転生したらネコムスメなんだけどの件   作:にゃんころ缶

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お待たせしました。17話です!


※ネコムスメ姉妹が着ている服装ですが、ps4,Switchで出てるゲーム天穂のサクナヒメの主人公サクナヒメが稲作りをする時に来てる服装がこれに当たります。
上が膝丈迄の小袖に下はハーフスパッツみたいな半股引(はんだこ)に、(すね)に巻いてるのが脚絆で足に履いてる草鞋は足首をホールドするタイプの草鞋です。俗に旅草鞋とも呼ばれてるみたいです。
 後、腕に手甲も付けてますが、ネコムスメ姉妹は手甲は付けてません。
 半股引はよく祭りで男性が履いてる物のことです。

 この服装はよく忍者マンガや、時代劇物で見られる恰好ですね。
 それと、くノ一の服装としてもよく使われてるみたいな感じ?なのかな。
 脚絆については、鬼滅の刃に出てくる禰豆子が脛に巻いてるのが脚絆ですね。

 モモカが着ている薄羽織も禰豆子が着ている物と同じような物です。

 ネコムスメ姉妹の服装はこのようなイメージで書いております。


 ※〝打刀〟
【挿絵表示】






転移編(ジュラテンペスト
十七話 魔国連邦 


 虫の鳴く声が響く夜更け過ぎ、一際大きな木の根元で寝てる、カヤが目を覚まそうとしていた。

 

 

「ん……んぁ……ふぁ~ あ~夜か?」

 

 目を覚ますと辺りは闇に包まれており、空を見上げると星の輝きがやけに綺麗に見えて、しばしぼーっと見上げていた。

 

「あら、目覚めたのね。調子はどう?」

「ん~ わかんない……ってか普通?」

「そう、なら安心ね。フフッ」

 

 カヤのいつもと変わらない返事にクスリと小さく笑い、カヤの側に腰を下ろし、カヤも身を起こし胡坐座りで腰の酒蔵君を確認し、ぽそりと「お前も無事これたね。良かった」と呟き、千鳥の存在も左手で触り確かめる。

 

 モモカの後ろ髪をうなじ辺りで、一括りにして垂らしてる髪型を見て、「あ、後ろ髪元に戻したんだ」と言い、モモカはそうねと返し笑みを浮かべる。

 

 モモカに、先に目覚めて何してたのと尋ね、呪符術をこちらの世界に適合させるため、呪符の再変換をしていてさっき再適合変換を終えたから、索敵呪符を上空に飛ばして辺りを探っていたと話した。

 

「へぇ~ 相変わらずモモカは、仕事早いなぁ~ で、何かわかった?」

「そうね、ここから西に十三里位行くと、大きな街道があるわね。しかも

石畳の道がね」

 

 モモカはそう答えながらカヤに夢で見た、リムルのことを話し出した。

 ※一里(約四キロ)

 

 カヤが乱破の里に来た夜に、とても不思議な夢を見たと、同じ年位の少年とも少女にも見える異国の人で、今いる大森林と石でできた道、石の建物がある大きな城下町みたいな風景を見たと話す。

 

 わたしの(かあ)様の血筋はね、極稀(ごくまれ)に夢見というか自分の未来に起こる出来事を、夢で見る力があったらしいのと言い。

 

 そして、その力が自分にも受け継がれていて、それが夢で見たリムルのいる世界のことだと説明する。

 

「ふ~ん、その夢で見た風景が全くここと一緒だと、いうの?」

「そうね。あの石畳で、できた街道は、そのまま夢で見た風景だわね」

「でさ、そのリムルって人は、この世界にいるの?」

「ん~……それは、まだわからないわね。でもね、次元の裂け目が出来た時に、物凄く強大な魔力を感じたわよね?」

「あぁ~ あれね、あれはマジの化け物だよね。桁が違いすぎるよ」

 

 カヤはあの時感じた、強大な力を思い出しあんなの理不尽すぎる、もしあんなのと戦えと言われたら即土下座して謝るよと、尻尾で木の幹をパシンパシンと叩き、腕を組み無理無理と言い放つ。

 

「そう? 進化した今なら割といい勝負するかもよ? わたしたちの魔素量(エネルギー)だけど、前とは比べようがない位に増えてるわよ」

「へ? そうなの? ……んん? あ、ほんとだ」

「はぁ、全く天然バカというか鈍いというか、この子は。フフフッ」

「いいじゃん。いちいちそんなことは気にしないよ?」

「いや、そこは気にしなさいな。ねぇ、ちょびっとは大人になろ?」

 

