二組六人の異世界人   作:117

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3章 9話

 喋るオコジョのキスゲーム。

 

 

 

「姉さん、姉さん。ブンヤの姉さん」

「う、う~ん……」

 士郎たちの部屋。そこに寝かされている朝倉。名目上は風呂場でのぼせてしまった朝倉を看病するという名目だったが、実際は朝倉の処遇をカモに一任する為に他ならない。

 ペチペチと朝倉の頬を叩いて目覚めさせようとするカモ。そしてやがて目を覚ます朝倉。

「……、アイタタタタタ。か、体中に変な痛みが」

「そりゃー姐さん、岩に体を思いっきりぶつけてたからな。一応おキヌの嬢ちゃんが魔法をかけてくれたみたいだけど、多少痛いのはまあ我慢してくんな。嬢ちゃんも魔力を使い切る訳にはいかないし」

 当然の如く朝倉に話しかけるカモだが、朝倉もカモが人語を操れるという事はもう当然の事として頭の中にインプットされている。まさかその程度の事でいちいち取り乱したりしない。

「あ、カモ君。やっほー。っていうか今更だけど、本当に話せるんだね、君」

「まあな。けれどもまあ、そんな事は些細な事だろ? 今俺っち達が話さなきゃいけない事は他にあるはずさ」

「へぇ。話さなきゃいけない事って?」

 言葉を堅くし、目を細める朝倉。そんな朝倉の視線を受け流すような笑みを浮かべるカモ。

「おっとっと、そう身構えなさんな朝倉の姐さんよ。なにもこっちは話が出来ない訳じゃねえしよ」

「私の結論は変わらないよ。ネギ先生にきちっとインタビューさせて貰って、それを世界に公表して私は世界で初めて魔法を記事にした伝説の報道者にっ!!」

「まあまあそう結論を急ぐなって。俺っちの提案もそう悪いものじゃないはずだぜ」

 そう言いながら煙草を取り出してプカリ。そんなカモを顔を顰めて見る朝倉。

 小動物が普通に煙草を吸っている光景に少し頭痛が起きそうだったけれども、それはまあ置いておく事にした。そんな事にいちいちツッコミを入れていても話が進まない。

「提案って何さ、カモ君」

「話を聞いてくれるのかい?」

「まあ、とりあえず話だけはね」

「そりゃ結構。

 まず朝倉の姐さんの提案には一つ大きな穴があるって事さ」

「穴?」

「ああ。魔法使いの鉄則として一般に魔法の事を公表しちゃいけないっていうのがある。あの真面目な兄貴がまさかそれを簡単に破ると思うかい?」

 そのカモの言葉にはっとする朝倉。考えてみればそれも当然のこと、何故今この世界に魔法の事が知られていないかと言えばそれは魔法使い側がそれを隠ぺいしているに違いないという事は容易に想像がつく。

 そしてその先は報道関係に詳しい朝倉だから分かる事。恐らく、というかほぼ間違いなく。魔法使いの側はこの事についてなにかしら対策をうっている。今回のネギの様に、ついやうっかりで魔法の事が世間に洩れてしまうのはそう少ない事ではあるまい。それでもなお世間に魔法の情報がこぼれていない事を鑑みれば、報道管制が敷かれているのはほぼ間違いがない。

(うわぁ、問題山積み……)

 思わずゲンナリとしてしまう朝倉。世間に魔法というスクープを広く知らせる為には、まずはその魔法の世界と戦わなくてはいけない。

 どんな方法で魔法の事を伝えようとする情報を察知し、どんな方法でそれを防ぐのか。それを知る為のとっかかりすら朝倉は手に入れていない。彼女が今知りえている武器は、ネギと士郎が魔法使いであり、カモが言葉を喋れる魔法使いのマスコット的な存在であるという事だけ。

「確かに今姐さんが持っている情報を公表すればそれはそれで大騒ぎになるだろうさ、けどどうせやるならもっとしっかりとした取材をして、しっかりとした記事にしてから公表した方がいい。

 その辺り、ブンヤの姐さんなら分かるだろ?」

 そんな事にも気がつかないで得意満面に持論を広げていくカモ。だがしかしまあ、カモの言っている事も間違いじゃない。元々は朝倉もキチンと取材をした上で記事にし、それをスクープにしたかったのだから。

