転生したらネコムスメなんだけどの件   作:にゃんころ缶

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 お姉ちゃんとのガチ喧嘩決着です。

 

   


五話 お姉ちゃんとガチ喧嘩・後半

 

 

 月明かりの中、成友の所へ向けて駆ける三つの影があった。

 

 百佳(モモカ)が、城に着き成友のいる御殿に向かう最中急に場の空気が変わったのを感じ「やばいわね……」と呟くと、走る速度を更に上げる。

 

 成友の寝所前に着くと、暗殺をする時の殺気を解放してる夏夜の姿が目に移り、百佳は名を叫ぶ。

 

夏夜(カヤ)!」

「百佳? どうして……きたの」

 

 声の方に視線を向けると成友が失神してる所に、百佳と里の宗見と陸がいた。

 夏夜を追ってきた百佳がそこにおり、来るかもとは思ってた夏夜だが、言い知れぬ思いに駆られる。

 

宗見(ソウケン)(リク)、お館様をお願い」

「わかった」

「なに……」

「一人で大丈夫なのか?」

「ええ、大丈夫」

 

 薄羽織を脱ぎ下に落とし、帯から小太刀を抜きながら宗見の問い掛けに、答えると陸が口を挟んだ。

 

「おいおい、取り押さえるなら三人がいいだろうがよ」

「無理よ! あなた達、確実に殺されるわよ」

 

 今の夏夜の状態を見て、百佳は即答した。

 

「あ!? 馬鹿にすんなよ、百佳てめえあんまいい気にな……」

「陸、そのくらいでやめておいた方がいい、夏夜に敵と判断されるとマジにやばいぞ」

「え、あ、ああ、わかったよ……」

 

 宗見にこちらをじ――っとみてる夏夜のことを言われ、流石に押し黙った。

 

「坂上様、警護の者を夏夜から遠ざけて下さいますか? わたしが取り押さえますゆえ、決してわたし達に近づかないよう、お願いいたします。いいですね?」

 

 静かにそれでいて反論を許さない言葉に、気圧されやむなく従うことにした。

 

「う、うむ、しかと頼むぞ」

 

 それだけ言うと警護の者達に下がるように言い、自身も下がっていった。

 

「夏夜、里に帰るわよ。もうやめなさい。いいわね」

「百佳、もう少しだけ待ってよ。お館様に今お願いしてるところだから」

「もう、いいから帰ろう、ね」

「なんで? 待ってよ、もう少しなんだよ。待ってよ……」

 

 百佳は激しく底冷えのする殺気を放つ夏夜を見ながら、更に続けた。

 

「聞き分けのないこと言わないで、帰るわよ。いいわね」

「だから、待ってって、言ってるじゃない……」

「もういいのよ、夏夜。ね、帰ろう」

 

 夏夜は語気を荒めつつ、爆発しそうな自分の感情を、抑えきれずにいた。

 

「なんで。なんで、もういいんだよ……あんなに泣いてたじゃない。あんなに太平のこと

好きなのにと、泣いてたじゃない! どうして! どうして! もういいのよ、なんていうのよ! 待ってって言ってるじゃない!!」

 

 もういいのと言う百佳に対し、なんで? どうして? 受け入れるの!? と叫び、言葉をぶつける。

 

「夏夜……太平のこともだけど、わたしはね、あなたが、夏夜が死ぬのが……〝一番嫌なのよ〟」

「なんでよ、なんでよ! あたし達は人を殺めることしかできないけど、一つくらい、一つくらい小さな願いを叶えてもいいじゃない。どうして諦めるの? どうしてよ!なんでよ、なんでよ……いいじゃない、一つくらい叶えても……あたしは……あたしは、あたしは泣いてるお姉ちゃんを助けたい、お姉ちゃんの小さな願いを守りたい、〝お姉ちゃんを守りたいの〟!!」

 

 姉の想い……守りたい、そして同じ時を一緒に生き、過ごしたい。

 

 妹の想い……守りたい、その先にあるものが、朧げに見えるが今は見ようとはしなかった。

 

「百佳。そこをどいて」

 

 百佳の説得も頭ではわかってるけど、引けない夏夜がいた。

 

「……だめよ。かえろう、ね。夏夜」

「お願い。どいて――」

 

 ――激しい打撃音が三つ、空気を裂くように響いた。

 

 どいてといった瞬間夏夜が、右膝をくいっと上げそこから膝の返しで右横蹴りの三段蹴りを瞬速で放った中段、下段、上段の蹴撃。

 

 〝闇夜影千流(やみよえいせんりゅう)・柔術、蹴技・死蝶三段蹴り〟

 

「ッ……」

 難なく(さば)いた百佳だが、蹴りの重さに蹴りを捌いた左手が少し(しび)れていた。

 ふぅ~っと短く息を吐くと、百佳は己の殺意を解放する。

 

