ディアブロと相対する、モモカとカヤ。
お互いに一触即発の、緊張状態がその場に溢れ、見えない気が渦巻くようにも見え、遠巻きに見てたゴブリンの警備隊達は、巻き込まれたら敵わんとばかりに、更に距離を取った。
「何をしにですか? ただの、旅人ですよ、わたし達。フフフ」
「クフフフ あなた達二人からは、真なる魔王の片鱗が見え隠れしてますよ。いかに隠そうとも、私の目は謀れませんよ?」
「あらま、そうですか。フフフ」
モモカは、どうにもこの、黒服の男がどう動くか読めず、なんなのよここはと舌打ちを、心の中で打つ。
「できれば、大人しく目的を言ってくれれば、やぶさかでは、ありませんが……それと、袂から手は出さないで頂けますかね。お望みなら別にいいのですが。クフフ」
ディアブロは腕を組みつつ、モモカの袂に引っ込めた手に注視を向ける。
『『な!?』』
『モモカ、ばれてるじゃん! なんで?』
『知らないわよ! ってか……おそらくこの袂に何かあると感づいたのでしょうね。全く、こいつ何者なのよ!』
『黒服人』
『まんま、それじゃない! バカかあんた!』
『訂正。こいつ、多分悪魔族だと思う』
『そうなの?』
『うん、前に斬った悪魔族と同じ匂いがする。でもこいつは格が違いすぎる……悪魔族の頂点にいる奴、かもねぇ』
『はぁ~ 頭痛いわね。全く、ここはこんなのがゴロゴロいる所なの?』
『しらん!』
『……殴っていい?』
『いや、やめて! ごめんモモカ!』
『思念伝達』でやり取りしながら、モモカはこれ逃げるの無理そうよねぇとか言いながら、カヤに狂乱舞使える?と聞き、カヤはいけるよ~と答えて合図したら即発動してねと告げ、わかったとカヤも答える。
「さて、もう一度だけお聞きします。ここへは何が目的で来ましたか?」
「旅……いえ、ある人物を追って、ここまで来たのですけども」
「ほう。で、その人物を見つけて、どうするつもりなのですか?」
ディアブロの警戒心が一段階上がったような、指一本でも動かそうものなら即座に戦闘が始まる雰囲気を醸し出していた。
「どうするもなにも、殺すために、追ってきたのですよ」
モモカは事投げに言い放ち、手を前に組み小首を少し傾げながらフフフと笑みを浮かべる。
笑みを浮かべながら、殺しに来たと言うモモカを見て、ディアブロは(ほほう。これは、これは、中々おもしろい猫だ)と、思わずクフフと笑みを漏らす。
(ふむ。この二人、相当戦いを重ねて来てるように見えますね。このような亜人がいたとは、中々に興味深い。ククッ)
「で、その人物とは――」
「――ディアブロ、また抜け駆けかい? よくないなぁ」
「だよねぇ、ボク達にも感知できてるというのにね」
「まったくだわね。で、その獣人? 亜人? は何者なのかしら?」
モモカ達の後ろから、悪魔三人娘が現れた。
口々に、またおもしろそうな事を一人でしてるなんて、ほんとずるいよねぇとか言いながら、モモカ達を囲むように三人は位置取りをする。
「チッ、やっぱり来ましたか。あなた達、お茶をしていたのに目ざといですね」
せっかく、静かにやるつもりだったのにと、皮肉交じりに言葉を投げる。
『モモカ、この三人も悪魔族だよ……しかも、黒服並みにヤバいよ?どうする? やる?』
『はぁぁぁ。流石に本気出しても、無事では済みそうにないわねぇ』
『あ、あれは使えないよ? 厳重封印だとさ、笑うよね。ふひひひ』
『はぁ? そこ笑うとこ違うし、ってかさ自分のスキルなのに、何で勝手に封印されてるのよ! ほんとおバカ』
『しらん』
『……あとで、オハナシね!』
《思考加速》をかけながら、なんでそこで、オハナシ来るの? やめてよね、今は現状を打破する算段をしないとなどカヤは、現状を盾にお話し回避を目論むがモモカがそれはそれ、これはこれとぴしゃりと言い、カヤは「あうう」と押し黙った。
そこへ、更に一人の男がテスタロッサ達の後ろから現れた。
「おい、お前達、ちゃんと確保は出来たのだろうな?」
