転生したらネコムスメなんだけどの件   作:にゃんころ缶

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 お待たせしました! 五十話です。





五十話 面影の彼方にみるあなた

 

 

 あああああああああああああああ!!!

 

 

「やだやだやだやだやだやだー! いっ・やっ・だっああああああああああああ!!」

 

 用意されたされた部屋の大きなベッドで、フカフカ羽毛枕に顔を埋めて、両足をバタバタさせ最後の抵抗を試みるカヤであった。

 

「モモカ……お腹痛い」

「もう、それ聞き飽きたわよ」

「つ――」

「そんなもん、ない! 精神体(スピリチュアボディ)を持つ亜神でしょうが! しつこい!!」

「かえる! かーーえーーるーー!!」

「帰れば? いいわよ、わたし一人でも。その代わり、リムルには報告するから」

「うにゃぁぁぁ……あたしがこういうの嫌いだと知ってるでしょうが、モモカ~」

「諦めなさいな。人間の頃と違って、一国を滅ぼす力を持ってるんだから、いくら同盟国だといっても、国を治める王としては、事実確認はしなければならないでしょうよ。側近などは特にね。そのくらいわかるでしょ? あんたなら。それに一介の魔物に対して細やかなれど晩餐招待なんて、破格の扱いじゃない。テンペストの住人じゃなくても、リムル達にはお世話になってるわけだし」

「わかるけども、も――今日は、夜のお店に行く日なんだぞーー!!」

「はあ!?――それか、本音は!(ここにエルフのお店があるのは、言わない方がいいわね。まったく、お酒があってエルフのお姉さん達と騒ぐのが楽しいからって、この子あっちの気は全く無いのに、ほんと――なんなのかしらね……はああぁぁ)」

 

 あくまでも抵抗を試みるカヤにモモカは、これみよがしに猫耳をピッと伏せ、もう勝手に騒げとばかりに、用意されているお茶を飲んでいた。

 

 日が沈み頃合いの時間に成り、晩餐の準備が整いましたと言われ、カヤ達は晩餐に赴く。

 

 最初はやや不機嫌さを醸し出していたカヤも酒が入り、香辛料をたっぷり効かせた肉料理などを食べる内に不機嫌さが無くなり、出される料理を全て平らげてしまった。

 

「ふむ。聞きしに勝る、食いっぷりであるな」

「ん? いや~ ドワルゴンの料理も中々に美味しいです! ニャフ」

 

 食後のデザートを食べつつカヤは、にこやかに返した。

 

(やっぱり、チョロニャンだわ。フフフフ)

 

 その様子を見ていたモモカは、心の内でクスクスと笑う。

 

(ふむ。リムルの言う通り、美味い酒と肉料理に目がないと聞かされたが、本当であったな。見た目は十代半ば位であるか――天災級(カタストロフ)の姉妹……)

 

 カヤがデザートを食べ終わったのを見計らい、ガゼル王は「少し、話がしたい」そう言い、カヤとモモカもそれに頷き、応接室に案内される。

 

 応接室に来た二人はガゼル王と差し向かいで椅子に座る形になり、ガゼル王の後ろにバーンとドルフ、ジェーンが護衛として立つ。

 

 ガゼル王、カヤ、モモカの右脇に小さい丸いテーブルが置かれ、氷の入ったグラスも置かれて、見慣れたボトルを御付きの者がガゼル王から中の液体を注いでいき、次に毒見のグラスに先に注ごうとするのを、カヤとモモカはやんわりと断り、氷の入ったグラスに注いでもらう。

 

『状態異常無効』を持つ二人なので、毒など効かないのである。

 

 テンペストから納入された、林檎のブランデーであった。

 

 ガゼル王はグラスを持ち、香りを楽しむようにグラスを鼻の辺りで軽く回すと、一気にグラス半分程の酒を喉に流し込んでいく。

 

