転生したらネコムスメなんだけどの件   作:にゃんころ缶

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 お待たせしました! 二十一話です!

 ※二十話、ヴェルドラの究極能力『究明之王』を間違えていました。

 ミカエルとの決戦前『混沌之王』に進化してるので二十話の
ヴェルドラの究極能力を『混沌之王』と修正しました。
 


二十一話 ヴェルドラVSカヤ 後半

 

 

 『熱射咆哮(ヒートロア)

 

 チリリリ、チリ、チリリ。

 

「う゛に゛ゃあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!」

 

 キィーーーーンとジェット噴射にも似た音を上げカヤの口から熱放射光線が秒速二八八,五五六,四五八で放たれる。

 

 細く収束された青白い熱放射線が、一瞬にしてヴェルドラの右から左へ薙ぎ払われるように放たれる。

 激しい爆炎が上がり薙ぎ払われた地面は溶解し、真っ赤に溶けたドロドロの溶岩状態になり、もうもうと煙を上げ高熱で大気がゆらゆらと揺れてるように見えた。

 

 熱射咆哮(ヒートロア)を弾こうと出したヴェルドラの右掌は、中心が焦げ煙を燻らせてコートの袖も少し焦げていたのを見ると、いきなりカヤに文句を言い始める。

 

「おい! これは、大事な我の一張羅でリムルからの贈り物で、まだ魔素が馴染んでおらぬから修復が大変なのだぞ!」

「にぁああ? にゃんにゃ、うにゃあにゃにゃん、うにゃあにゃにゃん!

(えええ? そんなの、脱げばいいじゃん。あたしは、しらん!)」

「カヤ! それは、ちと酷いのではないか! なぁ。お前なぜ、猫しゃべりなのだ?」

「にゃっにゃん! (ほっとけ!)」

 

 周りの大惨事より、コートの心配をするヴェルドラ。

 

 かたや感情がハイ状態のカヤは猫しゃべりするわで、リムル達はなにやってんだみたいなジト目で二人を見ていた。

 

『シエルさん。光った瞬間に着弾で薙ぎ払っていったぞ?』

『秒速二八八,五五六,四五八で放たれました。亜光速です』

『なんだそのデタラメな速度は! ヴェルグリンドの灼熱吐息(バーニングブレス)でさえ音速の数十倍だぞ……しかし、よく防げたなヴェルドラは』

究極能力(アルティメットスキル)混沌之王(ナイアルラトホテップ)』で着弾予測して、確実に弾けるように『確率操作』してたみたいですが僅かにズレたみたいです』

 

 シエル先生の説明に究極能力(アルティメットスキル)混沌之王(ナイアルラトホテップ)』での確率操作がズレたなどありえないだろうと反論したが。

 

 もしそうならどのような手段を使ったのか、それは究極能力(アルティメットスキル)の権能なのか、それとも何か別の力……軽く『思考加速』をかけて思案を始めると、更にシエルさんの報告を聞き、表情には出さないがかなり驚くことになる。

 

リムル様(マスター)。おそらく、何らかの方法で能力にブーストを掛けてると推測します。いくつかの推測はできますが……有り得ないことに、解析鑑定を試みてはいるのですが極僅かな妨害により、解析結果が一つに絞れません。これは、私に対する挑戦です!』

『ちょっとまて! 妨害って、隠蔽ならまだしも解析妨害とか無理だろ?』

『いえ、リムル様(マスター)。この場に発動してる権能全てに妨害がかかってる可能性があります。妨害波の正体はおそらく極小さく頭の中に響くノイズです』

 

 リムルは、シエルさんの説明を聞くや否や自分の自身の内部を探るかのように意識を集中させていく……チリリリ……チリ、チリリ…… 『これか! なるほど。カレラ達が言ってた僅かに響く不快な音が、妨害波の正体か』シエルさんにも分からないことがあるのかと疑問に思うが、想定外だなこれはと呟く。

 

 シエルさんは「私に対する挑戦です!」と言った。

 

 かなりこの現象にお怒りのようだ。

 

 もしくは、〝解析大好き〟〝魔改造大好き〟のシエル先生に火を付けたのかも知れないなんにしろここまでやる気になったシエルさんはもう止まらない。

 

