転生したらネコムスメなんだけどの件   作:にゃんころ缶

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 お待たせしました! 四十一話です。




四十一話 ネコマンマ商会

 

 

 リムル達への経過報告が終わった後、カヤとモモカはミョルマイルに焼き鳥屋をするいい物件は無いかと尋ね、何故に焼き鳥屋をと逆に尋ねられ、こちらに支部を作るからと答え、子供達三人に加え、若い女と初老の女の計五人が住める建物がいいと言うと、「わかりましたわい! 飲食街にすぐ探させましょう」と快く引き受けてくれた。

 

 物件の代金と家具やその他諸々の準備予算として、これ位でと金貨百枚を渡し、二人は四日程テンペストで用事などを済ませ、再びイングラシア王国へと空間転移して行った。

 

 イングラシア王国での飯屋の買収は意外にすんなりいき、相場より少し高めの金額を積むと建物のオーナも飯屋の主人も、「ここよりもっと大きい家が出来る!」、「やったぞ、もっと大きな店が持てる!」そう言いながらベゼットの出した金額に満足し、カヤ達がテンペストに帰ってる四日の間に双方の引越しを終えていたのであった。

 

「おおー 手早いねー もう引っ越しできたのか」

「ほんとね。よく交渉がすんなりいったわね」

「いや、少しばかり相場より高めに交渉したんでさ。新しく家と店が出来るまでの住処も付けたんで、大喜びでしたよ」

「ほー 無駄遣いしたの? ベゼット」

 

 ジト目で見るカヤに必死に説明をするベゼットは、急ぎとの事だったから多少無理をしてでも間に合わせたのに、ダメなのか? これ俺死ぬんじゃね? など焦り捲りしどろもどろになっていく。

 

「い、いえ、 カ、カヤ姉さん、とりあえず急ぎとの事でしたので必要経費です! 本当に無駄遣いなどは、してませんですので……ちょっと高めにして、ゴニョゴニョ」

「おい、何故最後の語尾が小さくなるの? って冗談だよん。あんたにしては上出来だ、ご苦労さん」

「あ、いえいえ、(ほあぁぁぁ。心臓に悪いわ! マジに……)滅相も無いです。それで、向こうの方はどうでしたか?」

「そうね、皆を集めて頂戴。これからの大まかな方針を伝えるわ」

 

 カヤがベゼットをからかう様に笑い言い、冷や汗を流すベゼットにモモカが皆を集めろと指示を出す。

 

 まだ、テーブルなどなくガランとした一階の空間に、配下達十九人が集まり、厨房を背にしてカヤとモモカは椅子に座り、配下達は引越しに使った木箱などを椅子代わりに腰を掛けていく。

 

 モモカは〝三賢酔〟の本部へカヤと挨拶に行くとの事と、今後ネコマンマ商会は暗殺の他諜報活動、要人警護、様々な依頼を受けると伝え、皆がそれに静かに頷いていく。そして普段は、飯屋、焼き鳥屋などを経営して敵対組織を欺き、一般社会に溶け込み生活を営み完全に裏の顔を偽る事など、次々と新しい方策がモモカの口から告げられる。

 

「それで、モモカ姉さん。諜報活動って具体的に何を探るんですかい?」

「全てよ。雑多な話から、物騒な話まで全てよ。まず、飯屋、焼き鳥屋に来る客などの与太話でも聞き洩らさない事。要は、情報取集と言う事よ。忍び込み暗殺してきたあなた達なら造作もないでしょ? フフフ」

「それはそうですが、勝手が違うと言うか……俺らに出来るんですか?」

「あなた達、依頼が来た時は一応裏を取りに行くでしょ? それと同じよ」

「ああ! なるほど、それの応用ですかい!」

「そういう事。それに国ごとに諜報機関はあるけども。裏の、それももっとも深い裏情報を知り得る者は、わたし達以上に適任者はいないし、高く売れるわよ~。フフフフ」

 

 質問してきた、若手の男二人はヨシとガッツポーズをし、他の配下の者もモモカの言葉に目をギラギラさせ、早くも自分の持つ情報が幾らになるかなど、考える者も出る始末でいた。

