転生したらネコムスメなんだけどの件   作:にゃんころ缶

52 / 94
 お待たせしました! 五十二話です。







五十二話 闇の子ら

 

 チリリ

 

 チリリッ

 

 リムル様、最終防衛線突破されました!

 ベニマル、ディアブロ達はどうした!? クッ クソッ!

 どうしました!? リムル様!

 カレラとウルティマが、喰われた……

 何なんだ、このネコマタという魔物は!

 リムルよ 奴に我らの法則が通用せぬ カヤもモモカも喰われた……

 リムル様! テンペストの結界が破られました! 影獣の多数侵入を確認!

 ベニマル即時迎撃! 市民を守れ! 市民は地下迷宮へ避難させろ! 

 リムル様! このままでは、世界が終わります!

 

 終わらせるもんか! ヴェルドラ、俺達も出るぞ!

 

 

 

 

 チリリッ チリリリリリリリ

 

 リムル様……ドワルゴン、ブルムンド、イングラシアがネコマタの黒い霧に飲み

込まれました。

 周辺諸国も黒い霧に次々と、飲み込まれていってます。

 ……カヤとモモカは?

 モモカは既に喰われ、今ヴェルドラ様とカヤが戦っています。

 ですが、形勢は不利かと……

 そうか……ベニマル、市民全員を地下迷宮に避難。避難完了したら、ラミリスに入り口を封鎖するよう伝えろ。

 

 リムル様は?

 

 俺も、出る

 

 

 

 チリリリッリリリ チリッ

 

 カヤ! あれを止めないと、この世界が飲み込まれてしまう!

 モモカ! ジラを足止めして! あたしがあれを壊す!

 させませんよカヤ あなたはここで仕留めます

 どぉけえぇぇーーーーーー! 邪魔するなああああ!

 クカカカ おしかったのう 時間切れじゃ カヤ、モモカよ

 オトワ! あんたは絶対殺す! 猫神ノ里の皆の仇、そして沙羅母様と那破刀父様の仇よ!

 

 やってみよ モモカ できるならばなぁ クカカカカカ

 憎しみこそ我の力、我の糧 感情ある生物が存在する限り、我は不滅よ!

 

 チリッチリッ チリッ チリッ チリッ

 

 チリリリリリ

 

 ヂリッ

 

 

 

「……夢? 夢見?」

 

 低位活動状態中(スリープモード)から目覚めたモモカは目を空け天井を見つめながら、今見てた三つの夢の事に思案を巡らせる。

 

 まさか、また夢見をみるなんてね。

 

 しかも三つの夢見……どれも、いい未来ではなかったわね。

 

 未来は決まっていない――わたし達次第。

 未来への分岐?……手掛かりは――世界の終わり? どうやって?

 喰われる――魂? 魔核? を喰われた……カヤの闇鏡静水を取り込んだの?

 

 やはり、憎しみがネコマタの糧であり、力の源か。

 この夢は……何をわたしに知らせるの? 

 

 オトワの奴まったく姿を現せないけど、どこに潜伏している……。

 

「わたし達みたいに、どこかの国などに潜んでいるのかしら」

 

 いつの間にかボソボソと声に出しているのに気付かず、思案を続けていく。

 

「……もしかして、まだ未来軸の分岐はあるかも知れないわね。もしや子供の頃に見た夢見に辿り着くまでの未来が――変わった? なんで? わからない……わたしとカヤが歩く未来への道が、最初の夢見とは別の道へと変わり始めているの? 元の道へと戻るにはどうする……。いや、これは未来への分岐点に差し掛かっているのかも。どの道があの最初の夢見に辿り着けるのかしらね……。まだ、情報が少なすぎるか」

 

 思案を止め、首だけ左に向けると横の布団で低位活動状態中(スリープモード)のカヤが、掛け布団を蹴り飛ばし、大の字のままお腹を右手でポリポリ搔いていた。

 

