オペレイション・クローズ   作:ヴェラスケス

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前回の引き続きです。


狼熊の仲

4時間前 死体安置所にて

 

「よう、この前アポしたヴァルバッチョ大尉だ」

 

「ヴァルバッチョ大尉、お待ちしてましたでは"例の遺体"へと案内します。」

 

「ああ、頼むよ」

 

白衣を着た職員と共に薄暗い廊下を歩き、遺体が保管してある部屋に向かう。部屋は薄暗い廊下と違い、電気が明るく付いておりその隣に遺体の貯蔵装置のロッカー3列に並べていた。

 

「こちらです。」

 

職員は、"2120"と書かれたロッカーを見つけその扉に鍵を刺してゆっくりと回す。カチャっと、金属音が部屋に響きロッカーの扉を開く。開いた扉から冷気が纏いロッカーの中には、全裸で丸々と太り筋肉質な熊獣人の男性の死体が眠っていた。

 

「こいつが例の・・・、ふむ。」

 

ヴァルバッチョは目を細め熊獣人の死体を見つめる。死体は身長205cm 体重250kgの大男でまさに巨デブである。体には傷痕らしきものは見当たらず、恐らく内臓から出血して命を落としたのだろうと考える。

 

「大尉、解剖の結果、内臓の損傷は見当たりませんでした。」

 

「なんだって?それじゃあ脳は?」

 

「脳には、損傷はありましたが、そこまでひどくはありませんでしたよ。」

 

「そうか・・・なら好都合だ。」

 

「大尉?この遺体をどうするつもりですか?」

 

「なあに、すぐ利用するようになるさ。まあ本当はやりたくないけど依頼だから仕方ないか・・・。」

 

と文句を言いながら戦闘服の胸ポケットからリップクリームのような物を取り出しくちばしに塗る。

 

「さて、うまく行けよ・・・。」

 

そう言いヴァルバッチョは、リップクリームを塗ったくちばしで熊獣人の死体の唇に接吻をし始めた。ズキュウウウウウウン!!!!と重い音が安置室から響き渡る。

 

「た、大尉!?何をしてるんですか!!?」

 

ヴァルバッチョの行動に思わず大声を上げる職員。明らかに死体にキスをする行動に声を上げるのは致し方無いことだ。

 

「んっ・・・!んんっ・・・!!」

 

思わず声を発しディープキスをするヴァルバッチョ。烏獣人のくちばしと熊獣人の唇は交互に絡め、舌を入れるように大胆なキスを交わす。

 

「・・・・・・・・・・・・・・。」

 

異様な光景を目の当たりにした職員はただ言葉を失うだけだった。そんなことをお構いなしにキスをし続けるヴァルバッチョ。そのくちばしは熊獣人の冷たい唇に当てて温める。

 

「ふっ!ふっ!ふっ!ふっ!」

 

熊獣人の口周りには烏獣人の唾液が垂れ流しさらに息を荒げるヴァルバッチョ。目を閉じ、ただひたすらにキスをするのみ。暫くして夢中でキスをしたせいか少し疲れヴァルバッチョの閉じていた目を開けると

 

「・・・・・・・・・・・・・・。」

 

「・・・・・・・・・・・・・・。」

 

熊獣人の目が開いた状態でバッチリと目があった。

 

「いきなり何するんだお前はァーーーーーーーーー!!!!!!」

 

「ゴギャアーーーーーーーーーーーーッ!!!!!」

 

熊獣人は太い腕で、ヴァルバッチョの後頭部目掛けて拳骨を振り下ろした。剛腕により床に叩き着かれ、後頭部からたんこぶと白い煙が出て伸びてしまう。熊獣人はフーフーと息を荒げ、尻もちを着いている職員に睨みつける。

 

「ヒィィ!あ、ありえない!死体が復活するなんて!!ど、どうか命だけはお助けを!!!」

 

熊獣人の三白眼に睨まれて土下座をする職員

 

「?????????」

 

目覚めてから突然目の前で土下座をして命乞いをする職員に状況が理解出来なかった。熊獣人はゆっくりと大きな脚で床に着き、土下座をしている職員に近づきこう言った。

 

「おい、ここは一体・・・。」

 

「ヒィィィィィィィィィ!!!!!化け物だァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!」

 

