起こし、あっという間もなく死んだ。死んだのは確かなんだが、俺はどうやらまだ生きているらしい。こうして鎧を着て草原とも岩場とも言えないところに立っているのだから。

 

 そして目の前には剣が突き刺さった焚き火がある。試しに手をかざすと火が灯る。うん。篝火だね。どうやら不死人になったらしい。篝火の前に座ると不思議と心が落ち着いた。落ち着いてしまった。篝火の先には岩々を縫う様に道が続き、遠くを見ると小高い丘の上にこぢんまりした砦があった。暇を飽かせてソウルシリーズはそれなりにやってきたが、こんなステージは見たことがない。初見プレイというわけだ。心が躍る。

 

 

 

 

 泣きたくなるような現実から目をそらすために自分の装備品を確認する。確認するといってもスタートボタンを押してメニューを開くわけではない。自分の今着ている鎧、このクソ重い全身甲冑が何かを見るだけだ。ステータスだのメニューだの呟いて何も起きなかったのは秘密だ。

 

 見たところフリューステッドシリーズらしい。どうやら素性はデモンズの騎士のようだ。武器なし着の身着のままからスタートでなくて本当によかった。素手はどのシリーズもハードなのだよ。持ち物は特になかった。ちくせう。

 

 ちらりと前を見る。変わらず一本しかない道が見通しの悪い岩場の間をくねるように伸びている。見通しの悪い一本道。フラグでしかない。前を見るのが億劫になり、祈るような気持ちで後ろへ振り返る。眼前には水平線が見える広大な海が広がり、少し身を乗り出せば断崖絶壁に波が白く泡立っているのが見える。

 

 要は、見晴らしのいい高台にいるわけだ!わーきれいなうみだねー!クソッタレ!!結局は進むしかないのだ。一瞬飛び降りようとも思ったがあの高さは死ねる。死んでも篝火の前に甦りそうだが、さすがに自分から死にに行くほど心は失っていない。どうやら俺をここに呼んだ奴はどうしてもソウルシリーズのリアルプレイが見たいらしい。

 

 とりあえず進むことにした。入念に装備を確認する。当然武器も素振りした。ソウルシリーズとスタミナは戦闘において最も重要な物の一つだ。スタミナ管理をしない奴は例外なく骸を晒すだろう。今の俺が何回武器を振れるのか。この作業はスタミナがどれだけあるかの確認だけではない。この作業は今いる世界がダークソウルなのか、それともその皮を被った別物なのか、つまり、スタミナゲージがあるのか、それとも生身の体で動く本当の意味でのスタミナなのか、それを確認するものなのだ。それによって世界の接し方が大きく変わる。

 

 後者ならば今ある俺の知識が、リーマンショックにおけるゼネラルモーターズの株価の如く、その価値は大暴落するだろう。何故かって?FPSで強いやつがリアルでも強いと思うか?その経験が役に立たないとは言わない。共通する考え方もあるだろうし、立ち回りも参考になるかもしれない。だがそれだけだ。生身で戦うってことはてめーの体を動かして立ち回るってことだ。思った通りに体は動かない。それが真理だ。いくら自分が素晴らしい戦術を頭の中で考えていたとしても、それが実行できなきゃなんの意味もない。反面スタミナシステムがあれば話は楽になる。それがあるってことはゲーム通りに体が動いてくれる可能性が高い。そのシステムを使っているなら他のシステム、つまりゲーム性自体も流用されていると考えるのが自然だ。まあ武器を振れば分かる話だ。

 

 結論から言おう。リーマンショックは避けられなかった。やはりサブプライムローンに手を出すべきではなかったのだ。株式会社俺商社は史上最悪の赤字を叩きだした。

 

 確かに武器は自由自在に振れる。何度でも、自分が疲れるまで振れる。横振り、縦振り、袈裟切り、回転切りまで連続して振れる。太刀筋は目も当てられないが。初心者が剣をうまく振れるはずがない。結局のところ俺の経験や知識は参考程度にしかならなくなった。ついでに言えば俺が不死者でない可能性も出てきた。というのも戦闘システムが異なる以上、この世界がダークソウルの皮を被った別物であることも考えねばならんからだ。まあ、篝火の前に座って落ち着いたのだから大丈夫だとは思うが。状況は悪くなったが仕方ない。「命を大事に」でいこう。つまりいつも通りの攻略法だ。心が折れそうだ。

 

 ふと上を見上げると、厚い雲が広がる鈍色の陰気な空がどこまでも広がっていた。

 




見切り発車だぜ…
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。