「それで、カモ君は何が言いたいのかな?」

「そこが肝よ、ブンヤの姐さん。俺っちと取引しないかい?」

 ニヤリと悪党笑いをするカモ。

「兄貴はあれで天才だ。いつか必ず大舞台に立つだろうさ。そうなったら色んな所から取材の依頼が殺到するだろうさ。その取材の独占権とかどうよ?」

「…………いいね、それ」

 深く考えるまでもなくカモの言葉は魅力的過ぎる。とりあえずネギ達に協力しておき、魔法についての情報を集める。そこにネギや士郎といった緩衝材がつく以上、情報を集めるのにもかなり有効なはずだ。ならば今はとりあえず情報収集に専念するのが吉か。

 そこまで一瞬で判断して頷いた朝倉。しかしその朝倉の返事を聞いて白々しくため息を吐くカモ。

「けどまあ、よく考えてみたらブンヤの姐さんが何を出来るのか、どんぐらいの実力があるのか俺っち達はよく知らないんだよな~」

「えー。魔法の事を調べたっていうのは証拠にならないの?」

 ちなみに。朝倉の魔法についての情報のソースは完全なる偶然の賜物なので一切合財本人のパパラッチとしての実力にはならない。まあ、運も実力のうち、というならば少し話は違ってくるかもしれないが。

 そこの辺りの事情について何も把握していないカモはニヤリと悪党笑いをする。

「な~に。今からちょっと作戦を発動させようかなと思ってるんだよ。姐さんにもそれに少しばかり手を貸してもらいたくてね」

「ホホウ。私を試すとはいい度胸じゃん。

 それはともかくカモ君の言う作戦とやらに私、ものすごく興味があるんだけど、詳しく話を聞かせて貰っていいかな?」

 ニヤリと悪党笑いを返す朝倉。

 

 エヴァンジェリンの時とは違った意味の悪夢の一夜が始まろうとしていた。

 

 

 

 

 

 鬼だ。

 悪魔だ。

 獄卒だ。

「……後より出でて先に断つもの(アンサラー)」

「落ち着けバゼット! 消費型の宝具を使うタイミングは今じゃない!!」

「お前にそんな事を言う資格があるかぁぁぁぁぁ!!!」

 フラガラックに向かう予定だったその拳は正座させられている士郎のドタマに突き刺さる。全くもって一切の容赦のないその拳は誰がどう見ても殺す気満々だ。多分この場でこれをくらって生きていられるのは、士郎以外では横島だけであろう。ちなみにその横島は後ろの方で冷や汗をかきながら突っ立ており、彼の後ろではおキヌとアスナがガタガタ震えている。その側にいる刹那は震えてこそいないものドン引いており、士郎と同じく正座させられているネギは士郎の後ろで自分の生徒たち以上にガタガタと震えている。

「や、うん、まあ、今回は何も言い訳できない」

 正座したままそういう士郎にバゼットは何も言わずにガスガスと士郎に向かって本気蹴りを繰り返している。

 正直、今はこんな事をしている時間は全くない。朝倉に魔法がバレたという事は瞬間を争う一大事であり、そっちに意識を割くのが当然である。あるのだが、そういう冷静な判断が出来る人間は正座させられているか我を失って蹴りを入れ続けているかのどちらかである為、一向に状況が進まないのが現状である。

「……これは何事?」

「……いや、俺っちに聞かれても」

 ようやく状況が動きそうな要因が来た。カモを肩に乗せた朝倉が滅多打ちにされている士郎を見て不思議そうに首を傾げている。とりあえず目の前の現実を受け入れている時点で随分な大物だ。

