ポカポカとした昼下がりに、ぼへ~っとした顔のカヤと、シャキッとしなさいと、言いながら歩くモモカ。
モモカとカヤが揃って里の往来を歩いてると、道行く里の者達が皆、御子様、御子様と声をかけ挨拶をしていく。
「もう、御子様とかいい加減に、やめてほしいわ。全くなんだろうね、いつもいつも。めんどくさい!」
カヤは御子様と呼ばれるのが嫌いで、四百年前まではそう呼ぶなカヤでいいと、呼ばれるたびに頼むからやめてと、里の者達に言ってたがそんな畏れ多いと、畏まり御子様としか呼んでくれなかった。
今は諦め気味だが、やっぱりそう呼ばれるのが嫌で、いつもぼへ~っとした顔で、右手をヒラヒラさせて適当に、挨拶を返していた。
「あんたも、これだけは何百年経とうとも、慣れないわねぇ」
モモカは道行く里の者達に、にこやかに挨拶を返しながら笑う。
「にゃ~ あたし主でもないし、えらくもないし皆かんちがいしてるよ…… 全く」
「まぁ しょうがないないわよ、生前の記憶を持った転生者など,
いなかったんだもの」
尻尾を不機嫌そうに忙しなく、左右にパッサパッサ振りながら、両手を頭の後ろで組み面倒くさそうに言い、モモカがまぁまぁと、
「だから、トク爺の所にはよくいくのね」
「そだよ~ トク爺はカヤと呼んでくれるし、お酒も分けてくれるしね~」
嬉しそうにニカ~と笑いながら、事投げに言葉を返す。
「分けて? 強奪じゃないの? フフッ」
「ちがうよ! ちゃんと分けて貰ってるよ? ほんとだよ?」
「だから、なんでそこ疑問形になるのよ……」
はぁぁっとカヤの肩に手を置き、少しは大人になりなさいと言うと、やだ! 寿命無いのにどこから大人? 子供? と言葉を返すカヤに屁理屈言うなとパコーんと、ゲンコツを軽く落とす。
そこへ警備隊のジンゴが、モモカ達のとこへ駆けてきて、青ざめた顔付で事を告げる。
「御子様! 大変です!
「なんですって! で、何匹きたの?」
「一匹です! 里から離れた、草原地帯に出ました」
それを聞くや否やカヤは、空高く空中にジャンプすると、そのまま空を四つん這いで駆けだし、パン、パン、と水蒸気の輪を作りながら加速していき、瞬時に音速を突破した。
「いい、ジンゴ、里の警備をすぐに固めなさい! そして鈴音様に報告を!あと、援軍はいらないから、絶対に近寄ってはだめよ! カヤが本気出したら巻き込まれかねないから、絶対によ!」
「わかりました! ご武運を!」
「ありがとう! いってくるわね」
そう言うとモモカも、とんと二百メートルほどジャンプすると、そのまま空中を四つん這いの、獣走りで駆けだす。
パパン、と水蒸気の輪を作りながら加速し、猫耳は後ろ気味に反り 尻尾をパタタタと
草原地帯に着き空から地上を見下ろすと、警備隊数人が倒れており残る三人が
カヤは
キッと
「うへっ。凄いなあんたの気は」
ぶつけられた覇気をものともせず、口端に小さな笑いを浮かべる。
「ほお。我の覇気を物ともせぬか、獣人よ」
「う~ん、獣人じゃないよ、猫亜人だよ」
「なに!? もしやここが……精霊獣とやらが、住む世界か?」
「そうだよ~ であんたは時空の歪に巻き込まれて、ここに迷い込んだんだよ」
カヤはのんびりとした口調で、言葉を返す。
「そうか……帰る方法はあるのか?」
「さぁ? 大人しくしてれば、また時空の歪が起こって帰れるよ?」
「ふむ…… お前から強大な魔素量感じるが、お前は〝真なる魔王〟か?」
「それなに? ちがうよ~、そんなの知らないし」
「そうか……お前の魂からは他と違う感じを受ける。貴様を殺して、その魂と心核をみてやろうぞ。我はビタル」
そう言うとビタルは、左半身の構えを取りカヤに告げた。
「ねぇ、大人しくしてくれたら、悪いようにはしないんだけども?」
「……」
「どしても、やる?」