熊獣人の低い声で質問を言うものの、職員は聞く耳を持たず部屋から逃げて行った。

 

「あっ、ちょっと・・・!ああ・・・。」

 

ただ、質問をしようと思っただけなのに逃げられて少し悲しくなるそんなドア越しを見つめるしかなかった。

 

「っテテテ・・・、上官を殴るなんてとんだヤツだな下手すりゃ軍法会議モンだぞ・・・。」

 

たんこぶ抑え立ち上がるヴァルバッチョ。それを見た熊獣人は警戒態勢を取る。当然だ、いきなりキスされたからである。

 

「チッ、まだ生きてたのか!」

 

「まぁそう身構えんなって、お前を生き返りに来たんだ、ふむ上手く出来たようだな・・・生き返った事に感謝しろよ」

 

「は?おいそれはどういうことだ・・・?」

 

「まだわかんねぇのか?ってまだ目覚めたばかりだから仕方ないか。」

 

「目覚めた・・・?そうかここは安置所なのか」

 

熊獣人はあたりを見渡すとすぐに死体安置所だということが分かる。

 

「ということは、俺は死んだのか・・・?」

 

「いや、死んでねぇさ。というか、言っただろう俺が生き返らせたって。」

 

「???」

 

ヴァルバッチョの言葉に目を細め、首を傾げる熊獣人。あきらかに「こいつ何言ってんだ?」と言いたそうな顔をしている。

 

「はぁ、全くしょうがねぇなぁ。論より証拠だほら」

 

それを見たヴァルバッチョはやれやれと手を上げ首を横に振りながらため息をして戦闘服の胸ポケットからリップクリームの様な物を取り出し熊獣人に見せつけた。

 

「それは?」

 

「リップクリーム型蘇生薬だ、こいつを口に塗り仮死状態の人間にキスすると、蘇生することが出来る奴だ。これは、依頼者(クライアント)から送られた試作品で本当は、白雪姫や眠れる森の美女(おとぎ話)に出て来るような美女にキスしたかったが、野郎にキスするとは正直気が引けたぜ・・・。後でぶっ飛ばしてやろうか」

 

手を頭に当てブツブツ独り言を言い始めるヴァルバッチョ。

 

「・・・・・ところでその依頼者(クライアント)というのは?」

 

「あん?ああ、残念ながら匿名で、お前を蘇生して欲しいのとその試薬の実験台として利用されたんだろうな。っと、ちょいと写真撮るから動くんじゃねぇぞ」

 

ポケットからスマホを取り出しカメラモードに切り替え画面に熊獣人の姿捉えカシャっとシャッター音が鳴る。

 

依頼者(クライアント)に送るのか・・・?」

 

「ご名答」

 

スマホを操作し、メールに撮った写真を添付して送信ボタンを押し依頼者(クライアント)に送信をした。

 

「なあ、クロウノヴァ大尉。陸軍のあんたが俺を蘇らせてどうするつもりなんだ?」

 

「お?よく陸軍って分かったな~というかなんで名前と階級まで知ってるんだよ・・・。」

 

「当たり前だ、戦闘服にワッペン(それ)が付いているからな」

 

熊獣人はヴァルバッチョの戦闘服に付いているワッペンに指を指す。確かにヴァルバッチョの戦闘服の左胸辺りにU.S.ARMY、右胸にCROWNOVA、胸中央にアメリカ陸軍大尉の階級章とワッペンが縫われていた。

 

「あー、それじゃあ自己紹介をするぜ。俺はヴァルバッチョ・クロウノヴァだお前の言う通りアメリカ陸軍大尉だ。目的はお前を俺の部隊に編入しに来た。」

 

「編入?この俺を?馬鹿げているな俺は・・・。」

 

熊獣人が少し呆れながらも自己紹介しようとしたその時。

 

「ああ、お前はの名前は、アルファ・ヴェラスケス。階級は二等兵1965年1月20日ベトナムで生まれ父親に陸軍基地で引き渡され少年兵となる。間違いないな?」

 

「!?」

 

ヴァルバッチョは、まるで見ていたかのようにスラスラと自分の経歴を言い当てられ驚いた表情をするヴェラスケス。

 

「まさか知っているとはな・・・。」

 

