転生したらネコムスメなんだけどの件   作:にゃんころ缶

45 / 94
 2019年・12月25日の初投稿から今日で一年経ちました。まさか一年も連載できるとは
思ってなくて、正直ビックリしています。

 これもひとえに、ここまで読んで頂けた読者の皆様のおかげです。
 
 本当に、本当にありがとうございます!!

 
  それではお待たせしました! 四十五話です。





四十五話 またね(カヤ視点

 

 うやー ここも魔物や人多いな~。

 

 三人で底の浅い浴衣下駄をカラコロ鳴らしながら歩いてると、イリア達を連れたディーナとばったり会ったよ。おおー イリア達も密かにプレゼントしてた浴衣着てるじゃん。     

 花を模した柄の浴衣がよく似合うね。

 トリアスは甚平とかいう着物だけど、これも似合ってるねぇ。

 

「お! ディーナ~ 子供達連れて花火見物かな?」

「こんばんは。今日は臨時休業にして、この子達と花火と言う物を見ようと思ってね。義母さんは人混みは嫌だから、留守番でいいって残ってるよ。ところでその子は、カヤ姉さんの子供?」

「ちがうわ! 昼間も同じ事言っただろうが! まったく。この子はラコル、ちょっとした知り合いなんだよ」

「ふーん。ラコルちゃんこんばんは。私は焼き鳥屋をやってる、ディーナだ。よろしくね。ほら、あんた達も挨拶しな」

「イリアよ、よろしくね。ラコルちゃん」

「メ、メイムなの」

「トリアス、よろしく」

「ディーナさん、イリアさん、メイムさん、トリアスくん、よろしくですー!」

 

 相変わらずトリアスは無愛想だな、フヒヒ。

 イリアは流石お姉さん、ちゃんとできてるね。

 メイムは、あらあらイリアの後ろに隠れてるし、人見知りは健在だね~フフ。

 

 行き交う人や魔物が多いので、通りの端に移動して少し話しをして、ディーナ達と別れたんだけど、ディーナ達はかなり慣れて来たみたいだ。

 

 うまく、一般の民に紛れてるわ。

 

 うんうん、頑張ってるね~。 

 

 さーて、ヴェルドラの屋台はどこにあるかなぁ。

 焼きそば、ホットドッグ、りんご飴、クレープに、わた飴、と色々あるな。

 

 ほーんと、リムルの元居た日本は凄いな、様々な食べ物に溢れてるよ、食の楽園だね!それをこの世界に再現なんて、世界征服をするより凄くない? そのおかげであたしは、美味い酒に、美味い食べ物が食べれてるんだけどねぇ~。  

 

 うやや!? あれヒナタじゃないの? やっぱりヒナタだ。って子供達連れてるし、子沢山か! という冗談かましたら「あなた、死にたいの」とか言って、絶対怒るよなぁ。

 

 しかし、何か子供達以上に買い込んでるし……なんか、意外な面を見たかも。

 うーん、あれがリムルの言ってた保護した〝召喚者〟の子供達かな?

 

 ちょいと『一隻眼』で見てみようかな。

 ほうほう、なるほど中々に潜在能力高いなー。

 どうなってんだよ! この魔国は!

 

 ふにゃ!! なんだ……あの子は、何もんだ……あの子だけ魔王級の力を感じるし、あれはヤバいなー え? 一瞬こっち見やがったよ! どーもあの子は天敵の匂いがする。

 

 とりあえずここから離れようっと、触らぬ神には祟り無しってね。 

 あっ! ヒナタに見つかったよ、しかもこっちに来るし。

 

 着てる服が濃い紺色ノースリーブワンピースに、帯剣用のベルトしてレイピア下げてるなんて、どんだけ武闘派なんだよヒナタは。

 まあ、あれかミカエルとの戦争継続中だから、用心の為なんだろうねぇ。

 しかし、天使ってかなり厄介な連中って、ラミリスが言ってたなぁ。

 見かけたらぶっ殺しておこうかね、リムルから報奨金貰えるかもだし、ウキキ。

 

