蝶を守り抜く日輪   作:是非

18 / 29
長らくお待たせして申し訳ございません。
更に話が長くなっておりますのでご容赦ください。

前回のあらすじ。

煉獄が育手として育て上げた者が甘露寺蜜璃だと知った炭治郎が継子としてお願いしてそれを蜜璃が快諾した後の修行の日々。
それとここで甘露寺蜜璃に対する独自解釈を入れる事をお許しください。



第拾捌話 桃蝶の継子として日輪との日常

甘露寺蜜璃の継子となってから、翌日、甘露寺邸の中にある柔軟訓練で使用されている道場にて師範となった甘露寺蜜璃と継子の竈門炭治郎がいつもの鬼殺隊の隊服ではなく道着を着て相対していた。

二人の側にはそれぞれに一本ずつの竹刀が置かれている

炭治郎は頭を下げて

 

「柱稽古で忙しい中で急なお願いに応じてくださりありがとうございます!」

 

それに蜜璃は慌てて

 

「い、良いのよ、私にとっては煉獄さんが守り抜いた子なんだし、何より煉獄さんの意思を受け継いでいるんなら、私にとっては君は弟弟子(おとうとでし)みたいなものだから、気にしないで。」

 

「ありがとうございます!」

 

そうして炭治郎と蜜璃に竹刀を持って向かい合い、

 

「はい、ではこれより稽古を始めます! 宜しくね! 炭治郎君!」

 

「はい、宜しくお願いします!」

 

そうして始まった稽古だが、問題が浮上した、それは……………

 

「はい! ここをボカーンと、ぐああ~~でスパーでトドー! と更にメキメキ、ビューンってなれば!!」

 

「……………」

 

指導の説明力の無さ、擬音だらけで聞いたら何を言っているのか分からず誰もが頸を傾げ絶句するか挙句の果てには帰ろうとする輩もいる始末になってしまう。

炭治郎が無反応なのを見て蜜璃は気がつき、ハッ!となり、そのまま土下座して

 

「すいませんで「はい! ここをボカーンと、ぐああーですね!」っえ?!」

 

蜜璃が土下座の姿勢から驚くもその後も炭治郎は竹刀を奮っていた

 

「ここでスパー、トドー! メキメキ! ビューン………ん?! 甘露寺さん?! どうして土下座を?!」

 

実は炭治郎も蜜璃と同じ感覚持ちのために蜜璃の擬音だらけ言葉と手振り身振りだけでも自身の持つ人並み外れた嗅覚と多くの戦いを切り抜けてきた感覚により伝わっていた。

先程の無反応なのは蜜璃の言葉を理解し脳内で初動の再確認をしていただけだった。

それを見て蜜璃は

 

「うっぅぅ!」

 

「えっ?! 甘露寺さん?!」

 

涙を流した。それを見て炭治郎は自分が何かをして泣かせたのかと思い

 

「す、すいません! 粗相を「違うの!」っえ?!」

 

「嬉しくて、伝わっていたんだって思って嬉しくて………」

 

「? いえ伝わりましたよ! というより涙を拭いてください!」

 

「うっぅぅ! ありがとう炭治郎君………」

 

蜜璃がなきじゃくっていたので炭治郎がハンカチを渡して一旦二人は竹刀を置き休憩となってからも蜜璃は涙を流し落ち込んだように体操座りになり今までの悩みを炭治郎に打ち明けた。

 

「今までも出会う人達には、柱になったからには色々と………教えてあげようとしたんだけど………私って説明下手だから、あまり相手にされなかったの………だから、嬉しくて………」

 

「……………」

 

それを聞いて炭治郎も最初は黙って聞いていたが、静かに涙を流した。

そして、炭治郎は静かに蜜璃の手を取り、驚く蜜璃に涙で濡れた自分の顔を近づけ

 

「甘露寺さん、俺も同じです。仲間や鎹烏に何度か説明したんですが、俺自身の語彙力の無さのせいで何にも力になれなくて、説明が伝わらずにいました。それがとても不甲斐なかったんです。」

 

「炭治郎君………」

 

「甘露寺さん………」

 

「「うわああぁぁ!」」

 

二人は、

こうして同タイプの二人はすぐに打ち解けた。

その後の稽古でも

 

「ここをドゴォ、バーン! ズバッゴオォってなって、ズドォンだよ!」

 

「はい、ここをドゴォ、バーン! ズバッゴオォってなって、ズドォン! ですね。」

 