「あなたに魔法の事をバラした大馬鹿者に鉄拳制裁中です」

「いや言葉通りに鉄拳が降ってくるって普通思わないよね」

「ただ、ミスタカモミールがあなたに関してはなんとかすると言っていたので、とりあえずあなたに関しては保留してました」

「スルーすか」

「その空き時間を利用して、こんな事態を招いた大馬鹿者に対する裁判を執行中です」

「あれ? 別にスルーされてない?」

「っていうか、コレはもはや裁判じゃなくて実刑判決じゃね?」

「有罪という事は確定ですからね。効率的でしょう?」

「バゼットには一回三権分立というものの基本概念を教え込むべきだと私は思うんだ……」

 ボッコボコにされた士郎がポツリとそんな事を呟くが、もちろん誰も聞いちゃいない。

「それでミスタカモミール? ミス朝倉の説得は出来たのですか?」

「水臭せぇなバゼットさんよぉ。俺っちの事は気軽にカモって呼んでくれよ」

「それでミスタカモ? どうなのですか?」

 淡々と真面目に繰り返すバゼットは明らかに遊び心が足りてないが、まあまあと間をとりなすように朝倉が間に入ってくる。

「ま、ちょっとばかりカモ君の熱意にほだされたってとこ。

 報道部突撃班、朝倉和美。ネギ先生達の秘密を守るエージェントとして協力していく事にしたよ」

 よろしくねとウインクをする朝倉に、しばし呆けるネギ。

 そしてその顔は段々と喜色に染まっていく。

「え……え~~!? 本当ですか!?」

「本当本当。その証拠に今まで集めた証拠品も返してあげるから。

 と、言っても実はほとんど証拠品なんてないんだけどね。や~、衛宮先生がカマに引っかかったおかげで助かったわ」

 ふ~と額の汗を拭く動作をしながら紙袋をネギに差しだす朝倉。ネギはと言えば正座させられていた罰も忘れて飛びはねて喜んでいるが、しかし未だ正座しているもう一人の罪人の顔色は面白いほど青くなっている。

「ほぉぉぉぉぉお。ねえ、ミスタ衛宮?」

「ハイ。ナンデショウカバゼットサン」

 人間、怒りの感情が吹っ切れると満面の笑みになるらしい。今までとは比較にならないコロス笑みのプレッシャーにとうとうおキヌとアスナは士郎に意識を向けるのをやめて空気を読まずにはしゃいでいるネギを落ち着かせる方向に走ってしまっている。

「つまり、あなたはミス朝倉に一杯くわされたと? 一般人でしかない小娘に、口先三寸で丸めこまれたと?」

 何も言えない士郎。というか、この状況で何を言えと云うのか。

 そんな士郎を観察したバゼットからとうとう笑みが消えた。顔の筋肉は動かず、ただ目だけは爛々と殺意に輝いている。

 大きく息を吸ったバゼットはその激情に任せて喉を震わせて最上級の罵声を放つ準備を完成させて。

「はい、ストップ」

 横島に邪魔された。絶妙のタイミングで声をかけたおかげでバゼットの中に張り巡らされた怒気が一気に萎んでいく。

 代わりに邪魔をした横島に向かってギロリと睨みをきかせる。きかせるが、数秒前と比べてその気迫は雲泥の差があった。

「なんですか、ミスタ横島」

「まーまー。バゼットさんの気持ちも分かるけど、一応カモがしっかりと尻拭いをしてくれたし、まあそんなに厳しくしなくてもいいんじゃないの?」

「いえ、ですが……」

「といってもこのままじゃバゼットさんの気持ちもおさまらないだろうし、今日の夜の警戒は士郎一人に任せるって方向でどう? 今士郎をボコボコにしても敵ばかりが得してこっちは損ばかりだし」

「まあ……それは、確かに……」

 言い淀むバゼット。整合性があり、反論の余地がない。そもそも殴る以外に処罰が思いつかなかったバゼットの事、よりよさげな処罰が示されればある意味理性的な性格と相まって感情を爆発させるのに躊躇してしまう。

 ちなみに今日の見張りの予定はネギに呪いをかけた罰として横島一人がやる事になっていた。押し付ける気満々である。

 だがしかし士郎に選択肢がある訳がない。このままバゼットの怒りのままにボロ雑巾にされるよりかは見張りをした方が断然いいに決まっている。それに現実として神秘漏洩のミスをしてしまった負い目もある。