「カヤ、モモカ、こんばんは。あなた達も来てたのね」

「ヒナタも、ここの出店目当てなんだろう~ キキッ」

「こんばんは、ヒナタ」

「ちょっとした息抜きよ、カヤ。ほんと、相変わらず一言多いわね」

「ニャハハ、そう? 照れるなー」

「褒めてないから、バカなの?」

「にゃにおー バカ言う子がバカなんだぞ!」

「あ! ラコルちゃん、こんばんはー」

「クロエおねえちゃんたち、こんばんは~ ヒナタおねえちゃん、こんばんはー」

 

 ふえっ! ラコルあの子達と知り合いなんかーー、しかもヒナタとも顔見知りって、お母さんはそんな事聞いてませんよ! お母さんじゃないけど、なんかそんな気分だわぁ。

 

 そう言えば学校とか言うのに行ってると言ってたなぁ。

 ヒナタもなんか、剣の稽古付けにテンペストに行ってると言ってたけど、あの子達の事だったのかぁ。

 

 三崎剣也に関口良太は日ノ本の子で、ゲイル・ギブスン、アリス・ロンド。

 そして、クロエ・オベールが南蛮人の子か……この子、マジにヤバくね?

 しかし、このクロエって子どう見ても魔王級なんですけど、それもとびきりの。

 あー !? あれか、リムルの言ってた〝勇者〟とかいうのか、な?

 

「こんばんは、お姉さん達、クロエです。リムルさん――先生からよく聞いてますよ」

「そうそう、なんかすげー大酒のみだってなー おねえちゃん達。俺ケンヤ! よろしくなー」

「あたし? まぁ、ちょこっとね(うぬれー リムルの奴子供に何吹きこんでんだよ!)」

「ケンヤ! 失礼でしょ! 初対面のお姉さん達に。こんばんは、アリスです」

「良太です……こんばんは」

「ゲイルです。こんばんは」

「こんばんは、モモカよ。それと大酒飲みは妹の方だから間違えないようにね。フフッ」

「カヤだ。よろしくな~ しかし、ヒナタ子沢山だね。ニャフフ」

「死にたいの?」

「「「「「ええ!? 」」」」」

 

 ふっふふーん。案の定抜きましたよ、ヒナタ。

 目にも止まらぬ速さの抜剣に、あたしが人差し指と親指で切っ先を(つま)んで止めたから、子供達が驚いてる驚いてる。

 

 これを止めれる奴って、ほんと数えるほどしか、いないだろうけどねぇ。

 

 子供達は、活発でお姉さん的なアリスに、元気何でも来いのケンヤに、大人しめの良太、優等生タイプ? のゲイル。

 

 そしてあたしらとガチでやりあえるだろう、ほんとに子供なのか? のクロエ。

 

 中々油断できない、お子様達だよねぇ。

 リムルが目を掛けるだけあるよ、この子達。

 

 しかし獣人のラコルが自然にあの子達と話し、笑い合ってる。

 普通なら有り得ないのだろうけど、ここではそれが普通なんだね。人間は嫌いだけど、嫌いではない人間も いてもいいなとは、最近は思うようになったかもね、あたしとしては……。

 

 でも、この世界の人間共は未だに魔物は人間の敵だーって思ってる奴らが多いけど、人間の敵は魔物じゃなくて、人間なんだけどねぇ。

 

 それから他愛もない話しにしばし花を咲かせ、あたし達はヴェルドラのたこ焼き屋を探しに行く為、ヒナタ達と別れたんだ。

 

「じゃあ、おねえちゃん、おにいちゃん達、またねー!」

「「「「「またねー ラコルちゃん!」」」」」

 

 さーて、どの辺りにあるのかな、ヴェルドラのたこ焼き屋。

 

「カヤお姉ちゃん、あっちいくの?」

「そだよー ヴェルドラの屋台探しにねー」

「そうね、あっちにいってみましょうか」

 

 しかし、この出店の数は壮観だね。人、魔物の多さもだけど。

 

 なんだ、一つの屋台に集るあの集団は、いってみるかー。

 ギメイのたこ焼き屋? はい? ヴェルドラの屋台かな。

 魔物と人混みを掻き分けていくと、いたよご本人。

 

「ようー 繁盛してるね~ ヴェ――」

「――ギメイだ!! 我はヴェなんとかではないぞ!」

「あー 何言ってんの、ヴェ――」

「――ギメイだ!」

 

 どうやら、この場ではヴェルドラではないらしい。

 『思念伝達』で理由を話してきたから、とりあえず合わせる事にしたよ。

 

