お待たせしました! 十三話です!
里に帰って来た、モモカ達は鈴音の所に報告をしに行く。
途中、物凄い勢いで嫌がるカヤに、逃げたら〝おはなし〟よと言い無理やり連れていくモモカに、文句をギャ―ギャ―言いながら連行されるカヤ。
「ごめん、ぽんぽん痛いから帰る」
「わたし達に、内臓などないから」
「げほ、げほっ、風邪ひいたかも、頭いたい」
「病気などならないし、精神生命体だもの」
「あ、ちょっと、つき――」
「――そんなものは、もう、ない!」
「くそ……暴れるぞ」
「やってみなさいよ。わかってるわよね?」
「あい!」
そんな、バカなやり取りをしてる間に、鈴音の部屋に着く。
「おおお、二人とも無事帰ってきたか!」
二人が部屋に入ってくるなり、ガバッと二人を抱きしめて身体は無事か?
「そうか、そうか、討伐したか、流石お前達じゃのう。ご苦労であった!」
「いえ、成長したばかりみたいで、まだ、力の制御が甘かったので」
「いやいや、それでもあの者達は、かなりやっかいだからのう。他の者では成長した、
鈴音は、二人を労うとゆっくりやすむのじゃぞと言い、カヤにも待たせて悪かったな、はよあそこに行きたいのじゃろ? と、言い。
もう良いぞと退室を許可する。
それを聞いたカヤは「それじゃ」と、即座に空間移動で去っていった。
「すみません。鈴音様。いつもいつもあのバカが」
「よいよい、カヤはこう言う事は苦手だしな、クカカカカ」
鈴音は、モモカの謝罪を笑って受け流す。
空間移動でトク爺の家に来たカヤは、家に入ると居ないのを見て酒工房かと言い、裏の酒工房へ向かう。
「トク爺いる~?」
「カヤか。もう〝どぶろく〟は無いぞ」
「え? ちっ……」
「今舌打ちしたな?」
「ん。気のせい」
「ばかもん! しっかり聞こえておるわ!」
「トク爺。もう年だ、勝手猫耳はだめだよ?」
少し小太りの体形で作務衣に似た着物を来た、初老の男が尻尾をバッサバッサさせ大きい声を上げる。
「ぬかせ! 小娘が! わしらに寿命などあるか!」
「言っただけだし、気にするな、トク爺」
「ほんと、口の減らない小娘だな、カヤは、ハハハハ」
「トク爺もな、フヒヒヒ」
口喧嘩にも似た、やり取りをしながら、どぶろくを造ってる大樽に近づき中を覗き込むと、う~ん後十日位? と言うとすかさず、それはわしの分だやらんぞ! と言われて「うん、わかった」と返し小声で返し。
できた頃に貰いに来るねと、笑みを浮かべる。
トク爺はもう三千年程生きてる猫神の眷属で、暇潰しに米もどきという作物で酒を造っている。
カヤは、転生して三年位経ったある日偶然トク爺の酒工房に迷い込み。御子様とは呼ばず、こら―! なに勝手に工房に入ってるか―と怒られ何処の小娘だ! と怒鳴るトク爺にあたしはカヤ! ここでなに造ってるの?ねぇ? と質問攻めにし物怖じしないカヤに、ここは酒工房で暇潰しで造ってるんじゃよと教えてから、何故かカヤがここに入り浸るようになっていた。
「しかし、カヤよ。お前は何百年経っても変わらんな。ハハハ」
「ん? あたしはあたしだ、変わり様ないしねぇ」
「そんなんだから、モモカに事ある毎に、説教喰らうんだぞ」
「いいんだよ、モモカはあれで。クヒヒ」
嬉しそうに小笑いしながら返す。
「なにがいいの?」
「げっ……」
尻尾の毛がボワボワッと逆立ち、耳猫を後ろに伏せ気味にして声のした方に首を向ける。
「モ、モモカきたの? め、め、め、珍しいね?」
少し引きつった声で、声をかける。
「トク爺、これ、酒のおつまみにでも、どうぞ」
「おお! いつも悪いな、モモカ」
「い~え~ カヤがいつもお世話になってますもの。フフフ」
「え?……」