「あんた、気を抜くと死ぬわよ!」

 

 とたんに今まで支配していた空間の鋭さを、更に上回る空気が覆いその気に気圧された警護の者達数人が、腰が砕けたようにその場に崩れ落ちた。

 

 夏夜は、右半身構え、百佳も右半身構えでお互い向き合い、すっすっすっと()り足で間合いを計るように、円を描くように距離を詰めていく。

 

 

「シっ」百佳が先にしかけた。

 

 パパパン! 柏手を打つ音に似た打撃音が耳を突く。

 

 その場でとんと軽く飛ぶと空中で左廻し蹴り、間髪入れずに右後ろ廻し蹴りに繋げ、更に体を空中で斜めに(ひね)り左(かかと)落としを入れた。

 

 〝闇夜影千流(やみよえいせんりゅう)・柔術、蹴技・風花三連〟(ふうかさんれん)

 

 夏夜は最後の踵落としを、十字受けで止めた。百佳は着地したと同時に夏夜の右袖右衿を取りスパっと体を入れると夏夜の右足を自分の右足で刈る。

 

 頭を下に叩きつけるように投げ、すかさず手を放し落ちてくる夏夜の頭を、左下段蹴りで蹴り抜く。

 

 〝闇夜影千流(やみよえいせんりゅう)・柔術、投げ技・山崩し〟

 

 それを読んでた夏夜は落ちながら身を捻り、頭を狙ってきた足を両掌を宛がうように防御し、蹴りの振り抜く方に、身を任せ飛んだ。

 

「百佳。足癖悪すぎ」

「夏夜ほどでは、ないわよ」

 

 着地し夏夜は百佳に文句を垂れ、飛んだ先で四つん這いみたいになりズリズリと間合いを詰めていき、それは獲物を狙う猫のようだった。

 

 夏夜は猫のように体を引き絞り力を溜め――瞬間左足を狙い低く跳ねた。

 

 百佳は迎撃に左前蹴りを放ったが、その蹴りをギリギリでかわし、左脚を膝ごと両腕で抱き抱え足首を左手で掴み、そのまま自身の体を外に回転させた――

 

 ――と同時に百佳も、同じ方向に自身を回転させ勢いに合わせ、夏夜の顔を蹴り抜いた。

 

「ぎゃう」と一瞬声を上げ鼻血を散らし、畳の上を転がりながら受け身を取り体を跳ね起こした。

 

「あ~、 ほんと、百佳はやりにくいよ」

「そっくりその言葉、返すわよ。フフフ」

 

 夏夜は鼻血を袖で拭きながら言い放つと、百佳が笑いではない笑いを発したのを見て、これは来るなと警戒する。

 

 百佳は右半身構えの両腕を下気味に構え直し軽く両掌を開き、後の先を取る構えにした。

 

「宗見、お前あれ防げるか?」

「無理だな。仕掛けられた瞬間、膝を壊されてるな」

「なんなんだあいつらはよ……」 

「陸よ。俺は一度あの二人と一緒に組んだのだが、もし夏夜が打刀(うちがたな)を持ち百佳が呪符術と小太刀を使ってたら、こんなものではすまんぞ…… 俺たちを含め皆早々に死んでいるかもな。それだけ凄まじいんだよ、あの二人は」

 

 宗見は、二人と組んだ時のことを思いだし、死人が出てないのが奇跡だなと小さく呟く。

 

「あいつら化け物じゃねぇか……」

「俺達もそこらの民から見たら、充分化け物なんだがな」

 

 陸は二人の攻防を見て自分達も里の中では充分手練れなのだが、あの二人との力量の差がここまで違うと、流石に続く言葉を失った。

 

 睨み合いの口火を、夏夜が先に切る。

 

 軸足を左足をにして、右膝は同じ位置から蹴りの連打を放ち始めた。

 

 乾いた音の連蹴りが響く、上中下と蹴り分けながら、時に廻し蹴り更にそのまま裏廻し蹴りと蹴りの乱舞、それを全部捌き受け流す百佳。

 

 百佳の得意は受け流し壊す後の先、一方夏夜は壊す、固めた門すら抉じ開け壊す先の先、剛と柔の壮絶な姉妹喧嘩である。

 

 激しい蹴りの乱舞に変化が起きた。右足で蹴りを放ち続けていたその時蹴りの戻りと同時に軸足を瞬時に切り替え、左廻し蹴りを放った。

 

 バグっ! 百佳の右頬に鈍い音が響き、百佳の体がぐらつき鼻血が飛び散った。

 

 夏夜は右足の蹴りを囮に、この一撃を狙っていた。右足の蹴りに慣らされ一瞬左の蹴りに反応が遅れた百佳。

 