 アルコール度数の高い酒特有の喉を焼くような感覚に、口を閉じて鼻から息を抜くと、濃厚で柔らかく、それでいて華やかな香りが鼻をゆるりと通り過ぎて行き、余韻を楽しむかのように、静かに目を閉じるガゼル王。

 

 二人も同じように、ゆっくりと味を楽しむように林檎のブランデーを飲んでいく。

 

 カヤはストレートで飲むのも好きだが、氷を入れて飲むオンザロックで氷の溶けるに合わせて味が変化していく様も、好きなのであった。

 

「さて、カヤ、モモカよ。お前達はヴェルドラの友人にして、リムルとも友人であるな」

「「はい。左様で御座います」」

「よい。畏まらずとも、普段通りに話せばよいぞ。ここは、結界を張っておるので騒いでも外には聞こえぬ」

「あ~ でもいきなり不敬だーとか言って、手打ちとかゴメンですよ?」

 

 ドルフが「な――」言いかけたのをガゼル王は手で制して、穏やかな顔でカヤに話し掛ける。 

 

「心配するでない。俺がいいと言うのだ、王の言葉が信じられぬか?」

「いえ、ガゼル王。少し言い過ぎました。じゃあ、お言葉に甘えて、普段通りで行かせて頂きますね」

「うむ」

 

 お互いに納得をした上でガゼル王が、話を切り出した。

 

「お前達は魔王級でありながら、魔王を名乗らぬと聞いたが、本当はどうなのだ?」

「うーん。そんなめんどくさい事やりませんよ。気まぐれ自由が、あたしの生き方ですし」

「めんどくさいであるか。魔王を名乗るのをそんな理由でやらぬとは、面白い考え方ではあるな」

 

 ガゼル王は右手で顎の髭に手をやり苦笑いを浮かべ、バーン、ドルフ、ジェーンに至っては、〝暴風竜ヴェルドラ〟と互角に渡り合った亜神が、めんどくさいと吐き捨てたことに、目を丸くしていた。 

 

「にわかには信じられぬが――当の本人がいて申すものじゃから、信じぬわけにはいかぬだろうよ。もっとも、演技と言う可能性もあるが、〝暴風竜ヴェルドラ〟の友人などと、冗談でも言う魔物はいないからのう。やれやれじゃわい」

 

 ジェーンが、全く魔国の魔物達と来たらと言う感じで言葉を投げる。

 

「で、あるな」

 

 ジェーンの言葉にガゼル王も静かに頷く。

 

「それで、お二人は転生者と聞き及びますが、本当なのですか?」

 

 ゆっくりとドルフが二人に尋ねてきて、それにモモカが答える。

 

「ええ、本当です。わたしも、カヤも、転生前の記憶を持ってますよ」

「そうですか。ならば、あなた方の力は如何様なものかお聞きしたいのですが、よろしいかな?」

 

 その問いにモモカは微笑みながら頷き、右掌の上に黒い球を一つ具現化させた。

 

「「「「!!」」」」

「ふあっ! そ、それはぁ……黒炎核(アビスコア)じゃないかえ!」

 

 モモカが出した、黒炎核(アビスコア)を指差してジェーンはよろよろと後ずさり、お付きの者が慌てて持ってきた椅子に、崩れる様に腰を落とした。

 

 更にモモカがグッと手を握り手を開いてガゼル王達に向けると、親指、人差し指、中指の間に二つ黒い球が挟まっていて、もう一回握り開くと、計四つの黒炎核(アビスコア)を指の間に挟んで、クスリと笑う。

 

 その光景にドルフ、バーンは目をカッと見開いたまま固まっており、ガゼル王は平静を保つも、額に一筋の汗が浮かぶ。

 

 ジェーンに至っては、椅子の肘掛けに左肘をついて頭を抱え、右手をブラブラ振り「まさに天災級(カタストロフ)じゃな。もう、大国など―― 一発で吹っ飛ぶぞえ」力なく言葉を吐き綴る。 

 

 そして――追い打ちを掛ける様にカヤが口の中に形成した、魔力球を見せる。

 