 

 その様子を見ていたカヤが、口を挟んでくる。

 

「あ~、多分いないだろうと思うけどぉ。勝手に組織に隠れて――小遣い稼ぎする奴は、わかってるよねええぇぇぇ?」

 

 目が完全に笑ってない笑顔で言葉を放つカヤに、先程ガッツポーズをした男の一人が、おずおずと聞いてきた。

 

「え、-と。カヤ姉さん、それはつまり抹殺されると、いうことでしょう、か?」

「ん~。殺しはしないよ~」

 

 それを聞いた男は、ホッと安堵の息を吐くが次の言葉で顔から血の気が無くなり、カヤの恐ろしさを噛み締めることとなる。

 

「そだね~ 組織からは永久追放で~ 組織に関する記憶だけ奪うかな。キキッ。サイファーはあちこちに喧嘩売ってたよねぇ。組織の看板が無くなった、只の暗殺者なんて、敵対組織に拉致られてぇ、それはそれは物凄い拷問を喰らうよね~。ウヒヒヒヒ。知ってる事を全部吐けって言われても記憶を消されてるから言う事もできないし、情報吐くまでやめない! って、あんなことやこんなこ事とかー。 あ! そうだ、敵対組織に渡すより、殺して心核ごと魂を狩り取って、知り合いの悪魔族に渡して、魂が纏ってる力が消えるまで永劫と思える時の中で、耐えがたい苦痛を与えるのもいいなぁ~。気が狂う事もできず自我は保ち続けられるから、お得だね! 大丈夫! あんたらクラスなら、精々三百年か四百年耐えれば綺麗な魂に浄化されるよ。ウヒヒヒ」

 

 悪鬼が来たりてなんとやら、配下全員が死神に抱きつかれ頬にキスをされて命を狩り取られる錯覚に陥っていた。

 

 あどけない顔をして、ニヤーッと残忍な笑みでつらつらと言葉を並べる言うものだから尚更である。

 

「「「怖い、お話し? (カヤ姉さんの方が怖いかも……)」」」

 

 子供達三人だけはモモカがしっかり結界でカヤの殺意から保護していたので、只の恐い話にしか感じられなかったが、本能的にカヤの怖さは感じ取っていたのである。

 

「ずいやぜんーー! 俺があほんだらでしたああああああっ! チラとでも小銭稼ぎしようとなど考えた事、殺されても文句ありやせーーん!!」

 

 一介の暗殺者が恐怖に涙を流し顔をグシャグシャにし、カヤに謝罪した。

 

 泣き喚き謝罪する男の姿に配下全員が同じ暗殺者でも、カヤとモモカは自分達とは違う、同じ暗殺者でも格が違い過ぎる、悪の質があまりにも自分達とかけ離れている。

 そう確信した日であり、全員が二人を組織のボスとして従うのではなく、心から忠誠を誓うと決めた日。

 

「いいか、あんたら! 組織と仲間を裏切る奴は許さないよ! あんたらが知り得た情報は組織の飯のタネだ! 組織の存亡はあんたらが担ってると思え! 只の殺し屋ではなく闇より出づる暗殺者になれ! 何者もからも恐れられる暗殺者になれ! 群れるな! 群れを狙う一匹の山猫になれ! 牙を研ぎ澄ませ! 爪を突き立てろ! 無情の刃を振るえ! 闇は光に、光は闇に、我らは闇すらも喰らうもの!!」

 

「「「「「「闇は光に、光は闇に、我らは闇すらも喰らうもの!!」」」」」」

 

 カヤの凛とした口上に皆が立ち、合わせ言い終わると一斉に(ひざまず)(こうべ)を垂れた。

 

 それをキリッとした顔でモモカは見渡し、皆に告げる。

 

