転生したらネコムスメなんだけどの件   作:にゃんころ缶

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 15話目お待たせしました!

 いやまさか、もう15話とは自分で書いててびっくりしてます。 
 
 拙い文章ではありますが、引き続き読んで頂けると幸いです。





十五話 また、こぼれ落ちていく……

 

 大広場に集まった眷属達、約三千人はただ空を仰ぎ立ち尽くすだけでいつの間にか、眷属達の怪しい踊りは止まっており、その光景は置物を並べて置いているみたいであった。

 

 

 モモカの側迄来たジラは、右腕に刺したカヤをモモカの前に投げ捨てそして、二人の首根っこを掴みグワッと高く持ち上げた。

 

「あ、あんた、一体何者、なの?」

「それに、お答えする意味はありませんよ。あなた達は、今日死ぬのですから」

「あら、そう。冥途の土産に教えるとかあるじゃない、教えてくれてもいいんじゃない?フフフ」

 

 この、究極能力(アルティメットスキル)とユニークスキルの圧倒的な違いに、ここまで差があるのかと、その差に内心驚愕し、それでも何とか打開策を必死に模索していた。

 

「あなた達は、冥途ではなく、無の存在になるのです」

「ほんと、その感情のなさは、からくりのお人形なのかしら?」

「私は命ある生命体です。くだらないですね」

「ほんと生きてる感じ、しないわね。あんたは」 

 

 モモカは何とか情報集めようと、煽ってはみたが全く感情を出さないその姿に苛立つ。

 

 カヤを見るが完全に意識を失って、プラーンと吊られた干物みたいになっていた。

 

 ドウザンも意識の混濁により、動けずにいて打つ手なしの状態にモモカは、また……死ぬのかな、カヤと一緒ならいいか……と、初めて弱音を心の中で吐いた。

 

 人だった頃の十七年、精霊獣になっての六百年近く。

 

(夢で見た人……リムル。あれは、ただの夢だった? いや、違うあれは、確かに夢とは何か違う感じがした、そうね……わたしは、カヤと一緒の時間を過ごしたいカヤを守りたい、弱音を吐くなんて(なま)ったものね。いいわ、足掻いて、足掻きまくろう)

 

 モモカは、右手人差し指と中指の間に、一枚の呪符を具現化させ自分の首根っこを、んでる右手首に呪符を飛ばす。

 

 

歪影紙(ひずみかげかみ)

 

 小さく呟くと、ジラの右手首に現れた呪符が、空間を捻じ曲げるように右手首を切断した。

 

 ジラの拘束から逃れたモモカは、胸を押さえたまま、すぐさま距離を取り、次の呪符を展開しようとすると、再生したジラの右手がモモカに向けられていた。

 

「諦めが悪いですね。いいでしょう、死になさい。極超魔力熱線砲(ハイパ―マジックブラスタ―)

 

 高圧縮された魔素(エネルギー)の、束が一つとなりモモカに放たれる。

 

「ちぃ! 鏡華千月(きょうかせんげつ)

 

 両(てのひら)を重ね前に突き出すと、幾重もの呪符が前に等間隔で真っすぐに並ぶ。

 

 高圧縮された、魔力熱線砲の光が、展開された呪符障壁にぶつかり、魔素の粒子が飛沫のように拡散飛び散りながらけたたましい音を上げ、次々と呪符障壁を砕き割りながら突き進む。

 

「くぅああああああああああ…… きゃう」

 

 次々と呪符障壁を、砕き割られ最後の呪符障壁で耐えてたが、その凄まじい熱線砲のエネルギーに耐えきれず吹き飛ばされる。

 

 モモカの上半身を吹き飛ばし、そのまま後ろの建物、家屋を灰燼と化し熱線砲のエネルギーは爆発拡散した。

 

 立ち尽くす下半身から魔素の光が集まり、上半身を形成していく。

 

「存外にしぶといですね」

 

 そう言うと、また魔素を右手に充填し始めたが、そこへ鈴音の声がした。

 

