12の月の小夜曲   作:野生のムジナは語彙力がない

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べサニーのウェディングスキンがようやく実装されたので、その記念として再掲します。

本編の前に少しだけ話を聞いて下さい。
以下はべサニーのキャラクターページのところに書かれたコメントの一部です。
・高い
・守銭奴
・べサニー被害者の会はここですか?(←上手い!)
・お金は使うものだと迫ってくるヤベーやつ
・金づるだと思ってるよね?
・しばくぞ!……etc

……これは、いけない
そう、いけないのですよ!

このように、コインショップでの値段の高さがべサニーへの悪評に繋がって繋がってしまっています。
ですが、皆さまもご存知の通り、べサニーは祖国の復興のために身を粉にして働くいい子です!まだオシャレ(スキンなし)や恋愛などをしたいであろう年頃にもかかわらず、祖国のために、時にはうたた寝をしてしまうほど無理をしているような、とってもいい子なのです!これは中々できることじゃあありません!

そこで、値段の高さなど気にせずみんなが気持ちよくコインショップを利用することができるようになれる(かもしれない)お話を作ってみました。
これを読んで少しでもべサニーっていいなと思えたのなら、これから毎日コインショップでお買い物をして、べサニーのことを応援してあげましょう!


ガラにもなく甘々にしました。
指揮官様、この甘さに耐えられますか?



それではお楽しみください……






おまけ(べサニーのお店に行きたくなるお話)

 

 

 

 

クリスマスのちょっと前、ハロウィンの少し後

 

 

 

喫茶店バビロン(旧酒場バビロン)

地中海のどこかにあるその店は、かつて地中海で最も有名な酒場だった。……なのだが、諸事情により酒場から喫茶店への変更を余儀なくされ、かつての酒場の面影は何処へやら、それまでは傭兵の溜まり場と化していた暗い雰囲気のお店から、誰もが安心して飲食を楽しむことのできる明るい雰囲気のお店へと変貌を遂げていた。

 

 

 

エル「なるほどね!これが『オトナノジジョウ』なのね!」

フル「指揮官さん、いってらっしゃいです」

 

 

 

 

恐ろしいことに喫茶店は24時間営業だった。

この店にはヴァネッサという美しいマダムがいるのだが、彼女はその理由を冗談か否か「いつでもあなたを受け入れたいから」と微笑み混じりに語っていた。

また、心地の良い声と優しい心で人々を包む彼女は老若男女問わず各地の傭兵たちの憧れの的で、店が喫茶店へ変貌してもなお、彼女目当の客は後を絶たず、時間を気にせず店に行けるということもあって、はるばる遠方から訪れる客もより一層増えたのだった。

 

喫茶店バビロンでは酒場だった頃の名残か、飲食だけではなくちょっとしたギャンブル(カードゲームやBMバトルシミュレーション)に興じることもでき、さらには傭兵や賞金ハンターなどのリクルートも可能であった。

 

先に上げたことだけでも、とても喫茶店とは思えないサービスばかりなのだが……しかし、それらはまだ喫茶店バビロンの表の顔に過ぎなかった。

バビロンの隠れた裏の顔は、その2階にあった。

 

バビロンの2階には、特別な権限を持つごく限られた者しか立ち寄ることのできない部屋があった。その場所に足を踏み入れることができるのは、類い稀な実力を持つ腕利きの傭兵でも、圧倒的な財力を持つ資産家でも、一国の首相にも匹敵する権力を持つ者でもない。立ち入りが許されているのは喫茶店での労働に従事する者か、喫茶店バビロンが絶対的な信頼を寄せる者だけだった。

 

1階からは隔絶された空間となった2階

2階にはさらに3つの小部屋があった。

 

第1の部屋は、騒がしい1階とは違い、静かな時間を楽しむことができる秘密基地のような空間。ここに入室できるのは、特別に招待された者を含めて原則2人まで(例外あり:3人)で、しばしば一対一で絆を深めるために活用される場となっている。また、1階では味わうことのできない最高級の飲み物と食事を提供している。(食事は必ずしも美味い訳ではないが……)