 しかしここまで手こずらせるなんて本当に何者なんだあの二人は。

 

 更にシエルさんから、確実性の高い推論が来た。

 

『いくつかの推論から確実性が高いのを選択すると、この妨害波はあの者の能力より上の者には僅かな妨害しか出来ないと推測します。テスタロッサ達、ベニマルはヴェルドラ、リムル様(マスター)より高い影響を受けています。ディアブロはあえて全受けで受け入れてます』

『そうか。なら打つ手はありそうだな、ってか、ディアブロは何やってんだ!』

『おそらく、あの二人の観測かと。確率操作妨害に関しては百%に対して、数%での確率妨害で九十%を割ることは出来ないと推測します。先程のはヴェルドラに対してその数%を引き当てたのでしょう』

 

 リムルはシエルさんの推論を聞きながら、ディアブロの意味不明の行動にいつもの事ながらどこまで計算ずくでやってるんだと呆れもするが、ほんとに俺の配下達は優秀過ぎるなと口端に軽く笑みを浮かべるも、この妨害波は恐ろしく危険だなと判断する。

 

 いくら九十%以上を保っていても百ではない限りいつかは攻撃が直撃する、あの熱放射光線の直撃はいかにヴェルドラといえどかなりの大ダメージになるだろう……俺がいる限り死ぬことはないが。

 

(もし、この攻撃が観光娯楽地区に当たれば壊滅、いやテンペスト事態壊滅させる威力かも知れない。シエルさんの張った防御結界で辛うじて防いでいるが、ヴェルドラが言っていたあいつの特殊付与『絶対暴力』はまだ、完全に発動し切れてないんじゃないか?『絶対切断』はヴェルドラさえ防げなかった。という事は傷しか付けれなかったあれは……それでも熱放射光線の威力は尋常じゃない……)

 

『う~ん……』頭を捻って自分の推論を並べてみるが、今一つ決め手に欠けておりグルグル色々な推論が駆け巡る、そこへ、シエルさんからもう二つの推論について意見を述べてくる。

 

リムル様(マスター)。もう二つ確実性の高い推論があります』

『なんだ? シエルさん』

『カヤという者は、進化したばかりではないかと。余りにも能力の使い方に偏りと力を制御しきれていないように見受けられます。そして姉の方も進化したてではないかと。二つ目は、カヤと言う者の能力ブーストは時間制限があると推測します。先程から感じる魔力の増幅に、揺らぎが見え始めています』

『ふむ。それが本当なら、確実に何か仕掛けて来るな。敵対はしない、これだけは宣言しているからいいが、厄介極まりないな』

『私を手こずらせるなど、厄介極まりないと判断します! プンプン』

 

 少し怒ったような口調で言うシエル先生に、神智核(マナス)になってどんどん人間くさくなってないか? などとリムルが思う中、シエルさんは万が一の為〝魂暴喰〟を起動して待機させる。

 

 

「うにゃあああああ!」

 

 唸り声を上げながら、四つん這いのままヴェルドラに向かって駆けだしていく。

 

 迎え撃つ構えを取り、魔力防御、物理防御を最大にし己の魔力も最大限に練り上げていくヴェルドラにいきなり『思念伝達』で、ヴェルグリンドから冷ややかな言葉が送られてきた。

 

『ねぇ。あなた、まさか負けたりしないわよね? いくらなんでもあんな猫如きに負けたりしたら……そうね、一週間位〝お話し〟しましょうか。ねぇ、ヴェルドラ』

『な! ななな、何を言ってるおるのだ姉上。我が負けるなどありえませんぞ! 見事勝利してみせましょうぞ』

『そう。じゃあ、しっかりね』

 

(まずい! 姉上が見ておられたとは迂闊だった……マサユキと早く帝国に帰ればいいものを、全く困ったものだな)

 

『なにが、困ったのかしら?』

 

(ギャワワ! 魂の回廊で繋がってるおる故、迂闊なことを考えると筒抜けで有ったな)……いやな汗を垂らすような感覚にヴェルドラはいかんいかんと、頭を振りそれではと着ている服を瞬時に別空間に仕舞う。

 

