時は炭治郎が甘露寺邸から出て伊黒邸に向かおうとした頃………
蝶屋敷では、珠世としのぶ、愈史郎、アオイ達が、対鬼舞辻無惨に投与する新薬開発に勤しんでいた。
当初は鬼に懐疑的なしのぶとアオイだったが、炭治郎のおかげで早くから珠世と愈史郎と和解 (愈史郎は嫌々だったが )結束した事により作業は好調に進み、予定よりも早く鬼舞辻無惨に対する ''四種の新薬''が出来上がった後にアオイからも''あるアイデア''が浮かびそれを踏まえて実行に移した物をしのぶ達に見せて説明していた。
「切っ掛けは以前に蝶屋敷に来ていた不死川玄弥さんの日輪刀の材質を使った南蛮製の銃と弾丸です。
鬼を斬る刀と同じ威力を持つ弾丸の存在、しのぶ様の持つ鬼に効く毒、これらから発想を得られ、【猩々緋砂鉄】と【猩々緋鉱石】でできた日の光を吸収する鉄の粉末を使い薬を作る事を思い付きました。
鬼は、日輪刀を食いません、恐らく鬼舞辻無惨も同様にならば、この ''日輪刀の粉末のみの薬'' を使えば弱体化を見込めるかと思いました。」
アオイからの鬼舞辻に対する新たな新薬を見て
「成る程! 成長しましたね、アオイ。」
「日輪刀の粉末を使った薬ですか………アオイさん、こんな事を思い付くとは! これなら鬼舞辻を更に追い詰められますよ!」
「ふん、珠世様に褒めてもらえるとは………幸せな女め!」
しのぶと珠世がアオイを褒めているとそれに愈史郎が嫉妬混じりの祝福の言葉を言われ、それにアオイが照れ臭そうにしていた。
そうして、それからも皆で協力して、鬼化の血清及び人間薬の増産に入り、努力の甲斐あり当初の予定の倍以上の血清と人間薬が出来上がった。
其処で
「しのぶさん、そろそろ柱稽古に参加なさった方がよろしいかと。」
「は? 何を?」
珠世の進言にしのぶが驚いているとアオイもそれに乗っかる様に
「私もそれが良いと思います、新薬開発の目処が立ち、後は増産するだけですし、後は私達がいればいいかと……………それに早く炭治郎の所へ行った方がよろしいのでは?」
「んな?!」
アオイがしのぶの柱稽古参加を後押しし、最後の方は小声で言い、それを聞いたしのぶが驚いて赤くしていると
「貴様は柱だろう? 薬作りも結構だが、もう後は珠世様と俺とアオイで十分だ。
最終決戦も近い、今のうちに少しでも鍛錬しておけ!」
愈史郎の後押しもあり、しのぶ自身も本格的に柱稽古に向かう事にした。
炭治郎に会うのも楽しみにしながら。
そして、もう夜は遅いからと皆が、寝室に戻っているとしのぶの部屋の窓辺に
「報告! 報告! カァ!」
「しー、静かに!」
鎹鴉が居ており声を上げた。その声にしのぶは人差し指を自身の唇に一度当ててから、静かにに話し掛ける。
鎹烏も状況を察して声を潜めてしのぶに話す。
「カア…… 竈門炭治郎についテ報告……しのぶ! しかト……聞くべシ!」
「何かあったんですね? 炭治郎の身に………」
鎹烏はしのぶに柱稽古での炭治郎の様子を話した。
時透の所を突破したと聞いた時は、
「流石! 未来の私の旦那様ですね!」
報告を聞いて喜んでいたが、甘露寺邸での事件及び其処で炭治郎と蜜璃がどの様に暮らしていたか小さな事も含めて報告させていた。
その間に鎹烏は、しのぶの様子を見て戦慄して炭治郎が伊黒の所まで行った事を話終えるとしのぶは静かに笑うも青筋を浮かべ
「………へー甘露寺さんと……其処までとは………あのお人好しめ………まぁ、炭治郎に関しては後でするとして、甘露寺さんに会いに行かねばなりませんねーふふふふふふ………」
そこにはいつもの様に笑うも青筋を浮かべたしのぶが夜空を見つめていた。
ーーーーー
甘露寺邸では、ようやく次の隊士たちが来ていて柔軟訓練をしていたが……
「ぎゃあああぁぁぁぁ!!」
「さあ! もうちょっとだよ!」
「わ、分かりました………」
「次は俺もお願いします!」
「は、はい!」
蜜璃の柔軟訓練により悲鳴が湧き起こっていたが、時透によりハードルが上がった訓練を潜り抜けたことにより根性が付いた隊士達もおり、少しずつだが、柔軟訓練に耐えられる者も出てきたが、蜜璃自身は時折うわの空で一抹の寂しさを覚えていた。