 いや、進化して生まれ変わったから、また零歳だ! いつものカヤ理論をぶちまけ、モモカにまた屁理屈並べてこのバカたれがーと、ゲンコツを落とされて、更にまた盛ったんじゃ? と核地雷を踏み抜き、モモカを激オコさせジュラの大森林を必死で逃げ回るカヤ。

 

 深夜の大森林に響く爆発音、涙目で喚きながらカヤは、モモカに文句をぶつけまくって逃げる。

 

「やめ! やめ、ねぇ、自然破壊はいくないよ! 盛ってるの一言で、切れるなんて大人げないよ? せめて、少しはやさしさに盛ろうよ? ごまかしは、よくないよ? 素直になろうよ、お姉ちゃん!」

「あ゛あ゛あ゛!? こんガキゃああああ! どの口がいうかー!」

「やめ! あぶな! や! あぎゃあああああああ」

「つ~か~ま~え~た~」

 

 ひょいひょいと、モモカの爆裂呪符を躱し逃げてたが、突然顔の前に現れた爆裂呪符が爆発し衝撃波だけが、カヤの頭を突き抜け星幽体(アストラル・ボディ)を揺らされ、その場に声を上げて崩れ落ち、モモカに襟首を掴まれグイっと上に上げられ、観念状態のカヤだった。

 

「ねぇ。カヤ、あなた知ってるわよね? わたしの身体のサイズ。生前と何か変・わ・っ・て・る?」

「い……え、変わ゛っでな゛い゛でず。も゛う゛、ぼんどうに、ごめなざい」

「次はないわよ? わかってる? フフフフフ」

「あい、もう、いいません、ごめんなさい」

 

 モモカのおはなしが、延々と朝まで続き、燃え尽きたような顔でカヤはへたり込んでいた。

 

 それから、今後の行動や大森林にある町に行ったら、どうするかなどの相談を始める。

 

 今のところ、オトワの気配はどこにも感じず、まぁそれは巧妙に隠してるだろうと、動けば何かしら察知できるとし。

 

 当面はオトワが狙うであろうリムルの所に居れば、おのずと会えるかなとカヤが言うが、お互いの魂に掛けた術が何時迄持つかが、わからない以上悠長に待つのも危険よねとモモカが言う。

 

「でも、存在が感知できないし、やみくもに探すのもあれだよねぇ」

「うーん。そうね、十中八九狙って来るからそれに賭けるしかないかな」

 

 とりあえず、魂縛術は安定してるから当面は、大丈夫そうねとモモカは街道に出ようと促す。

 

 街道に出ると旅人や行商人、荷馬車、剣を持った旅人? などが行き交い、カヤの目を引いた。

 

 ああ、人だ! こっちはあたし達と同じ? 亜人?、獣人?、人間見るの何百年振りだろうとか、はしゃぎながら歩く姿に、モモカはふと乱破ノ者だった頃に、お役目でカヤと旅をしてた日々を懐かしむ。

 

 万能感知で、一番多くの反応があった方へ歩いていたが、途中輝く石板を見つけ、カヤがすかさず(つつ)きにいくが、そこへ狼に乗った人鬼族(ホブゴブリン)が、後ろから声をかけてきた。

 

「やあ、あんたらは旅人? かな、そこの石板には触れてはならないよ」

 

 訝し気にカヤは顔を向け、初めて見るホブゴブリンに少し驚く。

 

『モモカ、こいつ何者? 緑人?』

『さぁ? 小鬼? でも悪意は見えないわよ』 

『思念伝達』で、やりとりしモモカは、にこやかにホブゴブリンに言葉を返す。

 

「あら、ごめんなさいね。妹が粗相(そそう)をして、申し訳ないわね」

「いやいや。その石板は街道を守る結界だから、壊さないように。もし、壊したら厳しい罰則があるから、注意するように」

 

 ホブゴブリンは丁寧に説明をしていき、困ったときは自分たち巡回警備隊に言うか、二十キロ地点ごとに交番があるからそこへ行くと良いと言う。

 

 それにモモカは、丁寧にどうもありがとうと返し、キロと言う単位について尋ねてみた。

 

 そこでリムルと言う名がでて来て、(ここで間違いなかった、ここがリムルのいる世界だわ)と、確信する。

 