傍目からは何を言っているのか分からない稽古をしていたが、着実に炭治郎は蜜璃の指導の元に強くなっていた。

そして、昼食時となり蜜璃の腹の音が鳴り、同時に炭治郎の腹の音も鳴り

 

「はい! 稽古はここまでにして昼食にしようか!」

 

「はい! 俺は炭焼き小屋の息子なんでっ! 料理の火加減は任せてください!」

 

「うふふ、ありがとうね!」

 

こうして二人は、昼食を囲い二人で食べていた。

 

ーーーーー

 

因みにこの間に甘露寺邸には、炭治郎と蜜璃以外誰もいなかった、件の騒ぎを起こしたことで隊士達は強制的に蛇柱の伊黒小芭内に連行後に罰として地獄の訓練を味わい、皆が悲鳴が絶えず、時透の方も炭治郎が襲われた事を知りその隊士達に対し静かな怒りを見せ、件の隊士達を叩きのめせそうと乗り込もうとしていたが鎹烏から

 

''こいつらに地獄を見せてやる!''

 

と伊黒が言っていたのを知り、怒りを収めたものの

 

「半端な奴を行かせるわけにはいかない………」

 

という静かな怒りの言葉の後に甘露寺邸に行く隊士のハードルが上がった為に今いる隊士達もただでさえ厳しい訓練が更に厳しくなり次の柱の所へ行けなくなってしまった。

そのためにもう数日間は甘露寺邸には、誰も来ない状態となり、炭治郎と蜜璃の二人きりの生活となった。

 

ーーーーー

 

そうして炭治郎と蜜璃の昼食中、炭治郎はすでに食事を終えて蜜璃は、皿を山のように積みながらもまだ食べ続けいたが、それを炭治郎は優しく見ていると

 

「んぐ! えっと炭治郎君? やっぱり変かな私………」

 

「はい? 何がですか?」

 

蜜璃は恥ずかしそうにもじもじして

 

「こんな量を食べているから、女としてどうかなって?」

 

それに炭治郎は目をパチクリして

 

「えっ? 俺はただ甘露寺さんは本当に美味しそう嬉しそうにご飯を食べているんだなぁって見ていただけですけど?」

 

「えっ?!」

 

「俺としては自分の作った料理を美味しそうに食べてくれているから、これからも美味しい料理を食べて欲しいと思っただけですよ。」

 

炭治郎の言葉に蜜璃は、突然の言葉に顔をボッと蒸気させて両手で自分の頬を添えて

 

「い、いきなりそんな事を言われても照れるよ………」

 

「えっ?! 甘露寺さん?」

 

途端に炭治郎が心配して蜜璃に顔を近づけるもそれにびっくりした蜜璃はのけぞり、炭治郎は

 

「顔が赤いですよ! 何かの病気なんじゃ?!」

 

「も、もう違うったら! 近づいちゃダメ!」

 

照れた蜜璃が炭治郎から隠れるように距離を置いて炭治郎がそれを追いかけると状態が続いた。

その後に午後からの稽古となり

 

「はっ! やっ! とおっ!」

 

「そう! その調子よ! そして、ここをドゴォッ! でズバッと! ズン!だよ」

 

「はい、ここをドゴォッ! でズバッと! ズン!」

 

そして蜜璃は自分の言葉通り以上に炭治郎が稽古している姿を見て

( 炭治郎が竹刀を振るう姿、かっこいいわぁ、きゅんとしちゃう! ………といけない、師範として彼を教えなくちゃ! 私を育ててくれた煉獄さんみたいに!)

 

「じゃあ、次は私が技を出すからよく見ててね。」

 

「はい」

 

炭治郎が見守る中、蜜璃は緊張しながらも深く静かに呼吸をして

 

「行くわよ!」

 

「はい!」

 

そして次の瞬間

 

恋の呼吸 壱の型 初恋のわななき

 

蜜璃は炭治郎の目の前で大きく踏み込んで飛び上がり目にもとまらない程の速さで庭に並べてあった多くの丸太を斬りつけ真っ二つにした。

 

それを見て炭治郎は感嘆として

 

「す、凄い! 流石甘露寺さん!」

 

それに蜜璃は照れ臭いというように頬をポリポリとかいて

 

「えへへ、なんだか照れちゃう! それじゃ、次は私と手合わせしよう! 炭治郎君! 」

 

「宜しくお願いします、甘露寺さん!」

 

そして、お互いに向かい合い

 

「行きます!」

 