 それで三つ買って近くのいベンチに三人で座って食べたんだけど、めちゃうまい! ほー 丸くて、外の皮はカリカリで齧るとトローッとした中身が溢れてきて、なんか、ちっこい身が入ってるよ。

 

 熱耐性なかったら口の中がえらい事に……あーー ラコルが一気に食べたから熱さで藻掻いてるよー 水! みずー そだ、酒蔵君にレモネード入れてたんだ! ラコルー これ飲むのよーー! ほっ、モモカの回復呪符で口の中の火傷も治ったね。

 

 やれやれ、一瞬焦ったよ。 

 

 そろそろ、花火が始まる時間かな。円形闘技場から打ち上げるって言ってたけど、狼煙(のろし)なのかな? いや、煙見ても面白くもなんともないのだけど。

 

 あれ、ヴェルドラがこっちに来るけど、どうしたのかな。

 

「カヤよ、屋台は手伝いに任せて来たから、花火を一緒に見ようと思ってな。どうだ?」

「あー いいけど。『重力支配』使って上で見る?」

「それもいいが。リムルが花火は地上で見る方が情緒があっていいと言っていたぞ。そうだな、中央広場が開けててよかろう」

「へー じゃあ 、そっちにいこうか」

 

 あたし達は四人で中央広場の方へ向かって歩いてたんだけど、こっちもいるわいるわ、活気あり過ぎだろ! この国はってね。 

 

 ちょうどいい場所にベンチがあったけど、もう男女の恋人同士? が座ってたので、ほーんのちょびっとだけ、殺気飛ばして退かしたんだけど。

 

 ヴェルドラ、モモカ、ラコルが、何してんのみたいな目であたしを見るんだけども、何でバレたの? しかもラコルまで……解せん、いいよね、早い者勝ちならぬ強いもの勝ち! 

 

「カヤお姉ちゃん……さすがにあれはダメだよ、めっ!」

「ダメ? ダメなのね、はい、あたしが悪うございました。もう、二度と致しません!

ニャフッ」

「カヤよ、子供に説教される〝覚醒魔王級〟の魔物など我は、初めて見たぞ……」

「ヴェルドラ、この子は筋金入りのバカだから、何言っても無駄なの。不憫な子……」

「ちょっ! モモカ、なに目頭押さえてるんだよ。やめろ! それマジくるから、やめろー」

「カヤお姉ちゃん……かわいそう」

「なっ! ラコルまで。マジ、やめてーー!」

「ふむ。筋金入りのバカなら、致し方あるまいな。そうかそうか、ふむふむ」

「いや、ヴェルドラ。それも地味に効くから、やめろおおおおお!」

「「「クスクス、ハハッ、アハハハ」」」

 

 フニャーー! あたしが爆発寸前にいきなり三人揃って、笑い出しましたよ。

 

 まったく、モモカとヴェルドラとラコルきたら、プンプン。

 でもさぁ、ラコルはなんか、やる事がモモカに似て来てないか?

 あたしへの対応の仕方とか、とか……対応……モモカの奴、隠れてラコルを教育してるんじゃないか? あたしのお目付け役とか、うーむ……いちど調査しないとだな。

 

 あたしの、平穏の為に!

 

「まあ、冗談はこれ位でだな、カヤよ。我らは一国を滅ぼすことなど容易い。それ故に、力の使い方を考えねばなるまいよ。リムルと出会い、この国の者達と触れ合う様になってから、少しはそう考えるようになったぞ、我は」

「あぁー ごめん。さっきのは流石に横暴だったね、反省してる」

 

 そっか、〝暴風竜〟と恐れられた、ヴェルドラがねぇ。

 でも少しはって、なんかヴェルドラらしいな、ハハッ。 

 

「ラコル、りんご飴いる?」

「いいの? モモカお姉ちゃん」

「ええ、もちろんよ」

「やったー!」

 

 ラコルも楽しんでて、なによりだね。

 

 お! 始まったかな。

 

 ヒュルルルルー 風を切るような音と共にドーーンと空気を震わす振動が頬を撫で、夜空に大きい花を咲かせたみたいに広がり、パチパチパチと弾ける音を響かせながら光の花が、夜空に吸い込まれるように消えていく。

 

 次々と上がる花火に、あたしの目は夜空に縫い付けられたかのように動かなかった。

 

 綺麗だな……。

 

 大きい花火、小さいけど連なるように光の輪を咲かす花火、色とりどりの花火が打ちあがり、それはとても綺麗でいて、どこかせつなく感じたりしたんだ。

 

 これが、情緒なのかなぁ……。

 

「ふむ。下で見る方が中々によいな。これがリムルの言ってた、情緒と言うものなのか?」

「そだねー うん、たぶんそうだよ」

「そうか」

 

 モモカとラコル帰ってこないな、どこまでりんご飴買いに行ったんだ?