「基地の資料から調べたからなそれで資料によると、1970年1月20日お前が5歳の誕生日に敵の襲撃及び砲撃に遭い基地とその部隊が全滅しお前は死亡したと。」

 

「ああその通りだ大尉・・・。」

 

ヴァルバッチョの言葉でヴェラスケスは肯定し目を閉じヴェラスケスの脳裏に次々とフラッシュバックが起こる。熊の少年兵の周りには爆音、銃声と共に燃え盛る炎と血で赤く染まったアスファルトと土そして敵と仲間の死体が大量に転がっていた。死体には激しく焼け爛れたりしてとても悲惨だった。大量の屍を見て少年兵は涙を流すことなくただ屍を見つめ呆然と立ち尽くすしかなかった。その時敵の迫撃砲弾が少年兵の近くに当たり大爆発が起きた。その爆発により少年兵は吹っ飛び、頭が地面に直撃し、熊の少年兵はそっと目を閉じた。

 

「はっ!?ハァ・・・ハァ・・・ッ!」

 

過去の記憶から目を開け、顔から大量の汗を掻き息が切れ今にでも倒れそうな状態だった。熊獣人の心臓が大きく鼓動し、体中に響き渡る。

 

「お、おい大丈夫か!?無理に記憶を蘇らなくていいぞ?」

 

心配したヴァルバッチョは、ヴェラスケスの体を支え大きな背中を摩る。

 

「あ・・・ああ、大丈夫だ・・・すまない大尉・・・。」

 

ヴェラスケスは、心配させまいと返答し、落ち着くまで目閉じた。しばらくして、息切れは落ち着きスゥーッっと深呼吸をした。

 

「よし、落ち着いたか。それじゃあ、先程言ったが俺の部下になれ!」

 

「・・・・・・・・・・・・は?」

 

ヴァルバッチョの突然の発言にきょとんとする。

 

「いや、そこは『ははーっ』言って跪くのが流れだろ?ノッてくれよ・・・。」

 

「そんなノリは知らんし、まず唐突すぎる。それに俺はそういうのが嫌いだ」

 

バッサリと斬られ倒れこむ。

 

「っ!じょ、冗談だって・・・あっ、でもお前をスカウトするのは本当だ。」

 

「・・・・・・、なんで俺を軍に入るんだ?何か理由があるんじゃないのか?」

 

「ああ、依頼者(クライアント)の依頼でお前を軍に入れて俺の部隊に入るよう言われたんだ」

 

ヴァルバッチョの発言を聞いて嘘がないと分かり目を細める。

 

「・・・依頼者(クライアント)とは一体誰なんだ?」

 

「それは言えない。依頼者(クライアント)との契約だからな。だが安心しろ、お前の事は絶対に死なせない。」

 

「・・・。」

 

ヴァルバッチョの言葉を聞き考え込む。

 

「ふむ、これはちゃんとした理由だな、だが・・・」

 

ヴェラスケスが次の言葉を言おうとしたら。

 

「おっと、断るなんて言うなよ?」

 

「・・・っ!?何故だ?」

 

断るという言葉を先に言われてしまい戸惑ってしまうがその理由を聞く。

 

「まずお前に問うけど、この後どうするつもりなんだ?」

 

「ど、どうするって・・・それは就職して働くに決まってる」

 

ヴァルバッチョの質問に戸惑いつつ質問を答えるヴェラスケスだが、ヴァルバッチョはため息をして手を挙げ首を横に振る。

 

「ハァ・・・確かにそれは模範解答だが、それは無理だ」

 

「・・・・どう言う事だ?」

 

「質問を変えようというか問題だ、1+1=?」

 

「えっ〜〜〜〜と・・・・・・・?」

 

ヴァルバッチョが出された問題に困惑して頭を抱え込むヴェラスケスを見て手を頭に宛て呆れてしまうヴァルバッチョ。

 

「1+1は2だろうが・・・。やっぱり・・・、ガキでも分かる問題でも答えられないなんて就職するどころか大人になれねーぞ」

 

「?俺は大人だが?」

 

「違う、体は大人でも頭だけでなく精神までガキになってるんだ。つまり、お前が昔5歳の誕生日を迎えたのに敵の襲撃に遭い仮死状態になったけどなんらかの理由で身体は大人に成長したが記憶と精神が5歳児になったって事だ!」