「来なさい!」

 

お互いの掛け声を合図に炭治郎が駆け出した

 

ヒノカミ神楽 円舞

 

蜜璃の上から下へ円を描くような円を描くように振るうも蜜璃は難なく受け止めて

 

「遅い!」

 

次に蜜璃は炭治郎受けるだけではなく吹き飛ばす

 

「うわぁ! おっとっと!」

 

炭治郎は吹き飛ばされながらもすぐに態勢を整えて向かい合う

 

「私の持つ呼吸法、足捌き、筋肉の使い方、空中での柔軟な戦法、剣術……私が教える限り以上の事を教えてあげる。」

 

そう言って蜜璃は双眸を閉じて一旦沈黙する。そして再び眼を見開いて話を続ける。

 

「貴方は煉獄さんの意思を受け継いでいるからこそ手加減はしません! 貴方を死なせないために私が貴方を本気で指導します!」

 

蜜璃のいつものふわふわとした雰囲気から一転して本気の威圧感を感じ炭治郎の緊張度が上がると同時に炭治郎は興奮していた。かつて煉獄の教えを受けその技を極める柱から直接指導して貰える好機など、まずあり得ないのだから。

 

「分かりましたっ! 宜しくお願いします!」

 

ーーーーー

 

「ヒュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!」

 

 

水の呼吸 拾ノ型 生生流転

 

炭治郎は何度か蜜璃と鍔迫り合いを繰り広げた後、今までの上弦の鬼達との戦いの経験によって研ぎ澄まされた流流舞や滝壷などと言った水の呼吸による剣技を繰り出して来たが、蜜璃の手加減された剣技の前に防がれ弾かれ、遂に"水の呼吸"の奥義である生生流転を繰り出して蜜璃に仕掛けた。

炭治郎の周りに水龍神が浮かび上がり、蜜璃を襲う。この剣技は使用中の間、他の剣技に直ぐには切り替えられないと言う弱点があるが、繰り出す連撃が多ければ多い程、威力が上がると言う長所を持った奥義。

 

"水の呼吸"の奥義を繰り出された蜜璃だったが、彼女は静かに構えながらも炭治郎を見て

 

( 炭治郎君、諦めずに向かってくる、勇ましいわあ! でも………)

 

炭治郎の姿にきゅんとしながらも一撃、二撃、三撃と炭治郎の生生流転を往なし、そして四撃目で蜜璃は「ヒュゥゥゥゥ」と呼吸して自身の剣技を繰り出した。

 

恋の呼吸 陸ノ型 猫足恋風(ねこあしこいかぜ)

 

炭治郎の放つ攻撃ごと自身の周りに纏わせるようにはしらせ弾いた。

 

「ぐあっ!」

 

「炭治郎君!」

 

「平気です!」

 

吹き飛ぶ炭治郎を心配するも炭治郎が受け身を取りすぐに起き上がるのを見て安堵し炭治郎の呼吸法や剣技の評価を始めた。

 

「炭治郎君の"水の呼吸"を受けてみたけど、正直に言うわね? 貴方自身も分かる通りやはり貴方は"水の呼吸"と体質が合っていないのよ。私の見立てでは、今までの戦いの経験で頑張って使いこなせるようになっているけど、剣技の威力は冨岡さんの半分程度っていう所かしら。」

 

「そう……ですか。やっぱり上弦の鬼達と戦っている時も実感しましたが、面と向かって言われるとちょっと残念ですね。」

 

落ち込む炭治郎を見て蜜璃は炭治郎の両肩に手を置いて顔を近づけ

 

「ほら、落ち込まないの! 炭治郎君には、もう一つ"ヒノカミ神楽"があるでしょう?! さっきも見たけれど、使って貰えるかしら?」

 

「分かりましたっ!…………行きますっ!!」

 

炭治郎は"水の呼吸"の使用するのを止めて、"ヒノカミ神楽"を使って蜜璃に挑む。蜜璃もまた"ヒノカミ神楽"を見極めようと真剣に炭治郎を見詰める。

"水の呼吸"とは比べ物にならない威力を誇る"ヒノカミ神楽"の剣舞を前に、蜜璃も先程より威力を上げた"恋の呼吸"の剣技で"ヒノカミ神楽"の剣舞を受け止め、往なし、切り払い、相殺して行く。

炭治郎は蜜璃のそんな様子に、驚愕と焦燥を隠せない。

 

 

 

ーーーーー甘露寺さんに斬り込めない! 柔軟な体を使った変幻自在の技! 動作予知能力を使ってやっと回避できる程の凄い速さ! 凄まじい腕力! これが鬼殺隊の最強の柱の一人の女隊士!………っ! これがあの煉獄さんが育て上げ認めた恋柱の甘露寺さんの実力……っ!!