 

第2の部屋は、バビロンで働く従業員たちのための休憩室であり、特筆すべき点はないがプライバシー的な観点とバビロンの規則上、基本的に従業員以外は立ち入り禁止となっている。

 

第3の部屋は、世界中のブラックマーケット(闇市)から取り寄せた機体やカケラ、アイテム、パーツなどの取り引きのために使われる小部屋。ここでは稀に、闇市(正規の取り引きではない)での取り引きでは違法とされている「翼」と称される貴重な機体のカケラの取り引きも行われるため、たとえ第1の部屋に招待されていたとしても酒場バビロンによる厳正な審査を通過した者しか入室を許可されていない神聖な場所だった。

 

 

 

そして……バビロン2階、第3の部屋では今宵もまた商談が行われていた。

 

 

 

「指揮官様。本日の商品はこちらとなっております」

 

木製の大きなテーブルを挟んで向かい側のソファに座る女性が、持っていた商売用の端末をこちらへと差し出してきた。

 

ありがとう、と礼を述べつつ端末を受け取り、画面をスクロールしていく。いくつかの品物にチェックマークを付けて彼女へと返却する。

 

「はい、合計で30万となります」

 

端末に表示された金額を読み上げ、商人の彼女……べサニーはいつもの営業スマイルを浮かべた。

 

べサニーは喫茶店バビロンお抱えの商人だった。美しい桃色の髪の毛、白い肌に金色の瞳、目元のホクロが印象的な女性。着ている服は彼女のトレードマークである花(おそらくペンタス)をモチーフにした桃色のドレスで、貴族らしく露出の少ないそれを身につけたべサニーはとても清楚で上品な雰囲気を放っていた。また、桃色に統一されたコーデは彼女の美しい髪と相まって、まるで一輪の花が擬人化したようでもあった。

 

グレイトブリテン出身の彼女は、地方長官の令嬢という立場にありながら、権力による怠慢を嫌い、権力者の立場から常に民衆のことを思いやっていた。その立場上、ブリテン本国へ戻ればもっと良い地位につけるにもかかわらず、時には合衆国との平和維持に邁進し、時には商人として各地を飛び回る日々を送っており、そこで得たお金の殆どを祖国の復興に充てている。

 

そんな彼女をひとことで言い表すとすれば

「優しくて頑張り屋な人」……と言うのが最適なのだろう

 

そんなことを思いつつ、端末を操作する彼女のことを何となく見つめていると、ふとした拍子にべサニーと目が合ってしまった。

 

「指揮官様、どうかされましたか?」

 

いや……何でもない

 

「私の顔に何かついていますか?」

 

そういえば、紫パーツはないのだろうか?

 

「紫パーツですね。はい、少々お待ちください」

 

思わず話題を商品の方へ移すと、べサニーはすぐさま端末へと目を落とし、少しの間検索を行い……

 

「えーっと……ちょうど紅蓮地雷とダブル冷却コアのカケラが入っていますね。お買い上げになりますか?」

 

それを聞いて少しだけ考えた後、パーツがどちらも希少なコアパーツであること、BMの超改造で今後必要になってくるかもしれないなどの理由から、やや割高だが購入することにした。

まあ……これには建前も含まれているのだが

 

「毎度、ありがとうございます」

 

配送先はいつもの場所で

 

「分かりました」

 

商談はものの数分で終わった。

カード決済で手早く支払いを済ませ、商談部屋から出るべくソファから立ち上がった。

 

「あの、指揮官様」

 

 

「最近、お疲れではないですか?」

 

……疲れている?