それに隊士達は心配しながらも、あまり深入りするのも悪いと思いそっとしておくことにしていた。
ーーーーー
その夜、蜜璃は夜空の月を眺めていた。
その顔からはいつもの笑顔ではなく、哀愁感漂う姿でため息を吐いていた。
蜜璃の脳裏によぎるのは、自分の最初の継子にして最愛の竈門炭治郎。
その自身の思い人との思い出を振り返っていた。
ある時は、一緒の寝台に寝た後にこっそりと自分は起きて炭治郎の寝顔を見てカッコいいと思い寝ている炭治郎の頬に口づけをしたり、次に耳をしゃぶり寝ながら反応する炭治郎を可愛いときゅん! としながらもほくそ笑んだりとした事を思い出し赤面していた。
ある時は、一緒に横になっている時に自分の匂いを嗅いで
「桜餅が好きなんですね!」
と言い当てた時に恥ずかしかったが、その後に
「俺も好きなんですよ!」
と言って場を和ませてくれたり、その後も自虐めいた風に自分の髪色は小さい頃から桜餅を食べ過ぎたのでこうなったと言うと
「成る程! だから蜜璃さんは綺麗な桃色の髪なんですね。」と自分の髪色を褒めてくれたり、「蜜璃さんといると桜餅の良い匂いに包まれている様で幸せな気持ちになります。」
と自分をどこまでも、きゅんきゅん! とさせまくる炭治郎の言動により密かに悩んでいた自分の髪色を気にしなくなる所か誇れる様になった。
その後も
( そうだわぁ! それに修行中にうっかり転んだ時に炭治郎君が抱きしめてくれて暖かったなぁ………その後にちょっといたずらしようとして彼の頸筋に甘噛みしたっけ、その後の彼の顔を赤くして我慢している反応がとても初々しくて、今度は舌で舐めてあげてたなぁ………その後に、口を大きく開けて感じていて私もドキドキしていたなぁ………その後も丁寧に頸筋の端から端まで舐めてあげてたら気持ちよさそうにしていたなぁ………ああ、早く、炭治郎君に会いたい……… )
炭治郎との思い出を振り返り顔を赤面し身悶えた後に月を見上げて
「炭治郎君がこの場にいてくれたらどう思うかしら」
蜜璃がポツリと呟いた瞬間、其処へ背後に誰かの気配がしたので振り返ると
「こんばんは、今日も月が綺麗ですね、甘露寺さん。」
そう声を掛けたのは、自身の大好きな友人であり、''今は'' 会いたくなかった自分と同じ鬼殺隊の女隊士で蟲柱の胡蝶しのぶがいつもの笑顔で佇んでいた。
蜜璃は急に来た事により若干笑顔が引きつるもの応対した。
「こんばんは、こ、ここに来れたと言うことは用事が終わって柱稽古に参加できたんだね、良かった………」
「ええ、教え子と協力者のおかげで参加出来ました。」
それに蜜璃はしのぶに対して深い負い目と申し訳ない気持ちでいっぱいでぎこちなくだったが、しのぶも内心を悟らせない様に快活に応え
「良かった! しのぶちゃんも来てくれて嬉しいよ!」
「ええ! 私の''婚約者'' の炭治郎がお世話になりました。」
「……………えっ!?」
しのぶの言葉に蜜璃の顔が固まるもしのぶは気づかないかの様に会話を続けた。
「私は炭治郎の優しさに救われましたから。
私は鬼の頸を斬れない代わりに鬼を殺す毒を作り''蟲の呼吸"を編み出し柱になりましたが、結局は、それだけなんです。
上弦の鬼達と戦った人達からその強さを聞いて、改めて私には、姉の仇をとれるなどと思えませんでした…………それが悔しくて悲しかったです………………」
しのぶはいつもの笑顔ではなく疲れた様な表情で語る。
それを見て蜜璃は、初めてしのぶが抱えていた闇を垣間見て後悔した。
今まで自分を励ましてくれた友人がこんな葛藤を抱えていたのに自分はしのぶの事を見ていなかった事を。
そんなしのぶの姿を見て何か言おうとしたが、
「………ですが、そんな私を変えていいえ! 救ってくれたのは炭治郎でした。」
しのぶの突然の言葉に蜜璃が驚いていた、其処には、いつもの否、いつもより明るく幸せそうに笑うしのぶの姿があった。
「炭治郎は言ってくれました!