「皆、聞きなさい。今から〝三賢酔(リエガ)〟に乗り込んで、わたしとカヤで話を付けてくるわ」

「姉さん方二人で大丈夫じゃろうか? 腕の立つ者を何人か連れて行ってはどうですかの?」

「いらないわ、ザーバ。いても足手まといよ。ちょっと行って、わたし達がやる事に手を出したら容赦なく殺すわよ、と、言ってくるだけだもの。フフッ」

「手を出したら殺すですか、中々に物騒じゃのう。フエッフエッ」

「二、三日の内に、経営アドバイザー、料理、接客、行儀作法の講師が来るから、皆きちんと学ぶように、いいわね! それと、地下室を造りに、ホブゴブリンとハイオークの職人も来るから丁重に向かえるように! さあ、取り掛かりなさい!」

 

 一階の店に集まってた配下の者達はモモカの号令と共に、慌ただしく動き出しアドバイザー達の受け入れ準備、まだ片付いてない住居、店の準備に散っていく。

 

 それを見ながらモモカは転移陣を二つ二階の一室に作り、一つを指差しここからアドバイザーや講師、職人が来るとザーバに伝え、地下室が出来たらこの転移陣を移すようにともう一つの転移陣を指差し、ザーバにだけ移設権限を与え、移設したら地下室の入り口は完全に潰すように言い、既に組織員全員の登録を済ませてあるのも付け加えた。

 

「そうだ、ザーバ。アドバイザーや講師職人の転移陣登録は仕事が済んだら自動的に抹消されるから、心配いらないわよ。この転移陣は地下室を行き来するのも兼ねてるからね。それじゃ、いってくるわ」

「了解しましたじゃ。お気をつけて」

 

 伝える要件を全て済ませ新アジトを後にし、カヤとモモカは〝三賢酔(リエガ)〟の拠点を目指し歩くその姿は、いつもの膝丈までの小袖をベースにしたスタイルだが、二人の小袖の色だけ変わっていた、朱色である。

 

 シュナの工房に出入りしてる時に見かけた朱色の着物を甚く気に入り、それを見たシュナが地獄蛾(ヘルモス)の幼虫の糸と『粘鋼糸』を使い小袖を作り、二人にプレゼントした特注品であった。

 

「やっぱり、これだよね~ ブルゾンとかより。この色いいよね~ モモカ似合ってるよ」

「ほんと、いい色合いだわね。カヤも、似合ってるわよ」

「そう? ウヒヒ」

「そうよ。フフフ」

 

 カヤはモモカと顔を見合わせクスクス笑い、モモカも同じくクスクス笑いながら、遠く見える〝三賢酔(リエガ)〟の拠点へ視線を移す。

 

 

「グレンダ、サイファーの行方が完全に途絶えた。いきなりだ、ここ数日全く配下の者の

ですら行方が掴めん。ただ、何か怪しい女の二人組が接触してからだと奴らを監視していた者からの報告だ。もっともその監視者も、意識を狩り取られて拠点の入り口に捨てられていたがな……」

 

 〝三賢酔(リエガ)〟の拠点にある地下室では、〝緑の使徒(ヴェルト)〟のジラードがグレンダにサイファーについての報告をしていた。他には〝七刃〟、〝賢人会〟、〝暗天衆〟などの幹部が一堂に会し、定例報告会議を行っており、各組織の護衛と称する組織員も来ていた。

 

「そうかい、厄介だねぇ。それで、その女の素性は掴めたのかい?」

「いや、女二人を監視、尾行していた者は、皆昏倒され拠点の前に、捨てられていた」

 

〝暗天衆〟の幹部の一人の発言に、なに! 狂忍達がいとも容易くやられただと! と皆が口走り、その場に動揺が走るもグレンダの一言でピタリと静まる。

 

「黙りな! 動揺する前に自分達の未熟さを反省しな! アタイらより、その女達が一枚上手だったということさね。やられたら、きっちり落とし前はつける、それだけだよ!」

 

 グレンダの言葉に、皆が顔を引き締め頷て行く。

 

 そこへ。

 

 グワッ! ギャアァッ! 何もんだテメエら!