 まあいいか、そのうち帰ってくるだろうから。

 

 浴衣着てベンチに座って夜空を見上げて花火を見るなんて、戦国時代の頃考えたら、信じられないな。あの頃のあたしが死んで転生して、モモカと一緒にこの世界に来て、今こうしてるなんて……フフッ。

 

「カヤ、人間は嫌いか?」

「うん、嫌い。でも、嫌いじゃない人間も、できたかも」

「そうか。リムルが元居た同じ世界に生きてきても、時代が違えば考えも違うものなのだな」

「あたしらの時代は(いくさ)ばかりで、酷かったからねぇ。それに、モモカの使う呪符の記述がさ、リムルの時代には無いんだよ。失伝したのかどうかも判らないんだけど、前にリムルが自分のいた日本の記述と違う点が、あると言ってたよ」

「ふーむ。同じような世界なのに、違う世界か……マンガにそのような描写があった気がするな」

「マンガか、フフ。あれほんと面白いよねー。ちょこっと、昔の話し聞かせてあげようか?」

「うむ。ぜひ、聞きたいものだな」

 

 それからあたしはポツポツと人だった頃の話を、ヴェルドラにした。

 

 次々と上がる花火を見上げながらあたしは乱破ノ者頃の話を聞かせ、ヴェルドラはそれに、ほーとかふーむと唸りながら、闇夜影千流のことなどは色々質問して来たりした。

 

 それでさ、時政の事も何故か……話し始めてしまったんだ。

 なんでだろう……これは、話すつもりなどなかったのにな。

 

 背もたれの無いベンチに両手をつき、少し背を後ろに傾け、あたしは夜空に光る花が咲き、音を立てながら消えていく光景を話しながら見ててさ、右横に座るヴェルドラも、夜空を見上げていたんだ。

 

 『思考加速』なんて使ってないのに、時間が凄くゆっくりと流れているみたいに感じてて、不思議な感じだな。

 

「ふむ。トキマサは武人なのだな。我は恋愛感情などわからぬが、カヤを好きだからこそお前には戦ってほしくは無かったんではないか? 共に戦うではなく、お前には、もう何も背負わせたくはない、全て自分が背負うとな。お互いに強い故相容れないと、言ったところではないかと、我は思うぞ。まあ、これは格闘マンガにあったシーンに、似ておったからな。ハッハッハッ」

「マンガの描写に似てるって、なにそれ。アハハハ」

「マンガは我のバイブル(聖典)だからな! フハハハハ」

 

 ほんとヴェルドラはおもしろくて、めっちゃ強くて、変わった〝竜種〟だな……。

 

 この世界でもっとも恐れられて、畏怖の念を込めて呼ばれてた暴風竜ヴェルドラ。

 それが今ここに居るヴェルドラなんて、信じられないよね。

 もし気付かれたら、人間なんか真っ先にパニック起こしそう。フフッ

 

 あたしが人だった頃に、こんなに強くて豪快な男はいなかったな、誰も。

 

 そして、腕を組んで大股を広げ座ってるヴェルドラの左腕に、あたしの両腕を回し少し引き寄せるように体を預けた。

 なんで、こうしたかって? うーん、わからん! ただ、なんとなくか、な。

 

 ほんとに、なんとなく……こうしたくなったんだよ。

 

「ん? どうした、魔素にでも酔ったか? 妖気(オーラ)は完璧に押さえてるはずだが」  

「ううん、違うの。ちょっとだけこうさせて、お願い」

「ふむ。何かわからんが、好きなだけそうしてるといいぞ。ウァッハッハッ」

 

 温かいな、なんか落ち着く、初めてかもこんな気分。

 

