この先、亡者に注意しろ
岩場の影から一歩踏み出し素早く下がり剣で亡者をタコ殴りにする作業を10回ほど繰り返した。魂の蓄積の数値は順調に増えているが、体力と魔力は全く変わっていない。ステ振りも相変わらずできない。最悪のケースが頭によぎったが、俺はいまだに溜まったソウルの使い方が分かっていないだけなんだと自分を言い聞かせている。あと百回同じ作業してもよいのだが、レベル上げはできないという事実を突きつけられると間違いなく心が折れてしまうので、この件はいったん保留しておく。俺はあの岩場の先へ進むことを決めた。
いつものパターンで亡者を殺す。誘い、両手を叩き折り、剣にて死ぬまで殴る。10回もやっていると慣れたものである。時間にして2分もないだろう。しかし、全力で剣を振っているため、肩で息をし全身汗だくになっている。死体漁りをしてから呼吸を整える。鎧の中でかいた汗が皮膚を伝いひどく不快であるが鎧の外し方もつけ方も分からないため努めて無視する。
汗もあらかた引いたところで進み始める。相変わらず見通しの悪い岩場の一本道を進む。亡者がいた場所からそう遠くない位置にまた曲がり角があった。気配を押し殺し、そっと覗いてみる。曲がり角の先には少し開けた場所になっていた。そこには弓持ちが1、折れた直剣持ちが2の3人の亡者がいた。弓持ちの亡者は奇妙な体勢をしていた。弓を前に突き出し、右手をだらりと下している。
まるで既に矢を放ったような、とまで考えると頭部に強い衝撃が走る。俺はくぐもったうめき声を上げ、不意を打たれた勢いでそのまま倒れてしまう。まずい。気付かれた。早く立ち上がらねば。焦る心とは裏腹に、慣れぬ重い鎧のせいか思うように立ち上がれない。足音が近づいてくる。頭は割れるように痛い。痛みでうずくまりたいが状況がそれを許さない。
鎧があるだけでこんなにも立ち上がるのに苦労するとは。亡者たちが目前に迫ってきている。剣を落としてしまったが悠長に拾っている場合ではない。逼迫した状況の中、必死に体を動かし、俺はかろうじて立ち上がることができた。だがそれまでだった。立ち上がったと同時に矢が打ち込まれ再び転倒し、剣を持った亡者たちに滅多打ちにされた。鎧があるため斬られはすむが殴られたときの衝撃までは打ち消されない。はじめのうちは頭だけでもと両腕で防御していたが、間断なく続く暴力に腕が上げられなくなり、頭部を殴られはじめ、ついには意識を失った…。
主人公初死亡