 

炭治郎が余計な考え事をしていたせいか、"ヒノカミ神楽"の剣舞が鈍る。炭治郎が自ら作った隙を見逃す程、指導中の蜜璃は甘くはなく、蜜璃は覚悟を決めて炭治郎に隙を作った代償を直接その肉体に支払わせるべく、蜜璃は"恋の呼吸"の剣技を使う。

 

恋の呼吸 参ノ型 恋猫しぐれ

 

 

甘露寺が持つバネを生かして猫のように飛び跳ねながら斬りつける剣撃、炭治郎が"ヒノカミ神楽"の剣舞をもってしても捉えられず''ヒノカミ神楽''を吹き飛ばして炭治郎を襲う。咄嗟に竹刀で受け止めようとする炭治郎だったが、蜜璃の変幻自在の剣撃が炭治郎の全身を打った。

 

「がはっ!?」

 

炭治郎は全身を竹刀で打たれた激痛に悶えながら、竹刀を手放しくの字になって倒れ込みそして炭治郎のそんな様子を見て駆け寄り蜜璃は炭治郎に静かに語りかける。

 

「ごめんなさい、炭治郎君。

私は貴方を死なせないためとはいえこんなに傷つけて………」

 

蜜璃は心配するも炭治郎は笑顔を見せて静かに立ち上がって

 

「いいえ、むしろ、甘露寺さんが本気で指導してくれたと感じました! これからも宜しくお願いします!」

 

力強い返事をする炭治郎を見て蜜璃も先程まで抱いた心配する気持ちは消え代わりに

 

( なんて強い子なの、かっこいいわぁ!)

 

炭治郎を''尊敬する煉獄の守り抜いた子供''から''立派な男''だと再認識した。

炭治郎自身刀鍛冶の里での戦いの時も蜜璃と半天狗の戦闘でも柱と上弦の実力差を思い知らされた炭治郎だが、蜜璃との訓練で改めて身に染みる結果となるも、敬愛する煉獄そして、今目の前で自分を信じてくれる蜜璃を見て倒れてられないと自身を鼓舞して意気込む。

 

その数時間後

 

「ゼェーハァ! ゼェーハァ!……………」

 

炭治郎は大汗をかいて大の字になって悔し気にして息切れを起こしていた。数時間もの間蜜璃との打ち込みにより体力が底をついたからだ。

 

「大丈夫? 炭治郎君?」

 

蜜璃も汗をかいて数時間もの間打ち込みしつつも若干疲れた様子を見せて駆け寄ると

 

「大丈夫……です………流石……甘露寺さん………強いですねー」

 

炭治郎の言葉に蜜璃はクスリと笑い

 

「まだ一日目よ、焦らずにいきましょう! 今日はもうこの辺にしてお風呂に入って寝ましょう。」

 

「はい!」

 

その後に夕食を取り、寝る時間になってしばらく経った頃炭治郎がトイレに行き部屋に戻ろうとしていた時、

 

( ん? 何だ? ''怯え''と''悲しみ''の匂いがしてくる?)

 

訝しんだ炭治郎はその匂いのする方に行くと蜜璃の寝室に着いて、罪悪感を抱くも部屋にドアに聞き耳を立てていると

 

「ゔうぅぅぐぅうう!………」

 

蜜璃の泣いている声を聞いた瞬間、意を決して静かにドアを開けて

 

「甘露寺さん?」

 

そこには()()()()()()()()姿()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()姿()

 

 

「炭治郎君!」

 

炭治郎の姿を見て慌てて立ち上がろうとするもののその前に炭治郎が静かに近づいて

 

「どうしたんですか? 具合悪いんですか?」

 

炭治郎の自身を労る言葉に顔を赤くして背けて

 

「だ、大丈夫よ!」

 

「大丈夫には見えませんが………」

 

炭治郎が尚も心配するものの蜜璃はいつもの笑顔を浮かべて

 

「気にしないで、もう夜も遅いから先に寝てて。」

 

蜜璃の悲しみを隠し笑顔でいる様子に炭治郎は、意を決して静かに近づいて蜜璃を抱きしめた

 