モモカとカヤを鋭い眼光で一瞥すると、ディアブロ達に告げ、ベニマルはディアブロの横に並ぶように立つ。
『鬼? イイ男の鬼だねぇ~ ふふ』
『はぁ……こいつもとんでもないわよ。次から次へともう!』
ベニマルが表れて、最悪な状況へまっしぐらでモモカは、ははは、もう思い切り暴れてやろうかしらと言い始め、逆にカヤが、え? この状況でやるの? ちょっと待たない?とかモモカを宥める始末であった。
そしてベニマル達へ、ディアブロから《思念伝達》が届く。
『いいですか、もし、あの二人が抵抗したら全力であたってください。くれぐれも、油断はしないように。クフフフ』
『ディアブロ、そんなにヤバい奴らか? あいつら』
『今の、あなた達なら造作もないことでしょう? クフフ』
『う~ん……なんか怪しいというか……いまいち力量がつかめないかなぁ』
『そうねぇ。それとこの頭に微かに響くノイズ? みたいな音が気になるわね』
『だな。ほんの僅かに、チリチリ変な音がしてるな、どこからだ?』
ディアブロの言葉に、ベニマル、ウルティマ、テスタロッサ、カレラが順に答える。
ベニマルは、警戒しつつモモカとカヤを見つつ、こいつらヴェルドラ様が見てる漫画に出る忍者みたいな恰好だが、少し違うなと言う。
ウルティマはボクが取り押さえようか?と言い、カレラはいや私が先陣を切ろうと、既に戦う事前提で事が進み始めていき、テスロッサも「仕方ないわねぇ」と言いながら、口端に軽く笑みを浮かべる。
そんな雰囲気の中ベニマルが、モモカとカヤに問うた。
「おい、お前達、どこの差し金だ? 主は誰だ?」
「はい? どこにも使えてないし、わたし達二人だけですよ。フフフ」
「それだけの、力を持ちながら何故今まで、隠してこれたんだ? おおよその力の検討位つくぞ。舐めてるのか? いや相当の自信があるかだな」
「嘘偽りもなく、本当にある人物を追って、この世界に来たんですよ」
「この世界? おかしなことを。まぁいい、とりあえず大人しくすれば悪いようにはしない」
「その、保証は?」
「ない! お前たちを危険人物だと判断しても、手を出さなければそのかぎりではないという事だ」
「ですか……」
モモカは、ここで捕まって行動を制限されたら敵わないわねと、カヤに少し暴れるけど、この円形状の建物の中限定で結界を張るからと告げる。
少々無茶をしても一般の民に被害は出ないから、殺さない程度にねと念を押す。
カヤは「いや、こっちが殺されるんじゃない?」と言いながら左腰の帯に巻き着付けてる下げ緒をパシッと叩き千鳥を出し、左手で鞘に手を掛けすかさず鯉口を切った。
離れたところで、気配を完全に断ち一部始終を観察している影が、一つあった。
「囲え、玄武障壁陣!」
モモカは袂に手を入れたまま呪符を展開し、闘技場を幾重もの呪符が覆い結界を張った。
「結界? 逃がさぬよう……いえ、これは被害を押さえるのが目的? なんとも、掴みどころがない猫たちですねぇ。クフフフ」
ディアブロは戦闘態勢を取りながら、少し様子を見ましょうかと呟き、気配を消しこちらを窺ってる影に目をやり、ほくそ笑む。
「くそっ、やるのか!」
ベニマルが口にしたと同時にそれは来た。
カヤの神速の抜き打ちが走る、あまりの速さにベニマルは鞘から完全に刀身を抜けず、半分程抜いた形で飛ばされた斬撃を受ける。
「ちぃ! なんて速さだ。こんな使い手がいたなんて、どうしてこの世界も中々広いな」
どこの流派なんだと思いながら、カヤの腰を落とし刀身を納める行動を見て、ベニマルの体内警報が鳴り響く。
「来るぞ!――」
「――鳴れ、鍔鳴り・
声を発した途端にそれは来る。
軽やかな鍔鳴りの金属音を響かせ、不可視の波紋がベニマル達を襲う。
即座に張った多次元結界をほとんど斬り裂きながら斬撃の波紋は広がり、モモカの張った結界にぶつかり、鈍器がぶつかり割れたような甲高くも鈍い音を立てた。
「へぇ~ 凄いねあの娘達、ボク少し興味がわいたかも」