「……」
「にごり酒、いる?」
「……」
「あ~ やるんだ。いいよ、殺し合おうか。あたしはカヤだ」
嬉しそうにニヤッと笑いを浮かべ、左手で角帯に巻いた千鳥の下げ緒をパシっと叩き下げ緒に固定してる別空間に千鳥を収納して、名乗りを上げ右半身の構えを取る。
そこへモモカも追いつき草原へ降り立った。
「あらら、これはまた、やっかいな相手ね。しかもやる気満々だし」
口に手をあて大変そうに言ってるが、そうは見えなくビタルがお前もやるのかと問うと「カヤだけで、充分だし、見学させてもらうわね」と返した。
モモカは警備隊の者達に、早くこの場から離れるように促した。
「モモカ~ 巻き添え気を付けてねぇ~ オゴッ」
言うと同時にビタルが瞬時にカヤの目の前に移動して、神速の手刀を頭部目掛けて打ち下ろす。
それを十字受けで受け止めると、カヤの足元が衝撃波で円形状に窪み、爆発したように土くれ小石が弾け降り注ぐ。
痛いな―と叫び、即座にカヤのあの技が炸裂した。大地を踏み抜く地響きと、爆裂音が鳴り響く。受けた右腕を曲げ折り、神速の体当たりを胸板の外骨格にぶち込む。
あの生前に使ってた、肘だし体当たり
因みにカヤは技の名は覚えてなく、りりんちゅうちゅう?とか言ってモモカに教えてくれた老師に謝れと、おはなしという説教を喰らった。
今は
辺りを土煙が覆い、その中にビタルの姿があった。
ビタルは仁王立ちのまま右足を後ろに引き、踏ん張ったまま大地を削り百メートル程、後ろに吹き飛ばされていたのだ。
「ほおぉ、我をここまで吹き飛ばすか」と何故か嬉しそうに言葉を吐く。
「へぇ~ あれを絶えるんだ。凄いな~ 全力の、迅雷鼓だったのに」
カヤも嬉しそうに返す。
ヒュンと土煙を上げビタルに近づくと、右足刀からの右下段蹴りそのまま裏後ろ廻し蹴りを放つカヤ、それを全て受けビダルの左中段蹴りがカヤの腹部にめり込み蹴り飛ばす。
「うげっ!」
激しい音を立てながら地面を、バウンドし高速で転げ回り草原にある、大岩にぶつかり、破裂音を立て大岩を砕き、地面に上半身がめり込んだ。
砕けた岩の破片が、上半身を地面にめり込ませたカヤのお尻に、パラパラと落ち尻尾だけがゆらりゆらりと、動いていた。
おもむろに尻尾がピーンと立つと「よっ」と掛け声を上げ、上半身を地面から引き抜き、土が耳に~と言いながら猫耳をパタパタと動かしている所に、ビタルが高速接近しパンチの、豪速連打を見舞うが。
「土が~、土が~」と言いながらヒョイヒョイとパンチを避け、左ストレートを受け流し手首を掴むと、小手返しで地面に叩きつけ、顔面を踏み抜いた。
顔面を踏み抜かれたまま、ビタルの右蹴りが腹部に放たれたがその右脚を掴み、一本背負いのように投げ、再度地面に叩きつける。
大地は大きく抉れ陥没し、勢いでバウンドした所を左廻し蹴りで、ビダルの腹部を蹴り抜いた。
空中を体を九の字に折り吹き飛ぶビタルを上回る速度で疾駆し、追い越し構えると、両掌を真横に広げた双掌を、飛んできたビダルの背中に叩き込む。
〝闇夜影千流 柔術 双掌打・烈破掌〟
ズバンと重い轟音がして、衝撃波がビタルを一直線に通り抜けていき辺りの草花を散り上げ、ズルズルとビタルが地面に崩れ落ちる。
死んだかなと覗き込むと――刹那、仰向けに倒れたビタルの右腕が、空間を歪ませたように揺らぎ、ブーンと羽虫のような音を立てかと思うと、カヤを不可視の斬撃が襲う。
「にゃ!」気づき即座に後ろに飛びのいたが、左腕を斬り飛ばされ斬り口から鮮血のように、魔素粒子が吹き出る。
「よくぞ、躱した猫の亜人よ!」
ビタルは立ち上がりヒュンと軽く右腕を振り抜くと、斬撃が大地を斬り裂きながら真っすぐにカヤに向かう。
しかし、カヤがニヤッと笑うと――
キュンと空間斬撃が手前で曲がり、そのまま進んでいった。
