あたし達が温泉風呂のある施設に向かう途中、初老の男の鬼がリムルの所へ来て何やらこっちを見て話していた。
「リムル様。街の外は異常無しです。それで、そちらの二人が来訪者ですかな?」
「ご苦労だったなハクロウ。あぁ、ヴェルドラの友達になったカヤとモモカだ」
あたしはリムルの紹介に、ハクロウと言う鬼人にモモカと一緒にペコリと頭をさげた。
「ワシはハクロウですじゃ。カヤ様、モモカ様、ようこそテンペストへ」
「どうも、ご丁寧に。わたし達に敬称はいりませんよ、気軽にモモカ、カヤとお呼びください」
「中々に気さくな方ですな。しかし、ヴェルドラ様とやり合ったとこちらに来るまでに聞き及んでいました故、そのようなお力を持つ方に礼を欠くなど、リムル様の配下が礼儀知らずと思われてはなりませんからな。ホッホッホ」
「う~ん 別にいいのに。あたしとモモカはそんなこと気にしないし、ほんとにいいんだけど」
「まぁそう言うな、カヤ。敵対者でなければ、力を持つ者には礼を尽くす魔物たる所以だ」
リムルのいう事もわかるし、でも様で呼ばれるのはあまり好きじゃない。とりあえず、殿なら良いと言ってくれたからそれでいいかなと、モモカもそれで良いと言ったし、でも後ろ手に持ってるの仕込み杖式の刀だな……うーん。
ベニマルといいこの世界でも刀を使うなんて、不思議な世界だなここも。
「ハクロウ、この二人にスピアトロ食わしてやりたいから、準備頼むな」
「了解ですじゃ。ところで、カヤ殿は打刀を使うそうですな。流派はなんですかのう?」
「ん?
「おぉ! 流石にわかりましたか。ワシの流派は朧流ですじゃ。闇夜影千流……ふむ~ 聞き覚えのない流派ですなぁ」
「あたしも、人間だった頃に朧流と言う流派は聞いた事ないなぁ。たぶん、あたし達が死んだ後にできた流派かもねぇ」
「なんと! カヤ殿もリムル様と同じ〝転生者〟でしたか。なるほど」
「うん。そう言う事だからしばらく滞在するので、よろしくね!」
「こちらこそ、よろしくですじゃ」
それからハクロウさんは、今度自分達の訓練場に見学に来ないかと言われ、モモカとそれを了承し、リムルに言われた準備があるのでとその場を去り、入れ替わりでゴブタと言うホブゴブリンが来た。
なんと見た目は能天気そうなのに、第一軍団長と言うね、モモカもびっくりだったよ。
人は見かけによらない、いや魔物は見かけによらないだね。一緒に来たランガと言う魔物と
なんだろうね。気になるけど、次にきたガビルと言う龍人族がなんか暑苦しいと言うか、あれだ! なんか雰囲気が三太郎に似てて、最初「おお! どこからきた獣人族の娘かな」といきなり頭を撫でたものだから、軽くコツンしてやろうとしたら、それよりも早くリムルがガビルに事の顛末を話し、あたしのコツンが未然に防がれた。
う~ん、リムルの感の鋭さにはまいったね……ん? もしや前に似た事
あったのかな? そうそう、街中で力は使うなと言われた。あたしが下手に力使うと大惨事になるから禁止だと……う~ん禁止か、まぁいいかちょっぴりコツンならバレないだろう。
モモカが怪し気にこっち見てる。大丈夫、うん多分大丈夫だよね?
そうこうしてる内に、温泉風呂がある場所へ来た。
「ここが、温泉風呂がある所だ。サウナや色々な風呂があるんだぞ! こっちが女風呂で、こっちが男風呂、でこっちが混浴だ」
「へぇ~ 凄いね! こんなお風呂場見た事ないよ! 」
「ほんとね。綺麗な建物で温泉風呂場とは思えないわね」
「そうだろそうだろ! テンペスト自慢の温泉風呂だからな!」
「え? カヤ様、モモカ様、そっちは混浴ですよ?」
あたしとモモカは、シオンが混浴ですよと言うのを「あぁ、大丈夫大丈夫。あたしら人だった頃はいつも里の温泉露天風呂で男と一緒だったから」と構わず混浴へ入って行くと、ベニマル達は何とも言えない態度で、そこに行きたいけどまずいんだよそこは! という顔をしてシオンがあたふたしていたのだけど。
そこへシュナが来て後ろからあたしの両肩を掴むと「カヤ様、女風呂はこちらですよ」とニッコリ微笑みながら女湯へ連行された……解せぬ、なんでだ? モモカもシオンに連行されてきたよ。
「カヤ様、モモカ様。これがテンペスト自慢の温泉ですよ! ここの湯は魔物の健康にも良い効能があるのですよ!」
シオンがとても嬉しそうに自慢してるのを見て、本当にここの民はこの街が好きでリムルがすきなんだなぁと思った……なんだろうねこの感覚は、う~ん。ちょっとわからないや、でも見てて悪い気持ちがしないな……。
そういえば、シュナはリムルを自室のお風呂へどうぞと連行していったな、なんか見えない力関係が働いてるような。
危険だな……モモカと同じ危険さを感じるような、気がする。ってシュナさんいつの間にかこっち来てるじゃない、あれか空間移動で来たのか? しかし……シオンさん胸デカいな、小梅より大きいじゃん!ここにもいたか、〝暴れ乳〟育ちすぎだろ! なに食ったらあんなになるんだよ! くそー 、うらやましいぞ! このーー!