 

「!そ、そんな・・・!?」

 

ヴァルバッチョの衝撃の発言でショックを受ける。

 

「俺が・・・5歳なのか?」

 

「ああ無理もないな、生まれてすぐに軍に引き渡され、ろくに勉学をせずに訓練や戦争ばかりしてたからな」

 

「・・・・・・・・・・・」

 

ヴァルバッチョの言葉で俯いて黙り込んでしまうヴェラスケス

 

「クロウノヴァ大尉、どうすればいいんだ?学校に行くべきか?」

 

「いや、学校に行く必要はない、俺の部隊に入って勉強をすればいいそれが依頼者(クライアント)とのちゃんとした依頼であり、そしてこれは俺個人の理由でもあるさ」

 

「クロウノヴァ大尉・・・。」

 

ヴァルバッチョの言葉に心打たれたのか、顔を上げヴァルバッチョを見るヴェラスケス。その目は、決意を現した様なそんな目だった。

 

「わかった、俺を仲間に入れてくれそして勉強を教えてくれ」

 

ヴェラスケスの言葉を聞きヴァルバッチョはフッと小さく笑い手を大きく広げ言った。

 

「OKその言葉を待っていた!歓迎するぜ!!アルファ・ヴェラスケス!!!」

 

「ああ、よろしく頼むクロウノヴァ大尉」

 

「ヴァルバッチョでいい、性呼びだとあんまり好きじゃなくてな」

 

「それじゃあ、ヴァルバッチョ俺はどうすれば?」

 

「いや、隊長と呼べよ・・・。一応俺はお前の上司だからな・・・それじゃあ早速車に乗って基地行くぞ」

 

「冗談だ、了解ヴァルバッチョ隊長・・・と言いたいところだが・・・」

 

「?どうしたヴェラスケス?」

 

「全裸で基地に行くのか俺は?」

 

「あー・・・。」

 

ヴェラスケスの言葉で絶句するヴァルバッチョ、確かにヴェラスケスの体が全裸でフルチンであるそのまま出かけると明らかに捕まる。

 

「ああすっかり忘れてた・・・ほらお前の服だ」

 

紙袋から戦闘服を取り出しヴェラスケスに渡す。ヴェラスケスの戦闘服はヴァルバッチョよりも倍大きい特注品である。

 

「ありがとう、でパンツは?」

 

「悪い、それは用意して無かった・・・。」

 

「・・・・・・・・。」

 

死体安置所を出たヴェラスケスは辺りを見渡すとヴァルバッチョがタバコを吸いながらジープの横にもたれて待っていた。結局、パンツは履いてないままだけど。

 

「待たせた、隊長」

 

大きい迷彩柄の戦闘服に着替えたヴェラスケスを見てヴァルバッチョは小さく頷き

 

「おう、似合ってるじゃないか」

 

と小さく笑いながら褒めその後にヴェラスケスはヴァルバッチョに質問をした。

 

「しかし、隊長改めて本当に俺でいいのか?ほかにスカウトする奴がいるだろう?」

 

「なあに、そんなに信じられないのか?俺はお前を信じてるからな"現役の少年兵"さん」

 

ヴァルバッチョはそう言いタバコの火を消しシガーケースに入れジープの運転席に乗ろうとする。

 

「待て」

 

「ん?どうした忘れ物か?」

 

とヴェラスケスはヴァルバッチョを止め大きな体で近づいてヴァルバッチョの顎を軽く持ち熊のマズルでカラスの嘴に口を付ける。

 

「ん"んっ!?」

 

ヴェラスケスの接吻で、思わず驚くヴァルバッチョ。ヴェラスケスの唇は生暖かくヴァルバッチョの嘴に伝わりそして、手をヴァルバッチョの背中を支え抱き舌に絡ませる。ヴェラスケスのより深く、濃厚なキスは長く続いた・・・ヴァルバッチョは少し抵抗したものの、彼の舌が深く入り次第に快楽へと変わる。ヴァルバッチョも負けじと舌を入れヴェラスケスの舌に絡ませる。そして、

 

「プハーッ!オエエエエエエ!!」

 