 あ、リムル達がいる、見られたかな……別にいいや。

 

「ん? ヴェルドラとカヤ何やってるんだ? なんかいい雰囲気だしてね?」

「リムル様無粋ですよ。あちらの方が花火はよく見えますよ」

「ああ、そうだなシュナ」

「カヤはヴェルドラ様の左腕を取ってますが、隙を見て投げ飛ばすつもりでしょうか?――」

「――いや、それはないだろ」

「違いますよ、シオン」

「え? 違うのですか……まさか! ヴェルドラ様と――」

「――シオン、そこまでです! 置いていきますよ」

「ああ! 待ってください! シュナ様、リムル様」

 

 うぬれー シオンの奴言いたい放題行ってくれるな~ こんど新技の実験台にしてくれるわ!

 

 『万能感知』で聞こえてるんだぞー。

 と、どの技を試そうか考えてたら、ヴェルドラがあたしに投げ掛けてきた言葉に、少しびっくりした。

 

「我はな、寄り添うではなく、隣に並び立ち共に歩く者がよいな。共に戦い共に歩む、弱ければ守るでもいいが。お互いに強ければ、我は共に戦いたいな。あくまでも我の考えだがな。ウハハハ」

「なんだそれ、おかしいの。クスッ」

 

 うーん、 ヴェルドラって恋愛感情というの、ある程度分かってるんじゃね?

 ヴェルグリンドとかマサユキくんにぞっこんだしねぇ、もう帝国に帰ったけど。

 マサユキくん皇帝になったらしいし、妃がヴェルグリンドだろうしね。

 やっぱり〝最強の竜種〟でも恋愛感情はあるんだよねぇ。

 

 よし、ちょこっとだけイジワルしちゃおう~ キキッ。

 

 ヴェルドラの左腕を抱き抱えてる両腕に、ギュッと力を入れて完全に寄り掛かりながら上目づかいで、少し甘え気味に言葉を投げてみた。

 

「ヴェルドラは、あたしにそれを望んでくれるの?」

「うむ。先の戦いでもリムルは我を案じて駆け付けてくれたのだぞ。我を信じ、そして我もリムルを信じておるからな! リムルは我の大事な友である、無論リムルも我の事を大事な友だと思ってくれておる! 多分、イヤモシカシテ、イヤイヤソレハ、ゴニョゴニョ」

「なに最後の方でゴニョってるの? クスクス」

「いや、あれだ! リムルは我のピンチの時には必ず助けに来てくれる。逆もしかりだ。だからな、トキマサみたいな事もあっただろうが、そうでないこともあるということだ。うーん、すまぬ、よい言葉が浮かばぬな。ようするにだ、お前は我の大事な友の一人だ! お前のピンチの時は、我は必ずお前を助ける! そしてお前も我のピンチの時は、助けてくれるのだろう? だからお前と共に歩もうと思う者も、いるということだ!」

「……ありがと。そんなこと言ってくれた男は、あんたが初めてだよ。〝竜種〟の男だけど。クスッ」

 

 真面目な顔してそんなこと言うの、ズルいな……少しイジワルするつもりが、逆にこっちがやられた気分だよ……でも悪くはない気分だな……。

 

「ヴェルドラ」

「なんだ?」

「あたしがさ、人間だったらヴェルドラの子供、産んでもいいと思ったよ。もう、子孫を残す必要のない魔物なんだけど。ほんとにさ、そう思ったよ」

「なっ!! なななな、何を言ってるんだ? カヤよ。我はそう言う事は一切わからぬし、恋愛感情などわからぬと、言ったであろうが! 冗談はやめよ! そろそろ腕を離さぬか! 少し離れよ! カヤ、離れぬかー!」

「い~~や~~だ~~」

 

 クックックッ、ヴェルドラが慌ててる慌ててる。

 

 必死にあたしの腕を振り解こうと腕を振るけど、あたしは更に力を込めてヴェルドラの左腕を、抱え込んだんだ。

 

 まあ、半分は冗談なんだけど、半分は本当にそう思ったんだよねぇ。

 最初にそう思った男はさ、時政だったんだよ……。 

 

 この世界に来て初めて友達になった男、〝暴風竜〟ヴェルドラ。

 もし、あたしが人間だったら、ヴェルドラの子供なら生んでもいいかなと思ったんだ。

 おかしいよね、好きとか愛してるとか、そんな感情などヴェルドラには、全然抱いてないのにね……。

 

 でもね、ヴェルドラと手合わせしたり、一緒にマンガ読んでオヤツ食べたりするのはとても楽しいし、落ち着くんだよ。

 

 あ、そこ自堕落とか思わない様に!