彼女からはそんな風に見えているのだろうか

 

「はい、ここのところ顔色があまり優れない様子だったので……」

 

そうか、顔に出ていたのか……

 

そこで最近のことを思い返してみると……部隊の編成と運用、作戦の立案・指揮、掃討や周回、グレートブリテンや合衆国政府、日ノ丸との取り引き、部下たちとの交流、関連施設への視察など、やるべきことが多すぎて休暇どころか睡眠すらまともに取れない日々が続いていた。

自分としてはもう慣れたもので疲労こそあまり感じていなかったのだが、彼女は顔色の僅かな変化から蓄積した疲労を見抜いたのだろう。

 

しかしまあ……自分でも気づかなかったことに、よく気がついたものだ

 

「はい、だって指揮官様とはもう長い付き合いになりますから」

 

どうやらべサニーは自分が思っている以上に自分のことをよく分かっているようだった。なるほど、客のことをよく知ることもまた上手な商売の手法の一つなのだろう

 

「指揮官様、あまり無理はなさらないでくださいね?」

 

……分かってる

 

「本当に分かっているのなら、そのように疲れたような顔をなさらないはずですよ? とはいえ、指揮官様も多忙な身であることは存じています」

 

そう言って、べサニーはゆっくりと近づいてきた。

 

 

「そこで一つ、私からご提案を……」

 

 

提案……?

 

「はい。指揮官様にはいつもご贔屓にしもらっているので、お店からちょっとしたサービスを提供したいと思っているのですが……お時間は大丈夫でしょうか?」

 

サービス? 割引でもしてくれるのだろうか……?

 

「いえ、そういうのではなくて……私が、指揮官様のお疲れを取って差し上げようと思うのですが……どうでしょう?」

 

え、べサニーが……?

 

「はい、私が」

そう言って彼女はニッコリと微笑んだ。

 

そ……そうか……

その微笑みにどこか強いものを感じた。明日も早朝からやるべきことが沢山あったのだが……まあ、少しくらいは……と、べサニーの提案を受けることにした。

 

しかし、疲れを取るサービスとは一体何なのだろうか? まさかマッサージでもしてくれるというのだろうか。しかし、小柄で華奢なべサニーの体つきを考えると、体力的にもできることはせいぜい肩たたきくらいなものだと思うのだが……(それはそれで嬉しい)

 

「肩たたき……ですか? それはそれで指揮官様の疲れを癒すことはできるかもしれませんが……今回、指揮官様に提供するサービスは……こちらです」

 

そう言ってべサニーはどこからともなく一本の小さな白い棒を取り出した。否、白い棒でもそれは両端に一際大きい山を作った綿棒だった。

 

 

 

「指揮官様、耳かきはいかがでしょう?」

 

 

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

 

「指揮官様、私のお膝の上にどうぞ」

ベッドの上に腰掛けたべサニーが、綿棒を片手に笑顔で手招きをしてくる。

 

…………

 

少し気恥ずかしさを覚えたので、少しだけべサニーから目を離して室内を見回す。

べサニーに連れてこられたのは従業員の休憩室……いわゆる第2の部屋だった。言うまでもなく、中に入るのはこれが初めてだった。

 

入ってからすぐの所にトイレとバスルーム。リビングの中には3つのベッド。ベッド同士はカーテンで仕切られ、その手前にはテーブルと二脚の椅子。いくつかのロッカーと、あとは小さな調理台があるだけの簡素な部屋だった、なるほど、従業員たちから休憩室と呼ばれているだけあってその部屋は確かに休憩室のようだった。

 

「指揮官様? 何か珍しいものでもありましたか?」

 

少し、気恥ずかしいというか……

 

「何を今更、指揮官様と私の仲ではありませんか」

 

べサニーは小さく笑い

 

「遠慮なんてなさらないでくださいませ。さあ、どうぞ……」

 

では……失礼して

 

べサニーに促されるまま、頭を膝の上へ……

 

「指揮官様、具合はどうですか?」

 

大丈夫だと伝える

 

「私のお膝、柔らかいですか?」

 

……悪くはない

べサニーの問いかけに、短く冷静に答える。

 

スカート越しに感じる彼女の膝枕は、自分が愛用している枕を思わせる、程よい柔らかさと、陽の光をいっぱいに溜め込んだ花が放つ命の暖かさを彷彿とさせる熱を持っていた。

正直に言うと……膝枕だけでも指揮官の立場を忘れて叫びたくなるほどの心地良さがあった。

 