『ジラ、よい。捨て置け。我の儀式は完了した!』

『! では、いよいよですね』

『うむ。そのまえに、こやつの魂を喰らうとするかのう』

 

 ピシっと空間に歪が起き裂け、そこから鈴音がずるりと姿を現した。

 

「な、な、に……心核まで、砕いたはずだ……」

 

 信じられないと、言ったようにドウザンは愕然とする。 

 

「死にぞこないが、まだ生きておったか。やれやれだのう」

 

 ドウザンにチラッと目をやり、ジラに首根っこ掴まれ持ち上げられたカヤの前に立ち、頬を撫で首筋に唇を当て、ツーっと下で舐め上げる。

 

「カヤに触るな!」

 

 上半身再生を済ましたモモカが、声を張り上げる。

 

「ふむ、もう魔素も残っておるまい。そこで、大人しく見ておるがよい」

 

 震える両脚を引きずりながら、歩を進めるモモカに冷たく言い放つ。

 

「さて」

 

 そう言うと、カヤの胸に自身の右腕を深く刺しながら肘まで埋める。

 

 意識の無いカヤの身体がビクビクッと波打ち、ここかのうと言いながら埋めた右腕をぐりぐりと、動かしていく。

 

「ほうぅ、そうかそうか。お前達は二人で、魂が繋がっておったのか!これは、面白い! 中々に興味深いのう」

 

 鈴音は楽しそうに、右腕を更にぐりぐりと動かす。

 

『くぅぅ……見つかった……ねぇ! あなた、カヤおきなさい! おきろ! カヤ!』

 

 胸の中を鷲掴みにされたような、感覚に耐え『思念伝達』で呼びかけるがやはり反応はなかった。

 

「見つけたぞ。これが、カヤの魂とスキルか! クカカカカカ」

 

 グリっと腕が大きく動き、何かを掴んだかの如く動きを止め、ジラは無表情でその光景を見ていた。

 

 モモカも胸が内側から引っ張られる、感覚にたまらず膝を付き「ああああぁ、カ、ヤ、あ、ぐぅぅ」呻き声を上げ、そのまま崩れ落ちる。

 

 

「さぁ、このまま魂を引きずり出して、喰ろうてやろうぞ」

 

 ズズズズと腕を引き抜き、手首まで出てきた所でガッと何かに引っ掛かったように止まった。

 

「? なんじゃ? 腕が、我の腕が抜けぬ……。これは、なんぞ?」

 

 カヤの胸から細く光る光の紐がモモカの胸へと続いており、鈴音が光る紐に触ろうと左手を伸ばすと、バチッと音がして左手が弾かれカヤが顔をくりっと上げ鈴音が驚く。

 

「!! お前、意識が戻ったのか?」

 

 鈴音が驚き声を上げると、すかさずジラは首根っこを掴む左腕に更に力を籠め、右手でカヤの右腕を捻じり上げる。

 

「ダレ?……ワタシニ、サワルノハ、ダレ?……ハナセ、キタナイテデ、カヤニ、サワルナ」

「カヤ、お前は意識が……まだ戻っておらぬのか?」

「鈴音様! 危険です!」

 

 冷静なジラが声を上げ、警告を発した瞬間、不可視の空間斬撃がカヤを中心にして激しく渦を巻き、鈴音の右腕とジラの両腕を斬り刻んだ。

 

「まだ、そんな力を、残してましたか」

「ぬう、なんだこやつは……」

 

 二人は斬られた腕を再生しながらカヤを見ると、ひゅんと風を巻き一瞬でモモカの所まで移動していた。

 

「ダイジョウブ、デスカ? モモカ……ソノ……ママデ」

「あんた……遅いのよ、もう、カヤは無事なの?」

 

 意識はまだ沈んでるけど、心配ない大丈夫とカヤの中の何者かは告げる。

 モモカに手を当てると、失った魔素がいくらか回復していき、胸の不快感も消えていた。

 

「ウゴカナ……イデ、オトナシク……シテ……イテ」

「はぁ、色々聞きたいんだけど。まぁ、いいわ」

 