うん? モモカが、何やらシオンさん達に言ってるな。
「ねぇ、シオンさん、シュナさん。わたしとカヤに出来れば敬称無しで呼んでもらえると、嬉しいのですけど。ヴェルドラと友達になったといえ、わたし達は流れ者ですからモモカ、カヤと呼んでください。その方が気が楽ですのよ。フフフ」
「いや、しかし、ヴェルドラ様とご友人になられた方をそのような、リムル様とも友人なられましたし、なんとも」
「友人といっても、ヴェルドラからの流れですし……そうですね、わたし達もシオン、シュナとお呼びしますので、それでいいのではないですか? フフ」
「だねぇ、そっちのが気が楽でいいよねぇ~ 畏まったのは、あまり好きじゃないかな。ニヒヒヒ」
「ふふふ。お二人共とても気さくな方なのですね。わかりました。ではお言葉に甘えて、よろしくお願いしますね。モモカ、カヤ」
ニッコリと微笑んで言葉を返すシュナに、あたし達もよろしくと言うとシオンだけは殿付けで呼ぶ始末。
う~ん意外にお固い? 武人たるものなんたらかんたらと言う辺り礼節を重んじる種族なのかな。
武人か……あたしには無縁の言葉だな。
人斬りだった者には眩しいよ……その言葉は。
あとリグルドなるホブゴブリンが宴会の打ちあわせとかで、リムルと話してたけど流石に敬称無しは失礼に当たりますと頑として譲らなかったけど、ほんとリムルの配下達は礼儀がよくできてるというか人間よりできてるんじゃね?
絶対オトワには、この国を荒らさせたくはないな……。
脱衣所という所の前でボーッと考えてたら、モモカに何考えこんでるのよと小声で言われ、何でもないと答え、角帯の右後ろに結んでる飾り紐をポンと叩きひょうたん型酒蔵君を出して、ヒョイと肩に担ぎ千鳥はそのままロッカーという脱いだ着物を入れる所を教えてもらい、下げ緒に格納してロッカーに入れた。
「カヤ殿、それはなんですか?」
「これはねぇ、〝酒蔵君〟と言って五種類のお酒を入れれるすぐれものなんだよ! 今はにごり酒とドブロクしかないんだけどね。ニヒヒヒ」
「なんと! それはどんなお酒なんですか? テンペストにも魔黒米の〝醸造酒〟があるんですけど、同じようなお酒ですか?」
「ん? 〝醸造酒〟? それ知らないけど、温泉に浸かったら飲ましてあげるよ」
「あっ、私もいいですか? どんな味か見てみたいのですけど」
「いいよ~ まだ、いっぱい入ってるからね!」
着てる着物をさっと消すと、あたしは温泉に突撃した。何百年ぶりの温泉だろう。
う~ん この湯気の匂い、まさしく温泉だよ! とりあえず風呂桶でかけ湯して、あたしは温泉に浸かった。
に゛ゃあ゛あ゛ああぁぁ! モモカいわくオッサンくさいからこの声やめろと言われるけども、気にしない、これでいいのよ。
大きなお風呂、乱破の里にあった岩風呂の何倍も大きいな、またこんな大きな温泉風呂にはいれるなんて思わなかったなぁ。
では、お風呂で一杯と。
クピクピと酒蔵君を手に持ち飲み始めるカヤに、モモカがわたしにも一杯ちょうだいと手を出しカヤは酒蔵君を渡した。
「はぁ~ 温泉で一杯もいいものね。やっぱりにごり酒が、よく冷えてて美味しいわ」
ひとしきり飲むとモモカは、酒蔵君の使い方をシュナとシオンに教えてシュナに酒蔵君を渡す。
「一つ叩くとにごり酒で二つ叩くとドブロクなのですね。まぁ、このにごり酒は口当たりが爽やかで、ほのかな甘みと酸味が程よく効いてて飲みやすいです。次はドブロク……こちらは酒カスですか? 少しドロッしてそれでいて酒のカスが柔らかく、口の中で溶けてほんのりとした甘みが広がる……どちらも醸造酒とは違った味わいで、とても美味しいです」
シュナはコクコクと飲むと、二種類の酒の感想を述べた。
(トク爺……あんたの酒、こっちの世界の者にも美味しいと、言ってもらえたよ)
シュナはいける口なのかな? 聞くと嗜み程度と言ったけど、なんか結構お酒強かったりして、ってシオンが早く飲ませろと言ってるよ、そういや、元オーガの里の御姫様だったとか、そういやそんな雰囲気あるような、こういうのは人間も魔物も変わらないなぁ。