 

 何かが砕ける轟音と怒号が響く。

 

「「「「「何奴!!」」」」」 

 

 蹴り破られた入り口に、そこに居た者全員が視線を向けた。

 

 入ってきたのは猫亜人の娘、二人。

 

 グレンダ達は先に入ってきたカヤに目を向ける。朱色の膝丈迄ある小袖に黒色の角帯を締め、腰に打刀を差し、小袖の下は黒のハーフスパッツを穿いていて、脚には同じく黒の脚絆を付けて、白足袋に旅草鞋といった見慣れない恰好をし、髪は黒で肩上より少し短い位の長さで、あどけない愛らしい顔でニコニコ笑っていた。

 

 次にモモカの方へ目を向けた。そのいで立ちはほぼ同じであったが、朱色の小袖の上に紺色の薄羽織を羽織っていて、腰後ろに小脇差を差していた。髪はやはり黒で、腰上までの長さの髪を首後ろで白色の飾り紐を使い結んで馬の尻尾のように垂らし、清楚で可憐な顔付でほわりと微笑んでいた。

 

「よお、お邪魔するよ~ ボスはいるかい?」

「あらあら、何か怖そうなオジ様たちが雁首揃えて、何してるのかしら。フフフ」

 

 見るからに十代の少女にしか見えない猫亜人に、その場にいる者は唖然とするがグレンダだけは、動じることも無く二人の前に歩み出る。

 

「なにもんだい? あんたら」

「猫亜神だ、ただの亜人じゃねえぞ、神が付く亜神だ。そして、サイファーを掌握した者だ」

 

「亜神だと……」

 

 亜神と聞き、幹部の一人が震えながら呟く。

 

 更に、サイファーを掌握したと聞かされてまた組織員に動揺が走るが、構わずにグレンダが二人に問う。 

 

 ワインレッドの派手で露出の多いドレスを着た、グレンダの右太腿を二人は見る。

 

 右サイドの深いスリットに現れた太腿に付けられたホルスターに、黒く鈍い光を放つ、自動拳銃が入れらていた。

 

 その拳銃は、ワルサーP99を模した自動拳銃であった。

 

((ふ~ん、短筒(たんづつ)か?))  ※短筒とは火縄銃のピストルタイプの呼称

 

「サイファーを乗っ取って何がしたいんだい?」

「うーん、とね、お酒飲むのも美味しいお肉食べるにもお金がいるじゃん。だからね、お小遣い稼ぎに小さい組織でも従えようかなぁーと、思ってね。ククッ」

 

 小遣い稼ぎと聞き、更にグレンダ以外の者は呆気にとられ、何だこの小娘達はと奇怪な目で見ていた。

 

「ほんとに、只の小遣い稼ぎですよ。これからはこちらはこちらでやるので、手出しは無用でお願いしますわね。フフフ」

 

 「俺達に逆らって無事にここを出られるとは思うな!」

 

 カヤに昏倒させられ、拠点の入り口に投げ捨てられた狂忍の一人が、カヤに目掛け、五本のクナイを常人では捉えられない程の速度で投げる―― 

 

 ――そこへ一閃、カヤが千鳥を抜きざまクナイを弾き、投げた男に不可視の斬撃を飛ばし、両脚を膝から斬り飛ばした。

 

「ア゛ギャァァア゛ア゛ア゛!!」

 

 膝から下を失った男は絶叫し床を転げ回り、脚から噴き出る血を床にまき散らしていく。

 

「見た目に惑わされ、相手の力量も計れないあほんだらは、引っ込んでな!!」

 

 地下室に満ちた空気が凍てつき吐く息が白く感じられるような、圧倒的な殺意の解放。

 

 そこに居たほとんどの者が床に縫い付けらたが如く、動けなくなっていた。

 カヤの、凄まじい殺意が襲ってきたのである。

 

 辛うじてジラードは動けたが、周りを見渡し〝三賢酔〟始まって以来の危機ではないかとグレンダを見るが、グレンダは悠然と立っていた。

 

 これは、いける! まだグレンダがいると、グレンダの強さにジラードは掛けた。

 

 グレンダは事前に聞いて一度この殺意を体感させてもらっていたので、平静を装う事ができていたのだ。

 