限界を感じたか、ヴァルバッチョはヴェラスケスを振り解き口離しジープの端っこで吐いた。ヴェラスケスの唾液が絡み付いていて、かなり気持ち悪そうだ。

 

「ゴホゴホ!何するんだお前は!!」

 

大きな声を上げるヴァルバッチョを見てヴェラスケスは

 

「さっきの、仕返しだ隊長。あんた相当キスが上手いんだな・・・。あと先程言ってた"現役の少年兵"だが、悪くないな・・・・・。」

と小さく笑って言いジープの助手席に乗り。それを見たヴァルバッチョは、立ち上げ。

 

「・・・はあ、やれやれとんだ困った新兵(ルーキー)だぜ・・・。」

 

と苦笑いしながら呟きヴェラスケスに続いてジープの運転席に乗り陸軍基地へと向かった。

 

現在

 

「という訳なんだ」

 

「「いやいやいやいや・・・・。」」

 

ヴァルバッチョの回想を話し終えたら、レベッカとガブリエルは手と首を横に振り突っ込む。ヴェラスケスは、椅子にもたれ脚を交差をして寝ている。ちなみにヴァルバッチョの話を聞く前にヴェラスケスが買ってきた大量のお菓子を食べていた。

 

「なんだよお前ら、事実なんだぜ?」

 

不服そうな顔をしながらタバコを吸うヴァルバッチョ。

 

「隊長・・・、体は大人で中身は子供ってどこの名探偵の逆バージョンなんですか・・・。」

 

「少佐の言う通りだぜ、バーローじゃねーんだから。しかもあいつはともかく隊長ってそっち系だったのか?」

 

「バッ!?ちげーよ!アレは依頼者(クライアント)に渡された蘇生薬を使ってやらされてるんだよ!俺だって本当はやりたくねーんだわ、第一なんで俺が野郎とキスをしなきゃいけねーんだよ・・・クソが・・・。」

 

「「・・・・・・・・。」」

 

タバコを蒸しながらぶつぶつを文句を言うヴァルバッチョを見てガブリエルとレベッカはただ黙るしかなかった。

 

「ねえ、隊長。彼の部屋はどこにしますか?」

 

「あん?あー、それならガブリエルの部屋で相部屋にしてくれ」

 

「はいよ・・・ってえぇーーーっ!?」

 

ヴァルバッチョの突拍子もない発言で驚くガブリエル。

 

「いやいやなんでだよ隊長!!なんで俺がこいつと一緒に過ごさなきゃいけねーんだよ!!嫌だわ!!」

 

尻尾を逆毛立ちながらブンブンと首を横に振る。

 

「だって、お前の部屋って元々相部屋なんだろ?だったら話が早いから同じ部隊の仲間だし新人の教育係りにピッタリじゃないか」

 

「確かにそうだけど・・・というかヴァルバッチョ隊長やレベッカ少佐だけ個室ってズルくないか!?」

 

「ガブリエル、私と隊長は上官クラスだから個室が与えられるのよ」

 

「そうだぜ?文句を言うなら階級を上げてからにしな?あと、上官の命令を聞かねーのなら今月の給料を差し引いちゃおっかな〜?」

 

ヴァルバッチョの不気味な笑みでガブリエルは、「うぐぐ」と言い牙をギリギリと音を立てながら悔しがる。

 

「クソッわかったよ!わかりましたよ!一緒に居ればいいんでしょ!」

 

 

「おう、わかればよろしい。ガブリエル」

 

「・・・・チッ。」

 

ヴァルバッチョの圧力に負けたガブリエルは、舌打ちしながら渋々と受けることとなり横で寝ているヴェラスケスを起こそうとする。

 

「おい、アルファ起きろ!」

 

ガブリエルは、ヴェラスケスの体を揺さぶるが起きなかった。

 

「おいコラ!いい加減に起きろよテメー!!」

 

怒鳴りながら体を揺さぶり起こすが全然起きない。

 

「こ、こいつ・・・新入りのくせに生意気な・・・・!テメー、先輩が起きろったら起きろこの野郎!!!」

 

遂にガブリエルの怒りが限界を迎え、拳を握り締めヴェラスケスに向けて殴ろうとしたその時。

 

「ふんっ!!!!」

 

バゴォン!!

 

「グギャァァァァァ!!!!」

 

ドゴォォォ!!!