「ふふふ、中々やるわね。見た目とは大違いね」
「進化してなかったら、割とやばかったかも? かな。でも、今の私達なら」
口々に何故か嬉しそうに、話す悪魔三人娘達、それを見たカヤも何故か嬉しそうに、強いなこの人達と口に出し、お互いに殺気のこもった笑みを返す。
ベニマルは全くこいつらはと、少々呆れ気味に思いながら、さっさっと片付けるかと剣を振るった。
「
神速の斬撃が、カヤ達に放たれた。
「
神速の斬撃に、神速の抜き打ちをぶつける。
ガラスの破裂音みたいな激しい音を立て、弾かれた斬撃がカヤの後ろに抜けていく。
モモカがすかさず、呪符の束を両手に持ち自分の周りに投げると、魚の群れのように呪符が空中を泳ぎ、円を描きモモカの周りを回る。
「これを弾くか、一体何者なんだお前達!」
「うーん、暗殺者だよ」
「バカ! なにややこしくなること言うのよ!」
「え~ めんどうじゃん、もうこれでいくない?」
「もういい、少し黙ろうね? いい? フフフ」
「ひぇっ! わかった、後はまかせた」
ベニマルは暗殺者と言った、カヤがモモカに怒られる様を見て、なんだこいつらはと、自分の見てきた敵と全く違うタイプ? のカヤ達に内心吹き出しそうになり、油断大敵はだめだと言い聞かせ、そのまま正眼の構えでカヤに向き直る。
「なぁテスタ、あのお札? というか、あれ中に核撃魔法仕込んでないか?」
「?……あるわね、おそらく
「ん? あれ、
「どうも、威力範囲限定みたいね。なんの冗談なのかしら」
「ああいう使い方もあるのかー 中々おもしろい」
「ん~ これは、ヴェルグリント様並みの精度があるのかな?」
「「かもね」」
カレラは、モモカが呪符に仕込んだ攻撃魔法を無抜き、テスタロッサにそれを買う任して、その魔力制度に関してウルティマが答える。
悪魔三人娘はそれぞれの、感想を述べながら少し距離を取りつつ、包囲網を崩さないその動きは、カヤ達に舌打ちをさせる程、見事な連携であった。
「モモカ、あれ使うよ、いい?」
「ちょいまち! しばし温存で、いいわね?」
「ほぇ、これちとやばいけども?」
「あのでかい、魔力を持つ者が、こっち近づいてるのよ!」
「げっ! それまずいじゃん!」
モモカは、こっちに近づきつつある、強大な力に「もういい加減にしてよね。この五人でも大変なのに、なんなのよー」と声を荒げ叫ぶ。
もう! と叫ぶや否や十枚の呪符を、自分とカヤを囲むように展開すると、「
ゴウッと轟音立て、一気に十枚の呪符が、黒い蓮華の花を咲かせるように炸裂し、十個の範囲限定・
ベニマル達は、起爆と同時に後ろに飛び退り、ディアブロに至っては紙一重ギリギリで躱し間近で見ながら、ほほう、ここまで制御しますかなどと、感心の声を上げていた。
十個の破滅の炎の起爆の隙間をぬい、一つの影が飛び込んでいた。
「カヤ! そっち一人!」
カヤに、向かって突っ込む影を見てモモカが叫び、小さな影がカヤに向けて二連蹴りを放つ。
「おわ!」
自分の顔面に、飛んできた二連蹴りを
「ほえぇ、凄いな、あんた、あれを躱すなんて」
「キミも、中々凄いね、今のを捌くなんて」
飛び込んできた影、それはウルティマであった。
ウルティマは、右拳を前に突き出し、左手は軽く開きへその辺りに構え、カヤは、両掌を少し開いたまま右半身の構えを取り、ウルティマと対峙しする。
そのまま二人は、にやりと笑みを浮かべ、言葉を交わす。
「ねぇ、キミのその技量は、長きに渡って磨いてきたんだよね? 最近ボクもその技量を磨くことの大切さに気付いたんだけど。ほんと凄いねぇ、キミも」
「も? ん~ 磨くと言うか、これしか取り柄がないんだよねぇ。そう言うあんたも、中々のものだよ」
二人は、会話をしながら、お互いに拳を交え、ウルティマはダムラダから受け継いだ技とは違う技に、驚き喜びまたこれも、吸収しようと思い拳を振るう。