「そうかい、仕方ないね(何て、禍々しい殺気だい……。こんな殺気、傭兵時代にも

感じたことないよ。ガチで、あの時より更にキツイじゃないかい!)」

 

 そう言葉を吐いた刹那――

 銃を抜き撃つ。

 

 〝ファストドロウ〟

 

 腰だめで、マガジンに装填された十五発の魔弾と薬室に入れられてた一発の魔弾、計十六発が一気に撃ち出され、カヤに八発、モモカに八発と魔弾が襲う。

 

 甲高い発射音はあまりの早撃ちに、十六発撃ち出されたのに一つにしか聞こえなかった。全ての魔弾を吐き出し、スライドがカシーンと音を立て止まり、その反動でグレンダの右手首が軽く上に跳ね上がり、宙に舞う空になった十六個のカートリッジが床に落ち、チリンチリン、軽やかな金属音を立て跳ね回る。

 

 ユニークスキル『狙撃者(ネラウモノ)』による空間操作で、二人の急所目掛け空間転移した魔弾が眼前に現れる。

 

 〝跳躍の魔弾(ワープショット)

 

 音速で眼前に飛来した魔弾は誰も(かわ)せない、皆そう思った。

 

 モモカの周りに魔素の火花を散らし、八枚の呪符が瞬時に現れ全ての魔弾が防がれていた。

 

 一方カヤは両手掌を広げたまま横に広げ、ニヤリと口端を上げていた。

 

 両掌からはプスプス煙が上がり、やはり音速で迫る全ての魔弾を残像すら残さない速さで、(はた)き落としていたのであった。

 

 グレンダの魔弾を防いだ二人に、〝三賢酔(リエガ)〟の者達は目を見開き完全に固まり、呆然(ぼうぜん)と立ち尽くすだけで、グレンダとカヤ、モモカを交互に見る。

 

「ふん、やるね。なら、これはどうだい!!――」

 

 素早く空になったマガジンを落とし、新しいマガジンに交換し次弾装填。

 

 カランと空になったマガジンが床に落ち、乾いた音を響かせる。 

 

「――まてい!! お前達なにをしておる!」

 

 グレンダが撃とうとしたしたその瞬間、一際響く圧の籠った声が響き渡る。

 

 地下室にある壇上に一人の男が現れた。

 

 現れたのは〝三賢酔(リエガ)〟、三首領の一人ガルド・ミョルマイルその人である。 

 

 悠然と壇上の椅子に座り、右にグレンダ、左にジラードが立ち、そして組織員達が綺麗に左右に別れ、跪いていく。

 

「へえ~ あんたがここのボスかい?」

「いかにも。お前らは一体何用でここへ来た」

「サイファーはわたし達が貰ったわよと、伝えに来ただけですのよ。フフ」

「それで、お前達はワシらに逆らうと。そう言うのだな」

「まあね~ こういうことだよ」

 

 カヤは言うや神速の抜き打ちで、斬撃をミョルマイルに向かって飛ばす。

 

(ヤバッ! ちと、強すぎた。テヘッ)

 

 ガギュンッ! けたたましい音が室内に響き、不可視の斬撃はミョルマイル達を包む半球状の結界に妨げられ、面に沿って上に駆け上がり壁と天井の一部を破壊し、砕けた破片が結界に降り注いだ。

 

 予めモモカがミョルマイルに渡しておいた呪符結界が、着ていた黒スーツの(うち)ポケット内で反応して防御結界を張っていたのだが……。

 

(ちょっとカヤどのーー 聞いていた威力とは違いますぞーー!!)

(あぶな! なんだい、アタイらを本気で殺す気かい!)