「全くこの子は……お腹を出して寝て。とりあえずこの件を片付けたら、またブルムンドへ行ってみましょうか」 そう呟き起きると左手をサッと振り浴衣を消し、いつもの装束(しょうぞく)に変え家を後にする。

 

 イングラシア王国にあるグラブゲのアジトで、アルコとダートがカヤ達に対抗する手段を話していて、ダートの座る豪華な執務机の上に、豪華な宝珠が埋め込まれたネックレスが置かれていた。

 

 それについて、ダートがアルコに説明を始める。

 

「アルコ。これは、支配の宝珠(オーブ・オブ・ドミネイト)と言う。闇オークションで手に入れた物だ。魔王すら従えると言われる代物だぞ」

「ほお~ で、ボス。これをどうしろと?」

「あの、忌々しいくそ猫の首に、これを掛けろ。どちらでもいい、片方を従えたらもう片方を殺させて、そのままサイファーを乗っ取れ。そうしたら、これを手土産に上部組織へと、格上げしてもらうからな! ブワッハハハハ」

「その後は、俺の好きにしていいと?」

「ああ、好きにしろ。潰すなり、おもちゃにするなり、お前の好きにしていい。お前の手足にしてもいいし、好きに使え」

 

 身長百九十センチのガッシリとした体躯に、スキンヘッドの頭に太い眉毛のダートは、下卑た笑いを上げる。

 

 グレンダが一度面通しをして、帰った後に「ゴリラ、ウザッ!」と吐き捨てた程に、野心に塗れた男であった。

 

「お前のユニークスキルなら、造作もないだろう? アルコよ」

「ええ、ボス。奴に俺の動きは、捉えられませんよ。お任せください」

「俺は、まだまだ上に行ける。頼むぞ、アルコ!」

「お任せを!」

 

 支配の宝珠を腰のポーチに入れると、アルコはアジトを出て行った。

 

 

 テンペストにある配下専用食堂の一角にモモカ、ミョルマイル、グレンダの三人がテーブルに座り朝食を取りながら、何やら話をしていた。

 

 その一角にはモモカの結界が張られていて、周りの者達は一切認識できず、近寄る

事も声を聞くことも出来ずにいた。

 

 モモカはエッグサンドにコーヒーでミョルマイルはベーコンエッグトーストにコーヒー、グレンダはフルーツジュースにバケットサンドを食べていた。

 

 ひとしきり皆が食べ終えたの見計らい、モモカが口を開く。

 

「まあ、事の成り行きはそんなとこだけども。一応グラブゲには、わたし達の事は伝わっているのよね?」

「ああ。間違いなく、伝わってるはずだ。しかし、あのゴリラ――馬鹿にも程があるぞ! こっちの仕事増やすんじゃないよ! まったく」

「そうこぼすな、グレンダ。大所帯になればこのような(やから)も出てくる。それを締めるのもお前の仕事じゃろう」

「わかってるさね。しかし、上部組織に上がりたいから馬鹿増やして、組織を大きくした? そのあげくモモカ様、カヤ様に喧嘩を売って何をしたいんだい、ゴリラは!」

「グレンダ、目的は一つよ。中堅組織から、上部組織に上がる。それを認めてもらう為にわたし達の組織を潰す、もしくは乗っ取るでしょうね。フフフ」

 

 モモカの冷ややかな笑みで言った言葉にグレンダは頭を抱え、ミョルマイルは腕を組んだまま目を閉じ思案に耽る。

 

「それで、モモカ殿はどう対処致しますのかな?」

 

 重い口を開き、モモカに尋ねる。

 

「組織間の争いには手を出さない。それを(たが)える事はないわ、手は出しませんよ。ただし!――わたしか、カヤに手を出した場合は、それ相応の報いは受けてもらいますけど。その時は、わたしもカヤも動きますよ。フフッ」

