よく考えろ
気が付くと篝火の前に座っていた。亡者どもになすすべもなくなぶり殺しにされたことを思い出し、怒りとも恐怖とも言えない耐え難い激情が頭を支配する。凄惨な最期が脳裏に浮かび、それどころか、その情景が絶え間なく続き死が繰り返されているような錯覚を覚える。死の走馬燈を見ているうちに、全身に怖気が走り蜃気楼の中にあるかのように視界が霞がかる。思考がまとまらず呼吸も浅くなり溺れたかのように息苦しい。己の意識が溶けそのまま無へと近づいていることはかすかながらに感じた。それだけは避けねばならないと本能が叫んでいたが、もはやどうすることもできない。
意識が朦朧としたなか、白みがかったその眼球に移るのは煌々と燃える篝火であった。その火を見ているうちに己の意識が浮かび上がっていくの感じる。どれほどの時間がたっただろうか。ようやく俺は意識を取り戻した。明瞭で直截的な死と泥の中から這い上がるような悍ましい復活。これを何度も繰り返すのか。これはおかしくならない方がおかしい。火によって心を戻されるまで、死の直前の記憶が何度も再生されるのだ。あれは駄目だ。何か大事なものを失ってしまう。不死人は死ぬ度に人から遠ざかるというのを文字通り魂で理解してしまった。
はじめての死と復活を経験した。何かトロフィーがもらえそうな気がする。あったらあったでうんざりするが。こんな縛りでトロコンはまっぴらごめんである。阿鼻叫喚間違いなしである。そういう性癖の人にやらせてあげてください。俺か?俺はノーマルだよいい加減にしろ!ソウルシリーズをリアルプレイとか頭沸いてんのかクソが!しっかり復活しやがって!だいたい亡者の索敵範囲おかしいだろ!顔ちょろっと出しただけで矢を放ってきやがって!あークソが。そういえば最初の亡者も一歩体出しただけで矢飛んできてたわ。………。えっ?もしかしてそれがヒントだったのか…?えぇ…。容赦がなさすぎて泣けてきますよ。OK。とりあえず亡者の索敵範囲というか探知能力は常軌を逸脱しているんだ。そういう前提で動こう。常識にとらわれていると簡単に死にそうだ。うむ。当面の目標はあのトリオの突破だな。
さて、何事も問題にぶち当たったときはその原因と対策を考えるものだ。主な原因は何よりも亡者の索敵範囲を見誤ったことだな。矢に当たってなければまだまともに立ち回れた気がする。最悪逃げ切れただろうな。それ以外の原因はあれだ。鎧が重すぎた。ひっくり返ったとき、想定以上に鎧の重量に気を取られた。まったく体起き上がらなかったからな…。まあ、不意を打たれればこんなもんだよな。しゃーない、切り替えていく。
あとは対策だな。
こんなハイペースで大丈夫か…?(大丈夫ではない)