「ぬっ!? 貴様も空間操作を使うか!」
「へへ~ そうなんだよねぇ」
言いながら斬り口に当てた右手を離すと、斬られた左腕が瞬時に再生する。
「次元刀かな? じゃあ、あたしも
パシっと下げ緒を叩き霊刀・千鳥を出した。
モモカは防御呪符結界を展開して、二人の戦いを見ており『思念伝達』と『思考加速』三千倍でカヤに話しかける。
『どう、いける?』
『うん、大丈夫だよ~ でもめっちゃ硬い外骨格だよねぇ。なんだろね、あの強固さは』
『あそこまで、成長? 進化? した
『今からお願いしたら、大人しくしてくれるかな?』
『むりでしょ。みてほら、殺す気満々よ、フフッ』
『だよね~ あれ使うかもだから、気を付けてねぇ』
『ええ、わかってるわよ、存分に暴れなさいな』
『ほ~い』
千鳥の鯉口を切り、スーッと腰を落とす。
「シッ」声を発し抜刀して逆袈裟の斬撃をビタルに飛ばす、それを右腕の次元刀で弾き返す。
弾かれた空間斬撃が、ビタルの右方向へ大きく弧の字に曲がり、地面を抉りながら走る。
「にゃろー これなら、どうだ!」
霞む残像を残す抜刀納刀を繰り返し、幾重もの空間斬撃を飛ばし、間合いを詰めるが、ビタルは左腕にも次元刀を発生させ、全ての空間斬撃を弾いた。
「うげ~ 二刀流は反則だ~」と文句を言いながら、間合いを詰めたカヤは外骨格に斬りつけるが、けたたましい金属同士が擦れる音を立て、刃が弾かれる。
尻尾の毛がボワッと逆立ち、バッと後ろに飛びのくと同時に、今までいた位置に次元刀の不可視斬撃が走る。
そのまま
「うにゃ~ あんた硬すぎ、なにもんだーー!」
『
『いや! やめて!』
「ふん。存外に貴様の剣も硬いな、我の外骨格を斬り付けても、刃こぼれ一つしないとわな」
「ふふ~ん いいだろう~ やらないよ?」
「笑止!」
ビダルの怒涛の剣撃が始まる。両腕をあたかも二つの剣のように振りながら己の予測演算をフル回転させ、カヤを追い詰める……が。
おっ、おわ、あやっ、と変な声を上げビタルの猛攻を捌く袈裟斬り、逆袈裟斬り、突きの連続、横斬りの返し上段斬りからの斬り上げ全ての太刀筋を見切り捌くカヤに、
そしてビタルは奥の手を出してくる。
足にも次元刀を発生させ死角からの、空間斬撃を放つがカヤは超速反応でそれを
すかさずお返しとばかりに、空間斬撃を飛ばす。
だが、同じ空間斬撃で相殺されてしまう。
「これ、だめじゃん」
ダルそうに吐き捨てるカヤ。
「四刀流とか反則! あんた反則負け!」
キャイキャイと文句を垂れるカヤに、呆れ声でモモカが言葉を投げる。
『いや、そんなのないし……馬鹿カヤ、ほんと投げるわよ?』
『いらない! モモカ交代して? いいよね?』
『いいけど、あのお酒全部頂戴ね。いいわよね?』
『だめ! わかった! まじめにやるよ!』
『もう、いい加減あれ使いなさいな』
『あい』
「ふむ。貴様、まだ手の内を隠しておるだろう? どこかしら余裕を感じさせるその動き。我ら
「いいけど……気を抜くと一瞬で終わるよ? いくよ。フフ」
カヤはニヤリ笑い言い、スキルを発動させた。
《
「うん。いけ、〝狂乱舞〟」
《全能力ブースト開始 狂乱舞スタート リミット残り百八十秒》
スキル名を静かに囁いた瞬間、周りの空間と大気が凪いだ――。
瞬間、カヤを中心に爆発したように淡いオレンジ色にも似た、魔素のエネルギ―粒子が渦を巻き、踊り、散り、狂い舞う。
「うりゃ」魔素粒子をまき散らし、その場から掻き消えるように、ビタルの背後に現れ斬撃を二つ見舞う。
ギャギャンと刀身から魔素が火花のように飛び散り、ガードした腕の外骨格に傷をつける。
「ぬう! 残像か? いや、超超高速の移動か? こっちか?」
右横に現れたカヤに斬り付けたが、既に魔素粒子だけ残し左に現れ、更に逆袈裟の二連を見舞う。