「シュナ様、ズルいです! 早く私にもください!」
「はいはい、シオン。でも飲み過ぎは駄目ですよ。この後もあるんですから」
「わかってます! ではでは」
豪快な飲みっぷりだなシオンは、酒蔵君じゃなければ一気に無くなるとこだよ。
「私は、このドブロクというお酒がいいですね! にごり酒も美味しいけども、中々にこのドブロクは美味です!」
なるほど、シオンはそっちが好みなのか~ でも意外にお酒は強くないらしいほんとに意外だねぇ。 小梅は物凄い酒豪だったな……ちょっと懐かしいな。
小梅には似てもないけど、雰囲気が少し似てるかもなんてね、ニヒヒヒ。
おや? モモカはえらくシュナと話がはずんでないかい? 気が合ったのかな珍しいな、あのモモカがここまで気を許すなんて、小梅以外見た事ないぞ?
あたしは、シオンと剣術に関して話したけどいやはやシオンも達人じゃんか、恐ろしやテンペストの民、いやリムルの配下だよな。
お互いの事を少し話して、ここテンペストは絶賛、
ここを起点に、あっちこっち行ってみるのも手かも知れない。
ゆっくり探す時間はあまりないけど、焦ってもどうにもならないし今日だけはゆっくりしてもいいよね。
さてと、色々話していい時間みたいだし上がるとしようかな。
あらら? 着替えがある、これ浴衣だ。
へぇー 流石、元日ノ本の民だねぇ。こういう物も再現してるんだ、モモカが何気に喜んでる。
フヒヒ、やっぱり何百年経とうとも女の子だねぇ~。
女風呂を出るとホブゴブリンのハルナさんが、こちらですと大広間に案内してくれた。
お、リムル達早いなもう来てるよ。
「カヤ、モモカ、よかったろ? 温泉」
「うん、ほんと、久しぶりにいいお風呂だったよ!」
「ええ、とても広くて綺麗なお風呂で、よかったわ」
「そうか! まぁ座ってくれ料理もそろそろ来るだろうし」
座席がコの字型で、上座真ん中にリムルでその横に座るように促され右ヴェルドラ、あたしで左にモモカという並びになった。
おや? コの字座席の真ん中にデカいまな板? があるな何するんだろう? 立って魚を料理する? なにを作るのかな。
この机? みたいな物テーブルと言う物だと、教えてくれたよ。
それにしても豪華なもんだね~。
うんうん、そしてコの字の右側にダコラ達が来てた。ダコラとラナがめっちゃ緊張してる、まぁそうだよねいきなりテンペストの魔王の宴会に呼ばれるなんて、配下でもないダコラ達にはびっくりもんだよねぇ~ あ、ラコルは御馳走食べれるって喜んでるな。
フヒヒ、やっぱり子供は強いね……あんな六歳を送れるなんてラコルは幸せ者だよ、うん、いい子だなラコル。リムルがこの国を治めてるから、皆あんな笑顔をができるんだろうね、ちょっぴりうらやましいぞぉラコル。フフ。
「それじゃあ、ダコラ達を助けてくれたカヤとモモカに、感謝の意を込めて細やかながら宴会をここに開く! ミカエルとの事もあるが今日は皆英気を養ってくれ! 乾杯!」
皆が一斉に「乾杯」と言うと宴会の始まりだ。
うぅん? なんだこの大きな杯は、ビールジョッキとか言うそうだ、知らない物ばかりだなここは、ハハハハ。
冷たい、そして上に泡だ……。
二人してジーッと見てると、リムルが少し心配そうに話しかけてきた。
「ん? お前ら酒はだめか?」
「いや、飲めるよ。ただめっちゃ冷たくて、シュワシュワ泡立ててるお酒なんて見た事ないしねぇ」
「ねぇ、リムル。このお酒この世界のお酒なの?」
「あぁ、これはビールと言ってな俺のいた日本で飲んでた酒を、この世界に再現したんだよ。他にも色々あるぞ!」
「そうだぞ。リムルは美味い酒に、料理に菓子と他にも魔導列車など、色々物をこの世界にもたらしたんだぞ。すごかろう! クハハハハ」
「うーん なにが凄いかわからないけど凄いな!」
「ほんと、わたし達がいた日ノ本とはあまりにもかけ離れてるわね。フフフ」
よし! 飲んでみよう。苦い……けどもこの喉を刺激して通っていく感じ……。
美味い! なんだこれ、めっちゃ美味しいじゃない!