「ところで、あんたらはユーラザニアから来たのかね?」

「ユーラザニア? いえ、違いますよ。フフフ」

「そうか、まぁ、道中気をつけてな」

 

 ホブゴブリンは、じゃあと片手を上げ、少し離れて待機してる仲間の所へ戻って行った。

 

 しゃがんで、尻尾をパサパサ動かしてたカヤが、こういう時はほんとモモカ上手いよねぇと、ニカッ―笑いながら言い、モモカはあんたも、やればできるのにやらないものねぇと笑う。

 

 そういえば、なんで会話できるのとカヤが、尋ねると『万能感知』の応用で やってるのよと説明した。

 

 それにカヤは、へぇ~べんりだね~と人ごとのように返し、あんたは、もう……とモモカは苦笑いを浮かべる。

 

 行き交う人々を眺め、意外に人間種が多いなと思い歩く二人そこへ、微弱な消えゆく命を感じ取った。

 

「モモカ、これもう死んでるかも?…… 獣人かな?」

「街道から三キロ離れてるわね。行ってみる?」

「あいよ」

 

 認識阻害の呪符を展開し、二人はその場から旧街道へ駆けていく。

 

「これは?……ふむ。また、厄介な気配の持ち主ですね。クフフ」

 

 リムルの執務室でお茶の準備をしていたディアブロが、少し楽しそうな口調で呟く。

 

「ん? どうした、ディアブロ、何かあったのか?」

「いえいえ、何でもありませんよリムル様。クフフフ」

 

 ディアブロは、モモカの認識阻害呪符が一瞬だけ発した強大な魔素を感じ取り、何かが近付きつつあるのを予感し、ミカエルが行方を(くら)ました今、また面倒なとぼやきつつ、何故かほくそ笑んでいた。

 

「パパ! ママ! しっかりして死んじゃいやだー!」

 

 猫種獣人の小さい女の子が、倒れてる若い男と女の猫種獣人を交互に揺さぶりながら、叫んでいた。

 

「モモカ、あそこ!」

「野党か何かに襲われた? なんで街道から離れたところに?」

 

 二人はその場に着くと、カヤは辺りを警戒し腰の千鳥に手をかける。

 

 周りには壊れた荷馬車と、積み荷が散乱していた。

 

 いきなり現れた二人に、獣人の子供は怯え、声を上げ二人に地面に落ちてる石を投げつけていく。

 

「また、パパとママを殺しに来たんだ! あっちいけ! くるなー!」

「ちょっと落ち着いて、お姉ちゃん達は助けに来たのよ」

「くるなー! あっちいけー!」

 

 パシパシと石が二人に当たっていく。

 

 二人は避けようともせず、モモカが優しく微笑み倒れてる男女の側に腰を下ろすと「はなれろー」と叫びながらポカポカと、モモカの背中を叩く。

 

「――大丈夫だよ。このお姉ちゃんにまかしておけば」

 

 モモカの背中を叩く女の子を、後ろからフワリとカヤが抱きしめ自分の方に向かせて、ポンポンと柔らかく背中を叩き、もう安心だよとニカッーと笑いながら声をかける。

 

 すると、今までの恐怖から解放されたように、(せき)を切ったように大声で泣き始め、カヤは「大丈夫、大丈夫」とあやす。

 

「モモカ、いける?」

「ええ、ギリギリ間に合ったわ」

 

 再生の呪符を二枚発動させて、完全に死んでたらもう無理だったわねとも付け加え、再生回復をかけた。

 

 しばらくして、息を吹き返した獣人の男女に、獣人の女の子が泣きながら、抱きついていき、二人を見るや警戒したが女の子が「このお姉ちゃん達が助けてくれたの」と言った。

 

 すると、一転して命の恩人だ何として恩を返せばと言うのを、とりあえず、何でこんな事になったのかとモモカが問う。

 

 その問いに、自分達はユーラザニアの元難民で、今はジュラテンペストに居を構え、ユーラザニアとジュラテンペストを行き来する行商人だと答える。

 

 男の獣人は名をダコラと言い、妻がラナ、娘がラコルと教えてくれた。

 

 そして、商品の仕入れ先を人間種の所から仕入れてたけども、取引先の貴族が娘をメイド奉公に欲しいと言い始め、金貨百枚でどうかと持ち掛けられる。

 

 流石に娘を売るのは出来ないと、断ったら。

 