''一人で抱え込むなっ! しのぶっ! 俺達が共にいるからっ! 共に戦うからっ!''
とあの時は、驚きましたよ仮にも私は柱だと言うのに、上弦の強さを知っていても尚私と共に姉の仇を倒そうと言ってくれるんですから。
しかも、私の事を守ると言ってくれました。
更に私自身も炭治郎に、 ''夜の方も''色々とふふふ………」
しのぶの蜜璃に自慢する様に嬉しそうな声で顔を赤く染めながら、左手を左頬に添えてうっとりとしていた。その幸せそうな表情は、蜜璃には、困惑させた。
( その反応、何? 炭治郎君と? 夜の方も?!)
しのぶの言葉に蜜璃は、自分でも良く分からない嫌な気持ちが溢れて来ていた。
( 炭治郎君と話してる最中に感じたのは、温かくて良いきゅんとする気持ちだった。でも、今は違う。とても嫌な気持ち。炭治郎君の事を嬉しそうに話すしのぶちゃんを見ていると、胸がズキンズキン! とする感じがする。この気持ちは……)
「……炭治郎君が優しい事なんて、私はとっくに知ってるもん……しのぶちゃんよりもずっと。」
「……………へー…言うじゃないですか…………」
「あ……」
( 私、今何を? 炭治郎君に救って貰ったと嬉しそうに話すしのぶちゃんに? )
蜜璃は無意識に、そんな事を言っていた。小声で呟いたので、聞こえないかと思ったがしのぶには聞こえていたらしく、しのぶは口は薄く笑っているものの目が笑っておらず鋭い視線で蜜璃を見ていた。
「ご、ごめんなさい! そ、そうだ! もう今日は遅いし、泊まっててよ、しのぶちゃん!」
「いいですよ、甘露寺さん。」
誤魔化す様に言うとしのぶも先程の表情はなりを潜め明るく返事をした。
蜜璃はもう一度同じ言葉を、今度は大きな声で言いたいと思ったができなかった。蜜璃は結局、誤魔化して口をつぐんだ。どうしてあんな事を言ったんだろう。自分の気持ちには諦めをつけた筈なのに、ただ、胸が重苦しい。
この気持ちは知っている、炭治郎が旅立ったあの時と似ている。
蜜璃自身はあの時はただ辛くて、悲しくて胸が苦しかった。心に穴が空いた様な。
炭治郎が旅立った晩は、部屋で一人で静かに泣いた、自分の気持ちに整理をして吹っ切るために。
でも、今はしのぶに対して対抗心の炎が胸の奥から湧いてくる感じだった。
( 私の方が、しのぶちゃんより炭治郎君の事を知ってる。私の方が、しのぶちゃんよりも炭治郎君と仲が良い。)
胸の中で、そんな言葉が繰り返し再生されていた。
「……もう行こうかしのぶちゃん。」
「………ええ、そうします。」
これ以上しのぶと話したくなくて、蜜璃はそう言った。自分でもびっくりするくらいに、発した声が低い。しのぶも微笑を浮かべながらも気配は剣呑とした様子で、まるで蜜璃のことはお見通しだと言っているみたいに、それを見て、蜜璃はさらに嫌になる。
「……早く行こう、しのぶちゃん。」
「……………いいですよ、私も今夜は泊まらせていただきますからね。」
これ以上、しのぶと話していたくなくて、蜜璃は早足で歩き始める。蜜璃の後ろを、静かにされど早足で追い掛けてくるしのぶ。
この気持ちは知りたくなかった、そう、それこそが
''嫉妬''
蜜璃はそう思った。しのぶのことは大好きな友達の筈なのに、一緒にいたくないと思ってしまう自分を汚れていると恥じた。
こんなに嫌な気持ちは、知りたくなかった。これが炭治郎に感じていた気持ちから湧き出しているという事に気付き、蜜璃はこの気持ちを諦め、遮断しようとした。けれど、結局それはできずに、屋敷に帰るまで消えなかった。
いや、帰ってからも、ふいに思い出して嫌な気持ちになった。それは自分なりにけじめをつけて諦めた気持ちを急に掘り起こされまるで焦げのように蜜璃の心にこびりついて、中々取れなかった。それもその筈、この屋敷にしのぶが居る。
それが諦めけじめをつけたはずの ''炭治郎を愛する気持ち'' に拍車を掛けた。