「……わかりました。他の組織への見せしめにもなるでしょうから、そうなった場合は、お二人にお任せしましょう。もし、死人が出た場合は魂の回収を頼みたいので、テスタロッサ殿の配下に魂の――」

「いえ、それには及ばないわ。わたしとカヤも魂の回収はできるから、その時は回収して、ちゃんとリムルの所へ持っていきますわよ」

「なんと!? できるのですかお二人とも。では、そちらもお任せしますぞ、モモカ殿」

「ええ、任せてちょうだい。それとグレンダ」

「なんだい、モモカ様」

「もし、そうなった時はグラブゲから、迷惑料を貰うけどいいかしら? 色々と、ね」

「いいさね。馬鹿のやらかした事だから、きつくやってくれて構わないさね」

「そう。じゃあそう言う事で。フフフ」

 

 モモカはにこやかに言い、結界を解除すると『空間転移』でその場を後にしミョルマイルはリムルへの報告に赴き、グレンダはアジトへと帰って行った。

 

 

 お昼時のネコマンマ亭は、カウンター席もテーブル席も満席で賑わっていた。

 

 次から次へと来る注文に追い立てられながらも、アネーロ達給仕係はてきぱきと捌き、厨房も大量の注文に戦争状態であった。

 

 アユモドキ定食三人前上がったぞ!

 

 はーい

 

 鶏鴨(ケガモ)のカラアゲ五人前追加ね! 

 

 あいよ!

 

 ギョウザ定食二人前、それとビール七つ追加入ったよー!

 

 わかった! はいはぁ~い!

 

 シオヤキソバにウジカ(牛鹿)丼お願いー!

 

 おう!

 

 忙しく動き回るアネーロ達を奥の二人用テーブルに座り眺めてるアルコは、完全に見下したような顔で呟いていた。

 

「しまらねぇなあ。暗殺者が飯屋の真似事なぞしやがって、終わってるなサイファーも」

 

 テーブルに置かれたビールを飲みながら、組んだ足をプラプラさせ吐き捨てる。

 ビールの御代わりを頼むため近くに来たアネーロを呼び止める。

 

 メイド服をシンプルに仕立てた黒色の給仕服を着たアネーロが、空になった皿を十枚程重ねて左手に乗せてアルコのテーブルに寄ってきた。

 

「おい。ビール御代わり頼むわ」

「一つね。少し待ってちょうだい、今取り込み中だから」

「ああ!? 俺は客なんだが? ここは客を差別するのか!? っと、ボスが営業の邪魔をするなだったな。クヒヒヒ。いけよ待ってて、や・る・か・ら・よ」

 

 薄ら笑いを顔に映し出し、アネーロの体を舐める様に見ながら吐き捨てる様に言うも、「それでは」と涼しい顔でアネーロは、注文を求める客へと足を急がせる。

 

「チッ! サイファーの奴ら、どいつもこいつもボンクラ揃いか! ちっとも挑発に乗って来やがれねぇ。さっさと乗っ取っておもちゃにするか、フヘヘヘ。女どもは中々にいい女揃いだし、味見してから娼館に放り込んでやるかな。ガキどもは、うーん、そうだな男爵の旦那が可愛いペットが欲しいとか言ってたから、そこに高く売り付けてやるか。フヘヘッ」

 

 ブツブツと呟き、運ばれてきたビールを飲みながら、これから起こるサイファーの結末を考え、いやらしい嗤いを堪え肩を震わせていた。

 

 だが、アルコはビールを持ってきたアネーロの目が、丸メガネの奥底でほんの一瞬殺気を放ったのに気付かずにいた。

 

 アルコの座るテーブルの裏には、小さな呪符が張り付けられていた。

 

 それは、モモカ特製盗聴呪符〝影耳(カゲミミ)〟で、アルコの呟きは店にいるアネーロ達全員に聞かれていてたのだ。

 

 店のカウンター席、テーブル全部に仕込まれていて、店に来た客の雑談から情報を集める事に使われていたのだ。

 