 凄まじいまでに高圧縮された魔力球にジェーンは思考を放棄し、ドルフ、バーンは先程から立ち尽くしたままでいた。

 

 そこへガゼル王が重々しくカヤに尋ねた。

 

「カヤ。その威力は、どの位のものなのだ?」

 

 それに「うーん。水晶球ある?」と聞き返し、用意された水晶球の一つを持ち、『空間転移』で山脈の頂上に出るとそのまま百メートル程浮かび、水晶球を自分の近くに浮かべ、尻尾をバチバチと激しく放電させていく。

 

 その様をガゼル王は、もう一つの水晶球を右横のグラスを置いてるテーブルに置き、見ていた。

 

 いつの間にか気を取り直したドルフ、バーンも近くに来て同じように水晶球を覗いていたが、ジェーンだけは、もはや見なくても威力は分かるわとばかりに、気付け代わりのブランデーを飲んでいた。

 

 カヤの放電現象が最高潮に達し、それは天に向かって――放たれた。

 

「に゛ゃ゛お゛お゛お゛おおおおおおおお!!」

 

 〝熱射咆哮(ヒートロア)

 

 口から放たれた熱放射光線は、青白く輝く直線の軌跡と纏わりつく放電を纏い、雲を突き抜け成層圏まで達していた。

 

 膨大な余剰魔素(エネルギー)が辺りを昼間のように照らし、青白く輝く光の軌跡が天に昇るように掻き消えていき、ゆっくりと山脈の頂上は、漆黒の闇を取り戻す。

 

 月に照らされる雲が巨大な丸い穴を作り、夜空にほわり浮かんでいた。

 

 ドルフは口をあんぐりと開けたまま水晶球を凝視していて、逆にバーンは冷静に「もし〝暴風大妖渦(カリュブディス)〟がいたら、一撃で消し飛ぶな」黒々とした顎髭を撫でながら呟く。

 

 ガゼル王はゆっくりとグラスに残ったブランデーを呷ると、しばし目をつぶり思案に耽る。

 

 体内に溜まった高熱も吐き出して、ニコニコしながらカヤが帰ってきた。

 

「おや? みなさん、酔いがまわったのかな?」

「頭も痛くなるわ。お前達の桁外れの力を、見れば」

「うや? 見せろと言ったのは、ガゼル王じゃん。ニャヒヒッ」

「で、あるな……」

 

 予想以上の力に頭を抱える、ガゼル王と、ドルフ、バーン。 

 

 ジェーンは「わたしゃ、これで失礼するよ」と早々に自室に引き上げていった。

 それからは、ドルフ、バーンも椅子を並べ五人で酒を酌み交わす事になる。

 

 カヤとモモカはこの世界に来た経緯を簡単に説明し、どこの国とも敵対はしないと言い、しかし自分達に悪意を持って手を出せば、その限りでは無いとも付け加えた。

 

「まあ、お前達に下手に手を出せば、その国は消し飛ぶであろうからな。周辺諸国には〝核撃魔法〟がにこやかに歩いて来訪するとか、迷惑な事であろう。わははは」

「うあ! ガゼル王それ酷くない? あたしみたいな可愛いネコムスメに向かって、そんな酷い事を――ニャハハハ」

「カヤ、酔い過ぎ。耐性を少し上げなさいな」

「だいじょぶ、だいじょぶ~ ニャハハハハハ」

「確かに。そのような姿であのような力を見せれば、驚くと言うものですな」

 

 盛大に笑い言うガゼル王にカヤも同じように笑い返し、ガゼル王の言葉にバーンも返し、モモカがカヤに酔い過ぎと釘を刺す。

 

 その場は王も魔物も無い、ただただ、酒を酌み交わし談笑をする空間が作られ支配し、響く笑い声が心地よく漂っていた。

 