 そして、掛け声とともに「〝暴風竜〟と呼ばれる我の神髄を見せようぞ! いくぞ! おおおりゃぁあああああ! マンガのヒーローみたく掛け声一発、〝竜化〟した。

 

 漆黒の輝きを放つ鱗に、背中に大小二対の翼に鋭い爪がある六本の手の指。それは、〝最強の竜種〟と呼ぶに相応しい、美しも破壊の権化たる姿にも見えた。

 

 

 〝竜化〟したヴェルドラを見たカヤは、ガッと手足を踏ん張りガガガと地面を抉りながらピタッと動きを止める。

 

 ヴェルドラを見上げ「うにゃにゃ、にゃうぅ(これが、竜)」思わず出た言葉に尻尾にぞくりとしたものを感じ、尻尾の毛がボワボワッと逆立つ。

 

「カヤが恐怖を感じた? あの子の警戒度が最大になったわね。まさか、あの子にここまで警戒させるなんて……〝最強の竜種〟ほんとリムル達は、理不尽の権化だわね」

 

 モモカは、ヴェルドラ、リムルの底の深さに驚愕し、浅い溜息を一つ吐く。

 

 オトワがいくら進化してもリムル達には、敵わないんじゃないかと思うも、一つの懸念(• •)がオトワに対してあり、頭から離れなかった。

 

 しかしそれは、あまりにも荒唐無稽であり、すぐにその考えを引っ込めてしまうモモカであった。

 

 決し自分達を過大評価しないモモカ達は、冷静に分析し、弱点を見つけ相手を倒してきた。特にモモカは常に冷静沈着で、カヤの本能で動く様を上手く導きモモカが司令塔的な役で、乱破(らっぱ)ノ者の頃はそうやって生き延びてきた。

 

 モモカは、カヤが千鳥をベニマルに預けた意図は分かってたが、ほんと勘がいいというか、本能で嗅ぎつけるというか……千鳥があればこんなものでは終わらなかったかもしれないわねと、思う。

 

 少し目を伏せ気味にラコルを見つめ、小さかった頃のカヤと姿を重ね懐かしむかのように、ラコルの頭を柔らかく撫でると、ラコルの小さな猫耳がピコピコと動き、どうしたの? と言うように見上げて来た。

 

 それを、「何でもないのよ」と首を横に軽く振り、モモカはカヤに目を戻す。

 

(それでも何するかわからない、子なんだけども、ね)

 

 クスリと笑い、「この勝負、負けるだろうけど頑張りなさいな」声は発せず唇だけが動く。

 

 

 左片目を瞑り、右目の『一隻眼』でヴェルドラの能力を見極めようとカヤは『解析鑑定』を試みるも、底の深い海のように途中から光が届かないそんな感じに襲われヴェルドラの力の奥深さを知った。

 

「にゃにゃにゃ、にゃん。にゃひひひ(まいったね、これ。ふひひひ)」

 

 これ程の力を持つヴェルドラと戦うことに、何故だか嬉しさを覚え思うカヤ。

 

(もう、時間がないな)

 

 今ある力の技量をもっと、もっと、磨き強くならないとオトワとジラには多分勝てない。

 

(今度こそあいつらを殺しきる力が、あたしは欲しい!)

 

 ギィンーとカヤの体の内側から弾けるように溢れた魔力が、妖気(オーラ)となり円形状に広がり、リムル達の張った防御結界をビリビリと振動させ揺らしていく。

 

 カヤの胸の辺りに、黒い小さな核が形成されており回転しながら光を放つ。

 

「ここにきて、まだブーストできるのか?」

リムル様(マスター)。あの者の体内に重力核(グラビティコア)が形成されてます。疑似ブラックホールを作りそこから更に魔力を増幅させようとしています。一時的であれ〝竜化〟したヴェルドラに力が届くと推測します』

『ブラックホール機関みたいなものか。冗談の塊みたいな奴だな』

『全くです! これはぜひ、解析を急がねばなりません!』

 

『あ! シエル先生、最後に本音を出したよね? でも、この闘技場はもう作り直しかなぁ……。まぁいいか、壊れたらまた造ればよし!』

 

 そう言うとリムルは、シエルさんに万が一に備えての対策を頼む。 

 