 この時点でグラブゲの運命は決まってしまい、舐めて掛かるとこうなりますよの良い見せしめとなり、この件は三賢酔(リエガ)の組織全部に知らしめる事となる。

 

 夜の営業も終わり後片付けの中、カヤがネコマンマ亭にやって来て今日の売り上げと依頼の状況確認を始めた。

 

「そう、今は夜組が依頼に当たってるのか。あら、最近の売り上げは中々にいいねぇ。頑張ってるじゃん。ニャフッ」

「「「ありがとうございます! カヤ姉さん!」」」

 

 ベゼット達一同が後片付けの傍ら、カヤの言葉に一斉に返す、一人を除いては。

 

 カヤは余った食材で黒コショウの串焼き肉を作ってもらって、ビールを飲みながら、帳簿に目を通していた。

 

 そこへアルコがニヤニヤしながら近づき、カヤの座るテーブルにドカッと腰を下ろす。

 

「毎日毎日、小銭勘定ご苦労様です。ボ・ス」

「あら、いたの。ごめんなぁ、気配が薄くて気付かなかったわ」

「いえいえ、こちらこそ。ここが暗殺組織だという事を、忘れるとこでした。ボ・ス」

 

 帳簿に目をやったままさらりとカヤは言い、アルコもカヤを下卑た目で見ながら口元を緩ませ嗤う。

 

 六本目の串焼き肉を食べ終わり席を立ち、ベゼットのいるカウンターに体を向け、今日の状況確認を終えた事を告げ、アネーロに帳簿を渡し明日の打ち合わせを軽くしようかと話し始めた時、アルコが動く。

 

 腰のポーチに手をやり『加速スル者(ハヤキモノ)』を発動させ、瞬時にカヤの背後に回り支配の宝珠を首に掛ける。

 

 一瞬の出来事であった。

 

 ベゼットとアネーロが反応した時には、既に、支配の宝珠が掛けられた後である。

 

 世界の言葉が響く。

 

《禁呪法:操魔王支配(デモンマリオネット)が発動……成功しました》

 

 ヂリッ ヂリリリ リリリ パチッ

 

 世界の言葉が響いた瞬間、カヤの瞳孔が縦に細くなりまた丸くなると、表情から一切の感情が掻き消え、無機質な笑みを口端に浮かべ佇む。

 

 あからさまに異質なカヤの表情にアネーロ達は動けず、ベゼットが「カヤ姉さん」と近付き両肩を掴み揺すろうとした所へ――

 

 カヤの裏拳がベゼットの顔面に放たれ、厨房の注文受付窓口の壁に吹き飛び、派手な音を立て身体を壁にめり込ませた。

 

 厨房にいた者が飛び出て来てベゼットを抱き起すも、完全に気を失い顎も砕かれていて、変な方向に曲がっていた。

 

「ウヒャヒャヒャ! これはいい。本当に支配出来るんだな。お前ら、もうこいつは俺の奴隷だ! 大人しく俺に従え! そうしたら、殺さずに俺の下で使ってやるぞ!」

「何をしたの、カヤ姉さんに! アルコ!!」

「何を? これは支配の宝珠(オーブ・オブ・ドミネイト)だ! 魔王すら従える代物でな、もうお前らは終わりだよ。グハハハハ」

 

 アネーロはアルコに激しく詰め寄り、丸メガネを指でクイッと上げるとレンズが黒く染まり、何かをブツブツと呟き始める。

 

 握りしめた拳を開くと、爪の先端が仄かに赤く陽炎のような揺らめきを起こす。

 

「や、やめ、ろアネーロ」 

 

 ハイポーションで顎と体のダメージは回復したものの、カヤのニクキュウグローブ無しの裏拳をまともに喰らい、息を整えることで精一杯のベゼットがアネーロを止めたのだが。

 