カヤは、異世界の達人も凄いなと何故か嬉しくなり、生前の大陸から来た老師の技に少し似てる? と思い不思議な事もあるんだねぇと、呟いていた。
パパパンと弾けるような、音がしウルティマとカヤの拳が交差し、お互いに受け流していく。
ウルティマの、下段蹴りからの左掌底突きを、右手で受け流しながら左手で、ウルティマの左手首を掴み自分の方に向けて、下方向に引き寄せ前かがみになったところを変形右廻し蹴りで後頭部を刈りにいく。
ウルティマは、前かがみになりながら、左足を後ろに跳ね上げ、あたかも蠍の尻尾の一撃のようにカヤの右足を蹴り弾いた。
「あだ! 変わった蹴りするんだ! それいいな」
「キミもね」
お互いの技を防がれて、一度間合いを外し仕切りなおすように二人は、構えを取る。
モモカは、二人の攻防を見ながら、あの紫の娘は達人だわねと感じる。
そして、カヤがキレなければいいけどもと呟き、対峙するベニマル達を見ながら、これ本気ださないとやばいかなとも思う。
「テスタロッサ。あの、お札みたいなもの自動迎撃してきそうだよね?」
「してくるもなにも、してくるわよ。ほら」
カレラの問いに答えるように、モモカの間合いに近づくと、モモカの周りを回ってる呪符が、テスタロッサに反応して、来た方向に一部が密集陣形を形成する。
「やっぱりか~ 他にもまだ何か、仕込んでそうだしやっかいだな」
「そうね。まあ、ここはウルティマの様子を見ましょうか」
「そうだね。リムル様の街に被害を出すわけには、いかないからね」
テスタロッサとカレラは、何かあれば即全力で潰せるように、警戒しつつ魔力を全開ギリギリまで溜めていく。
カヤを見ながらウルティマは、右手に魔力を集中させていきそれに伴い爪が紫に染まっていく、一方カヤも丹田に魔力を集中させ、こおぉぉっと、息を吐くような気合を発する。
互いに間合いを詰めると、拳の連打に蹴りの応酬が始まる。
カヤが右膝をひゅっと上げると、膝の返しだけで蹴りの連打を見舞う、凄まじい速さの蹴りの応酬にウルティマは、的確に捌きながら背中にバサァッと六対――十二枚の羽根を広げ、カヤを包むように全方位攻撃を叩き込む。
「に゛ゃぁ!? ずるい! それ反則だーー!」
いきなり現れた十二枚の羽根の攻撃に、文句を垂れつつ両手で捌いていくが、流石に様々な十二形態の攻撃では、徐々に押されていく。
「これも、技の一つ。反則もなにもないよ」
ウルティマは、カヤに反則だーと言われ、内心クスリと笑ってしまう。
この命のやりとりにも等しい中で、こんな事を言う者など、バカかよほどの自信家かなどと思うも、そのどちらでもないなと思い直す。
ウルティマの攻撃に押されながらも、いまだ十二枚の羽根の攻撃を
ダムラダでさえ凌ぎ切れなかった羽根の攻撃に、文句垂れながらしのいでいるカヤを見て、この
「ねぇ! いまバカとおもったでしょ!? ねぇ! おもったよね!?」
「え? キミ心読めるの?」
「よめん! なんとなく顔に書いてるよ!」
「……やっぱり、この娘バカだ」
バカいうなーこのーと叫びながら羽根の攻撃をしのいでいるが、それも限界に近付きつつあった。
だめだ、これやばい手が足りん! あああ、メンドイと叫び尻尾をブンブンと振り、キュンと伸びたかと思うと、鞭のようにしなり羽根の攻撃を弾いていく。
尻尾? なんてデタラメなとウルティマは口にしたが、それとは裏腹に口端が少し緩み、この戦いを楽しむかの如く羽根の攻撃を、更に加速させてゆく。
そこへ、テスタロッサから『思念伝達』で、そろそろケリをつけたらとくる。
『ウルティマ、そろそろケリをつけなさいな』
『ちょっと無理かも。この娘バカだけど強い』
『あら、それはまた何とも。早くしないと、あの御方がこっちに向かってるわよ』
『んー それは、マズイね。とりあえず、わかったよ』
『そう、じゃあ、私はもう一人の方を押さえてるから』
テスタロッサとウルティマは、あのお方が来るなら早く取り押さえないと面倒な事になるかもねと、お互いに頷き合った。