《告 重力核(グラビティコア)をベースに試作重魔力炉を形成します。試作・闇鏡重魔力炉(プロト・オプスキュリテミロワール)作成……成功しました。八式魔力増幅炉術式に接続……成功しました。起動開始に伴い、真・狂乱舞の制限時間を五十秒延長します》 

 

「に゛ゃぉぉおおおおおおお!」

 

 雄たけびを上げるカヤを見ながらバウッと翼を広げ、ヴェルドラは飛翔する。

 

 飛翔したヴェルドラにカヤの熱射咆哮(ヒートロア)が襲う。

 

 カヤの口にある光球が光ったと同時にヴェルドラは、空中で巨体とは思えない回避行動を取るが足に当たった熱射咆哮(ヒートロア)が、ジャウッと音を上げながら蛇がうねるような軌跡を描き左横腹の鱗を数枚魔力防御ごと砕き割った。

 

「ギャワワワ! 鱗が割られたァーーーー!! リ、リムルよ、鱗が砕き割られてしまったぞ!」

 

 そんなヴェルドラをジト目で見ながらリムルは、「あーーはいはい」と棒読みで答える。

 

 「お前、前にも似た事言ってたよな」、と言い。

 半ば呆れ気味に『絶対暴力』って特殊付与あるんじゃそりゃ砕けるわなと言い放つ。

 

 相変わらず一つ抜けてると言うか、残念なとこがあるなと腕を組み苦笑いを浮かべる。

 

 超高速で不規則飛行軌道をしながら、ヴェルドラの口から雷風咆哮(サンダーストーム)がお返しとばかりに放たれ凄まじい暴威がカヤの周りの空間に干渉し、不可視の光線が襲い来る。

 

 纏った魔素粒子をその場に残していく速度で、回避するカヤの尻尾の毛が逆立ちした瞬間。

 

「あにゃにゃにゃーーーー!(いただだだだーーーー!)」

 

 耐えきれぬような激痛が左手足に走り躊躇なく左腕、左脚を熱射咆哮(ヒートロア)で焼き斬った。

 

 左腕、左脚がなくなり、バランスを崩し激しく回転し闘技場の防御結界にぶつかり、ようやく動きを止める。

 

「うにゃ?」

 

 神速再生が効かない事態に、何が起こったと言うように首を傾げ切り口を見るとズズズッと再生が始まり、ようやく左腕、左脚が再生されていく。

 

「ハハハハ! カヤよ。それは、我が編み出した奥義、収束暴風攻撃(ストームブラスト)なのだ! それにお前が我に対して、何らかの妨害波を出してるのはお見通しなのだぞ! フフフ、ハハハハ、フハハハハ!」

 

 竜化した姿のまま両手を腰に当てグンと胸を張り、高らかに技名を告げるヴェルドラにカヤの目がスーーッと細くなり、モモカの「やばっ!」との声に合わしてプチンとカヤの中で、何かが完全に切れた。

 

「にゃっにゃ! (ぶっ殺す!)」

 

 ザウッ。四つん這いを取り直し青白く光り輝きバチバチ音を上げる尻尾を揺らしながら「うにゃ!」吠えると同時に尻尾から三十条もの熱放射光線が無差別に撃ち出された。

 

 ゴガガガ、轟音を立て荒れ狂う一本の熱放射光線は、とうとう闘技場に張られてる防御結界全てを貫き、迎賓地区の上空を走る。それをテンペストの住人はなんだ? また何かの実験か? 警報は出てないよな、など口々に出しながら自分の仕事に戻っていく。

 

 逞しきテンペストの住人達。

 

リムル様(マスター)。闘技場の防御結界側面を、位相反転させ反射鏡を作り熱放射光線を上空へと逃がします』

『おう。流石仕事早いな! しかし、あの二人、やり過ぎの自覚ないよな』

『……』

 

 流石のシエル先生も呆れたのか、だんまりである。

 

 ギャギャッ! 反射された幾条もの熱放射光線が、闘技場の真上と伸びていく。

 

 カヤの熱射咆哮(ヒートロア)とヴェルドラの雷風咆哮(サンダーストーム)が暴れ狂い、カヤ達が戦ってる闘技場の向こう半分側はしっちゃかめっちゃかの手が付けられない状態と化していた。