 どのみち、いくらか回復しても足手まといにしかならないと、言われた通りにする。

 

 チリッ、ヂヂヂ、ヂヂ。

 

「? なんじゃ、この不快な音は……」

「っつ……理解不能。何ですか、この不可解な音は」

 

 二人の頭の中に直接響く、不快なノイズに何が起きてるのか分からず、カヤを見据えたまま動かずにいた。

 

「キナサイ……チドリ」

 

 声を発すると、落ちていた千鳥がカタカタと、震えだし空中に浮かびカヤの手の中に飛び込んで来て、そのままヒュンと風を切り刀身を、鞘に納めた。

 

 チリッ、チチッ、ヂ、ヂ。

 

「カヤ、もう一度遊んであげましょう」

 

 ジラがカヤにそう言うと、超速移動で近づき仕掛けた。

 

 両腕に絶対刺突を発動させ、カヤを貫こうと鋭い左手刀突きを放つが、左腕を立て左手首をくりっと回して受け流し、カヤの右足が大地を踏み抜き、地響きを起こしたと同時に〝迅雷鼓〟が、ジラの胸に炸裂した。

 

 衝撃波がジラを貫き、撃音が鳴り響き空気を振動させ、二百メートル程吹き飛ばし、その勢いで破壊された瓦礫の山がジラに降り注ぎ埋もれた。

 

 ザリッ、ザリッ、カヤはジラが埋もれた所へ近づき、千鳥を抜く。

 

「ジャマ……ダネ」

 

 軽く刀身を振ると、凄まじい轟音が響き扇状に瓦礫を破砕する。

 

 そして、埋もれたジラの姿を露わにする。

 

「少し、強くなりましたか?」

 

 ジラは一言発し、攻撃を仕掛けるが全ての刺突が弾かれ受け流されていく。

 激しくぶつかる千鳥とジラの手刀が、火花の如く青白い魔素を散らす。

 

「センカイットウ……センライ」

 

 上段振り下ろしの一刀、生前の師、玄斎の技を放ち大地を大きく抉り斬撃がジラを襲う。

 

 紙一重で躱すが、斬撃の余波は凄まじく、ジラの左半身を抉る。

 

「? 何ですか、この威力は?」

 

 僅かに動揺し左半身を再生させ、前を向くと既にカヤは真横にいた。

 

「ケッカ……ラクヨウ」

 

 チンッ――鍔鳴りの音が一つ響く。

 

 ジラの両腕、両脚が魔素を吹き出しながら、宙に舞う。

 

「なんと」

 

 両脚を失い、糸の切れた人形のみたく地に崩れ落ちた。

 

「これは? 再生ができない?……」

 

 再生ができないことに、困惑しながらも己の魔力を全開にし再生を試みる。

 

 残る鈴音を探し、辺りを見回すと死角から鈴音の腕が迫るが、難なくその腕を掴み投げて地に叩きつけ千鳥を胸に突き立てた。

 

「げふっ! なんだと……」

 

 空間移動の死角からの、攻撃をあっさり躱されあまつさえ投げられ、刃を胸に突き立てられた事に驚愕していた。

 

「お主は……何者だぞえ?」

「タダノ……ネコアジン、デスヨ……ジカンガ……ナイノデ、オワリデス……シニナサイ」

 

 問いに答えると、刺した刀身をぐりっと回す。 

 

「ぐうぁぁぁ、無駄じゃよ……我は殺せぬ」

 

 そう言い残すと、ブワッと魔素の光が散乱し霧散した。

 

「ヤハリ、イマノ……ムリガ……マダ」

 

 カクカクとカヤの身体が揺れ、動きを止める。 

 

「なんなの……ジラを斬った、あの斬撃は……」

 

 モモカはジラとの戦いを見てて、最後にカヤが放った斬撃に、言い知れぬ思いを抱く。

 

(あれは、もしや、いえあの権能は封印されてたはず……あの影の子が解除した? まさか……でも、あの斬撃はわたしの感知以外の、何かだわ……あれはなに、間違いない……あれは……)

 

 カヤの封印されてた権能の力に、一抹の不安がモモカの頭の中を過る。

 

(もしかして、時間を斬った?……ジラの再生する時間を斬ったんだとしたら……再生に掛かる時間を斬り、動けなくした……おそらく、あの斬り口は時間が止まってる? いえ、部分的に時間を、斬るなんてできるの?)