「ふふっ、どうやら満足げなご様子ですね」

 

しかし、自分の顔に出た僅かな顔色の変化を見逃すべサニーではなかった。まるで思っていることを全て把握しているとでも言うかのようにべサニーは顔を覗き込んでくる。

 

「指揮官様と私……きっと身体の相性が良かったのですね」

べサニーはサラッととんでもないことを言ってみせた。

 

べサニー、そういうのは……

 

「ふふっ……失礼しました。相性がいいのはあくまでも指揮官様の頭と、私のお膝……ですね」

 

…………

悪びれるでもなく小さく笑う彼女に、調子が狂わされる

 

「それでは……まず左の耳からお掃除しますね」

 

綿棒が耳の中へと挿し込まれる

かり……かり……

綿棒の先端が耳の中を優しく移動する。

 

「指揮官様、どうですか?」

 

少しくすぐったいが、とても気持ちいいと伝える。

 

「ふふっ、練習の甲斐があったというものです」

 

……練習?

 

「はい。実は……指揮官様がお疲れだということをヴァネッサさんにお伝えした所、それなら最近流行りの耳かきをお勧めしてもらったんです」

 

ヴァネッサ?

 

「はい。それで、ここ最近はヴァネッサさんの元で耳かきのイロハについて勉強していたんです。ヴァネッサさん、とっても耳かきが上手で色々と勉強になりました」

 

そうか……あいつの入れ知恵ということか

 

「練習のためにヴァネッサさんの耳を貸して貰ったことはあるのですが……殿方にしてあげるのはこれが初めてだったもので……貴方様に気持ちいいと言って貰えると、とても嬉しいです」

 

自信がついたのか、べサニーはさらに真心のこもった優しい手つきで耳の中を攻めてくる。

こしょこしょとした感触が、なんともたまらない

 

「それにしても……」

 

べサニーは体を少しだけ前にかがめて、耳の中を覗き込んできた。

 

「指揮官様のお耳の中、凄く汚れていらっしゃいますね」

 

そういえば、耳掃除なんていつ以来だろうか?

 

「あらあら……ダメですよ、指揮官様?」

 

べサニーはそう言って先ほどよりも強く、ゆっくりと、綿棒で耳の奥底をなぞり始めた。

 

「指揮官様の耳は、あなた様のことを信頼している皆様の言葉を受け止める大切なところですから、常日頃からしっかり綺麗にしておかないと……めっ、ですよ?」

 

べサニーの上手い言い回しに、小さく笑う。

 

「よいしょ……よいしょ……」

 

耳の中に溜まった汚れが掻き出されていくような感覚

 

「沢山、出ましたね」

 

心なしか左耳がスッキリと、聞こえやすくなった気がする。

 

「あとは……耳の周りの汚れを落として…」

 

耳の表面へと移動した綿棒が、溝に溜まった汚れを落としていく。

 

「仕上げに………………ふぅー」

 

……うわ

耳の中に息を吹き込まれ、背筋がゾクリとなった。

 

「くすぐったいですか?」

 

少し……驚いただけ

 

「では、今度はちょっと小さめに…………ふー……」

 

先ほどより優しくなったべサニーの吐息が耳の中をくすぐり、耳全体が熱くなるのを感じた。

 

「指揮官様……次は右耳をお掃除したいと思います。起き上がらなくていいので、そのまま体を私の方にお向けください」

 

言われるがまま、べサニーの方へ体を向ける。

腰に取り付けられた、彼女トレードマークであるピンク色の花飾りが目の前に来た。

 

「それでは、始めますね」

 

綿棒の向きを切り替え、べサニーは右耳の奥へその先端を差し込んだ。耳の奥底を、綿棒がごそごそと動き回り始める。

 

「指揮官様、その……痛くはないですか?」

 

いや、寧ろ気持ちいいくらいなのだが?