 

 乱射していた尻尾の熱放射光線をいきなり止めると、スクッと立ち上がりパクンと口を閉じるカヤ。

 

 そしておもむろに口を開け、息を吐くように顔を下に向け体内に溜まった超高温の熱を吐き出していく。

 

 勢いのある蒸気みたく地面に吐き出された高熱は、蜃気楼のように揺らめきながら噴煙を巻き上げる。

 

(あ~ あれだ。子供の頃見た怪獣映画の〇〇〇だな……)

 

 リムルは遠い目になりボソリ呟き呆れ顔になっていく。

 

《告 リミットオーバーまで、残り四十八秒》

 

「ん~と。打てる手は……ないなぁ。これだけある魔力をもっとギューッとして、一気にボカンしたらおもしろい? もう時間ないしこれでいいや」

 

 熱を吐き出しつつ、ブツブツと言いながら、こうやってこうやる? 独りごちてるとそれに、気づいたモモカが『あんたなにやってんの?』訝し気に問うと『一旦内側に魔力をギューッして、その力を一気に外へ解放したら面白いかなと思うんだけどぉ、もうリミットオーバーまで時間ないしこれで最後だよ』と言い。

 

 熱を吐き出したら(たかぶ)った感情が少し落ち着いたようにも見えたので、『こっちにこないよう調節しなさい』と、モモカが『思念伝達』でカヤに告げる。

 

 更に、『ラコルがいるから、マジやらかしたら〝オハナシ〟だからね』と告げた。

 

 それを聞いたカヤが何でそこにラコルいるのと慌てるも、モモカは『いいから、早くケリを付けなさい』と『思念伝達』を終えた。

 

 熱が完全に吐き出され、また尻尾に放電現象を起こさせ両手を広げ目一杯後ろに反らすと両指先にも放電現象が始まっていく。

 

 身体全体も青白く発光していき、勢いよく両手を開いたまま突き出すや指先から熱放射線光線が、合わせて十条、尻尾からも三十条、計四十条の熱放射光線が放物線を描きながらヴェルドラを追尾するように襲い掛かかり、フワッとカヤの姿も掻き消すように消える。

 

「ほう! 面白い、我を追尾する光線か! ん? なんだ……殺気が、四十条の熱放射光線から感じるだとー!!」

 

 分身でも、並列存在でもない。攻撃に殺気と気配を乗せるカヤ独特の手法に ヴェルドラは驚きの声を上げ、迫りくる熱放射光線を躱してゆく。

 

「しかし! 我の力はこんな物でないぞ」

 

 そう言葉を投げるとフッと軽い笑みを口端に浮かべる。

 

 そこへ、ヴェルドラを囲むように四十条の熱放射光線が重なり、凄まじい爆炎球を作り地響きのような音で燃え盛り、次第に小さくなっていき、後に残る爆煙だけがもうもうと立ち込め渦を巻いていた。

 

 爆煙が晴れるとそこにはヴェルドラの姿はなく、全ての攻撃の予測をし、躱し いつの間にか地上へ降りており上空を見渡しカヤを探す。

 

 『混沌之王(ナイアルラトホテップ)』の『真理之究明』、『危険予知』、『確率操作』の完全発動に、カヤの妨害波は完全に抑え込まれていたのであった。

 

「いないな。爆散したのか? まさかな……ん? んー」

 

 高高度真上に、ヴェルドラ目指して落下してくる光り輝く塊を見つけカヤの気配がそこにありヴェルドラは目を見張る。

 

 パン、パン、衝撃波の輪を作りグングン落下速度を増し、ヒュイーンと金属音を響かせ光球も最大限の輝きを放ち、真下から来る攻撃、暴風咆哮(サンダーストーム)に重力支配で有り得ない不規則回避軌道を描き、ヴェルドラの足元に降り立つ。

 

 着地時の凄まじい衝撃音が、大気を裂き震わせる。 

 

 降り立った衝撃にテンペスト全体が地震のように大地を揺らし、ラコルはキャアと悲鳴を上げ、モモカにしがみ付く。

 

 チリリリリ、チリリリリ。

 