「分かった忠夫。今日の見張りは私一人でやる。バゼットもそれでいいか?」

「……仕方ありませんね。それで手を打つとしましょう」

 不承不承といった具合に話がまとまる。もちろん一番美味しい思いをしたのは横島である。その上で他の人間にも等しく美味しい所がある辺りが抜け目ない。

 ルンルン気分でその場を辞する横島に、既に意識を切り替えて見張りとしての緊張感を持ち始める士郎。そしてどこか腑に落ちないといった表情のバゼットがそれぞれの部屋に行こうと動き始めたその時に。

「あ、バゼットさん。ちょっといい?」

 一段落ついたらしい様子の朝倉に呼び止められた。見ればネギと生徒たちも解散といった雰囲気になりつつある。

 そんな中でバゼットを呼びとめる朝倉。話に心当たりはないのだがしかし、朝倉の会話を無碍にする事情がある訳でもない。首を傾げながら朝倉に顔を向けるバゼットに声をかけたのはその巨乳に挟まれたカモだった。

「ちょっと内密の話があるんだけどよ、時間貰えるかい?」

「それは構いませんが」

 一応ここには刹那とカモの仕掛けた認識阻害の魔法がかかっている。ここでの会話が外に聞こえなくなるわけではないが、魔法関連の情報に関しては意識から抜け出ていくといった効果がある結界だ。いちいち場所を変える必要もないだろうとその場で話を聞く体勢に入るバゼット。

「それで話とは?」

「それなんだけどよ、バゼットの姐さんはこの修学旅行をどう思う?」

 話を始めたのはカモ。朝倉が口をはさむ様子はなく、ただその場にいるだけの様だ。それならばとバゼットの視線はカモのみに注がれる。

「どうとは?」

「つまりよ、修学なんて言葉がついてるとは言え、基本的に旅行を楽しむ為の行事な訳だろ?」

「ええ、それについては全面的に同意します。名分と実質が違うという事は珍しい事ではない。

 更に付け加えさせて貰えるのならば、この旅行は楽しむという事に関する勉強も入っていると聞く。机に向かってペンをはしらせるだけが勉学ではない」

 予想以上に上手く釣れそうだとカモが心の中でニヤリとほくそ笑んだ。

「そこまで分かってるなら話ははえぇ。そんな楽しむ為の旅行に野暮な事が混じっちまってる。それも一般生徒には関係ない範囲での話だ」

「それは――ええ。確かに否定の余地はありません」

「一応対策は練ってるものの、もしかしたらこの旅行が中止になる可能性もある」

「はい。この状況では撤退を視野に入れる事を怠るべきではないでしょう」

「折角の楽しむ為の行事なのに、このまま帰ったら悔むに悔みきれないってもんよ」

「だがしかし、命には代えられない」

「そこは俺っちもそう思う。だけど俺っちが言いたいのはそういう事じゃなく、今夜にでも楽しいイベントがあったらもし中止になったとしてもそれなりに思い出は残せるんじゃねぇかなって事さね」

 いよいよ話が核心に入って来た。それを感じ取ったのか、バゼットの顔が引き締まる。

「何が言いたいんですか?」

「ふむ。まあ要するに夜中にちょっとしたゲームを、ホテル全般でやりたいって話な訳さ」

「夜中の騒がしい行為は禁止されています」

「一般人を巻き込む魔法の行使は禁止されてなかったっけ?」

 グッと言葉につまるバゼット。そこでようやく朝倉が口をはさむ。

「まあまあ、カモ君もそこまでキツイ事をいいたい訳じゃないよ。ちょっと見て見ぬ振りをして欲しいって訳だから」

「私に職務放棄をしろと、そんなふざけた交渉をしているのですか貴女方は」

「そうじゃねぇよ。バゼットの姉御は明日も護衛で気を張り巡らせなくちゃいけないだろ? 今夜は俺っち達や衛宮の兄貴に任せてぐっすり休むのもいいんじゃないかなってもんよ」

「…………」

 言葉巧みにバゼットを追い詰めていくカモと朝倉。この場合、バゼットがチョロイとも言うが。

 だがそれでもバゼットは納得しない。

「しかし、職務は職務です」

「あ~あ。折角の修学旅行なのに、楽しい思い出も作れずに終わるかも知れないのかぁ」

「う……」

「一般生徒にはなんの関係もないのになぁ……。そこら辺に融通を利かせて生徒たちに楽しい思い出を作るのも職務のうちじゃないのかよ?」

「わ、分かりましたよ! けれど今夜だけですよ、もう!!」

 肩をいからせて自分の部屋に戻るバゼット。やっぱり彼女はチョロかった。

 

「コラァ3―A、いーかげんにしなさい!!