 

 しかしモモカの奴戻ってこないと思ったら、呪符〝幻隠〟を置いていってるし、どおりで、周りにいる人や魔物達がこっちを気にしないわけだよ。

 

 しかもだよ、離れたとこからラコルと二人でニヤニヤしながら、こっち見てるし!

 花火見れよ二人とも!

 あー そんな事言ってたら花火終わってしまったじゃん!

 

 抱き抱えてた両腕を離すと、ヴェルドラはやれやれと言った感じで立つと、ジーッとあたしを見て「あまり、こう言う冗談を言うではない」と少し顔を赤らめて言った。

 

 フフ、ヴェルドラでも照れることあるんだねぇ。

 

「我は屋台の片付けに戻るが、お前はどうする?」

「あたし? ラコルを家に送って行くよ」

「そうか。それでは、またな」

「うん。じゃあ……またね(・・・)

 

 そう言ってヴェルドラと別れ、モモカとラコルの所へあたしは向かった。

 

 〝またね〟、この言葉をあたしは、初めて口にした。

 

 モモカもあたしも、〝またね〟と口にした事は無かった。

 じゃあね、これだけで別れは済ませてきた。

 

 何故なら、乱破(らっぱ)ノ者だった頃は今日は生きていても、明日は死んでるかもしれない、いつ死ぬかもわからない乱破ノ者に、〝またね〟は空しく、切ない言葉だったんだ。

 

 だから乱破ノ里に住む者は、誰も〝またね〟とは言わなかったんだよ。

 転生して数百年以上生きてるのに、この言葉を口にはしなかった。

 

 でもあたしは、それを口にした……なんで口に出たのかは本当に判らないんだけど。

 どこかで、今日も明日も明後日も、また会いたいと思ったら、口に出てたんだ。

 

 〝またね〟、たった一言なのにこれほど温かい気持ちになるなんて……思わなかったな。

 

「カヤ、どうしたの? いい顔してるじゃない。フフフ」

「ほんとだ― ヴェルドラ様と、良い感じになったの?」

「こらー ラコル! そんなこと言うのは十年早いぞー! お母さんは許しませんよ!」

「アハハハ、お母さんじゃないし、カヤお姉ちゃん照れてるの?」

「なんだとー この口か! この口が言うのか―!」

「い、いひゃい、いひゃいよ、カヤおねえひゃん、ごめんなひゃい」

 

 あたしはラコルのほっぺを両方から摘まみながら言ってると、モモカが「もう、いい加減にしなさい、ほっぺが真っ赤になってるわよ」と軽くコツンされ離すと、ほっぺを擦りながら、ラコルは「ひどい! 自分が恥ずかしいからって、誤魔化すのはやめてよ!」そう言い、モモカの後ろに隠れて、あっかんべーしましたよ。

 

 ウヒヒッ、まだまだ子供だねラコルは。

 

 ラコルを家に送ってモモカと歩いてると、まだあの花火大会の喧騒の残り香があちこちに残っていて、(まば)らになりつつもまだ、魔物や人の姿があった。

 

「言ったのね、あの言葉」

「うん。なんか、気が付いたら口に出てた」

「……〝またね〟、か。これほど簡単で、遠い言葉は無かったわ、ね」

「だ、ね。でもさ、言ってみたら、なんかこの辺りがホワッとした」

 

 あたしは、胸の真ん中辺りを指差して言った。

 

「そう」

「うん、そう」

 

 それからあたし達は家路に向かう間黙ったままで、夜道にカラコロと浴衣下駄の音だけが響き、それに合わせて魔虫の鳴く声がまるで下駄と一緒に唄ってるように聞こえていて、あたしは歩きながら夜空を見上げると、まんまるお月さまが浮かんでた。

 

 

 お月さまに手を(かざ)して、そっと呟いてみる。

 

 

 またね

 

 

 

 




 
 ここまで読んで頂き、ありがとうございます!

 次回更新もよろしくお願いします!













  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。