 

ヴェラスケスがカッっと目を開け、右腕を上げ、カウンターアッパーカットがガブリエルの顎に直撃しガブリエルは吹っ飛び頭は会議室の天井を突き破って体と尻尾はぶらんぶらんと垂れ下がった。

 

「気安く名前を呼ぶな・・・。」

 

ヴェラスケスは、フーッと息を吐き天井にぶら下がったガブリエルに警告をした。

 

「・・・まあ、今のはこいつが悪かったな・・・。」

 

「ですね・・・。」

 

その光景を見たヴァルバッチョとレベッカは呆れた表情をしながらガブリエルを見つめた。

 

「あぁ・・・、とんでもないジョーカーを引いちまったな・・・。」

 

ヴァルバッチョは、手を顔に当て呆れていた。

 

カフェテリア

 

「ああっクソッ!ヒデーめに逢ったぜ・・・。」

 

不機嫌な顔して尻尾をブンブンと振りながら山盛りに盛られたスプーンで一掬いしてマッシュポテトに口に入れるガブリエル。

 

「自業自得よ・・・。あなたが手を出さなければ酷い目に遭わなかったのに」

 

そう言いながらレベッカは、水が入ったコップを持ち少し飲む。

 

「ふんっ!ところであいつはどこに行ったんだ?」

 

ガブリエルがキョロキョロとあたりを見渡すとヴェラスケスが居ない事に気づく。

 

「あら、あなたが気を失ってる間隊長が基地の案内をしに行ってるわ」

 

「なんだいねぇのか、次会ったら顔がピカソの絵の様にボッコボコにしてやる・・・!」

 

「やめなさい!」

 

ガブリエルが拳を握りしめワナワナと震えてるとレベッカがガブリエルの頭上に目掛けて拳を振り下ろした。

 

「ギャン!!!」

 

レベッカの拳骨により情け無い断末魔をあげテーブルに叩きつけられ沈む。テーブルに置いてある物が散乱する。ガブリエルの頭上は大きなたんこぶが出来煙が上がった。数分後

 

「うぅ〜、痛えぇ・・・。」

 

頭に大きなタンコブを作り涙目のガブリエルは、頭を押さえながら椅子に座っていた。

 

「全く・・・、あなたはすぐ手を出そうとするんだからそのクセを直しなさい」

 

(いやあんただって手を出しているじゃん・・・。)

 

ガブリエルは心の中でツッコミを入れた。

 

「一体何があったんだ・・・?」

 

その惨状を見た両手に山盛りの料理が乗られたトレーを持ったヴェラスケスが現れる。

 

「おかえりなさい。ああ、ちょっとお仕置きをした程度だから気にしないでね」

 

「そうか・・・。」

 

ヴェラスケスは一言だけ言いガブリエルの隣に席に座る。座った後ヴェラスケスは、山盛りのフライドポテトをフォークで刺し食べる。

 

「ううっ・・・ってうわあ!?お前いつの間に!?」

 

ガブリエルが起き上がると隣に巨漢の熊獣人が座って食事してる姿に驚き跳ね上がる。

 

「何って見学が終わったから飯を食うところだけど?」

 

「そうじゃねぇよ!なんで俺の隣に座ってるって聞いてんだよ!!」

 

「やめなさいガブリエル!」

 

ガブリエルはヴェラスケスの胸ぐらを掴み、レベッカはガブリエルに宥めようとしていたその時ヴェラスケスは少し低い声を出し激昂するガブリエル向けて言った。

 

「すまなかった」

 

「は?」

 

あまりにも唐突な一言でキョトンとした顔になりガブリエルはヴェラスケスの胸ぐらを離す。

 

「だからさっきは殴ってしまってすまなかった・・・。あんたは俺が気に入らなくて認めてはくれないだろうが今回の件関しては水に流そうか」

 

ヴェラスケスは、右手を差し出し握手を求める。

 

「お、おう・・・。(あれ?意外と素直だな?)まあ俺も新入りのお前に殴り掛かろうとしてた俺も悪いし、次からは気をつけろよ?改めてよろしく頼むぜアルファ!」

 

「ふふっ、よかったこれで仲直りね」

 

ガブリエルが少し笑いながらヴェラスケスに握手をしようとしたその時

 