「えっ?! ちょっ?! 炭治郎君?!」

 

いきなり抱きつかれ狼狽する蜜璃に炭治郎は静かに諭す様に

 

「甘露寺さん、俺は貴方の継子です。

ですから、悩み事や嫌なことを一人で抱え込まずにどうか話してください。」

 

炭治郎が蜜璃の頭を撫でながら優しげな言葉に蜜璃は静かに涙を流し

 

「炭治郎君……ゔうぐぅうううああーーーーー!」

 

まるで赤子の様に炭治郎に抱きついて泣き叫んだ。

 

ーーーーー

 

「前にも……言ったけれど……私が鬼殺隊に……入った理由は、添い遂げる殿方を見つけるためなの………」

 

ポツリと蜜璃が炭治郎に自身の思いを吐露する。

 

「でも………」

 

悲しみに沈んだ様に

 

「''痣者は例外なく二十五歳までしか生きられないだって………」

 

「?!」

 

聞いた炭治郎は驚愕し、蜜璃は尚も涙を流し悲しげに言う。

 

「十九歳の私じゃ………後六年しか生きられない!………もう、添い遂げる殿方を見つけることが出来ないよ! でも! それでも! しのぶちゃんや伊黒さん達みんながそれを受け入れて………最後の戦いに命がけで戦っていくって決めたから………私も命をかけて戦おうと決めたの! 私だけが弱音を吐けるわけないじゃない!………その最後の戦いの中には、私の師範の煉獄さんを殺した上弦の鬼も居る! 私も煉獄さんみたいに自分の責務を持って戦いたい! それでも………私は………」

 

激情。

 そうとしか表現し得ない、苦しみとも怒りとも、哀しみ、絶望と恐怖の慟哭。

それを黙って聞いた炭治郎は静かに蜜璃の顔を正面から見て

 

「甘露寺さん………怖いのは、みんな一緒なんです………だから、一人で抱え込まずに………」

 

「止めて!!」

バシィィィィッッッ!!!!!

 

 

炭治郎の言葉に対し、蜜璃は悲しみから振り払う様に炭治郎の左頬に目掛けて重い平手打ちを喰らわせた。

炭治郎は瞬時に呼吸法で頸回りを強化して歯を食いしばり蜜璃の剛腕に耐えた。

それでも衝撃を殺しきれず蜜璃の平手打ちで思い切り顔を背け口の中は血が出たが、両手を寝台に押し付けて座っていた。

そのため咄嗟に両手に力を込めて吹き飛ぶのを防ぐ事が出来た。

 

炭治郎はこの時、口の中を斬ったのか口内が血の味で埋め尽くされたが、蜜璃に殴られた衝撃で茫然自失としていた。

左手で熱くなった左頬を抑えながら炭治郎は蜜璃に視線を戻す。そこには涙を流しながら悲壮感漂う蜜璃

 

「やっと………やっと覚悟を決められそうなの! 自分の命を捨ててでも最後の戦いに行く覚悟が! それを邪魔しないでよ!」

 

そんな自暴自棄の蜜璃を見て炭治郎はそれでも近づいていこうとし蜜璃は、

 

「こ、来ないで!」

 

後退りをして両手で炭治郎を押し留めようとするもその手は震えて弱弱しく炭治郎はその手を取り

 

「甘露寺さん、貴方は一人じゃない!」

 

突然の言葉に蜜璃がびっくりするも続けて炭治郎は蜜璃の両肩に手を置いて言葉を紡ぐ。

 

「貴方の回りにはしのぶ、伊黒さん達鬼殺隊のみんながいます。

貴方が死ぬのが怖いと言うなら、みんなで立ち向かいましょう。

貴方が悲しみにくれるなら一緒に泣いてくれますよ。

六年しか生きられないのなら後悔しない様にみんなと一緒に生きましょう。

煉獄さんもそんな事を望んでなんかいません! あの人は最後の最後まで上弦の参に負けなかった! 煉獄さんの事を長く見ていた貴方なら分かるはずです。

貴方自身その笑顔で多くの人達の救いになっています、そんな貴方の命はもう貴方一人のものなんかじゃない! 貴方が死ぬとみんなが悲しみます!だから一人で抱え込まず相談してください。」

 

炭治郎の言葉を聞いて蜜璃は涙を止めて

 

「………そのみんなの中には炭治郎君は居るの?」

 

「勿論! 俺は貴方の継子で大事に思っていますから!」

 

炭治郎の言葉に蜜璃はクスリと少し残念そうに笑い

 