モモカが自家製の猪もどき燻製肉を包んだ、竹の皮に似た包みをトク爺に渡しながら、カヤの隣に腰を下ろす。
「いつから、きてたの?」
「あなたが、お酒の強奪を始めた頃からかしら? フフッ」
「強奪ちがうし! ちゃんと譲って貰ってるんだよ?」
「カヤよ、あれは譲るというより、半ば強奪に近いぞ。お前は持って行けと言うと、根こそぎ持っていきよるからな。ウハハハハ」
二人にやり込められ猫耳を伏せて、下を向いてぶつぶつと言い始める。
「強奪違う、貰ってるんだもん」
そう言いながら指で地面をゴリゴリ掘っていると、地面を掘るな! 埋めんかばかもん!とトク爺に怒られる。
「まあ、わし一人では飲み切れんから、それはそれで助かっておるがのう」
顎をかきかき言うと、カヤが「そうだよね、助けてるんだよね! トク爺!」とニコニコして言うのを調子にのるなと、モモカがパコンと軽くゲンコツを入れた。
「その酒蔵君も、里に伝わる古くからある物だがいつの間にか、すっかり、お前の物になってしまったの。ウハハハハ」
「もう、あたしのだよ?」
「よいわ、もうそれは、カヤの物だ」
「へへへ~」
二へらと笑いながら、酒蔵君を撫でるカヤ。
一つの仕込み大樽をトク爺は、ゴンゴンと叩き下にある栓を緩め出てきた、白い少しドロッとした液体を、手のひらに落とし舐める……。
頃合いかと呟くと、カヤに酒蔵君を貸せと言い、酒蔵君をコンコンコンと三つ叩き、三番目でいいな? と大樽の下にある、栓を開けると〝どぶろく〟を酒蔵君に注いでいく。
「トク爺……。もう無いって言ってたよね?」
「言ったかの?」
「その猫耳
「カヤ! 失礼なこと言うな」
「うげっ」
カヤが文句を言うと同時に、モモカの説教ゲンコツがキュンと音を立て頭に落ちた。
トク爺は、どぶろくを注ぎながらわしら眷属は、鈴音様に生み出されたんじゃが、お前達は何故か前世の記憶を持った転生者で、里に祭られてる小さい
「ですよねぇ。あそこで目を覚ましたら凄い猫亜人だらけで、びっくりしましたもの」
モモカは口に手を当て、クスクスと笑い答える。
「そうじゃの、わしらは精霊獣だからのう、ハハハハ」
「でも、精霊獣というより精霊猫亜人ですよね、フフフ」
「たしかにな、ウハハハハ」
「普通に化け猫で、いいじゃん」
「「あ゛?」」
「いや。どうぞ、続けて、続けて」
カヤの横入りに、モモカとトク爺が怒ったように声を上げ、やばいとばかりにそっぽを向き、尻尾をパタパタさせて素知らぬ顔をするカヤ。
「お前らも、もう五百年以上経ったか?長いようであっという間の五百年だのう。最初は酒を飲もうとはせなんだが、いつからか飲むようになって、今は大酒飲みとはのう」
トク爺は優しく目を細めカヤを見て、モモカにも同じ眼差しを向ける。
「そうですね……」
モモカは、少し哀しそうに微笑みながら言葉を返し、カヤは尻尾を垂れ猫耳だけピコピコと動かしていた。
「まぁ、お前達が生前にどんな人生を歩んだかは聞かぬが、この永遠に続く時の中で少しでも、その思いが癒されるといいと、わしは思うとるよ」
注ぎ終わった大樽の栓を、キュっと締めながら穏やかに言葉をかける。
ほれと酒蔵君をカヤに投げ渡すと、トク爺は枡に注いだどぶろくをうまそうに飲み干した。
しばらく、談笑した後モモカ達は工房を後にする。
家に帰る途中、ドウザンとアタラに会い明日は千年祭だ、騒ぎは起こすなよ?特にカヤと釘を刺す言葉に、カヤは「知らん! あんたらに指図される言われはないわ」と右手をヒラヒラさせて、さっさっと向こう行けとカヤが吐き捨てる。
「ふん! 我ら守護隊には属さず、遊撃隊など二人で勝手に作りおって、鈴音様に少しばかり優遇されてるからって、自惚れるなよ、カヤ」