「ベゼット。いくらあんたでも、今止めるなら――アルコ共々殺すよ!!」

「グハハッ! いいねえー。お前ら全員死ぬか!? ああぁっ!?」

 

 嬉しそうに顔を歪めながらアルコは、腰に差してある内側に湾曲した刃渡り三十センチはあるククリナイフを抜き、刀身を左掌に当てトントンと叩きながらアネーロを挑発していくが、そこへ。

 

「アネーロ!」

 

 完全にキレたアネーロの目を見据え、ベゼットは顎を微かに右に振る。

 

 ベゼットの仕草にアネーロはカヤの座っていたテーブルに目だけ向けると。

 

 そこには、皿に乗った食べ終わった肉串が奇妙な形に並べられていた。

 

 更に串入れに入ってる三本の串を見ると、また丸メガネをクイッと指で上げ、レンズが透明に戻っていく。

 

「そうそう。お前らはもう何もできねえんだから、大人しくしてな! さて、おいダメ猫。今からもう一匹のダメ猫の所に行って殺してこい! 早くしろ!」

 

 すぐに動かないカヤの尻尾を思い切り引っ張ると、その勢いでテーブルにぶつかり上に乗った皿などが床に落ち、カヤは割れた皿の破片の上に倒れ込む。

 

 更にアルコが「早くいけ! ダメ猫!!」と、罵声を浴びせる。

 

 それでもカヤは感情の無い表情で、倒れたままでいた。

 

 それを見たベゼット達は爆発しそうな殺気をギュッと内に押し込め、皆顔を下に向け、床を睨む……。

 

 今、アルコを見ると抑えきれない殺意の衝動が解き放たれるので、敢えて誰も、アルコと目を合わさずにいたのだ。

 

 アネーロの握りしめた左掌から微かにジュっと音がして、白色の細い煙が上がり、糸を引くようにツツーッと血が下に垂れていき、床に小さな丸い球を作っていった。

 

 その有様を見たアルコは「ゴミ共が」と、満足げに嗤う。

 

「アネーロ! お前もこいつに付いていけ。いいか、ちゃーーんともう一匹のダメ猫を殺すとこを見届けろよ? いいな! 早くこの馬鹿を起こして、いけ! 終わったらグラブゲのアジトに必ず来いよ。殺したダメ猫の片割れの首を、持ってな!」

 

 アネーロはカヤを抱き起し、小袖に付いた埃をパンパンと手で払い「いきましょう」そう声を掛けると、無表情のままカヤはアネーロを連れて『空間転移』でテンペストへ飛んだ。

 

 残ったベゼット達は、アルコが「お前らにはもう、どこにも逃げ場はねえ。俺の手下が来るまで、ここで大人しくしてるんだな」と告げるとグラブゲのアジトに帰って行った。

 

「ベゼット、大丈夫か?」

「ああ。もう大丈夫だ、心配ない」

 

 厨房係のバルクが声を掛ける。

 

「何であんな無茶をしたんだ! 死ぬ気か!」

「カヤ姉さんが、笑ったからな」

「笑った? あの死人の様な笑いがか!?」

「フッ……お前にはそう見えたのか」

 

 ベゼットにはカヤが口端に浮かべた笑いが、まるで悪戯猫の様に感じ、だから敢えてカヤを止めようとする行動に出たのであり、それを見たアルコは完全にカヤが支配下に有ると確信し、アジトに帰って行ったのであった。

 

 ベゼットはカヤのいたテーブルに行くと皿に乗った串が二本交差して置かれていて、その真ん中に縦に真っすぐ置かれた串が一本置かれていた。

 

 そして串入れには三本の串が等間隔で並べられていて、警戒レベル三で待機と意味する符号だったのだ。

 

 警戒レベルは四つに分かれており、レベル三は戦闘状態を維持しつつそれを隠し、カヤとモモカの指示があるまで、待機を意味していた。

 

 因みに警戒レベル四は、即戦闘態勢で殲滅せよである。

 