「継子か………少し残念だなぁ………」

 

そういってポロポロと涙をこぼしながら泣き笑いの表情を作る蜜璃

その表情は憑き物が落ちたかのようにスッキリしていた。

蜜璃は炭治郎を抱きしめ

 

「今夜は一人じゃ眠れないから一緒に寝て。」

 

甘える様に言う蜜璃に炭治郎は大人の女性と一緒に寝ることに緊張しながらも顔を赤くして優しく笑い

 

「はい………」

 

「それと私のことは、''甘露寺さん'' じゃなく''蜜璃''で………」

 

「は? えっ?! ですが!………」

 

「貴方は私の継子でしょう? お願い!」

 

蜜璃の懇願に炭治郎は折れ

 

「はい、蜜璃さん!」

 

「うん!」

 

「一緒に生き残りましょう!」

 

「うん!」

 

こうして、お互いをより深く知り蜜璃と炭治郎の絆が単なる師弟関係から逸脱しつつ、何日も甘露寺邸での修行と安らぎの日々を過ごした………

 

ーーーーー

 

十日後………

 

道場に蜜璃と炭治郎が道着を着て相対し、お互いに竹刀を持ち剣呑とした雰囲気で向き合っていた。

 

「蜜璃さん! 貴方から受けて頂いた恩義に今報います!」

 

炭治郎の言葉に蜜璃も応じる様に頷いて

 

「うん! 来なさい! 炭治郎君!」

 

そして、両者がぶつかった。

 

「「ヒュゥゥゥゥゥゥゥ!」」

 

先手は甘露寺蜜璃の

 

壱ノ型 初恋のわななき

 

炭治郎に向かって猛烈な速さで駆け抜けながら斬りつけるも

 

ヒノカミ神楽 烈日紅鏡

 

左右両方から斬りつける水平斬りでほぼ360度を切り裂き蜜璃の斬撃を切り返した。

次に炭治郎が

 

ヒノカミ神楽 炎舞

 

素早く研ぎ澄ませた二連撃に対して

 

恋の呼吸 陸ノ型 猫足恋風

 

蜜璃は竹刀を自身の周りに纏わせ二連撃を弾いたもののそれを見て炭治郎は飛び上がり

 

ヒノカミ神楽 火車

 

飛び上がって前宙しながら蜜璃を飛び越えながら攻撃を避け、その勢いのまま蜜璃を斬りつけ様とするもそれを察知した蜜璃も応じる様に飛び上がって

 

恋の呼吸 弐ノ型 懊悩巡る恋(おうのうめぐるこい)

 

竹刀を螺旋状に纏わせ炭治郎の斬撃を防いだ。

 

「くうっ! まだまだ!」

 

炭治郎が悔しがるも蜜璃は間髪入れずに

 

恋の呼吸 伍ノ型 揺らめく恋情・乱れ爪(ゆらめくれんじょう・みだれづめ)

 

縦横無尽に飛び上がり、竹刀を炭治郎に向けて広範囲から斬りつける。

 

「うおおおおぉぉぉぉ!」

 

迎え撃つべく炭治郎は

 

ヒノカミ神楽 日暈の龍 頭舞い(にちうんのりゅう かぶりまい)

 

蜜璃の指導のおかげでより柔軟に龍がうねるように移動し、回避力を上げ蜜璃の斬撃を紙一重で往なしてすれ違いざまに蜜璃にとうとう斬撃を与えた。

 

「くうっ!」

 

自分の体に攻撃を与えられ痛がり目を見開くも口元が緩み

 

「凄いわぁ! 炭治郎君!」

 

「はい、おかげさまで!」

 

その後も、数時間に及ぶ稽古の後に昼食後……

 

「えっ?! もう行くの?!」

 

「はい! 蜜璃さんとの修行のおかげで強くなれましたし、何よりまだ次の柱の所に行かないいけないので。」

 

そう元気そうにしながらも寂しそうに言う炭治郎に蜜璃は慌てた様に

 

「も、もう少しここに居て!」

 

「えっ?!」

 

突然の言葉に炭治郎が驚き蜜璃も内心驚いていた。

 

( な、何を言っているの私?!)