 まったく。お前らは昨日は珍しく静かだと思ってみれば! いくら担任のネギ先生が優しいからと言って学園広域生活指導員のワシがいる限り好き勝手はさせんぞ!!」

 新田先生の雷が落ちた。

 昨日の夜に遊び倒す事が出来なかったうっぷんを晴らす勢いで大騒ぎしてしまったらそりゃあこうなる。枕投げやら怪談を聞いた悲鳴やら宴会やらのどんちゃん騒ぎは、別の部屋どころか近隣住民の迷惑になる域に達していたりする。そのせいか、新田先生の怒りはとどまる事を知らない。

「これより朝まで自分の班部屋からの退出禁止!! 見つけたらロビーで正座だ、分かったな!!」

「え~~っ!?」

「ロビーで正座ぁーー!?」

 そんな叫び声があがるけれども、そんな不満の声は一睨みで消え去っていく。

 そして肩をいからせて階段を下りていく新田先生。そんな新田先生から見えないようにしずな先生がジェスチャーで謝っている。大方、折角の修学旅行なのに楽しみを奪ってしまった事に対する謝罪だろう。

 まあしかし、本当に寝ろというのならそう指示する筈である。班部屋から出なければいいと言っている辺り、新田先生も甘い。

「ブーー。つまんな~~い。ネギ君と枕投げしたいのにな~~」

「ネギ君とワイ談したかったんだけど……」

「ネギ君と一緒の布団で寝たかったのにーー」

 が。もちろんそんなささやかな親心なんてこの年頃の女の子に通じるはずがない。一部かなり怪しい発言をする一同はあやかにまで一喝される羽目に。

「くっくっく……。怒られてやんの」

「あ、朝倉さん~!?

 ムキ~~! 今までどこに行ってましたの!? このひきょー者ーっ」

 そこに満を持して登場した朝倉。壁によりかかって腕を組んでから声をかけた辺り、確信犯だろう。

 が、一応朝倉の弁護をさせて貰えば、彼女は別に新田先生から逃げていた訳ではない。この後のイベントの為の準備が忙しく、班部屋に居なかっただけの話だ。その証拠に、というのも変だが朝倉だけは寝まきでもある浴衣を着ていなく、普通に制服姿だ。

 そこまで準備を念入りにしたからか、かなり自信満々な笑みを浮かべながら口を開く。

「まあまあ、とりあえずそれは置いておこうよ。私からみんなに提案があるのよ。

 このまま夜が終わるの、もったいないじゃない? 一丁、3―Aで派手にゲームでもして遊ばない?」

 朝倉の言葉に賛成と反対意見が同時に噴出する。

「ゲームってどんなゲームなの?」

 そんな中、頭を経由しないで出ただろう桜子の言葉に朝倉の笑みがますます深くなる。

「名付けて『くちびる争奪!! 修学旅行で3―Aの先生たちとラブラブキッス大作戦』!!!」

 一瞬、完全に空気が凍った。そして次の瞬間に大爆発。あっちやこっちで顔を赤くしたりにやけたり。

 その反応に気を良くした朝倉はちょっとテンションが上がり過ぎかなと冷や汗をかきながらもルールを説明していく。

「ルールは簡単。

 3―Aの中から2人1組でチームを組んで新田先生方の監視をくぐり、旅館内のどこかにいるネギ先生、横島先生、衛宮先生の唇をGET!! 誰の唇でもいいけど早くキスしないと新田に見つかる確率があがるからね。