「ねえ、ガゼル王達は魔国の戦力に不安を抱くのも、わかるんだけど。リムル達は絶対に、ガゼル王達を裏切らないよ。そっちが魔国に、牙を剥かない限りね」

「で、あるか。そもそも、リムルは俺の弟弟子だからな。絶対の信頼を置いておる」

「そう。だから、あたしもモモカも魔国に関わる国には、敵対はしないよ。絶対に」

 

 急に真面目な顔付でガゼル王に言うカヤは、先程のニャハハと笑うカヤと全くの別人に見えて「ほう」とガゼル王は声を漏らす。

 

「元暗殺者でしたな――いや失礼、今もでしたな。どちらが本当の、お姿なのですか? カヤ殿」

「どっちも、あたしだよ。ニャハ」

「でしたか。ははは」

 

 カヤに話し掛けたドルフは、少し酒に酔った顔をクシャりと崩し笑う。

 

「わたし達の目的も、先程話した魔物を見つけ、殺す事ですから。目的が済んだらテンペストを出ますので。帝国との戦争には、力は貸せません」

「で、あるか。出来れば二人の力を貸して欲しいものだが、親書にもその件は無理強いはしないでくれと、書いてあったからな。好きにするがよい」

「まあ、リムルがそのような事を。フフフ」

 

 少し残念そうな顔をするガゼル王に、モモカはふわり微笑み返す。

 

 楽しい酒の時間も終わりを告げ、カヤとモモカは用意された部屋で休み、翌朝早くに、ガゼル王達にテンペストへ帰る旨を告げ、ドワルゴンを後にした。

 

 帰るカヤとモモカを見送り、ガゼル王達はカヤ達が飛び去った空を見ながら、しばらく話をしていた。

 

「事前に、リムルからカヤとモモカの事を聞いておいて、正解だったな。バーン」

「ですな。あの時のカリュブディスの件も、魔王ミリムでしたが。カヤ殿のあれを見れば――まさに、超兵器級だな、ガゼル」

 

 バーンの言葉にドルフが、豪快に笑い返す。

 

「超兵器か……それが意思を持って歩きまわるのだから、物騒極まりないな! うわはははは」

「であるな。ははは」

「確かにな。くくく」

 

 それに釣られてガゼル王、バーンも笑いだしていた。

 

「しかし、カヤは美味い酒と肉料理を出せば、不機嫌でも大人しくなるとは、信じられぬであったが、本当とはな。サラダに掛けるドレッシングなるレシピも、カヤに野菜を出すならこれをとリムルが言っておったが、あれは酸味と辛みが効いて、中々に美味であったな」

「うむ。あれは美味かったな、ガゼル」

「確かにな! ピリリと辛く中々であった」

「できれば、帝国との戦争に力を貸して貰いたかったのだがな……」

 

 集結していない帝国との戦争を思い、ガゼル王は空を見上げ目を閉じ、また始まるであろう戦いに軽く溜息をついた。

 

 

 

 テンペストへ帰った二人はリムルの所へ報告に行き、そのまま我が家に帰って来た。

 

「あああー やっぱ、ここが一番落ち着くわ~」

「たしかにね。フフ」

 

 囲炉裏端に腰を下ろし、うーーんと伸びをするカヤに、モモカ。

 

 足を前に投げ出し、後ろ手に両手を付き天井をぼんやり眺めるカヤに、女の子座りのモモカが、何かを思い出したように口を開く。

 

「そうだ、カヤ」

「なぁにぃ~」

「ネコマンマ亭に一人若い男の新入りが、入ってきたのよ。あんたにこれ伝えるのを、ラコルの一件で忘れてたわ」

「へ~。どんなやつ?」

「まあ、見れば分かるわ。ベゼットの話では、先代からの付き合いがある組織からの頼まれ事で、断れなかったそうよ」

「えー、そんなの無視でいいじゃん。ベゼットも何やってんだか」

「一度は断ったんだけど。元々頼み事して来た組織は、サイファーより大きな組織でねぇ。あんたも知ってるでしょ、組織間のしがらみは。最近も私怨絡みの暗殺依頼を何度断っても依頼してきて、あげく、その組織の一人を、無理やり送り込んで来たと言う事よ。ああ、何でも向こうで三本指に入る、実力らしいわよ」