「ん~ ならあたしとまた、勝負する? 今度は再生一歩手前まで、ボコボコにしてやるよ」
「いつまでも大きな顔をさせぬわ! この知れ者が!」
カヤとドウザンはギギッと睨み合い今にも、戦いを始めそうだった。
往来の真ん中で言い合いを始めた、四人を見る里の者達はまたかとか、ほんとあいつら、仲悪いなとか口々に言いながら通り過ぎていく。
「ドウザン、あなた達がわたし達に、良い感情を持ってないのは別にいいわ。でもね、いちいち突っかかるのは、やめてくれないかしらね?」
「モモカ、あなたも、そのすました顔は嫌味にしかならないわよ」
「そう、フフフ、一度魂まで燃えてみる?」
モモカの言葉にアタラが嫌味たらしく返すと、モモカは薄羽織の
一色即発。
そこへ目が細めで髪は黒色のショートカットにした、綺麗な顔付なのに表情の読めない女性亜人猫で筆頭お世話係のジラが来た。
「何をしておる。往来の真ん中で騒動を起こすなと、いつも言っているだろう」
感情のない言葉で四人を叱咤し、早く去れとその場を収めた。
鈴音様・筆頭お世話係ジラは戦闘はしないが、鈴音の次に里を取り仕切る権力を持っていた。
カヤいわく、表情のないからくり人形みたいな、作られた美人だと言い、ジラのことも、あまり好きではなかった。
家に帰りついても、カヤがブチブチとドウザン達の文句を吐いていた。
「まじ、なんだろね、あいつら! ぶった斬ってやろうか、ほんとに!」
「まぁ、ほっときなさいな、相手にしても、しょうがないしね」
「でも、もう何百年もこんなんだよ! 馬鹿かあいつら!」
プリプリ怒るカヤを
「ねぇ、カヤ。千年祭って詳しく知ってる?」
「ん? それ、あたしに聞く?」
「そうよね、悪かったわ」
「……なんかそれ、ちょっと不愉快?」
「そう? じゃあ、説明してくれる?」
「むり! 教えてどうぞ」
あたしも、詳しく知らないんだけど、と話し始める。
「えとね、千年に一度、里の一番強い精鋭から百人を選んで、進化の儀式を執り行うんだって」
「へ~ それ、どうやって進化させるんだろう?」
「さぁ、それはわたしが調べた範囲ではわからなかったわね」
ここまで言うと、モモカは腕を組み囲炉裏の前に腰を下ろし、カヤも真向かいに胡坐を組んで座るが、モモカにそれやめなさいと注意されるのも聞かず、さっそく酒蔵君を取り出し、クピクピとさっき貰ったどぶろくを飲み始める。
「里の者達に聞いても、進化はどうやるのか知らないって言うのよねぇ。しかも、今年で一万年目と言うのにね」
「ほぇ~ おかしな話だよねぇ、それ」
「そうなのよねぇ……一万年もやってて進化させる方法を誰も知らないなんてね」
「鈴音様には聞いたの?」
「聞いたけども、千年祭当日まで楽しみにしておれと、教えてくれなかったわ」
「ふ~ん なんにしろお祭りだから、別に気にしなくてもいいみたいな?」
「そうねぇ、まぁ人だった頃とは違うし、何ができるって、みたいなものだものね」
「一万年前からとか、途方もないね。くくく」
カヤは人だった頃とは違う時の経つ感じ方に、可笑しく笑った。
「そうね、まったくだわ。フフフフ」
モモカもつられて笑いだす。
カヤがモモカに酒蔵君を投げ渡し、モモカが受け取ると、貰ったばかりのどぶろくを飲んでいく。
ほのかな酸味の甘さと程よい喉越しに、
その晩は、二人で心行くまで〝どぶろく〟を楽しんだ。
そして――
夜が明け、十回目の千年祭当日の朝が来た。
「鈴音様、今日は記念すべき日になるでしょう。我ら猫神族にとって……」
「うむ、ジラよ、節目の一万年目になるの。クカカカカカ」
鈴音の自室で、二人はこの日を待ちわびたかのように話す。