 

「その……左耳の時は顔を外側に向けて頂いたので、指揮官様のお顔を見ながら耳かきをすることができたのですが……こちら側に顔を向けられると……その……視界が悪くて、貴方様のお顔がよく見えなくて……」

 

……ああ、そうか

少しだけ歯切れの悪くなったべサニーの言葉から、大体のことを察した。加減を聞くならまだしも、わざわざ痛いかどうかを聞いてくるのはそういうことだったのか。

 

聡明な彼女の、ちょっとしたミスだった。

 

影になっており、こちらからもべサニーの顔は見えない。何故なら頭上には……お互いの視線を妨げる大きな塊が……いや、これ以上余計なことを考えるのはよそう。失礼だ

 

「失策でした……」

 

体勢を変えようか? と提案してみる

 

「いえ……大丈夫です。でも、痛かったら無理をせず仰ってくださいね」

 

そうして、べサニーは少しやり辛そうにしつつも耳かきを続けた。痛かったら教えてと告げた彼女だったが、耳かき初心者と語る彼女の腕前はとても素晴らしいもので、なんと言うべきか……背中の痒いところを正確にかいてくれる、その耳かき版だと言えば分かりやすいだろうか。

まるで心を読んでいるかのように、的確に心地よいポイントを攻めてくれる、思わずクセになりそうなくらいだった。

 

「よいしょ……それにしても、指揮官様」

 

……?

 

「指揮官様と最初にお会いした頃が懐かしいです。……指揮官様は、覚えていらっしゃいますか?」

そこで、べサニーは耳かきの手を止める。

 

いや、全然……

 

「ふふっ……私はよく覚えていますよ。指揮官様は最初の頃、お店のシステムが分からなくて初々しく酒場の中を右往左往していましたね」

 

相変わらず……人をよく見ていることで

 

「影で、私の持ってくる商品の値段が高いとぼやいでいたことも……知っているんですよ?」

 

…………

 

「いえ、別に悪く言うつもりはありません。皆さん、そうおしゃっていますから……そして、大体のお客様は別のお店に行って、私のお店には二度と足を運ばなくなる…………でも」

 

 

 

 

 

「……指揮官様だけは違いました」

 

 

 

 

 

「私のお店で取り扱っている商品の値段が高いことは、私もよく分かっています。お金というものは有限です、ならば少しでも安値で売っているところへ行くのが道理です。でも……指揮官様は、ずっと……私の店でお買い物をしてくれましたね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「指揮官様、どうしてですか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それは……

どう答えてよいか考えあぐねていると

 

「ふふっ、ごめんなさい」

 

すると、べサニーはクスリと笑った。

 

「……こういう質問をされると、困っちゃいますよね?」

 

……そんなことは

 

「いえ、指揮官様は何も言わなくていいです」

 

白い手袋に包まれた彼女の繊細な手が、細い指が……まるで子どもをあやすかのように頭を撫でてくる。

 

「今は、今だけは……何も気にせず私の耳かきを堪能してくださいませ」

 

そう言って、べサニーは耳かきを再開した。

 

 

 

そう……知らない方がお互いのためになる

目を瞑って静かに彼女の耳かきを受け入れる。

 

 

 

こちらは傭兵のようなもの

べサニーは帝国の貴族

身分違いも甚だしい

 

 

 

本来ならば、このように触れ合うことなどあり得ない

…………そう、絶対にあり得ないのだ

 

 

 

お互いに……他人の領域に踏み入ることなく、黙って自分の役割を果たしていれば、それでいい

 

 

 

そして、至福の時間はあっという間に過ぎ去り

 

「……ふー………はい、指揮官様。耳かき完了です、お疲れ様でした」

 

……ありがとう、とても良かった

名残惜しさをひた隠しにしつつ、べサニーの膝から頭を離し、体を起こしてベッドの上に座る。

 

「あの……指揮官様」

 

……?

 

「申し訳ありません。耳かきの仕上げを忘れていました」

 

仕上げ? 息は先程吹きかけていたはずだが?

