UMPと指揮官のクリスマスのお話

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すなわちクリスマスイブは9の日


9のクリスマス

「しきか〜ん!」

 

「おっとUMP9ちゃん。そんなに走ったら転んじゃうぞ」

 

 僕は、廊下の奥から駆け寄ってきた少女を胸で受け止める。

 

「えへへ、でもいつだって受け止めてくれるでしょ?」

 

「まあそりゃあんなに真っすぐに走ってきたらね」

 

 彼女もこんなかわいい見た目をしている。しかし、中身は歯車で動く機械。しっかりと構えないと僕は倒されかねない。

 

「ところで何か用かい?」

 

「んーとね。45姉が明日はクリスマスだーって言ってたから、指揮官は何が欲しいかなって」

 

「欲しいものか、そうだな……。そろそろ休暇が欲しいなぁ。どこか南国の暖かいビーチでゆっくり……なんてね」

 

「もう、真面目に聞いてるんだけど〜!」

 

「本当のことだよ。まぁ、無理なことはわかってる。クリスマスプレゼントはおいしいケーキがいいかな」

 

「ふーん……、わかった!それじゃあ準備があるからまた後でね!」

 

「ああ、後で」

 

 UMP9はそれだけ言うと、どこかへと走っていってしまった。後で何があるのかはわからないが、とりあえずほぅとため息をつく。まったく嵐のように来て去っていく、犬のような子だ。

 最初は慣れていないから無理に明るく振る舞っているだけなのだと思っていた。しかし、これは彼女の生来の性格のようだった。

 

「あら、しきか〜ん?」

 

「UMP45ちゃん。今日も何かたくらみ事かい?」

 

 廊下を歩いていると曲がり角でばったりと出会う。

 

「指揮官はクリスマスプレゼントは用意してるの?」

 

「もちろん。メンタルモデルが幼い子は本当に楽しみにしてるからね」

 

「さすがね。でも……」

 

 そう怪しく笑みを浮かべながら、UMP45は触れるか触れないかの距離まで近づいてくる。

 

「メンタルモデルが大人だからって期待しないわけでもないのよ?」

 

「まったくUMP45ちゃんは……。何が欲しいんだい?」

 

「指揮官」

 

「まったく、僕は何人に分身すれば君たちは気が済むんだい」

 

「へ〜。他の子からも同じこと言われたんだ〜」

 

「そりゃもうごまんとね」

 

「モテモテね」

 

「まったく……なんだろうな。この溢れ出る美しさというか。やはり抑えきれないんだろうな、僕のポテンシャルは」

 

「これがなければ本当に良い指揮官なんだけどね」

 

「ひどくないかい!?」

 

「冗談よ。そんな指揮官も私は好きよ?」

 

「お世辞でもうれしいや。そういえば404小隊はクリスマスは休みかい?」

 

「ええ、この日くらいはね。あと声が大きいわ。私はここの基地所属の戦術人形。そうでしょ?」

 

「ああ、悪かったよ。それで、どうだい皆で食事にでも行ってきたら」

 

「それはお邪魔虫は出てけってこと?」

 

「そんなつもりじゃ」

 

「冗談。ええ、たまには皆で食事も良いわね。ああ、でも……」

 

 そう言ってUMP45は言いよどんだ。その様子があまりにもわざとらしすぎて、僕は怪訝そうな表情を浮かべてしまった。

 

「予定ができたみたいね。9から連絡が来たわ」

 

「そうかい。それじゃあ姉妹水入らずで買い物かな?」

 

「そう……ではなさそうだけど、まあそんなところかな?それじゃあ私も準備してくるから」

 

「ああ、いってらっしゃい」

 

 笑顔で送り出そうとする僕に、UMP45はこてんと首を傾げた。

 

「いってらっしゃい?それは間違いよ指揮官?」

 

 UMP45が満面の笑みを浮かべた。あっまずいなと思った時にはもう遅かった。

 

「ごめんね指揮官、でもこうでもしないと抜け出せないから!」

 

 後ろから9の声が聞こえたかと思うと、次の瞬間には僕の全身は痺れて動かなくなった。

 次第に意識が遠のいていく。薄れゆく視界の中で、UMPの2人とも、不気味な笑みを浮かべていた。

 

 

 けれどなぜか、僕はそこまで不安や恐怖といった感情は抱かなかった。

 

 

 

 

 

 

=*=*=*=*=

 

 

「45姉いくよー!」

 

「待ってよ9!きゃっ!」

 

 UMP45の顔面にビーチボールが当たる。

 

「もう、やったな〜?」

 

「あはは!ごめん!ごめんってば45姉!」

 

 姉妹の追いかけっこを眺めながら、僕はココナッツジュースを啜った。

 

「ねえ指揮官!楽しい?」

 

 いつのまにか戻ってきたUMP9が、僕に問いかける。

 

「ああもちろん」

 

「じゃあ指揮官も一緒に遊ぼうよ!」

 

「まったく、スタンガンのせいで動くのがつらいんだが」

 

「ごめんね。でもいろんな視線をくぐり抜けてここまでくるにはこれしか方法がなかったから……」

 

「怒ってるわけじゃないよ。UMP9ちゃんは僕の願いを叶えようと短い時間で頑張ってくれたんだろう?」

 

 僕はUMP9の頭を優しく撫でながら、にっこりと笑った。

 

「よし、それじゃあ遊ぼうか!」

 

「うん!」

 

 UMP9は溢れんばかりの笑顔を浮かべながら頷いた。

 

「あっそうだ指揮官!」

 

「ん?なんだい?」

 

「メリークリスマス!」

 

 普段はは雪が降るほど寒く、コートを着込むような時期に聞くような言葉だ。しかしUMP9は、真夏のような日が差し込むビーチを水着姿で駆け回りながら、そう言った。

 

「ははは、メリークリスマス!」

 

 僕も笑いながら、そう応えた。



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