お、串に刺して焼いたお肉か、おおー! これも塩味……違うななんだこれ美味い! そしてこのビールと言う物にめっちゃ合うじゃん。
モモカもこのビール気に入ったみたいだね、御代わりしてるよ。
そして、この汁みたいな物はコンソメスープと言うらしい、丸い柄のついたスプーンで飲むらしいが、うーん、美味しいけど味噌汁みたいに飲んでは駄目なのかなぁ。
色々料理あるけど
デカいお肉きたよ! やほーーーーい!
鉄のお皿に乗ってジュウジュウいって油が跳ねてるよ。いい匂いだね香辛料と言う物を使ってるって聞いたけど、凄いな色々な味が楽しめて。
ほう、このナイフで切ってこっちの
うーんお箸が欲しい処だねぇ、どれどれ……おおぉ! 肉が口の中で解れていくじゃない。しかも肉汁がジュワッと溢れる感じ、これは未知のお肉だよ!
「どうだ、カヤ、モモカ。
「うんうん、こんな柔らかいお肉初めてだよ!」
「ほんと、この香辛料と言う物で焼いたお肉は、ビールによく合うわね」
「そうかそうか。気に入ってくれてよかった。あまり食い過ぎるなよ、もう少ししたらまだ美味い物食わせてやるからな」
「大丈夫だよ、リムル。魔物だしいくらでも食べれるよ~」
「フフフ、そうね。人間みたいに太る心配もしないでいいしね」
あたしは、食べ終わって追加のお肉を頼むとお皿一杯の
モモカにあげるかな
「モモカー 葉っぱいらないからあげる。食べて」
あたしが言うと、一斉にその場の皆があたしを見た、リムルもお前何言ってんだーという顔をして見てる。
「カヤ。それは葉っぱじゃなくて、野菜で作ったサラダという料理なのですよ」
あれ? シュナが微笑みながら物凄いオーラ出してない? 気のせい?
「あ、シュナ。葉っぱいらな――」
「カヤ。サラダですよ。葉っぱではありませんよ」
(うぅぅ、微笑みながら迫るの、やめろー!)
うっ……やばい、この内なる迫力はモモカに通じるものがあるじゃない。
これは逃げれない、モモカまじ助けろ、ねぇこっち見ろよ、あ! そっぽ向きおったー。
「カヤ、この野菜は魔物の健康にもいいのですよ。体内の魔素の流れをよくしてくれる働きがあるのです。それにカヤの好みそうなドレッシングを選んだので、一口どうぞ」
優しく諭すように言われ、あたしは、一口葉っぱを食べてみた。
パリパリパリ、モシャモシャ。
あ、酸っぱいけども、辛みがピリリと効いて……おいしい。
「シュナ、おいしいよこれ。葉っぱじゃなくってサラダ。うん、これなら食べれる」
「そうですか、よかったです」
ニッコリと笑顔でシュナが答え、御代わりいりますかと聞かれ、あたしはサラダも御代わり頼んだ。葉っぱもああいう食べ方あるんだね、驚きの連続だよ!
ここのご飯はあたしらのいた日ノ本のご飯事情とは、大違いだよ!
「シュナ、よくカヤに野菜食べさせたわね。あの子の野菜嫌いはあたしでも、手を焼いていたもの。フフフ」
「モモカ、どんな食材でも美味しく調理すれば、食べて頂けるんですよ。それに、食べる方がどのような味が好みでどような物が苦手か感じ取ると。おのずとその方が好む料理が見えてくるものなんですよ。ふふふ」
「はぁ、全く凄いわねあなた。料理の腕もさることながら、魔法に関しても相当な腕でしょ?」
「いえいえ、私などまだまだ精進しないといけませんもの。ふふ」
「謙遜を。フフ」
あ~ モモカとシュナ、ほんと仲が良くなったねぇ。
まぁ、モモカも楽しそうでなによりだよ。
おや、真ん中のデカいまな板の前にハクロウさんがいつの間にか来てた。
なに! リムルが物凄いデカい魚を出したぞー! どうやったんだー!?
これが、もしやあたし達が食べた事ない物なの? でも、楽しみだ!
焼くのかな? 焼き魚か~ 塩焼きいいな~ デカい魚を捌き始めたな、おぉ、流石包丁捌きが上手いなぁ、テンペストで剣術を教えてるだけあるね。
お酒も進み、お肉も追加は平らげた! さぁ、次はこのデカい魚だ!
ここまで、読んで頂きありがとうございます!
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