 重力支配で浅いクレータ―で済んだが、巻き上げた土砂が降り注ぐ中、カヤを包む光球が薄紫色に光る魔素粒子を纏いヴェルドラの周りをヒーーンと甲高い音まき散らし唸り、高機動で飛びまわる。

 

 辺り一面は霧のように魔素粒子が漂い、光球が四つに分裂し更にカヤは殺気を四つ飛ばし、殺気を纏った四つの光球が光りの軌跡を引きながらヴェルドラの周りを飛び交う。

 

「ほおぉ。殺気を四つの光球に乗せ、お前の気配を消した、か…… いや違うな殺気その物がお前だな。おもしろい! 分身体でも並列存在でもない、気配を偽り隠し、殺気にお前の気配を潜り込ませる技、見事なり。カヤ!!我の『混沌之王(ナイアルラトホテップ)』もまた一段技量が磨かれることぞ! 決着をつけよう! カヤ!!」

 

 静かに目を閉じるとヴェルドラは、自身の間合いにある空間に意識を集中していく。ギィーーン! 甲高い音が更に激しさを増し不規則軌道で飛び回り、いきなりバッとヴェルドラの前後、左右に別れそのまま四方向から強襲するが。

 

 それを右方向に有り得ない速度で腕を伸ばし光球を掴み、左手を頭に、ポフッと乗せる。

 

 前、後ろ、左から迫る光球はぶつかる手前で掻き消すように消え、右手に掴んだ光球が輝きを消すとその中にカヤがいたが、ニッと笑った顔を見せると花が散るように身体が霧散していき、頭に置いた手の中に光球を輝かせながらカヤの身体が実体化していった。

 

「ふっ。バカげた事をするものだな。実体を内側から分解して自身をこのまき散らした魔素粒子に紛れ込ませ、我の頭に移動するなどリスク高すぎて誰も思いつかぬぞ。下手をするとそのまま再生できずに消滅してしまうと言うのに、全くお前は」

 

 と、子供に言い聞かせるような言い様で、カヤに告げた。

 

「カヤ。お前の負けだ」

「あ~ぁ、見つかっちった。うひ、置き土産。点火(イグニション)発破鳳仙花(はっぱほうせんか)

 

 光球がカヤの身体に吸い込まれるように消え、技名を告げるとクワーッと眩い光球が、カヤを中心に広がるように膨れ上がっていく。

 

「おい! カヤそれは不味いぞ。威力がありすぎる! ここら一帯が灰燼と化すぞ! 止めんかバカもの!!」

「え!? もう無理……どうしよう! 誰か止めてーーーー!!」

「お前が止めなくて、誰が止める!! バカなのか!?」

 

 慌てふためくカヤとヴェルドラの所へモモカ、ヴェルグリンドから『思念伝達』が飛んでくる。

 

『ねぇ。詰めが甘いわよ。OHANASI三日ね』

『あんた、後でオハナシね。逃げたら燃やすわよ』

 

 仄暗い深い地の底から投げかけられるような言葉が、淡々と静かに告げられ、死刑宣告とも取れる、モモカとヴェルグリンドからの激オコ御言葉。

 

「ヴェ、ヴェヴェヴェ、ヴェルドラ、お願い!! あたしを連れて何処でもいいから逃げて!! お姉ちゃんがマジに切れたの! 恐ろしいお説教がくる、お願い!」

「いや、まて!! 我の姉上も何故か激怒してるのだ! 我を連れて逃げよカヤ!」

「どど、ど、どこへ? ここへは来たばかりだよーー!」

「ばかもの!! どこでもよいわ!! ほとぼりが冷めるまで! それより、この膨れ上がる魔力球を早くなんとかせぬかー!!」

「止めるってどうやるの? ねぇー!?」

 

 両手でヴェルドラの頭をポコポコ叩きながら涙目で騒ぎ立て、ヴェルドラはヴェルドラで、ドタドタとその場で右往左往する。

 

「もう一回内に納めよ。それで急ぎ高高度に上昇し解放すれば良い、急げ!!」 

「むりむりむりむり! 今我慢して起爆を遅らせるので、精一杯なのよー!!」

 

 完全にヴェルドラを覆い、更に膨張を続ける魔力球。

 