 今聞いた事は他言無用、もし洩らせば娘の命は無いと脅される。

 

 ダコラは誰にも言わないと約束したのに、ある取引で森の旧街道でコボルトの行商人が荷を受け取るからとここに来たら、二人組の何者かに襲われたと話した。

 

 へぇ~ この世界にも、小さい時からお側付きをさせる、あほんだらいるんだと、カヤは生前の戦国時代を思い出しながら吐き捨て、モモカもこればかりは世界は変われど、人のやる事は同じねとため息をつく。

 

「そうなの。でもダコラさん人間を、信じすぎですよ。いくらテンペストを治める魔王リムルという方が、有能でも末端までは中々目が届かないものなのですよ。しかも、テンペストの外の貴族? かしら、つるんでいてはねぇ。次からは注意しないとですね」

 

 モモカは人間がいかに狡猾で油断できない生き物か、自分が人間だった頃の経験を踏まえ、それとなく油断すると危ないと話した。

 

「はい、おっしゃる通りですが、魔王リムル様は人間とも、良い関係を築きたいとおっしゃいまして、魔物と人間の共存、互いに争うのではなく、手を取り合っていきたいと、そのお考えに私はとても心打たれ、テンペストに居を構えたのです」

 

 尊敬するユーラザニアの獅子王カリオン様の庇護を離れ、リムル様の所で手助けをしたいと思い、カリオン様に相談した所大いに結構相互の関係維持と、貿易の発展に尽力せよと送り出してもらったと。

 

 そして、元はユーラザニアで物資調達係をしていたと言った。

 

 モモカは魔王を名乗る者が人間と、手を取り合っていきたいなんて、とても変わった魔王なのですねと言うと、魔王リムルは転生者だと語った。

 

「転生者? それは本当なの?」

「はい、そう聞き及んでいます」

 

 モモカは、リムルが転生者と聞き自分達以外にもいたんだと驚き、何だろこの偶然みたいな話はと思う。

 

「ねぇねぇ、お姉ちゃん達はユーラザニアから来たの?」

「ちがうよ~ ってかそこ知らないんだよねぇ~」

 

 カヤは猫耳をポリポリと搔きながら街道に向かって歩き出し、ラコルがカヤに聞くが、苦笑いしながら「そこどこ?」とか聞く始末だった。

 

「そうですか、ここよりはるか果てから来たと」

「ですね、そんな所です。フフフ」

 

 流石に別世界から来たとは言えず、お茶を濁すモモカ。

 

「ねぇ、お姉ちゃんのこれ、打刀でしょ? リムル様が持ってるのと少し違うけど、おんなじだよね?」

「「えっ!!」」

 

 二人は打刀(うちがたな)と聞き、じゃあ魔王リムルは元日ノ本の民の転生者なんじゃないかと、顔を見合わせ驚いた。

 

「ラコル、あんまりお姉ちゃんの打刀、触ってはだめよ。ごめんなさいね何にでも興味を示すもので――」

「ん? いいよいいよ、これくらい気にしないでね」

 

 カヤは、ラコルがしきりに触るのを、そのまま優しく笑みを浮かべながら好きにさせていた。

 

 

『モモカ、リムルって魔王さ、あたしらと同じ時代の、転生者なのかな?』

『ん~ どうかなぁ~ 会ってみないと何ともねぇ』

『だよね~』

 

 『思念伝達』で、やり取りしながらラコルの相手をし、幾つなのと年を聞くと六歳と言われ、自分の六歳の頃と重ね合わせて、少しくすりと笑ってしまう。

 

 ダコラとラナに、テンペストに着いたらお礼がしたいのでぜひ家に来てくれと言われたが、二人とも、丁重に断った。

 

「そうですか、残念です。もしテンペストにしばらく滞在するならば。困ったことがあったら、いつでも頼ってくださいね」

「そうです、いつでも我が家に来てください! 娘も喜びますので!」

「ありがとう。でも本当に気を使わないでね。フフフ」

「お姉ちゃん達、テンペストにいつまでいるの?」

「う~ん しばらくは居るかもねぇ」

「わーい! それじゃあまた会えるね!」

「だね~」

 

 カヤはラコルの頭を撫でながら、この子達が住むテンペストを自分達が居た里みたいにはしたくないなと強く思う。

 

 今度オトワと相対したら魂を引き換えにしてでも、これで最後にしたいなと思う。

 