「なんだ、これは! 気配が四方から迫る……」
キュキュンと音を立てながら、カヤの姿が凄まじい速度で動き、次第に揺れる陽炎のように揺れながら、魔素粒子を巻き散らし迫る。
「うにゃにゃにゃ~ うりゃ~」
薄い笑いを浮かべ、次々と空間斬撃を放ち、全ての斬撃に己の気配を乗せる。
この、薄い笑いを浮かべ戦う姿からいつしか、〝狂乱猫〟と呼ばれるようになり、ただこの技を使うと、気分が高揚するだけなんだよ!少しくらい顔が緩んでも、いいじゃない! と抗議したが、哀しいかな定着した字名であった。
因みにモモカは戦を乱す者、〝戦乱猫〟と呼ばれていた。
これは狂乱猫と呼ばれ
「ぬう、う……ありえん……このような不可思議な技は、見たことも……聞いた事もないぞ!」
目の前に来たカヤを斬り付けると、同時に左横から斬り付けられ、後ろのカヤを右廻し次元刀で斬り付けると同時に、前から斬り付けられビタルは分身でもない、残像でもないこの全ての動きが偽られ隠される、カヤの動きに翻弄され声を失う。
時折、流れ空間斬撃がモモカの所に行き、防御結界呪符に弾かれ別方向に流れて行くが、たまに防御結界呪符を、消し飛ばす威力の空間斬撃が来る。
「ほんと、あの子の近くは危険よねぇ。でもあの子の空間斬撃を
自動展開してる防御結界呪符がクルクルとモモカの周りを囲み回り、パンと弾け呪符が霧散すると、すぐ新しい防御結界呪符が補充されていた。
モモカは両膝を立てて座り、膝の上に両腕を置きその上に顎を乗せて、尻尾を上にゆらゆらさせながら、戦いを見守っていた。
《リミット残り 三十三秒です》
「あいよ~」
そして、更に動きを加速させていき、自分の気を分散拡散させ自身を隠しビタルに斬り付けていく。
「我を見くびるな!」
怒号を上げ、ビタルも己の動きを加速させていき、迫りくるカヤの気配に、追いつき斬り伏せていくビタル。
バッ、バッ、と斬り裂かれたカヤの気配を纏った魔素粒子が、霧散していく
「八方向から来るか!」
キューーキュン、甲高い音立て魔素の粒子を纏った、カヤがビダルに迫りくる。
「オオオォォーーーー!!」腕、足の次元刀の連撃で、斬撃の結界を作りカヤを迎え撃ち次々にカヤの気配を纏った、粒子のカヤを斬り消し去る。
「上か!」
カヤが刀身を突き出した格好で、上から超高速で飛来してくる。
コォーーッとビタルの両腕が唸りを上げ、空間が歪ながら大気が渦を巻く。
「
限界まで高めた威力の次元連突を、上に解放し放つ。
上から迫るカヤごと、次元を裂き刺し貫くビダルの技が決まる。
カヤの身体は散り舞うように魔素粒子とかし、千鳥だけがくるくると回りながら地面に突き刺さりビーンと音を立て、小刻みに震えていた。
ビタルは確実に、刺し貫いた感触に勝利を確信した……。
「は・ず・れ。 にゃ~ふ」
唐突に表れたカヤに完全に対処が遅れ、懐への接近を許してしまった。
《リミットオーバー 狂乱舞 終了します》パァッと纏った魔素粒子が霧散した。
「あれも偽りか!? 刀身に気配を乗せたのか、デタラメな!」
即座に右次元刀を振り下ろそうとしたが、カヤの左掌底が既に入れられており、緩い振動波が外骨格を駆け巡っていく、奇妙な感覚に腕を止めた。
「な……なにを……し、た?」
ビダルの問いにカヤは、ニコニコと静かにゆるく答える。
「これはねぇ~ あんたの外骨格に、振動波を送り込んだんだよ~ 今はゆっくりと外骨格を巡ってるんだけどもねぇ」
ビダルは外骨格を巡る振動波が、自身をここに縛り動けなくしてるのに気づくが、既にカヤの技が決められているのを悟り、ふ~っと静かに息を吐き覚悟を決めた。
「でね、ここにもう一つ振動波を入れて、ぶつけて反響させるとあんたの外骨格の中身だけに、ダメージを与えられるんだよ」