 

混乱しながらも蜜璃はしどろもどろになって

 

「ほ、ほら私にとっては最初の継子だから万全の状態で送り出したいのよ! 炭治郎君、修行ばかりで休めてないから!もう一日休んでいって!そうしないと次の柱の人に迷惑をかけちゃうし! そ、それにこれは師範としての命令です!」

 

蜜璃の言葉を聞いて真剣な顔つきになり

 

「はい! 分かりました!」

 

「うん! よろしくね!」

 

こうして、午後は休みとなりもう一泊甘露寺邸にて泊まり、いつものように一緒に夕飯を作っていると

 

( なんだかこうやってると夫婦みたい……………ってなに考えているの! 炭治郎君にはしのぶちゃん達がいるでしょう!………でも、今夜だけなら)

 

そして、夜になって寝台の上でお互いが横になっていると

 

「蜜璃さん、ありがとうございます、無理言ってくれたにも関わらずにここまで良くしていただき、おかげでこんなに強くなれました。」

 

炭治郎の感謝の言葉に蜜璃は笑い

 

「ううん、私の方こそありがとう! 私はね、二十五を過ぎたら死んじゃうなら最後の戦いで精一杯戦って死のうと決めたの、でも、貴方は私に大事なものに気づかせてくれた。」

 

蜜璃の言葉に炭治郎は優しげな笑みを浮かべて蜜璃はそんな炭治郎の顔を近づけて

 

「だから、これは私からのお礼と嘘偽りのない気持ち❤️」

 

そうして、蜜璃はゆっくりと目を閉じて

 

炭治郎に口付けをした。炭治郎はそれを見て顔がボッと熱くなった。

 

「ほわぁっ!」

 

「貴方の気持ちは分かってる、だから今夜だけは私のことは''蜜璃''と呼んで、お願い………」

 

蜜璃の今まで見たことのない悲しげながらも美しい笑顔に炭治郎は覚悟を決めて優しく笑い

 

「蜜璃。」

 

「うん、炭治郎。」

 

「「おやすみなさい。」」

 

そうして、お互いにとっての特別な夜は更けていった。

 

 

 

 

 

 

 

だがこの時。

炭治郎と蜜璃は気付くべきであった。

甘露寺邸の庭の木の上…蜜璃の部屋の前の木の上に。

鎹烏が気配も無く立っていた。

 

ーーーーー

 

そして、翌日となり甘露寺邸を出る時になり、炭治郎と蜜璃はお互いに顔を見合わせて握手して

 

「私達も煉獄さんの意思を継いで共に生き残りましょう! 炭治郎君!」

 

「はい!生き残りましょう! 蜜璃さん!」

 

そうして甘露寺邸を出て次の柱の所に向かった。

 

次の柱訓練は蛇柱・伊黒小芭内が担当する太刀筋矯正訓練だ。

 

そして、炭治郎がここに来ると伊黒邸の前に待ち構えるように

 

「竈門炭治郎俺はお前を待っていた。」

 

「よろしくお願いしま「黙れ、殺すぞ。」えっ?!」

 

そこには嫉妬心全開にした伊黒がいた。

 

「甘露寺からお前の話は聞いた。

身の程知らずにも甘露寺の優しさに付け入り継子となり

随分とまあ楽しく稽古をつけてもらったそうじゃないか?」

 

その言葉に炭治郎は冷静に言い返す。

 

「いいえ、甘露寺さんの指導は厳しいものでした、俺も何度か吹っ飛ばされ、滅多打ちにされました。それでも甘露寺さんは俺を継子として信じ本気で向き合ってくれました。

何より俺は、甘露寺さんが煉獄さんの元継子だと知り、煉獄さんが認めた人に本気で教わりたいと思い継子にさせていただいただけです。」

 

炭治郎の理路整然とした言葉に伊黒はしばし閉口し、

 

「成る程、つまり煉獄の元継子なだけで継子を打診したと? 随分と手前勝手な理由だなぁ? というか恥ずかしくないのか? ただでさえ甘露寺は柱訓練で忙しいというのに? そういうの考えなかったのか? 甘露寺に無駄な時間を取らせて? 考えなかったのならどう償う貴様?……」

 

伊黒のネチネチとした言葉に炭治郎は堂々と

 

「甘露寺さんから教わったことを実践して無駄じゃないと証明します!」

 

炭治郎の言葉に目線を鋭くさせて

 

「ほう、ならば来い。」

 

そうして伊黒邸に共に行く。因みに炭治郎がいつもは、蜜璃さんというのに伊黒の前で甘露寺さんと言ったのは、流石に人前で名前呼びは恥ずかしいと思ったことと本能的に言ってはダメだと感じた為である。

 