 そこへ、「全くバカなんだから」と言葉を吐き無数の呪符を飛ばし、ヴェルドラを覆う光球ごと囲み覆い押さえ付けようとした瞬間。

 

 強大で圧倒的な力をリムルに感じ、目をクワッと見開きゾクリと尻尾を震わせた。

 

「しょうがねぇな」

 

 リムルが、やれやれと言った感じで言うと――刹那『魂暴喰』

 

 ゴオゥッ! 横薙ぎに激しい風が通り過ぎた感覚に襲われた瞬間ヴェルドラを覆う膨れ上がった魔力弾が覆い囲む呪符ごと全て消滅した……「何が起きたの? 喰われた……?」呆然とリムルを見つめたままついた、モモカの言葉。

 

 カヤは、猫耳を忙しなくピコピコさせ尻尾をブンブン振り目を瞬かせ「何が起きた? え? ええぇ?」訳が分からずヴェルドラを見ると、大きな左手がカヤの襟首を掴まみひょいと持ち上げヴェルドラの眼前に持ってこられ、ぷらぷらと借りてきた猫状態のまま問われた。

 

「ふぅ。さて、カヤ、どうする?」

「負け。あたしの負けだよ。だってまだ、奥の手隠してるでしょ? ヴェルドラ」

 

 ふへっと笑いにならない笑いを顔に浮かべて述べる。

 

 ヴェルドラも、お前はほんと冗談の塊みたいだなと苦笑いを浮かべ、二人目を合わせたまま不意にヴェルドラはカヤに「我と〝友〟になれ」と告げニヤリと笑顔を覗かせ、照れ隠しにポリポリ頬を搔く。

 

「お前は我とやり合える強敵故、強敵と搔いて〝友〟と呼ぶのだ! 我の愛読書〝聖典(マンガ)〟にもそう書いてあるのだぞ。今度見せてやろう。だから、我の友にならぬか?」

聖典(マンガ)? なにそれ、おかしいの。ふふ、あは、あはははは」

 

 大笑いするカヤに、「笑うではない!」と言うも少し照れ臭そうにしているヴェルドラの鼻頭にカヤの右手が伸びスリスリと撫でる。

 

 自分に関わった者は皆死んだ。乱破ノ里、猫神ノ里。

 もしまた巻き込み皆死んだら……。

 

 あたしは、もしかしたら今度こそ、全てを滅ぼす破壊者になるかも知れないと思い、戸惑い揺れる心……。

 

 撫でる手を止め離そうとすると、モモカが『思念伝達』で『いいじゃない、受けなさいな』と、カヤに言って来た。

 

『わたし達が強くなればいいのよ。それにヴェルドラ達は強いわ、理不尽なくらいにね。それに、ここで活動するには都合もいいしね。フフフ』 

 

 最後の方はつい本音がでて、悪戯っぽく笑って誤魔化した。

 

 決心したようにポンポンと軽く鼻頭を叩きながら、ほわほわした微笑みで言葉を返す。

 

「ありがとう、ヴェルドラさん。よろしくね」

「う、うむ。よろしくな。これからもヴェルドラと、呼ぶことを許すぞ。ヴェルドラでよい」

 

 カヤのモモカと極親しい者にしか見せない本当の笑顔、愛らしい少女と言える笑顔に何故だかヴェルドラは、少しドキリとしたのを誤魔化すように胸を張り「敬称はいらぬぞヴェルドラと呼ぶが良い」と言う。

 

 そして。

 

 おもむろに二人とも大声で、「あは、あはははは!」 「クフ、クアッーハッハハハハ!」笑いだし、半壊した闘技場に二人の笑い声が木霊(こだま)してゆく。

 

 

 ここに、ヴェルドラVSカヤの決着が付いた。

 

 

 後日、半壊した闘技場を見てゴブキュウの「なんじゃ、こりゃぁぁぁあああ!」の叫び声が空しく響いていたのであった。

 

 

 




 ここまで、読んで頂きありがとうございます!


 これからも、読まれる方に楽しんでもらえるよう頑張っていきますので、
引き続きご愛読頂けたら幸いです!

 では、次回「魔王リムル」お届けするまで、しばしお待ち下さい。


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