「へぇー」

 

 見るからにカヤの顔から笑みが消え、仄かに突き刺すような妖気(オーラ)が漏れ始める。

 

 それを感じたモモカは、すぐさま釘を刺した。

 

「潰してはダメよ。一応〝三賢酔(リエガ)〟に属する組織だからね」

「ああ、わかってるよ。組織間の争いには、手は出さない。それがエル姉さんから、

言われた約束事だから、潰しはしないよ(・・・・・・・)

「はあ――まったくあんたは、そうなると容赦なくなるから、釘刺してんのよ」

 

 モモカの言葉にカヤは妖気(オーラ)を引っ込め、ポヤヤーとした顔に戻っていく。

 

「でも、舐められたままじゃ、組織のみんながこれから苦労することになるし、ちょこっとコツンしに行く位はいいよね? ウヒヒ」

「程々にね。でも、依頼受付兼帳簿係のアネーロがかなり苦労してたから、もう旧サイファーではないと知らしめるのも、悪くないかしらね。フフフ」

「あのオカッパ頭みたいな髪型したメガネっ娘か~。 じゃあ明日にでも、ネコマンマ亭に顏出してくるよ」

「ええ、わかったわ。ミョルマイルさんには、わたしから言っておくわ」

 

 カヤの様子を見て一抹の不安を覚えながらも、最悪自分も出る事を想定した案も密かに考えていく。

 

(手間のかかる組織なら……潰すことも辞さないかしら、ねぇ)

 

 

 

 夜も頃合いよく更けた頃、地下迷宮にあるエルフのお店に一人の客が来る。

 

 カランカラン

 

 ドア上部に付けたベルが、客の来訪を知らせる。

 

 カヤがいつもの如く、夜のお店に来ていたのだ。

 

「「「「「あらー カヤちゃん。いらっしゃーい!」」」」」

 

 エルフのお姉さん達が、店に入ってきたカヤに声を掛ける。

 

 そして、少し背の高いキリッとした美人顔で歳は二十台半ば位に見え、髪をポニーテールにしたエルフの女性が続けて声を掛けくる。

 

「よおー カヤ~ 昨日はどうしたんだい? 来なかったな。野暮用でもあったのか?」

「にゃほー シルエラ~ まあ、そんなとこだよ」

「ふーん。大方いい男のところにでも、いってたんだろ? ククク」

「やかましいわ! その無駄にデカイ胸、刀で削いでやろうか?」

「微妙な胸して、何言ってんだい。で、飲んでいくんだろ?」

「暴れ乳だまれ! も・ち・ろん~~~」

 

 軽口を叩き合う二人に、店の客もエルフのお姉さん達やママも、またやってるという顔をして笑っていた。

 

「ママ。奥の、いつもの席使うよ」

「ええ。いつもの席ね」

 

 手慣れた様にシルエラはロックグラスとボトルを持って、カヤを奥のBOX席に誘導し三人のエルフのお姉さん達も付いてきた。

 

 カヤは夜のお店に来ると、店の奥にある隅っこのBOX席がお気に入りの席だった。

 

 カヤが席に着くと、氷系の魔法でグラスに入る程の氷を作りロックグラスに入れ、カヤがキープしている林檎のブランデーをグラスに注ぎ、カヤが皆にも飲むように促し、シルエラがロックグラスを四つ持って来て、ブランデーを注ぎ終わると――。

 

「「「「「カンパイーーーー!」」」」」

 

 皆がグラスを軽く合わせ、エルフのお姉さん達は一口軽く口にし、カヤは一気に飲み干して、シルエラが空のグラスにゆっくりブランデーを注いでいき、氷がカラカラと音を立てながら回る。

 