夕食の間も当たり障りのない会話をしてしのぶの顔を見ない様にしてその後も拒絶する様に睡眠についた。
もし振り返ったら、きっとしのぶを睨んでた。
そんな自分を責めていた。
胸が苦しい。しのぶが来たことで処理しきれない感情に、蜜璃は振り回されていた。それは蜜璃の心の奥底に生まれた気持ちから発生した物だったのだから。
一方でしのぶも悩んでいた。
炭治郎と濃密な関係に蜜璃に対して ''ある決意表明''をしに来たはずが夜も遅いという事で明日にする事にした。
蜜璃と顔を合わさずに屋敷に着いて部屋に案内され一人で入浴の後に食事中にも当たり障りのない会話をして顔を合わさず、そのまま部屋に通され、寝室に入り着替えを済ませて寝台に横になり胸に渦巻く黒い気持ちを吐き出したくて大きく息を吐いた。
色んな出来事が起きて処理しきれない感情に、しのぶ自身も抑えるのに精一杯だった。それはしのぶの心の奥底に生まれた気持ちから発生した物だったのだから。
「ふー、落ち着きなさい、しのぶ………感情の制御が出来ない者は未熟者です……………」
しのぶは甘露寺蜜璃のことは大好きだ。
だからこそはっきりとさせておきたいと思い、此処に来た。
翌日………
甘露寺邸での柔軟訓練にしのぶも加わることとなった。
最初は、緊張していた隊士達も蜜璃の指導とそれをより分かりやすく言うしのぶにより飛躍的に皆成長した。
それに蜜璃は昨日の事は忘れようと心の奥底に押し込めようと明るく振る舞い、それにしのぶも明るく返した。
「ありがとう! しのぶちゃん!」
「いえいえ! このくらいお安い御用ですよ。」
その夜………柔軟訓練が終わり、皆が寝静まる頃
蜜璃は、しのぶから
「大事な話があるので十一時頃に道場に来てください。」
蜜璃はしのぶの ''大事な話'' というのが気になり、鬼殺隊の隊服を着た上で十一時丁度に到着するようにしのぶが指定した場所に到着した。柔軟訓練や鍛錬で使用される甘露寺邸の道場にて其処にはしのぶが正座して待っていて、側には木刀が一本置かれて、道場の端の周辺には適当に何十本もの木刀が散らばっていた。
「甘露寺さん、今から私と手合わせして貰います。」
「しのぶちゃんと手合わせ……ああ、なるほど柱稽古の一環ね! 分かったわ!」
蜜璃も柱稽古の為だと思い、しのぶの目の前に立ち、蜜璃も一番側にある木刀を持ち、素振りをしてから、改めてしのぶに向き直るも
「まあ、焦らずにお話をしましょう、甘露寺さん………」
「えっ? う、うん………」
静かに圧をかけるしのぶに蜜璃もしのぶに習う様に静かに正座する。
「それで話って?」
開口一番に蜜璃が言うとしのぶは嗤い
「''私の'' 炭治郎と何をしているんですか?」
しのぶの言葉にドキッとするも蜜璃は平静を装い
「えっ?………ああ! 継子としての修行の事! あれは炭治郎君から打診されたからには、生半可な修行じゃ彼に悪いと思ったからだよ! 炭治郎君には、生きてて欲しいから! そ、それに煉獄さんの意思を受け継いでいるんだもの! そんな人の思いを踏みにじれるわけないじゃない。」
蜜璃が顔を赤くしてまくし立てるもしのぶは尚も静かに嗤い
「そうでしたか、失礼しました。
では、後もう少しだけ質問させてください。」
「う、うん………」
「甘露寺さん、貴方は炭治郎に色目を使いましたよね?」
その言葉に蜜璃は一瞬固まりしどろもどろになりながら
「な、何言ってるの! 使ってないよ! 修行をして家事手伝いをしてもらっただけで……」
「修行と家事手伝いの話ではないですよ、分かってますから。」
しのぶの追求に蜜璃は冷や汗を流すも誤魔化そうとして
「!!! さ、さあ何のことかなぁ……………」
蜜璃は作り笑いをするもしのぶは目を細くして
「私は三日前の事を言っているんですよ、三日前。
実は、炭治郎の事が心配で鎹烏をこっそり炭治郎の様子を見てもらってたんですよ。
全部知っているんですよ、甘露寺さん………」