「しかし、全然わからなかったな……。本当に、支配されてるみたいだったぞ?」

「そうだな。しかし、何食わぬ顔で串を並べるなんて、流石カヤ姉さんだな」

 

 ベゼットとバルクの言葉に他の者も、うんうんと頷く。

 

 それからベゼットは、皆にカヤ姉さんとモモカ姉さんが来るまで、手は絶対に出さず、自分らのボスが支配されて、どうしようもないと言った感じで振舞えと厳命した。

 

 そして、定時連絡に帰ってきた夜組のマリラにも現状を説明して、しばらくこっちに帰るなと同じく厳命をする。

 

「マリラの奴、案の定ブチ切れてたな。まさか、一人で乗り込んだりしないだろうな?」

「いや、それは大丈夫だ。一度馬鹿やらかして、モモカ姉さんにこっぴどくお話し(・・・)を喰らってたからな。ハハッ」

「そうなのか? ククッ」

 

 バルクの懸念に思い出し笑いを交え返し、釣られてバルクも声を殺して笑い出していく。

 

「さあて、グラブゲのボスはどんな目に遇うのかな」

 

 バルクの言葉にベゼットは、静かに天井を指差すと、その先には一枚の呪符がクルクルと、回転しながら漂っていた。

 

「あちゃー モモカ姉さん見てたのかあ~ これまずくないか?」

「ああ。カヤ姉さんもだが、モモカ姉さんもマジ切れしたら、とんでもなくヤバいからなぁ……」

「ベゼット。一部始終見てたなら、マジにイングラシア王国毎吹き飛び兼ねないぞ。なんせ姉さん達は転生者で、〝覚醒魔王級〟だからな」

 

 カヤとモモカは最近ベゼット達に、自分達は転生者で〝覚醒魔王級〟の亜神だと明かしていた。

 

 それを聞いたベゼット達の「まじ?」と言う呆けた顔を見て、カヤが爆笑したのは言うまでも無い。

 

「大姉様の目があるから、それは大丈夫とは思うが……。グラブゲは皆殺しかもしれんな」

「悪党やってんだから、相手の力量位わかれよグラブゲの奴。ほんと馬鹿は、悪党なんざ廃業しろ!」

 

 思い切り侮蔑を込めた言葉を吐き出したバルクを、まあまあと肩を叩き宥めながらベゼットは「いいか、皆聞け! カヤ姉さん、モモカ姉さんが来るまで指示通りに動け! 勝手やった奴は俺が首を落とすぞ!」その言葉に皆が頷き、思い思いに席に座る者、床に力なく座る者など、完全に生気を失った姿になっていった。 

 

 フッ……カヤの浮かべたあの笑いを思い出し、ベゼットはボソッと「ダート、お前終わったな」小さく呟き、吹き飛ばされた壁の近くに行き背を付きズルズルと腰を落としていき、床に両膝を立て座り、その両膝に両肘を付き頭を抱える様に顔を下に向ける。

 

 下を向いたままベゼットは、これからグラブゲに降り掛かる惨劇を思い、嬉しそうな笑みを口端に表し、カヤ姉さんを貶めたアルコの首をこの手で斬り飛ばしたい衝動を内に抑え込み、静かに二人の(めい)を待つ。

 

 全員が生気の抜けた表情でいたがそれは演技であり、一般の民を演じネコマンマ亭の従業員を演じて来たベゼット達には、既に表と裏の顔の使い分けが完璧に出来る様になっており、カヤとモモカの目論見通り単なる暗殺集団ではなく、乱破ノ者に近い集団へと変貌しつつあったのだ。

 

 今は凄まじい殺気を溜めつつ、後は解き放たれるのを待つだけ。

 

 (あるじ)の帰りを待つ闇の子らは、静かに殺気を内に隠し潜めて行く。

 

 




 ここまで読んで頂きありがとうございます!

 次回の更新もよろしくお願いします!



  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。