 

 モモカは、自分の考え付く限りの推測を並べ、ジラを見ると僅かに再生しつつあるのを見て、あそこだけ時間が止まってた?

 

「ようやく、再生が始まりましたか。理解不能な力ですね」

 

 徐々に再生する、腕と脚を見ながら感情なく呟く。

 

「よい。ジラそのまま休んでおれ」

 

 そう言うと、たった今死んだ場所に光の渦が巻き起こり、鈴音の姿が具現化した。

 

『オトワ様。少しご相談が』

『――なんだえ?』

 

 実はと、オトワに自分の感じたカヤの力を話し、その力の推測も告げていく。

 

 わかったとジラに告げると、はい、仰せのままにと答えジラは『思念伝達』を切り、オトワはカヤに向き直った。

 

「久しく使っておらなんだ、野太刀・夜叉を使うかの~」

 

 再生復活した鈴音の、右手には刀身の長い太刀が握られていた。

 

「……タシカニ、タマシイゴト、クダイタノニ…… 『お、い、勝手に、身体つかうな、よ』キガ、ツキマシタネ、カヤ」

「さて、そろそろ、死んでくれぬかのう。クカカ」

 

 鈴音は長い刀身を右肩に担ぎ、ゆっくりとカヤの所へ歩いてゆく。

 

「いいから、身体返せ。『モウ、ア……ムリ……ハ、キキマ……ヨ』いいよ、動けばね」

 

 カクンと、一度不規則に動きカヤの意識が戻り、首をぐりぐりとゆっくり回すと、千鳥を抜き八相の構えを取る。

 

「ほお、意識が戻ったかえ?」

「あぁ。あんたを殺すまでは、死なないよ」

「抜かしよるわ、小娘が。クカカカ」

 

 笑いながら、カヤの頭目掛け真っすぐに太刀を振り降ろすが、 カヤは刃を頭上右横に上げ、その太刀を受けた瞬間に左手は添えたままで、右手をカクンと曲げ受け流した。

 

 野太刀の刃が千鳥の刀身を、甲高い音を立て滑って行き、カヤはそのまま、くるりと千鳥の刀身を返し、鈴音の右手首を狙い刃を振り下ろすが、鈴音は野太刀を右斜め上に返しカヤの刃を弾く。

 

「ほほお、やるではないか」

 

 カヤに生前も太刀を使ってたのかと問いかけながら、野太刀を振っていく。

 

「片手で野太刀振りますなんて、でたらめだよねぇ」

「ぬかせ、我達にそんな常識はないぞえ」

 

 答えながら野太刀を縦横無尽に振り、カヤはそれを全て受け流し鈴音に斬撃を見舞うが全て弾かれ、ぶつかり合う刃が魔素の火花を散らす。

 

 ヂヂ、ヂリッ、ヂ、ヂヂ。

 

「ふむ。どうにも、埒が明かぬな。それと、この不快な音は主かえ?」

 

 言い放つと、ザンと自分の前に刀身を地に刺し柄頭に両手を置き、その場に立ち問う。

 

「さあ? どうだろうね」

「ふん、白々しいのう。まぁ、よいか。どうせ、主には我は殺せぬ」

「へぇー。あんた神にでもなったのか?」

「ふむ、そのようなものかのう。クカカカ」

「一つ教えてやろうかえ。我は自身の生と死を操作できるでな。故に、いくら魂を砕かれようとも、即再生復活できるのだぞえ」

「で、別世界で何がしたいのさ?」 

 

 そうさのうと少し思案した後、つらつらと話し始める。

 