「あ"?」

 

ヴェラスケスが目つきを変えガブリエルの手首を強く握るまるで万力の様に強く握り締めゴキゴキと骨が砕ける音がした。

 

「ぎゃぁぁぁ!!手が!!手がァぁぁ!!!」

 

ヴェラスケスに手首を強く握られ断末魔をあげ床にのたうち回りゴロゴロと体を回るガブリエル、尻尾が逆立ちフーフーと荒い息をした。

 

「ええええええ!!!」

 

ヴェラスケスのあまりの行動にレベッカは驚く。

 

「てめぇ何すんだこのクソデブグマが!」

 

ガブリエルは潰された手を痛みに耐えながら持ち立ち上がりヴェラスケスを睨み付ける。そんな怖い顔で睨むガブリエルを見てヴェラスケスは低い声で話した。

 

「先程も言ったが俺は、他人から名前で呼ばれるのは嫌いなんだ・・・。」

 

「知らねーし!そもそもお前がそんな事言った覚えがねぇ!」

 

「いやだってその時お前天井まで吹き飛ばされて気絶してただろ?」

 

「ああそうだった〜!その時俺ってお前に吹っ飛ばされってアホか!こちとら死にかけたんだぞ!大体、お前のその根性が気に入らねぇ」

 

「なるほど・・・、お前の言いたい事が分かった・・・。なら来い」

 

ヴェラスケスは、手と首をゴキゴキ鳴らしながらガブリエルを挑発する。そして戦闘の構えを取った。

 

「面白れぇ・・・!ぶっ殺してやる!!」

 

ガブリエルはヴェラスケスの挑発に乗って犬歯を剥き出ししながら笑い、軽くシャドーボクシングを始める。ガブリエルは中学の頃にボクシングの大会のジュニア部門で優勝した経験があり実力は高い。ガブリエルの拳が風を切り裂き、シャドーを終えた後ファイティングポーズを取った。ヴェラスケスとガブリエルはファイティングポーズを取った後カフェテリア内では殺気が立ち上がる。殺気に気付き今まで食事をしていた兵士達はなんだなんだと二人を囲んでいた。そしてその時、

 

「うおおおおお!!!!」

 

「はあああああ!!!!」

 

ガブリエルとヴェラスケスは叫びながら相手に向かって右ストレートを打つ二人の拳は二人の頬に向かってクロスカウンターする直前だった。

 

「もう二人共いい加減にしなさい!」

 

「ぐわぁ!!!」

 

「ひぎゃぁ!!!」

 

突然、ヴェラスケスとガブリエルの頭上から大きな衝撃が入った。レベッカがケンカを止めよう二つの拳骨をヴェラスケスとガブリエルの頭上に入れた。二人はうつ伏せになり頭から白い湯気と共に大きなタンコブが出来上がり、こうして熊獣人と狼獣人のケンカはあっけなく終わってしまった。

 

「いてててて、なんで俺達がこんな目に遭わなきゃいけねぇんだよ!」

 

ガブリエルは頭を押さえながら文句を言う。

 

「全くあなた達は、いつもこうやって喧嘩するからでしょ?」

 

「ふんっ!俺はこいつが気に入らないだけだ!」

 

「もう!」

 

レベッカは頬を少し膨らみながら両手を脇腹入れて怒る。

 

「ううっ・・・。」

 

ヴェラスケスはたんこぶを押さえて少し涙目になっていた。

 

「お〜お〜、俺がいない間派手にやらかしてるねぇ〜」

 

あたりを見渡しながらため息混じりで隊長のヴァルバッチョが現れた。

 

「あっ、ヴァルバッチョ隊長。今までどこに行ってたんですか!」

 

「あー、例のヴェラスケス(ルーキー)の事で上官に報告しに行ってきた」

 

「もう!隊長がいない間大変だったのですから!」

 

「ははっ、悪い悪いところで何があったんだ?」

 

「実は・・・。」

 

レベッカはヴァルバッチョに事の経緯を説明した。

 

「なるほどな〜、まあそりゃあガブリエルが悪いな」

 

「そうですね」

 

「なんでだよ!!」

 

ガブリエルは二人の会話を聞いて突っ込んだ。ちなみにガブリエルとヴェラスケスはレベッカに正座をさせられて反省中である。

 