 

「あ、大丈夫です。指揮官様は楽な姿勢で座ったまま……動くと危ないので目を瞑って、その場でジッとしていてください」

 

言われた通り、目を瞑ってその場にとどまる。

 

「では……仕上げをさせて頂きますね」

 

するとベッドが軋み、べサニーがこちらへと体を寄せ、右耳に顔を近づける気配。予想通り右耳に息を吹きかけるのだと思っていると……

 

 

 

「ん………………ちゅ……」

 

 

 

!?

 

柔らかくて温かいものが、右耳に触れた。

思わず目を開ける。

 

べサニー……!? 何を……

 

「指揮官様、目を……瞑っていてください」

 

戸惑いを隠せずにいると、耳元でそんな囁き声

 

「大丈夫です。先程の耳かきはお店からのサービス。そしてこれは……常日頃からご贔屓にしてくれている貴方様への、私からのサービスです」

 

目を瞑ると、べサニーは再び耳に口づけをしてきた。しかしそれだけに留まらず、彼女は先程耳かきをしたばかりの耳に、チロチロと舌を這わせ始めた。

 

「ん…………」

 

耳の浅い部分を這い回っていた舌は、やがて耳の奥底へ

 

…………!

 

耳かきの時とは比べものにならないほどのゾクゾクが背筋に走り、耳の中に響き渡る水音は頭頂部まで響き渡り、漏れる吐息の熱さが耳を痺れさせた。

 

こ……これも、ヴァネッサの入れ知恵だろうか?

 

「……いえ、耳舐めはユメノシオリさんから教わりました」

 

……ああ、いたね……そういえば

 

最近、アイアンサーガの世界へ現れたV-Tuber

お得意のASMRで、配信上だけではなく戦場でも多くのリスナー(の耳)を虜にする堕天使サキュバスらしい……いや、ユメノシオリらしい行動だった。しかし、清楚で真面目なべサニーに変なこと教えやがって……あいつ……

 

「指揮官様? もしかして……お嫌、だったでしょうか?」

 

見ると、べサニーは微妙な顔をしてこっちを見ていた。

思わず、そんなことはない、むしろ続けて欲しいと伝えた。

 

「はい、分かりました」

 

すると、顔を明るくしたべサニーは再び舌を這わせ始めた。耳に広がる柔らかい、それでいて生暖かい感覚に、背筋がぞくりとなった。

 

普通に考えると引かれるようなことなのだが……

正直言って、形容し難い心地よさがあった。

 

しかし、教わったとはいえ耳舐めは耳かきとはワケが違う。何のためらいもなくできるようなことではないはずだ

 

「……指揮官様、どうですか?」

 

……悪くない……どこかで練習でも……?

 

「いえ……耳舐め自体はこれが初めてで……正直、上手くできるかどうか不安でした」

 

だけど、やけに手慣れているような……?

 

「それは多分、ヒルダさんを参考にしたからだと思います……んっ」

 

 

 

なんでヒルダ?

 

 

 

そこまで考えて、一つ思い当たる節があった。

それは、数ヶ月前……基地で行われたハロウィンパーティでの出来事。みんなが魔法使いや魔女、吸血鬼などといった仮装をしている中、合衆国出身の彼女が選んだ仮装は何故か極東版ゾンビ……いわゆるキョンシーだった。

果たして、ヒルダの仮装は痴女と呼ばれても仕方がないほど露出が多かった。殆ど半裸で、寧ろ見ているこっちが恥ずかしくなってしまうその仮装の威力は、ウチのスタッフ(男女問わず)が何名か鼻血を噴き出してしまったほどだった。

 

本業は刑事なのにな……

 

そして、キョンシーの真似をするヒルダの……チロリと出した赤い舌、その舌の動きがやけに煽情的で艶めかしかったことを覚えている。

べサニーはそれを参考にしたのだろう。

 

 

 

ヒルダとはもう一度話し合う必要がありそうだ

 

 

 

「まあ、そう仰らずに……ヒルダさんのお陰で、こうして指揮官様を喜ばせてあげられるというものですから……」

 

しかし、耳を舐められていては入る力も入らない

 

「ん……始めはこれが癒しになるのかと……ちゅ……私も半信半疑でしたが……ふふっ……指揮官様の顔を見ているとそれがよく分かります」

 

顔……?