「つぅぅ。やっぱり、夏夜の方が足癖悪いじゃない!」

 

 鼻血を手の甲で拭い、吐き捨てた。

 

 そこからまた、激しい攻防が続く……お互いに投げ、蹴り、殴る、関節を極められかけると、抜けるために体を捻じり蹴り殴る、夏夜の廻し蹴りをいなし投げる。

 

 投げられながら百佳を蹴る、一歩も譲らない真剣な姉妹喧嘩。二人の顔は腫れ、瞼の上は切れ血が流れ視界を奪い、手足は攻撃を防御するたびに骨が軋む。

 

 夏夜はくるっと半回転し背を向けた瞬間、右裏拳を放つそれを右手でいなし懐に入ろうとするや、夏夜の左正拳が百佳の腹部めがけて打ち込まれた。

 

 それを、体捌きだけでいなし体を回しながら左裏拳を、夏夜の顔面に打ち込みボリっと鈍い音が響き、夏夜は三歩分さっと身を引いた。

 

 夏夜は口をモゴモゴさせて折れた奥歯を、百佳の目を狙いぷっと飛ばし、そこを素早い入り身で接近し百佳の右手首を掴むが、百佳は掴まれたまま手を手刀の形にして前後に素早く動かし、手を引き抜いた。

 

更に左、右、左と手首を掴んでいくが(ことごと)く引き抜かれ、キレ気味に「百佳の手首、ウナギ」と言うと「折るわよ」と百佳は返すと右手首を掴まれたまま、自分の手首をくるっと内から外に回す。

 

 そして、手の甲で夏夜の掴んでる手首を押し、左手で夏夜の右肘を押し極めそのままポンと投げた。

 

「まじに、折る気だったでしょ」と右肘を擦りながら立ち上がる夏夜。

 

 咄嗟(とっさ)に関節が極められた方向に、飛んだのである。

 

「口の悪い子には、お仕置きしないとねぇ」

 

 さらっと言い放つ百佳。

 

「もういい加減にしなさいね。これ以上は、あなただけの問題ではなくなるのよ。聞き分けなさい!」

「わかってる。でも、でも、やっぱり嫌だ!」

 

 わかってるけど、どうにかしてやりたいその気持ちが夏夜を引かせなかった。

 

「ほんと。しょうがない子ね……」と、苦笑いにも似た笑みで夏夜に言うとすぐ表情をキッと引き締め、スススっと間合いを詰めて行く。

 

 百佳は手を後ろに回し角帯を緩めて、おそらく来るであろう絶技に備える。

 

 そして、組み合った瞬間にそれは放たれる。

 

 夏夜が掴まれた左袖を振り切り、右手で百佳の左衿を掴み、きゅっと手首を絞った刹那――

 

 ドズンッ! まるで大木が落ちてきたような音が鳴り響いた。

 

 肘出し体当たりが炸裂。

 

 震脚で踏んだ畳を床ごと踏み抜き、踏んだ場所が足の形に陥没していた。

 

 この密着した状態からの、衿を掴み逃がさず相手を仕留められるよう、柔術組技に組み込んでいた。

 

 しかし右手には百佳の着物だけがあり、百佳を見失う。

 

「え!?」

 

 驚き声を上げ気配を探ると、百佳は後ろにいた。

 

 あれを(かわ)せるのはいないはずと、自信を持った一撃を躱されわずかな隙が生まれた直後――

 

 ガッと後ろから腰を抱き抱えられ、ぐるっともの凄い速さで見てる景色が回転し、そこから引っこ抜かれるように裏投げで頭から畳みに、叩きつけられていた。

 

 百佳は衿を掴まれながら体捌きで着物を脱ぐように、体当たりで来る肘を受け流しながら、脱いだ着物で夏夜の視界を遮り裏を取ったのだ。

 

 この膠着状態なら、次組んだら来ると踏んだ、百佳の感が当たったのである。

 

 誰もがこの戦いを声も出さずに見入って、身動きも出来ずに立ち尽くしていた。

 

「あ……ぁ……あくぅぅっ」

 

 後頭部を押さえながら、夏夜は立ち上がってくる。

 

「あれを……躱すなんて……でも、あたしは!」

 

 夏夜が左脚で下段蹴りを放った。しかし「?」百佳の右脚を狙ったのに手応えがなく何かに引き寄せられように、完全に体勢を崩され前のめりになる。

 

 そこへ、百佳の左廻し蹴りが右頬を抉るように綺麗に決まった。

 

 頭をゆらゆらさせ何か言おうとしたが、言えずに両膝を付きバサッと前に倒れ、夏夜の意識が飛んだ。

 