 カヤが酒場を巡りをしていた時に、ゴブタからこの店の事を聞いて初めて訪れた時に、店に入るなりシルエラに「なに子供がこんな時間に、ここに来てるんだい!」とえらい剣幕で怒鳴られ、カヤが「にゃにおー これでも数百年以上は、生きてるんだぞー!」そう怒鳴り返し、盛大な口喧嘩を始めたの切っ掛けで、亜神だとわかってシルエラが謝罪するも、カヤは「いいよいいよ。見た目これだし。ニヤヒヒ」と笑い返してからの出会いであり、それから何故か気が合い、カヤはここの馴染みの常連となったのだ。

 

 そう。

 

 顔こそ似てないが、雰囲気が〝小梅〟に似ていて自分に対しても遠慮の無い物言いが、まさに〝小梅姉さん〟そのもので、カヤはここに来てシルエラと話し、エルフのお姉さん達と他愛もない話しで盛り上がるのが好きだったのである。

 

 談笑の合間にカヤが小物袋から「これ、みんなで分けてね。ちょっとしたお土産」とドワーフ製のアクセサリーなどをテーブルに出して並べ見せ、また小物袋に入れてエルフのお姉さんの一人に渡す。

 

「「「ありがとー! カヤちゃん」」」

 

 エルフのお姉さん達の一人が小物袋を持ち三人揃って、カウンターにいるママの所へ

キャイキャイ騒ぎ立て急ぐ。

 

「あんた、ドワルゴンに行ってたのかい?」

「そう、野暮用でね~。貰い物だし、あたしはあんな豪華な物付ける趣味ないから、遠慮なく貰ってよ。ニャヒヒ」

 

 そう言いながら懐をゴソゴソして、一つの短剣を取り出す。

 

「はい、これ。息子さん七才になったんだっけ? 森に薬草の採取とか、そろそろ旦那さんが狩を教えるんでしょ? だから、息子さんにプレゼント」

 

 シルエラは渡された短剣を持ちグッと力を入れ、鞘から少しだけ短剣を引き、ゆっくりと鞘から抜いていく。

 

 派手な装飾などはなく、抜かれた短剣の刀身は魔法ランプの明かりに照らされ、見る者を魅了するような淡い虹色の輝きを放ち光っていた。

 

「あんた――これ、業物じゃないかい!?」

「へへー テンペストを代表する名工の一人、カイジンの業物だよん」

「こんな……高価な物もら――」

「いいんだよ、シルエラ。あたしの他愛もない話しにいつも付き合ってくれる、お礼。それに……(小梅に、どことなく雰囲気が似てるあんただから――その息子に、あげたいんだよ)」

 

 最後の言葉が小さく聞き取れなかったシルエラは、カヤに聞き返すが「いいから、もらえ! 暴れ乳! ウキキ」それにシルエラが「わかったよ、残念ネコムスメ! 後で返せと言っても、返さないからな! ククク」お互いに顏を見合わせ、小さく笑い合う。

 

 その二人をカウンターから見ていたママも、口元にふわりと笑みを浮かべていた。

 閉店間際まで楽しく飲んでカヤは、店を後にする。

 

 入り口の前で帰るカヤを見送るシルエラとママ。

 

「ほんと、不思議で自由で気ままな亜神よねぇ、カヤちゃん」

「あれで数百年以上生きてるんだから、ほんと変わった()だよ」

「でも、なんであなたに、あんなに懐いてるのかしらねぇ」

「さあね……」

 

 もう、今はいない誰かを、私の中に見てたりして――なんてな。ククク

 

 微かに囁くように口にした言葉にママが「え?」っと首を傾げシルエラを見るも「なんでもないよ」そう一言だけ返し、「さあ、後片付けしようか」と店の中に入っていき、そんなシルエラをクスリと笑い見、ママも店へと戻っていく。

 

 

 カランカラン 

 

 ドアに付けたベルが

 

 カヤの見る儚い面影の彼方に、そっと響くかのように音が鳴り響いていた。

 

 




 ここまで読んで頂いた皆さま、ありがとうございます!


 次回の更新もぜひ読んで頂きたく、よろしくお願いします!




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