 

「指揮官様の顔……とってもふにゃふにゃになっています」

 

……!?

 

「普段は凛々しくてカッコいい貴方様ですが、これは……そのような顔になってしまうほど気持ちが良くなった、と受け取ってもいいでしょうか?」

 

それは……恥ずかしい、な

 

「ふふっ、とても可愛らしいですよ……んっ」

 

べサニーの耳舐めは続く。

 

目を瞑っていてと言われたのだが、ふと、耳舐めをする彼女のことが気になって薄目を開けると、視界の端にチラチラと見えるべサニーの耳は真っ赤に染まっていた。

一見すると平気なように見えるべサニーだったが、内心かなり恥ずかしいのだろう。普段の白い肌と比較すると、それはとても大きな変化だった。

 

そんな様子をみせる彼女がとても可愛らしく、

そして、普段は絶対に見ることのできない彼女の意外な一面を見れたような気がして、心の中に湧き上がるものを感じた。

 

べサニーの耳舐めは右耳に続いて左耳へ

再び、執拗な耳舐めが続く

 

その頃になると頭の中はすっかり快感で支配され、猛烈な眠気に苛まれ始めた。

 

「んっ…………指揮官様? もしかして眠たくなってきちゃいましたか?」

 

…………

 

「でしたら、そのままベッドへ横になってください。大丈夫……朝まで、添い寝して差し上げますから」

 

…………

 

べサニーに促されるままベッドへ体を倒すと、体の上に毛布が被せられた。まだ人肌で温められていない毛布はヒンヤリと冷たく、少しだけ肌寒かった。

「失礼します」

べサニーは礼儀正しく毛布の端を摘み上げ、その中へ体を滑り込ませ……ぴっとりと、寄り添うように体を押し付けてきた。

 

お互いの体を温め合っていると、

ベッドの中は程よい暖かさに包まれた。

 

「ふふ……私も、眠たくなってきました……」

 

耳元で囁かれる。

 

「指揮官様……いつもご利用、ありがとうございます。貴方と巡り会えたことは、私にとって幸福だったと思っています」

 

それは、いい金づるという意味でだろうか

それとも……?

 

「……ふふっ、それは知らない方がお互いのためになると思います」

 

……そっか

 

「疲れと耳の汚れが溜まってきたら、是非声をかけてください。誠心誠意、私が貴方様の疲れと汚れを落として差し上げます」

 

……うん

 

「ですから……今後も、私のお店をどうかご贔屓に……もし、私のところで沢山の買い物をしてくれたら……次は、今日よりもっと気持ちよくなれるサービスを提供させていただきますので……」

 

その時、頰に温かいものが触れた

 

 

 

 

 

「おやすみなさいませ、指揮官様」

 

 

 

 

 

眠気に抗うことなく、腕の中に彼女の温もりを感じながら

 

次はどんなことをしてくれるのだろうか?

 

静かに期待を膨らませつつ、眠りについた

 

 

 

べサニーのお陰で、その日はとてもよく眠れた。

その甲斐あってか、翌朝、2人揃って仲良く寝坊してしまったのはまた別のお話……

 

 

 

そして、指揮官と商人のまた新しい一日が始まる……。

 

 

 

べサニーのお店に行きたくなるお話ーおわりー

 

 

 




公式か非公式かは分かりませんが、この前アズレンのキャラがASMRやってる音楽作品を見つけまして、アイアンサーガもせっかくASMR第一人者のユメノシオリがいるんですから、こんな風にアイサガのキャラに享受してASMRやってくれるシチュエーションがあっても、たまにはいいかと思いました、はい

追記
ユメノシオリのASMR、本当によく眠れるのでまだ聴いたことないという人は是非、寝ながら聴いてみて下さいね?
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