 百佳は夏夜の下段蹴りを、軽く右膝を立て膝から下の力を抜き暖簾(のれん)の腕押し見たいにし、夏夜の蹴りに来た右足首を自分の足首に乗せ(さば)いたのである、

 

 夏夜は、蹴る目標がなくなった感覚に体勢を崩し無防備になり、そこを狙われたのだ。

 

 〝闇夜影千流(やみよえいせんりゅう)・柔術、返し技・口伝奥義 影足〟

 

 熾烈を極めた姉妹喧嘩に、決着が着いた。 

 

「っつ……やっぱり完全には躱しきれなかったわね」

 

 胸を押さえ少し苦しそうに呟き、(擦っただけであばら骨やられるなんて、ほんとでたらめな技だわ。何本かひびが入ってるかしらね)と苦笑い気味に顔を歪めた。

 

「坂上様。お手間を取らせました。申し訳ございません」

 

 (ひざまず)き謝罪をし、そして宗見に夏夜を縛るように言い、脱いだ着物を着て角帯を締め直した。

 

「ぬ、ぬう、よ、よく取り押さえた……」

 

 百佳の顔は鼻血と返り血で汚れ、右目は腫れで塞がり、それはもう凄惨な物であった。

 

 陸が活を入れ、気絶してる成友の息を吹き返させてたが恐怖のあまり手に持った扇子を振り廻し「よるな、よるな!」と騒ぎ立てていた。

 

 そこへ百佳が成友の前へ来て、ひれ伏する。

 

「ひぃ!」

 

 小さく悲鳴を上げ腰を抜かしたまま、ズリズリと後ずさっていた。

 

「お館様。この度は夏夜のご無礼をお詫びいたします。夏夜につきましては寛大なご処置を頂ければとお願い致します。それとお側付き護衛の件、このままここでお受け致します」

 

 ひれ伏したまま告げる百佳に、成友は恐怖で化け物でも見る様な目で、早口で捲し立てた。

 

「もうよい、もうよい! その件は無しじゃ! もうよい! ここから早々に立ち去れい! はよう! はよう! その小娘も連れて帰れ!」

 

 夏夜の見せた恐怖と血塗れて凄惨な顔の百佳に、気が動転しすぎて体の震えが止まらず扇子の先端が、更に高速でぺぺぺぺぺと震えていた。

 

「わかりました。それでは、これにて失礼致します」

 

 ひれ伏したまま告げ、薄羽織と小太刀を手にすると、夏夜を肩に担いだ宗見と陸に帰ろうと促しその場を後にした。

 

「新左衛門。新左衛門はいるか!」

「はっ。これに」

「あの小娘共と里を潰せ! あんな化け物娘を飼ってる里などもういらぬ! 他にも隠れ里はある。あんな里一つ潰れても構わぬわ! 消せ! 消すのだ!!」

 

 自身に恐怖を与えた者達に、激しい怒りを覚え新左衛門に捲し立てる。

 

「しかし、良いのですか? 先代からの仕えてる里ですし、まだまだ使えるのでは?」

「よい! よいのじゃ! 余にこれだけ恥を搔かせおったのじゃ、死罪じゃ!」

 

 成友は躊躇なく、里の壊滅を命じた。

 

「よいな、わかったな! それにあの里は、最近特に扱い辛くて困っておったのじゃ。此度の事も中々、いい返事を出さずに伸ばし伸ばしで、ようやく首を縦に振り折ったら、この始末じゃ!」 

 

 更に、百佳と夏夜の首を、ここに持って来いとも言い放つ。

 

「よいか、新しく根来(ねごろ)ノ者が余の配下になったことだしのう。いまさらじゃわい! 余に歯向かう愚か者どもは、根絶やしじゃ!」

 

 新左衛門の額を扇子で、ぺぺぺぺぺと叩きながら申し付ける。

 

「御意。さすれば確実を期すため猶予を頂きたくございます。根絶やしにするならば、時を開けねば奴らも乱破ノ者、しばらくはこの件で警戒するでしょう。一人でも逃がせば成友様に害が及ぶ故」

 

 新左衛門が根来(ねごろ)ノ者の毒を使うと言い、成友に了承を得た。

 

「よい、好きに使うとよい。あ奴らは一番毒を使うのに長けておったな。どれだけ掛かってもよい。必ず根絶やしにするのじゃぞ? よいな!」

「御意!」

 

 巴ノ里の殲滅が言い渡され、新左衛門は当分今まで通りに使うことを成友に進言し殲滅は警戒心が薄れ、この一件が風化するまでゆっくりと事を進めることにした。

 

 

 まだ春が始まったばかりの少し肌寒い頃である……。

 

 

 

 

 




 次回、里の壊滅が始まります。

 ここまで、読んで頂きありがとうございます!

 次回もよろしくお願いします!
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