「に゛ゃわぁぁぁ」カヤは加速してきた羽根の攻撃を、捌きながらいきなり、ドズンと震脚を踏んだ。
踏まれた地面は、カヤを中心に直径十メートル程の浅いクレータ―を作り、地響きが闘技場を揺らし、ベニマル達が、ほうと声を上げる。
丹田に集中させた魔力を一気に解放させ、衝撃波で、十二枚の羽根の攻撃を、全て弾き飛ばし、右拳を突き出したまま、すっと右足を前に投げ出すように出す。
その刹那――
再度の震脚と激しい轟音が鳴り響き、肘の当たったウルティマの、胸から背中に向けて衝撃波が突き抜けていった。
しかしウルティマは、カウンターでカヤの腹部に貫き手を突き刺し、二人は密着する位の距離で動きを止める。
〝迅雷鼓〟がウルティマの胸に、放たれたが、ウルティマは吹き飛びもせずその場に耐えた。
カヤの腹部には、ウルティマの貫き手
「あんた、つよいね。これ喰らって吹き飛ばなかったのは、あんたが初めてだよ」
「キミもね。必殺の貫き手が、完全に決まらなかったよ」
カヤとウルティマは、お互いに軽い笑いを浮かべると、お互いに拳を納め。
ウルティマはテスタロッサ達の方へ、カヤはモモカの所へ歩いていく。
テスタロッサとカレラが、ウルティマに大丈夫かと問うと「うん、問題ない。でも、ちょっと回復に専念するから、少し頼むね」と言い。
ウルティマは胸に手を当て乱れた魔素の流れを正しながら「ゼギオンさんとは違う意味で強いな」と呟く。
カヤの方を見ると、カヤはしゃがんでお腹を抱えて、なにやらモモカとギャアギャアと言い合っていた。
やっぱり何か変わってるなあの娘達と、ウルティマは考え、敵じゃないなと直感で感じ取った。
モモカの所にトフトフと帰ってきたカヤは、お腹を抱えてしゃがみ込み膝を丸めたままコロンと横になり、ちょっと休憩とポソリと言う。
「はい? どうしたの、大丈夫?」
「お腹痛い……ちょっと解毒に時間かかるから、あとおねがい」
「毒? わたし達は毒無効よね? なんで?」
「毒というより……毒みたいな、なにか。マジお腹痛いから、だまれなのよ」
「ちょっと! 黙れってなによ! 心配して言ってるのに、痛覚無効もあるから痛みも無いはずよね?」
「いや、マジ痛いのよ……。まるで人間だった頃の、あの日のように、腰にくるの……」
「はぁ? わたし一人で、あいつら全員相手にしろと?」
「……しらん がんばれ、あたしは、ちょっと寝る」
「まて! バカたれがー! こんなとこで寝るな!」
「うるさい……これ、喰らえ」
「へ? ……た……あ、あいたたたた ちょ、やめ、魂の回廊を通じてあんたの痛みをこっちに流すな! やめ……ねぇ、やめ、まじ、これ、痛いじゃないのよーー!」
カヤとモモカは精神体にまで響く痛み、みたいなものに、お腹を抱えて口喧嘩を始めていた。
「いやはや、何なんですかね、あの二人は」
「ディアブロ。あいつら、まじに、人探しでこの街に来たと思うか?」
「さぁ? まぁ、もう少し様子見でも、良いのではないのですかね」
ベニマルの問いに、苦笑いを浮かべながら「さて、どうしたものですかね。そろそろリムル様もここに来るだろうし。何よりもヴェルドラ様も、こちらに向かって来てますので」と答える。
ふとヴェルドラ様に対して、あの二人はどうでるのか、見たい気がしてクフフと笑みを漏らす。
「なぁ、テスタロッサ。ウルティマは思いの外、ダメージ大きいんじゃないか?」
「そうね、想定外の力という事かしらね。でも、あちらも〝死毒〟がきいてるみたいだし、引き分けという事になるかしら」
ちらっと、ウルティマの方を見て、カレラに答えたがどうにも、モモカと、特にカヤの力の底が見えなくて、今ここで全力で仕留めるべきか、否かの思考を巡らせるがベニマルと、何よりディアブロが動かないのに、少し疑問を持つも。
また何か企んでるのかしらねと訝し気にディアブロを見るが、今さらよねとその考えを打ち消した。