「おいヴェラスケス!てめえのせいでこんな目に遭ったんだぞ!」

 

「は?元はと言えばガブリエルが原因だろう?隊長とレベッカ少佐だってお前が悪いって言ってし」

 

「あっ、ちなみに勘違いしない欲しいが充分お前も悪いからな?」

 

「!!」

 

ヴァルバッチョの一言で項垂れるヴェラスケス。

 

「ギャハハハハ!ザマァみろぉ!俺をハメようとするからこうなるんだ!!」

 

隣りで項垂れるヴェラスケスを見て大笑いすふガブリエル。

 

「んだと?たかが気に入らないからって因縁付けて来たのはお前じゃないか!」

 

「あん?当たり前だ!お前は気に入らないから気に入らないんだよ!バーカ!」

 

「アホリエル・・・(ボソッ)」

 

「あん?誰がアホだゴルァ!!第一、隊長の話を聞く前に大量に菓子食ってんじゃねぇ!それだからデブになるだぞデブ野郎!」

 

「残念ながらデブとデブ野郎は褒め言葉なんで全然効きませーん!それにお前、中学の時親父さんの金を盗んでヤクを買ったってなそれでバレてめちゃくちゃ怒られたってな」

 

「ちょっと待てぇ!なんでお前が知ってるんだよ!!その話は俺と俺の家族しか知らないはずでは!誰から聞いたんだ!吐けやゴルァ!!!」

 

「えっ?ヴァルバッチョ隊長から」

 

「隊長ォォォォォォ!!!!」

 

「あっ悪い、あまりにも面白い話だったからヴェラスケスに教えちゃったわ」

 

ヴァルバッチョがバラした事で大声でツッコミを入れるガブリエル。その後ヴェラスケスとガブリエルは睨み合いギャースギャースと叫んだ。もちろん正座をしながら。

 

「はあ、頼むから勘弁してくれよ。上に怒られるの俺なんだぜ・・・。」

 

「もう・・・、なんで二人はこんなに仲が悪いのかしら?」

 

ヴェラスケスとガブリエルのやり取りを見てヴァルバッチョとレベッカは大きなため息をしながら手を頭に当てた。

 

「これじゃあ犬猿の仲ならぬ狼熊の仲だな・・・。」

 

ヴァルバッチョは二人を見てぼそりとつぶやく。

 

「本当に二人ともケンカは止めなさい!もう部屋に戻りなさい」

 

「うぅ・・・、わかりました・・・。」

 

「チィッ、わかったよ!」

 

レベッカに怒られてしょんぼりしてるヴェラスケスとガブリエルは部屋に戻る為立ちあがろうとする。そもそもアメリカでは正座をする習慣がない為立とうとすると足が痺れてしまう。結果

 

「ああっ!」

 

「ひがっ!」

 

立ち上がった瞬間ヴェラスケスとガブリエルの足が痺れて立ちたくても立てない状態だった。その時

 

「あっ・・・!」

 

「へ?うわぁ!!」

 

ヴェラスケスが痺れた事でバランスが崩れヴェラスケスの巨体がガブリエルにのし掛かる。

 

「ちょっと!?二人共大丈夫!?・・・ってえっ!?」

 

「おい大丈夫か!?お前ら!・・・ああっ!?」

 

ヴァルバッチョとレベッカは倒れた二人を救おうとすると、思いのよらない光景を目の当たりにした。

 

「「・・・・・・・・・・。」」

 

ヴェラスケスとガブリエルの唇はくっ付きキスをしていた。

 

「おえええええ!!俺のファーストキッスがァァ!!!」

 

ガブリエルはヴェラスケスを退けてすぐに四つん這いになり嘔吐する。ファーストキスがまさか雄の熊獣人でありガブリエルは屈辱を味わってしまった。

 

「キャァァァァ!!」

 

「あらま〜」

 

レベッカは悲鳴を上げヴァルバッチョはニヤニヤしながら眺めていた。

 

「違う!事故だ!これは事故で決して俺の意思じゃない!だから助けてくれェェ!!」

 

ガブリエルの必死の叫びは、カフェテリア中というか基地周辺にまで届いたのであった。




久しぶりの投稿で遅れてしまい申し訳ありませんでした!
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