 一つはこの理不尽で狭い世界に、どうしようもなく怒りが募ったこと、それをよしとした先代に絶望し、この世界を出ると決めたのだわえと答えた。

 

「じゃあ、そのために眷属を喰らうんだ」

「うむ。眷属はわれの所有物ゆえ、我の糧になるのが一番幸せだぞえ。クカカカ」

「いくなら、お前らだけで行きなよ」

「その前に、カヤよ。お主に良いものを贈ろうではないかえ」

 

 ふんと、鼻で笑うかの如く会話を打ち切ると。

 

『ジラよ、準備をしておれ』

『かしこまりました。オトワ様』

 

 鈴音は、思念伝達でジラに伝えると両手を広げ首の鈴を鳴らし始めた。

 

 りりりりり、り~ん、り~ん、り~ん。

 

 大広場にいる、眷属達が一斉に両手を広げ声高らかに、鈴音を称える。

 

「我ら、皆! 鈴音様と共に!!!」

 

三千近くの眷属の雄たけびが、里に響き、一人、また一人と身体が分解されていく、精神体、星幽体までも分解され、魂だけの姿になり鈴音の鈴に吸収されていく。

 

「おい。なにしてんだよ! やめろ!」

「不憫な眷属共を救ってるのだよ。ククク」

「救う? ただの、利己主義じゃないか!」

 

 怒りで完全に切れたカヤが、斬りかかるが何故か斬撃がすり抜けていく。

 

「? なんだ……これ……」

「クカカカ、無駄じゃよ。次元歪曲障壁(ディメンションフィールド)を張っておるのじゃよ」

「カヤ、奴の空間操作はお前より、上だ」

「ちくしょうがー!」

 

 ドウザンの言葉に、どうやっても勝てない事を、認識せざるを得ない自分に、腹立ち大広場にいる眷属達を見て、何とか出来ないの? と唇をギリッと噛んだ。

 

「心配するでない、カヤよ。皆の魂は我がきちんと糧として、喰らってやるぞえ。クカカカカカ」

 

 また、何もできないの? また、皆死んでいくの? カヤは次々と魂だけの存在に変わる眷属達の中に、トク爺を見つけ一目散に、そこへ急ぎいく。

 

「トク爺! トク爺! ねぇ、トク爺返事して!」

「おお……カヤ、か……」

「トク爺、しっかり! 何とかしてあげるから、あいつに負けたらだめ!」

「……カヤ 無駄、じゃよ……わしらは鈴音様には、抗えん……」

 

 膝を付くトク爺を支えようと手を出すが、その手は身体をすり抜けもう触ることはできなかった。

 

「トク爺いやだ、消えないで! くそー! 何であたしは、弱いんだ。また、大事な者を失うの……」

 

 泣きそうな顔で両膝を落とし頭をうな垂れ、千鳥を握る拳がカタカタと泣いていた。

 

「カヤ……お前は、生き残るんだぞ……いいな、生きろモモカと」

「まただ、また、あたしの手から、大事なものがこぼれ落ちていくじゃないかぁ!」

 

 消えかかる手でカヤの、頭を撫でながら優しく言葉をかける。

 

「クフフッ、哀れよのう、カヤ。トク爺一人も救えぬとわのう。哀しいことよ」

「う、る、さ、い。黙れ……」

「いやいや、これは何と、哀しいことよのう」

「だ、ま、れ……」

 

 また、失ってしまう、そんな思いが容赦なくカヤの心に……突き刺さっていった。 

 

 ヂヂヂヂ、ヂリッ、ヂ、ヂリッ。

 

『カ、ヤ ダメ、ソレ、……ジョウハ』

 

「トク爺……ごめん 救えない……ごめん」

「カヤ、わしらのことは忘れて、生きろ……ろろろろろ……」

 

 いきなり、壊れたからくり人形みたいに、ガクガクと身体を震わせ、ありえない言葉を口走る。

 

「え!?」

「カヤ、わしの酒は……美味かったかのう、クカカカカカ」

「トク爺? どうしたの? トク爺!」

 