しのぶの衝撃の事実により蜜璃は顔を真っ青になるもしのぶは冷ややかに見ていると蜜璃はポツリと
「ど、どこまで知っているの?………」
蜜璃の言葉にしのぶは嗤いながら
「一人で泣いていた時に炭治郎に抱きしめてもらいましたよね!」
「はう!?」
しのぶの言葉に蜜璃はドキドキしているもしのぶは続けて
「寝ている炭治郎の頬に口づけしてあまつさえ耳をしゃぶりましたよね、炭治郎に髪色を褒めてくれたり、修行中に転んで抱きとめられた時に炭治郎の頸筋を甘噛みして舌でチロチロと舐めたり………」
「も、 もう止めてーーー!!!」
しのぶから炭治郎との事を赤裸々にされ蜜璃の羞恥心は爆発して大声を上げた。
蜜璃は大声を上げた後に、ハッとなり口を両手で塞ぐもしばらくしても何も起こらず、大声を上げられた当のしのぶは冷静に
「ああ、大丈夫ですよー他の隊士達には、食事に薬を処方して深い眠りに入ってもらっていますので、大声を上げた所で来ませんよ。
邪魔者は来ませんよ。」
それに蜜璃が安堵して改めてしのぶを見て戦慄した。
其処には、怒気を纏い目を細くして口元を歪む様に嗤うしのぶの姿だった。
初めて見るしのぶの姿を見て蜜璃が驚いている間にもしのぶはゆっくりと蜜璃に顔を近づけ
「大丈夫ですよ、甘露寺さん、私は、確認をしているだけですよ。」
「確認?」
蜜璃の言葉にしのぶは、
「私としては、炭治郎を死なない様に強くしてくれた甘露寺さんには感謝しています。
ですので、甘露寺さんが、 ''わたしの'' 婚約者である炭治郎に手を出した事を謝罪して、更にこれから一生炭治郎の側に二度と近づかない様にしてくれれば幸いです。」
「えっ?!」
しのぶの突然の言葉に蜜璃が愕然となるもすぐに蜜璃は黙っていられず
「手を出した事についてはごめんなさい! で、でも、彼は私にとっての最初の継子だから指導した後もちゃんと導いてあげなくちゃいけないから………」
蜜璃の必死な言葉にしのぶは涼しい顔で
「指導でしたら、私が教えますので大丈夫ですよ、甘露寺さん……………それとも私じゃ力不足だとでも?」
しのぶの静かだが圧のある言葉に蜜璃は言葉を失う。
そして、考える。
( 確かにしのぶちゃんの言う通りかも、私よりも指導力があるしのぶちゃんなら炭治郎君を安心して任せられるから、私は必要ないかも……
ズキン!
うっ!………何今の! )
蜜璃は、しのぶの言う通りにしようとしたが、心の奥から痛みにより躊躇しているとしのぶは畳み掛ける様に
「何度も言う様に炭治郎は私の婚約者ですから、彼とは、心の底まで一緒ですからねー甘露寺さんに付け入る隙はないですよ。」
「はっ?! えっなっ?! ちょっとどう言うことよ!」」
しのぶの言葉に蜜璃は、驚愕の表情を向けて問いただすとしのぶは蜜璃に勝ち誇る様に
「おやっ? そんな知りたいんでしょうか?……でしたら答えてあげますよ。それはもう、お互いの全身を裸で見せ合い、交わりましたよ❤ 私の身体も、炭治郎君の身体も、お互いに見せてない部分などありませんっ。」
「は? はわああっ?!」
しのぶの思わぬ発言に、蜜璃は驚愕と仰天の混じった声を上げる。しかし、徐々にその顔を染める赤色は徐々に収まり遂には無表情へと変化する。
そして蜜璃の目から涙が流した。
しのぶはそれを見て自分のした事を悔いて居た堪れない気持ちになるも、蜜璃を静かに見る。
蜜璃は、ぼんやりとしながら考える。
( ああ………分かっていた……しのぶちゃんと炭治郎君の仲に私が割って入るなんて……………出来ない………身を引くべきなんだ………そうだ、このまましのぶちゃんの言う通りに……………)
そう決意した蜜璃は、目を閉じた瞬間に思い浮かんだのは、甘露寺邸での炭治郎とのかけがえのない日々、そして、指導の最終日での稽古の時に見せた炭治郎の自分を本気で倒そうとする姿と遂には自分の技を躱して一撃を入れた時にこの胸に響いた瞬間にある思いが込み上げた事を思い出した。
ああ、ようやく見つけた………