モモカは、カヤにいい加減痛みに似た何かを流すのやめろと、大きな声で言いカヤは、かまわずに回廊を通じて流していると、もの凄い爆発音と共にいきなり「ぷぎゃー」と変な声を上げカヤの身体が、地面にめり込んでいた。
それはモモカが、カヤを思い切り踏みつけて、キレている姿であった。
(((なにしてるの、あの
いきなり、カヤを踏んづけて激オコしたモモカを見て、この現状で仲間割れする? とテスタロッサ、ウルティマ、カレラは呆れてジト目になっていた。
「やれやれ、あいつら自分達のおかれてる現状理解してるのか?」
モモカ達の行動に、半ば呆れ気味にディアブロに言葉を投げる。
「クフフフ。 中々おもしろい亜人ではないですか」
ディアブロは、まだ隠してる力があるのに気づいていて、さて、どうしたら見せてもらえますかねと、腕組みをしたまま右手の人差し指でトントンと腕を叩きながら、思考を巡らせる。
「あ~ん~た~ね~、いい加減にしないと、怒るわよ!」
カヤの横腹をグリグリと踏みつけながら、青筋の浮かんだ微笑みを、投げかける。
「あ゛あ゛、踏んづけてから怒るの、や、め、て……ちょっと可愛い悪戯じゃない……ひ、ど、い、
「やかましいわ!! こ~の、バカたれがー!」
口答えしたカヤを更に踏んづけて「この現状でやること? 少しは考えろこのあほんだらー」完全に切れたモモカに「ごめんなさい、ごめん、もうやらないから、」と、いつの間にかめり込んでた身体を起こし、モモカに土下座して謝っていた。
「うん? なにやら騒がしいのう。我が来てみれば、まだ、取り押さえておらぬのか?」
ヴェルドラがゆっくりと、ベニマル達の後ろから現れ「何をしているのだ?」とベニマル達に問いながら、モモカとカヤに目を向ける。
「あ~ きたわね。仕方ないわ、覚悟を決めようか」
「ん~ あの優男? ヤベェ、これは……強さの次元が違うわ」
ヴェルドラが現れると、二人はピタッと喧嘩をやめ、カヤはパンパンと小袖の土を払いながら立ち、モモカは自動展開している呪符を手に戻した。
二人の猫亜神姉妹は、お互い顔を見合わせ軽く頷くと、一気に
ビリビリと大気が振動し、闘技場を覆う結界を揺らしていく。
「ほほう」と口にしヴェルドラは「お前達やるのか?」と問うた。
カヤとモモカは、無言の表情を返し、返答とした。
(クフフフ、さてさて、どうなるか、見ものですね。仇名す者か、それとも……)
ディアブロは、カヤとモモカの力の片鱗を見れるのに喜び、自分が手を出さずとも、思惑道理にいったことに、満足げに笑みを浮かべ
「やれやれ、シュナ、やっぱり俺もいくぞ。ヴェルドラがやりすぎると、あれだしな」
「はい。リムル様」
「あ、私もお供します!」
〝管制室〟の
「カヤ、優男はまかせるわよ。わたしは他の者の牽制をするわね」
「あいよ、勝てる気がしないけども、何とかやってみるよ」
「フフフ、いつものようにね」
「うん、いつものようにね」
どうなるかわからない、でも、今は逃げる時ではないと二人の直感が、そう囁いていた。
折しもダコラ達が、テンペストへ帰ってきて、門番に若い猫亜人が来なかったかと聞き、ああ、今ディアブロ様達が尋問してると言い。
それを聞いたラコルが「お姉ちゃん達はパパとママの命の恩人なの」と自分達に起こった事の一端を身振り手振りを交え必死に訴えた。
そして、早くリムル様に伝えてと門番に懇願し、ダコラとラナも同じように門番に告げる。
「我を前にして、一歩も引かぬか。ただの、大馬鹿か、それとも」と言いながら、すっと構えを取るヴェルドラ。
この世界、最強に属する〝竜種〟暴風竜ヴェルドラを前に、一歩も引くこともせず姉妹は、静かに己の魔力を練り上げていく。
「「「やろうか」」」」
ヴェルドラ、カヤ、モモカが同時に口する。
ここまで、読んで頂き、本当にありがとうございます!
引き続き、よろしくお願いします!
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