 そしてもちろん妨害可能! ただし、武器は両手の枕のみ!! 成功者には豪華賞品をプレゼント。

 なお、新田先生見つかっても他言無用、朝まで正座、死して屍拾うものなし!!」

「厳しっ! 見つかった人は助けないアルか!?」

「豪華賞品って何だよー!?」

「ひみつー♪ けど、期待していいよ」

「う~む……」

 みんなかなりノリノリの好感触。だがしかし、そこでユラリと闘気を出しながら朝倉に近づく真面目な委員長。

「朝倉さん……」

「ん? やっぱダメか、いんちょ?」

 しょうがないかなと思いながら残念そうに聞く朝倉。

「やりましょう!!!!!!!!!!!! クラス委員長として公認しますわ」

「そらども」

 古人いわく、愛の前には倫理なぞ無に等しいらしい。

「よっしゃ! それじゃあ10時半までに参加者は私に報告、開始は11時から。トトカルチョの〆切は11時5分まで。何か質問はあるかー!?」

「ないー!」

「うわー、なんか面白くなってきた!」

「出る、あたし出るよ!」

「あたしはやっぱり応援かな?」

「狙いは誰? やっぱりネギ君? それとも横島先生か!?」

 テンションがあがるその場を辞して、ニヤリとほくそ笑む朝倉とカモ。ちなみにカモの隠れ場所は朝倉の胸の間というエロさ。

「フフフ、ラブラブキッス大作戦とは仮の姿…………。その実態はパクティオーカード大量GET大作戦さ!!」

「誰に説明してんのよ、アンタ」

 冷や汗をかきながらツッコミを入れる朝倉だがしかし、その目は既に$マークだ。なにせ一回のパクティオー成立で5万オコジョドルで、しかもトトカルチョの胴元として大儲け確実。とどのつまり、今回の作戦は完全に俗欲が原因だったりする。

 ただ不純な動機である割には旅館を囲うように契約陣を描いたり、部屋々々にカメラを設置したり、あげくには旅館各所の防犯カメラをジャックしたりと、やっている事は無駄に高性能だったりする。

 だがしかし、3―Aの中にカモの真意に気がついている人間がいる事に気がつかなかったのは誤算だろう。

「…………」

「アスナさん、どうかしましたか?」

「キス……って事は、パクティオー?」

「アスナさん?」

「ちょっと刹那さん、これ問題かもしんない」

「?」

 そう、アスナだけはネギとパクティオーした事がある為に、これだけあからさまなゲームの裏側にあるものを感じ取れてしまう。

 けれどもここまでテンションが上がってしまったのならば真っ向から止めるのは無理だろう。新田先生に告げ口するのも悪い気がするし、なによりそんな搦め手をアスナは好まない。

 

 そうして時間は11時。

 

「さー始まりました。修学旅行特別企画『くちびる争奪!! 修学旅行で3―Aの先生たちとラブラブキッス大作戦』~~~~!!!!

 エントリーNO.1 雪広あやか&長谷川千雨!

 いいんちょの側に居たのが運の尽き、ってゆーか那波さんと村上とザジちゃんの逃げ足が速いのか?

 エントリーNO.2 神楽坂アスナ&桜咲刹那!

 自他共に認めるネギ君の保護者、アスナが桜咲さんを巻き込んで参戦だ! 果たして他の猛者達からネギ君の唇を守る事が出来るのか!?

 エントリーNO.3 佐々木まき絵&明石裕奈!

 何か別ベクトルのやる気を感じるこのタッグ、息がピッタリな事だけは確か!

 エントリーNO.4 鳴滝風香&史伽!

 既に半泣きの妹は姉に引っ張られての参戦! どこまでいけるのかこの二人!?

 エントリーNO.5 綾瀬夕映&宮崎のどか!

 体力こそは他に劣るものの、図書館探検部は伊達じゃない!? ダークホースになる事が出来るのか!?

 エントリーNO.6 氷室キヌ&早乙女ハルナ!

 こちらも図書館探検部から。狙いはもちろん横島先生!? 必見です!」

 そこで言葉を一区切り。マイクから口を離してカモと見合う朝倉。

「ねえ、もしかしてアスナ達って……」

「そういやアスナの姐さんは兄貴とパクティオーしてたよな。こりゃまずったかな?」

 冷や汗を流すがここまで来たら止められない。なるようになれだ。朝倉にとっては別にトトカルチョ分の儲けは確定しているのでそこまで深刻な話ではないし。

 改めてマイクに向かい、声を張り上げる。

「では、ゲームスタート!!」

 

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