「ん? お姉ちゃん怖い顔?」

「え? なんでもないよ~ よっと」

 

 一瞬出した表情を読み取られ、子供は侮れんと軽い笑いを入れつつ、ラコルをひょいと担ぎ肩車をする。

 

 わぁー高いーと喜ぶ、ラコルに気をよくしてポーンポーンと軽く二十メートル程跳ねながら行くカヤに、モモカが危ないからやめなさいと怒る横で、あらあら、いいわねぇ~ラコルと微笑むラナを見て「なに? この世界の母親たくましい」と思わず口に出す。

 

 親子三人と姉妹は、和やかに談笑しながら街道に出ると、巡回警備隊を見つけダコラ達の事の顛末を話し、二人はダコラ達と別れテンペストを目指す。

 

 一定の間隔である、宿屋やキャンプと言う野宿できる設備があるのに二人は驚き、モモカはこんなにも進んだ文明があるなんて、なんて世界なのと口にしカヤは時折ある屋台の肉を焼く匂いに、お金ないし……コツンしていい? と聞くが。

 

 モモカにマジやめろと怒られ、それでも肉喰いたいーと駄々をこねて、うるさいとゲンコツを落とされ、頭を抱えながらぶつぶつ何か言っていた。

 

 人間だった頃は、街道沿いのお茶屋でお団子を食べたり、他愛もない話で笑い 怒り、喧嘩したりしながら旅をしていたあの頃を、思い出すも……。

 

 「もう戻れないのよねぇ」と、小さく呟き、カヤを見て少し寂し気な笑みを浮かべる。

 

 のんびりとした時間の流れに身をまかせ、二人はジュラテンペストに向けて歩を進めていく。

 

「これで、最後にできるかな?」

「そうね。もう、いいかなって感じだわね。消滅するのならそれでも、いいかなってね」

「そうだね。虚無の世界に行こうが、存在が消えようが、お姉ちゃんと一緒なら、あたしは全然いいよ。元々拾ったような二度目の人生だしね。未練はないよ」

 

 両手を頭の後ろで組み歩きながら、モモカの前で振り向き、僅かに寂しそうな顔を見せすぐに笑顔で言葉を紡ぐ。

 

 モモカの思い、カヤの思い。

 

 二人の思いが交差し交わりほのかな哀しみに、顔を一瞬曇らせる二人。

 

 望まぬ転生で長き時を生きる姉妹。

 

 思いは一つ、これで、何もかも終わりにしたい。

 自分らの生すら……そう、願うモモカとカヤ。

 

 本当なら、里を襲撃された時に、自分達の生は終わっていたはずだったのに、何の因果か寿命のない生命体に転生し今に至っている現実に……。

 

 どこかやりきれない気持ちになる時があり、もう終止符を打ちたいなと思う気持ちが二人の頭の中を、静かによぎる。

 

 モモカは思う。

 

 もし、普通の民の家に生まれてたら、大きくなって好きな人と、夫婦になって子を産み、貧しいながらも小さな幸せが、ある一生が送れたんだろうか、普通? なんだろうな……普通ってわからない、なにが普通なのかなと思い考える。

 

 カヤは思った。

 

 もし、モモカと本当の姉妹で、戦いのない世界に生まれてたら、普通に暮らしていけたのかな……普通?普通ってなんだ? 人を殺さないのが普通なの? わかんないやと、普通と言う言葉が頭の中を巡る。

 

 姉妹は思う。

 

 生きるために人を斬ってきた。人だった時に感じた刃が肉を斬り裂き、抉る感触、初めて人を斬った十二の秋モモカは、返り血で粘る手を見つめ、激しく嘔吐し震える左手を右手で必死に押さえ泣いた。

 

 初めて人を斬り殺した十二の夏。

 

 カヤは返り血を浴びた顔から滴る血が口に入り、鉄錆? の味がするなと思い、モモカを守る為強くなりたいと願い、自ら闇を受け入れていった。

 

 ねぇ、普通ってなんなの? 

 

 ねぇ、普通ってなんだ?