 鬼を倒すには頸を斬る正確性の向上を目指す為にこの訓練では部屋内にある板で作った障害物を避けながら正確に刀を振る訓練を行うのだが、小芭内の指導は容赦がなかった。

 すぐに諦めるような心の弱い者や覚えが悪く何度も同じ指摘をされて手間をかける者など、彼をイラつかせた者は障害物に括り付けられるという憂き目にあっている。

 彼らの間を木刀が空を切り、小芭内と挑戦者の攻撃が体をかすめ、挙句に木刀が当たる恐怖と痛みに耐え忍ぶ空間と化していた。

 

「お前にはこの障害物を避けつつ太刀を振るってもらう。」

 

( 処刑場?」

 

炭治郎が絶句して

 

「この…括られている人達は何か罪を犯しましたか?」

 

「…まあ、そうだな。

弱い罪、覚えない罪、手間を取らせる罪、イラつかせる罪、何より其処にいる大馬鹿者達は甘露寺を襲うという大罪を犯した!! という所だ。」

 

見ると明らかに他よりもボロボロにされている数人が居て炭治郎も気付いて

 

( ああ………だから、やめろって言ったのに……………)

 

炭治郎が同情を禁じ得ない程に彼等からは嫌な程に

 

(ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんごめんなさい……………)

 

深い後悔と懺悔の匂いがしていた。

そして始まる伊黒との世にも恐ろしい訓練では、伊黒自身は狭い隙間でもぬるりと異様な曲がり方で木刀を当てにきたが、蜜璃との修行のおかげで伊黒の攻撃をよけれるようになったものの隙間を狙おうとした時の仲間の心の声から

 

(頼む! 当てないでくれ!!)

 

これが聞こえてきて精神を抉り今までにない緊張感で手がブルブルと震えそうになるも蜜璃の教えを思い出し自分を信じ少しずつ打ち込める様になる。

 

二日後………

 

その修行が身を結びより柔軟障害物を避けつつ正確な太刀筋て打ち込める様になり、攻撃を当て続け伊黒の羽織りだけでなく、体の方にもいくつか当てることが出来た瞬間に訓練終了と言われた。

伊黒は睨みつけ

 

「でかい口を叩けるだけはあるな、だが、調子に乗るな、さっさといけそして死ねゴミカス。

継子になったからとあまり馴れ馴れしく甘露寺に喋るな。」

 

炭治郎は最後まで嫌われていて悲しかったが、そのまま次の柱に行こうとすると

 

「待て。」

 

伊黒の声に炭治郎が振り返ると

 

「お前、甘露寺と何かあったのか?」

 

炭治郎は面食らうも

 

「えっ? 修行と家事手伝いだけですけど?」

 

伊黒は尚も睨みつけ

 

「手紙の内容に以前の手紙よりもお前に関する言葉が増えている何もないわけないだろ!」

 

「えっ? それだけですか?」

 

内心炭治郎は伊黒の事を

 

( 何だろ、この人、怖い!)

 

「特にお前が旅立った日からお前に関する心配事も出ているぞ!」

 

伊黒の追求は続くも炭治郎は冷静に

 

「えっ? そりゃ俺が甘露寺さんの継子だから、その心配しているだけかと。」

 

そして伊黒は静かにゆっくりと近づいて

 

「では聞く、竈門炭治郎……………修行と家事以外には()()()()()()()()()

 

炭治郎は冷静に考えてある考えに行きつき言ってはいけないと思い、

 

「何もありませんでした。」

 

炭治郎は嘘をつく時に変顔になる。

そんな嘘が伊黒に通じるはずが無く

 

「下手な嘘をやめろ、何をした………」

 

静かに殺意と威圧を持った伊黒の言葉に炭治郎は観念して

 

「……………はい………」

 

洗いざらい話した。

数分後……………

 

 

 

 

 

 

 

 

「前言撤回だ!!! 次の柱の所へ行かせん!!! 殺す!! 殺してやるぞ!!! 竈門炭治郎!!!」

 

「お、落ち着いてください! ぎゃあー!」

 

「待てーーー! 殺してやるーー!!!」

 

「ぎゃあああああぁぁぁぁーー!」

 

 

木刀を持ち般若の形相で炭治郎を追いかける伊黒がいた。

その後一晩中に木刀で打ち合いながらも命がけの鬼ごっこが続いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




竈門炭治郎×甘露寺蜜璃になりました。
次回は、蜜璃としのぶの回です。
お楽しみに。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。