そこまで言うと急に目が鋭くなり、顔付も暗殺者だった頃の顔を覗かせ、もう一つの要因を告げる。
「それと、もう一つ。あんたの予測演算をほんの少し、ずらしてたんだよ」
「な、ん、だと……」
「じゃあね」
揺れ動く覇気を漏らしながら、右掌底を構え――
右掌底を左掌底にバシッと重ね打ち、技名を告げる。
「闇夜影千流 柔術・絶技〝
反響増幅された振動波が、体内を暴れ回り内臓、体組織を破壊していく。
立ったまま手足が暴れ踊り、外骨格の継ぎ目、関節からシェイクされた体液が吹き出し、全身に豪雨のように降りそそぐ――「見事だ……カ、ヤ」と残しそのままドウッとうつ伏せに倒れ、ぴくぴくと身体全体を震わせていた。
その様を静かに、見届けるカヤ。
「ごめんね……手加減できなかった。ビダル、あんたは強かったよ。願わくば輪廻の輪に入り、生まれ変われるように」
モモカにも聞こえないように手を合わせたまま、小さく、それでいて優しく、手向けの言葉をビタルの亡骸に捧げる……。
そこへ、モモカが歩いて側迄くると、同じく手を合わせ何か囁いていた。
照れたようにおもむろに、しゃがんでつんつんと指で突ついて「死んだかな? こいつ」と言うカヤに、モモカが何してんの? 突っ込みを入れるまでが戦いのカヤ。
しばらく、たわいもないやり取りをした後、モモカが訪ねる。
「えげつない殺し方するわねぇ。それ、いつ思いついたの?」
「ん? え~とね、あいつを斬った時刀身が振動しててね、手がプルプル~ってしたんだよ。それで何となく、この振動波をあいつの内側に送り込んだらどうなるかなぁって、おもったんだよねぇ」
手をプルプルさせながら答え、モモカもそれに返す。
「あぁ、鎧通し打ち技の応用ね」
「そうそう、それそれ~」
「半狂鈴鳴りって闇夜影千流、柔術の打ち技絶技だったわよね? よく思い出したわねぇ」
「へへ~ さっき思い出したんだけどね」
「はぁ~ 全くあんたの戦闘センスは、規格外だわね……」
「でも、モモカは二百年位前、
「だって、わたしの尻尾を斬ったのよ! 許せる?」
「すぐ再生するから、いいじゃん、そんなの」
「…………」
「ねぇ?」
「………」
「ねぇ? 無言はやめてね。まじ怖いから」
「……」
「ごめん。あたしのがえげつないよね?」
流石にめちゃやばい感じのオーラが、モワモワとモモカから出てるのに焦り捲ってくる。
「……」
「頼むから、無言はやめて! まじ、あたしが悪かった! そうだ、これトク爺からくすねてきた、〝にごり酒〟あげるから、ね? これおいしいよ~」
「そう、ありがとね~ 全部飲んでいいのよね? フフフッ」
「え? 少しは残して! これくすねるの大変だったんだよーー」
クスクス笑いながら酒蔵君を奪うと、まぁ! おいしいと言いながらクピクピと飲み干していく。
モモカの手から酒蔵君を、奪い返そうと手を伸ばすがひらりひらりと躱されていくが、触ることさえも出来ずに涙目になりながら「やめてー! 残してよねー!」叫びモモカを追いかけるカヤであった。
上空千メートルに一枚の、呪符が規則的にクルクルと回っていた。
「ふむ、辺りに怪しい魔力反応、生命反応なしと」
呪符に自分の魔力感知を付与増幅して、半径十キロ四方を探索しており安心したように囁くと、左手をサッと振り呪符を消す。
「ん? どしたの?」
「なんでもないわよ、フフ。帰ろうか」
「だねぇ~ 帰ってお風呂~」
空間移動で、モモカが消えると「あ! いい加減、酒蔵君を返せー」と叫びカヤも空間移動でモモカを追う。
ビタルの身体から、淡く小さい魂の光が天に昇っていき、虚空に飲まれ消える。
後に残された亡骸は、緩やかに魔素に還元されていき、激しい戦いの跡を、洗い流すかのように穏やかな風が草原を吹き流れていく。
ここまで読んで頂き、皆様に感謝です!
次回もよろしくお願いします!