 

 いくら事前に聞いていたと言え、手加減して結界に阻まれても壁、天井の一部を破壊した威力に内心文句を叫ぶ二人だった。

 ジラードは穏やかな顔で目を開けたまま気絶していた。

 

 組織員達は全く動じない壇上の三人を見て、落ち着きを取り戻しカヤとモモカを鋭く見据えて行く。ミョルマイルは脚を斬り飛ばされ呻く狂忍の一人に、完全回復薬(フルポーション)をかけるように手で支持し、カヤとモモカに視線を戻し短い溜息を静かに吐く。

 

「フンッ。お前達、ワシらと戦争をするつもりか?」

「いんや、あたしらはあたしらでやるから、よろしくねってことだよ」

「しかし、お前らの仕事と、こちらの仕事がカチ合えば殺し合いに成るやも知れんぞ? よいのか、それで」

「別に構わないですよ。それでこちらの配下が死んでも、弱かったと言うことですもの。それに、わたしとカヤは小競り合いなどに関知はしませんよ。メンドくさいもの」

「ほおー あくまでもお前ら二人の小遣い稼ぎと言う事か。大層な小遣い稼ぎだな」

「どうしても、戦争やりたいって言うならいいよ。国ごと亡ぶ覚悟があるなら、来なよ」

 

 カヤは言い放つとトンと軽く右足を踏み鳴らした。

 

 最初はほんの少しだけ。

 

 二回目はもう少し力を入れて踏む。

 

 ズズズズッ、軽い振動が床に伝わり、次第にその振動波は強くなり地下室全体が揺れていき、組織員達は何が起こったと騒ぎ始める。

 

「静まれい!!」

 

 ミョルマイルの怒号を耳にした者達は、一応に押し黙りまだ微かに揺れる床に戦々恐々としているのを見て、カヤがクスクス笑い右足の爪先で優しく床をトントン叩く。 

 

 小さな揺れが続く中、ミョルマイルは意に介せず言葉を投げ放つ。

 

「ふむ。よかろう、お前達の組織は好きにやると良い。しかし! 行き過ぎた悪ならば同じ悪の〝三賢酔(リエガ)〟がサイファーを完膚なきまでに叩き潰すぞ。よいな!」

「ああ、いいよ、それで。その時はサイファーの恐ろしさを知るだけだよ。ウヒヒッ」

「手を出すならお好きにどうぞ。悪はより大きな悪に喰い潰される、その覚悟はありますか? それでは、ごきげんよう。フフフフ」

 

 挨拶は済んだとばかりカヤとモモカは空間転移し、ミョルマイル達の前から消え去った。

 

 カヤ達が去った後、流石三首領の御一人! あの凶暴な魔物にも屈せず堂々と渡り合うなど中々できませぬぞとミョルマイルを称える声があちこちから上がり、ミョルマイルの〝三賢酔(リエガ)〟における首領と言う地位を、更に盤石なものに押し上げて行った。

 

 それからグレンダが、今日来た亜神に関しては、今後一切手出し厳禁! と告げ。 

 

 更に、今日の出来事は記憶から消せと皆に命じる。

 

 それを聞いた皆はゆっくりと首を縦に振り、サイファーの配下と揉めるのは良いが、亜神には絶対に触れるなと言う(めい)が厳しく全組織内に言い渡される。

 

 そしてここに、カヤとモモカの〝三賢酔〟に対する警告は終わり、これを機に両者には絶妙なバランスの敵対関係が、築かれる事となる

 

 

 カヤ達の襲撃からしばらくして、イングラシア王国にある新アジト、ネコマンマ亭がオープンした。

 

 そこから更に数日して、テンペスト飲食街に小さな焼き鳥屋ネコマンマが、オープンに至る。

 

  表向きは暗殺組織サイファー、その実態は飯屋と焼き鳥屋を経営し、裏の顔を隠す者達の集まる組織。

 

 暗殺から、要人警護、情報取集など請け負う何でも屋、〝ネコマンマ商会〟。

 

 その組織に属する者は皆、〝魔鋼〟製の指輪、バッジ、などを身に付け、それには片目をつむり舌を出した猫の顔が彫られていた。

 

 まるで、猫があっかんべーをしてるような紋章。

 

 この人を食ったような紋章は後に、唯一〝三賢酔(リエガ)〟に抗う組織の象徴として裏社会で畏怖の念を込めて語り継がれることになるのであった。

 

 

 




 いつも読んでくださる皆様、本当に感謝です!

 次回の更新も、何卒よろしくお願いします!
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