 急にトク爺の声が、変わり困惑してトク爺を見つめたままになるカヤに鈴音は、トク爺を介して言葉を吐く。

 

「いやいや、こうもお前がトク爺に懐くとはなぁと言いながら、こいつはな、我がお前のために思考操作をして、お前と仲良くなるようにしておったのじゃよ。お前の魂が、健やかに育つようにな。程よく育ったところで喰らってやろうかと思ってたのだが、喰えなんだわ。クカカカカカ」

「外道を通りこして、もはや畜生以下だわね」

「モモカよ、お前も絶望してるのだえ? クカカカカカ」

「殺す。いえ、存在事永久に、消してやりたいわね」

 

 ここまでやるのかとブチ切れたモモカだが、うな垂れたカヤを見て続く言葉が出てこなかった。

 

「ねえ、トク爺、お酒、頂戴、ねぇ、返事してよ」カヤは猫耳を伏せ尻尾もだらんと垂れ下げたままで「ねぇ、トク爺、ねぇ、トク爺」と繰り返し呟いていた。

 

「カヤ! しっかりしなさい! カヤ!」

「モモカ、ねぇ、トク爺、が、おかしいんだよ、ねぇ、モモカ、ねぇ」

 

 モモカが必死にカヤを呼ぶが、カヤはうな垂れたまま同じ言葉を繰り返すだけだった。

 

 ヂリッ! ヂリッ、ヂヂ、ヂヂヂヂ。

 

「ねぇ、仕込み終わったよ? 飲み頃だよ? トク爺、ほら、飲もうよ?」

 

 カヤは、酒蔵君を出してトク爺に差し出すが、クカカカカカと笑うばかりで既にトク爺の意識はなく、心核は砕かれており辛うじて姿を保っているだけである。

 

「そいつはな、かなりの偏屈者でなぁ。酒造りしかやらない眷属でな、ちょいと思考を弄って、お前に興味を、もつようにしたのじゃよ」

 

 二タァーッと笑いを浮かべ、嬉しそうに話すが頭に響く不快な音が、段々と大きくなってるのに僅かに困惑していた。

 

 カヤが、しきりに酒蔵君を渡そうとするのを眺め、満足そうに頷くと、そろそろ別れの時じゃと告げると、左人差し指で首の鈴をりんと鳴らす。

 

「トク爺? トク爺! 消えないで! トクじい------!あぁぁ、……ぁぁぁぁ」

「なくな……カ、ヤ……す、ま……ん」

 

 最後の言葉は確かにトク爺の声であり心核なくしても、最後の言葉を振り絞った奇跡の声だった……。

 

 ゆっくりと、花が散るように消えていくトク爺を抱き抱えるように腕を回すと、カヤの横を、消えゆく魂をふわっと包むように風が吹き抜け、トク爺は霧散して消える。

 

 消えた後には魂の残滓がカヤの手の中で、淡く明滅しながらゆらゆらと揺らめいていた。

 

「あああああ……ぁぁあああ……トク、じいぃ……」

「? ぬ、心核は砕いたはずなのに、ふむ。本当にカヤを、可愛がってたとでも、言うのかのう。クク」

 

 あの日以来(・・・)、泣くことを捨てていたカヤが大声で泣いた……両膝をついたまま上を向き泣き叫ぶ……モモカも、何もできない自分に唇を噛み、下を向いていた。

 

 カヤの絶望が、無力感が、悲しみが、魂の回廊を通じて流れ込んでくる……。

 

「ごめんねカヤ、ごめん……お姉ちゃん、何もできなかった」

 

 モモカは、カヤの荒れ狂う感情に、また泣かしてしまった、今度は絶対にこんな事にならないように誓ったのにと「ごめんね、ごめんね」と繰り返しカヤに謝りの言葉を続けるだけであった。

 

 

 バチッ、ヂリッ、ヂリッ、ヂ、ヂヂ

 

 

 




 ここまで読んで、頂き本当にありがとうございます!


 引き続き、よろしくお願いします!

 
 
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