 

 生前に思った、答えの出ない考え。

 

 いつしか、それも忘れ、転生して何百年もの月日を重ね生きてきた姉妹。

 

 穏やかな、昼下がりの日差しを浴びながら、街道を歩く二人は、今になって生前に思った考えをなぜ思い出したんだろうと、少し戸惑うモモカとカヤ。

 

 闇に生き、狂気と正気の狭間を歩く、乱破(らっぱ)ノ者に、そんな考えはいらないのだろうねと、二人は今更ながら思い、それなら転生などしたくはなかった……。

 

 そう魂のまま、あの輪廻の輪を外れた所で永遠にたゆたいながら漂う、それでよかったのにとモモカもカヤも静かに、それを思う。

 

 二人の願い――

 それは敵わぬ夢みたいに儚いもの。

 

 人だった頃の短い一生、転生しての五百年以上生きてる人生、生きた時間は関係なく、わたし達の終わりは、無、なんだろうなと思うモモカ。

 

(人間だった時に、散々人を斬ってきたわたし達姉妹には、安息の日は永遠に来ないんでしょうね。報いか……)

 

「まぁ……いいでしょう」とモモカは呟き、遠くに見える門に 目をやり、カヤに千鳥を隠すように告げる。

 

 

 門に着くと、長い行列ができており、近くの行商人に聞くと入国審査があるんだよと、教えてくれた。

 

 

「どうする? どこから来たとか聞かれても、答えようがないよね?」

「うーん、幻隠使うかなぁ……でも何か厄介な結界が、この大きな街を覆ってるのよねぇ」

「強行突破する?」

「やめなさい。なんでそう、事を荒立てるのよ」

「ええ~ 面倒じゃない?」

「だから、穏便に、穏やかに行くのよ。ほんとそのすぐ暴れたがる、癖は直しなさい」

 

 モモカが、だってーとか言うカヤを(たしな)めつつ、順番を待ってると門番のホブゴブリンが、あなたがた二人はこちらへと、列から離れて来てくださいと誘導され、とりあえず付いて行くことにする。

 

『モモカ、コツンする?』

『だめ! 状況が分からないし、一般の民が多いからコツンなしだけど、最悪ちょいコツンで、逃げる用意はしておいてね』

 

(あの親子を助けた事が、もうここに情報が届いた? いや、早すぎる 何がバレた? 覇気? 妖気(オーラ)はギリギリで押さえてるから、分からないはず。まずいわね、いきなりのこの状況は危険だわね)と、薄羽織の袂に両手を入れる

 

 街の中に入った瞬間、二人の尻尾の毛がいきなり逆立ち、カヤが『思念伝達』でヤバいとモモカに言う。

 

『モモカ。まじにヤバいよこれ! 凄い強い魔力がビンビン尻尾に来る』

『一つ、二つ、三つ……はぁ……これ強いなんて次元じゃないわよ。一際強大な力が地下に一つ、そして同じくらい強大な力が地上に一つ後は、もう考えるのも嫌になるわね…… カヤ、とりあえず相手の出方を見て、最悪な時は……仕方ないわね。少し暴れるわよ』

『わかった。そっちは任せて。いつものようにやろう』

 

 こうなった時のカヤは容赦がなく、無類の強さを発揮するが相手との和解の道が断たれ、ほんとの意味での最終手段になるので、カヤにわたしが合図するまで絶対に手出しは、駄目と念を押す。

 

 闘技場に連れてこられた二人は、闘技場の真ん中にいる、黒服の男に目をやり、カヤが一隻眼で能力を見るが、底が見えなくてこいつはあたしが相手するわとモモカに告げ、いつでも戦闘態勢にできるよう角帯の左に巻いた下げ緒に手をやり、いつでも千鳥を出す準備をする。

 

 黒い執事服を着たディアブロの前までくると、門番のホブゴブリンに、「ごくろうさま」とディアブロは告げ二人に顔を向けた。

 

 

「さて。そこの猫二匹、何が目的でここへ来ましたか?」

 

 物腰は柔らかそうに見るが、有無を言わせない圧力と覇気が二人に放たれる。

 

 

 にやりと笑みを浮かべ、ディアブロを見る、カヤ。

 

 フフと軽い笑みを浮かべ、ディアブロを見る、モモカ。 

 

 口端に薄い笑みを浮かべ、、二人を見る、ディアブロ。

 

 ジュラテンペストに来た猫亜神姉妹は、魔王リムル率いる配下で最強の一角を担うディアブロに遭遇した。

 

 

 緩く風巻き、足元の木の葉が舞い、対峙する三人を包むかの如く吹き抜けていく。

 

 

 




 毎回読んで頂き、ありがとうございます!


 引き続き読んで頂けると幸いです。

 では、次回の更新まで、しばしお待ちください。





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