そう蜜璃は、刹那の時に改めて自身の思いを確認、実感し、しのぶに頭を下げて
「しのぶちゃん、ごめんなさい。
貴方の婚約者の炭治郎に手を出して、言い訳はしない…………」
蜜璃の突然の謝罪に面食らうも
「甘露寺さん、その事はもういいですから、こちらも言い過ぎました。」
そして蜜璃は、力強い目でしのぶを見て、自分の思いを伝える。
「でも、やっぱり、炭治郎君の事は諦めきれない!」
「!!!」
蜜璃の言葉にしのぶは驚くも構わずに蜜璃は自らに芽生えた思いを叩きつける。
「私は炭治郎君が好き! この思いだけは確かなの! いつもは毅然としているのに時々抜けていて可愛い所もあるけど私が食事している時にも優しい目を向けてくれて、稽古の時に私の全力を受け止めてくれた強さを魅せてくれた最高にかっこいい人だから!!」
蜜璃の思いを知りしのぶは驚愕するもすぐに視線を鋭くして蜜璃も負けないという風に睨み返す。
蜜璃は、ようやく気付いた
自分の想いを認める事が出来た"だけ"では、何の解決にもなっていない。
目の前の大好きで最も尊敬している最強の恋敵'' 胡蝶しのぶ'' に、自分と同じく竈門炭治郎と恋しており、炭治郎の婚約者の彼女に勝たなくてはいけない。
戦いも、恋も、である。
炭治郎は胡蝶しのぶ達と婚約している。
それは覆り様のない事実、だがそれでも今ある自分の気持ちだけでも、諦めたつもりだったかけがえのないこの気持ちを今此処に掘り起こし、目の前の相手にぶつけたい。
しのぶも自身が最も尊敬し大好きな'' 甘露寺蜜璃 ''が恋敵として自分と真っ正面から向き合ってくれた事に歓喜した。
同時に自分にとって誰より大切な'' 竈門炭治郎 ''に恋している事に心の奥底から対抗心が湧き上がる。
(これを待っていました!)
しのぶは最初から蜜璃に''決闘'' を申し込みに来た。
だからこそ、''わざと'' 炭治郎との事を暴露し、挑発し蜜璃の本当の気持ちを引きずり出すために、そして蜜璃が、本気なら''ある提案'' をするつもりだったが、今はそれよりも……………
( 鎹烏から、今炭治郎は般若の形相の伊黒さんに追われている様なので彼に対するお仕置きは ''保留'' することにして、今は私の炭治郎に手を出した貴方を倒す!!………)
はらわたが煮え繰り返るような、凄まじく強烈な嫉妬心と対抗心がしのぶの全身を支配する。
だが、それは蜜璃も同じだった。
蜜璃は、決意の炎を目に宿らせ宣戦布告する様に立ち上がり
「炭治郎君が好きだから、しのぶちゃんに負けない!」
しのぶも応じる様に立ち上がり、目の笑っていない笑顔で蜜璃に鋭い視線を投げかけ
「そうですか、では、手合わせを、いいえ………」
両者に静寂が訪れ、次の瞬間しのぶが静かにだが力を込めて
「''決闘 ''で!!」
「!!!」
しのぶはそう言うと木刀を拾って構えて、蜜璃も黙って手元にある木刀を一本掴むとしのぶに向けて構える。そんな蜜璃に対し、しのぶは嗤うのを止め、真剣な表情で蜜璃を睨みつける。
そして、両者共に踏み出す一歩に力を込める。
そして駆け出した瞬間にそれぞれの剣技を相手に向ける。
蟲の呼吸 蝶ノ舞 戯れ
蜜璃よりも速く近づきすれ違いざまに複数の裂傷をを当てようとするも
( 速い!)
弐ノ型 懊悩巡る恋
それを察知した蜜璃が木刀を螺旋状に斬りつけしのぶの剣撃を防ぐ。
衝突から間を置かず、両者は互いに跳び退って距離を取る。
「来なさい、甘露寺さん!!」
「負けないわよ! しのぶちゃん!!」
大切な者を譲らぬためにしのぶと蜜璃の二人が激突した。
「「はあああああーー!!」」
お待たせして申し訳ございません。漸く投稿出来ました。
はい、遂に始まりました、甘露寺蜜璃と胡蝶しのぶの炭治郎をめぐる戦い。
最も炭治郎はすでにしのぶさんと婚約していますが、それについても考えがありますので、これからもよろしくお願いします。
次回は乙女の死闘です。