「アタラ、とうとうこの日が来た……もうやつの思い通りにはさせぬぞ」
「ああ、ドウザン、一万年かけてこの日を待ったんだ。あたしらの悲願の為に」
里の大広場に造られた祭壇の前で二人が話していた。
「カヤとモモカを遠ざける手筈は済んだか?」
「ええ、抜かりなく。まもなく猪神族の兵が、こちらに向かってくるはず」
「そうか。ぬかりなくな」
「わかってるわ。ドウザン」
二人の策略が動き出し、千年祭の朝が激しく動き出す。
昼前にそろそろ、大広場に行こうと二人揃って向かっているとそこへ、御子様! 猪神族の兵がこちらに向かっておりますと警護兵の一人が慌ただしく走って、二人に伝える。
モモカとカヤはわかったと言うと、猪神族のいる方へ疾駆して行く、折しも大広場で千年祭が始まった時間でもあった。
ちょうど三千人は入れる大広場に里の住人全員が集まっていた。
「里の者達よ! 今日はめでたい千年祭、十回目の日じゃ! 一万年目の節目を存分に祝うがよいぞ!」
鈴音の言葉に、三千もの歓声が里中に響き、祭壇の上から満足そうに全員を見渡し満足そうに頷く鈴音。
「さあ! この記念すべき日に選ばれた精鋭百人達よ。これへ!」
猫神族・眷属、精鋭百人が壇上に次々と上がって行く。
「お前達、精鋭百人に我が進化の儀式を与えようぞ」
そう鈴音が声高らかに、唄うように言葉を奏でると、首に巻いた赤い飾り紐に付いた鈴が、り~ん、り~んと音を発し始めた。
すると、大広場にいる、眷属達の体が明滅を始め、誰もが恍惚の表情を浮かべ体をゆらゆらと揺らし、ザン、ザン、と足を踏み鳴らし始めた。
そして、精鋭百人の身体も明滅を始め、身体が分解されていく。
「はじまったか……」
「今ね、やるなら」
二人は気配を消し、祭壇にいる鈴音とジラの、背後に忍び寄る。
猪神族と対峙したモモカ達は、大人しく兵を引いたら手を出さないと言い、隊長に兵を引くよう告げる。
「ねぇ、やるならやるけども、そちらに甚大な被害が出るわよ」
モモカは呪符を次々と展開しながら、警告をする。
「ぬかせ! 駄め猫が! そちらから、喧嘩を売っておいてそれか!」
「おい、いの公。
カヤが、千鳥の鯉口を切りながら、モモカの前に出る。
「喧嘩? また異なことを」
「とぼけるな! 先日お前が俺の部下を半殺しにしたのは、わかってるんだぞ!」
「モモカ…… あたしの知らないとこで、なんて楽し、じゃなく酷いことを……」
「ちょっと黙って、カヤ」
真剣な顔付のモモカに、何かを感じすかさず黙る。
「ねぇ、隊長さん、それ詳しく教えてくれないかしら」
何か事の成り行きが怪しい雰囲気に隊長が、半殺しにされた部下の事をモモカに説明した。槍で半殺しにされ、モモカと名乗ったと言う。
「ねぇ、槍使いってあの二人じゃないの?」
「なんで、そんな回りくどいことを……」
モモカはぐるぐると考えを巡らせ、おもむろにカヤに帰るわよと空間移動で 里に帰ろうとすると、里に空間は繋がらず里を覆う結界で弾かれ、「やられた!」と声を出す。
「隊長さん、今度あいてにするから、またね」とモモカはジャンプすると、空を獣走りで疾駆し瞬く間に、消えていった。
ポカ~ンとそれを見送る、カヤと猪神族の兵達と隊長……。
「えと……とりあえず、また今度ね」
気まずそうに言い、そのまま疾駆し音速突破の衝撃音だけを残し、駆け去っていく。
「隊長……どうします?」
副官が尋ねると、隊長も気まずそうに答える。
「ああ、まぁ、今日は帰るか……」
口々に、今日は散歩にきたのか? とか、あいつ等相手にしなくてラッキ―と怠そうに言いながら、猪神族の精鋭三十人はぞろぞろと、自領地に向け帰って行った。
ここまで読んで頂き、感謝です!