転生したらネコムスメなんだけどの件   作:にゃんころ缶

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 お待たせしました! 五十五話です。








五十五話 Papillon de nuit(パピヨン ドゥ ニュイ) (夜の蝶

 

 カヤはベゼットに先程見て来た、趣向を凝らした部屋の二つの事を話していた。

 

 

「ベゼット。これから、ド変態は出禁な! 来たら追い返せ! 二度と店の敷居を跨がせるんじゃないよ。じゃないとぉ、モモカがあたしをその客の所に(けしか)けるかもだから、大惨事よ?」

「わかりました。イサカに伝えておきます。(カヤ姉さん。あなたは猫亜神で

しょうがぁ~。犬種じゃ無いじゃないですかー! それに、大惨事って……いや、

考えるのはやめよう。うぅぅ、喜んで乗り込むカヤ姉さんの顔が浮かんで来る……)」

 

 

 そうしてる内にフロッティが「カヤ姉さん。この皮袋は何ですの?」と尋ね「あぁー これね」と言いながら皮袋の口を開け、中に入ってる物をドンと、受付カウンターに置く。

 

「「「「「「ええっ!!」」」」」」

 

 置かれた物を見て、その場にいた皆がギョッとして声を上げ、その物体に目が釘付けになる。

 

 その首を見て、また娼館の女達数人が気を失っていた。

 

「モモカ姉さんの首――どうしたんですか!?」

 

 切り口からジワリと血が肘むのを見て、ベゼットが声を上げる。 

 

「斬り落としてきちゃった。テヘッ」

 

 舌をペロッと出し、自分の頭を右手でコツンしてお道化て見せる

 

(え? なんだこれ……いや、お道化て首斬ったとか……ええ!?)

 いきなりの展開にイサカは、思考が混乱を始めた。

 

 そこへ冷静な声でオルトが「そう言えばモモカ姉さん、まだコントラバンド商会にいるんでしたよね?」とカヤに問うた。

 

「うにゃー オルト鋭い! そう、これはね――晒し首モモカ壱号さんだ!!」

 

 ニャッフンと胸をこれでもかと張り、グラブゲに持っていく首のレプリカで、知り合いに頼んで作ってもらったんだよと自慢げに語る。

 

 そうなのだ、これはカヤがリムルに頼んで作ってもらった首のレプリカで、本物と寸分違わず見分けがつかない程、精巧に作られた物だった。

 

「因みにこの血はねぇ。ケ、ケッチポ? ポ? ケチップ? ケチャプ? うや?あーー ケチャップ! そう、ケチャップを合成した物なんだよ~ 甘いんだよ~」

 

 カヤが肝心な物をそこら辺に投げ捨ててくるのはいつもの事なので、ベゼット達は黙ってカヤが正解に辿り着くのを待っているが、イサカ、娼館の女達は先程の雰囲気とガラリ変わったカヤに目を丸くしていた。

 

「へえー よく出来てやすねー お! ほんとに甘い、ケチャップだこれ」

 

 ボサボサ髪、四十手前のボアがまじまじとモモカの首レプリカを見ながら、受付カウンターから垂れてる血を舐めて見て確認を取っていた。

 

 それからはベゼット達がレプリカの周りに集まり、口々に「見分けがつかんな」

「うあー これモモカ姉さん見たらおこるんじゃない?」とか「カヤ姉さん。これモモカ姉さんの許可取ってますの?」など言ってるとカヤが「ちゃんと言ってあるから、大丈夫よん」と笑いながら言い、カウンターにあるペンの横にあるインク壺が目に入り、ニャーッと口元に悪い笑みを浮かべ上げる。

 

 それを見たベゼット達に嫌な予感がバシバシに走り、止めるべきか、そのまま静観するか選択を迫られるが、さっとインク壺に指を突っ込み、レプリカの首の目をぐるりとなぞり丸い円を両目に描き、鼻の所に短い線を引き「うん」と頷く。

 

((((((あぁー やりやがりましたよ……))))))

 

 ベゼット達はとばっちりを喰らわないよう、じりじりとカヤから距離を取っていく。

 こんな時はお約束の様に、あの御方がカヤの背後に忍び寄ってくるのである。

 

「メガネヌコォ! ウヒャヒャヒャヒャー!」

 

 思い切り楽しそうに笑うカヤを、完全に置いていかれたイサカが見て呆けていると、ベゼットが微かに空気が揺れたのを感知する。

 

 そして、皆にカヤからもっと離れる様に促し、イサカにも指でチョイチョイと、離れろ、離れろと合図しようやくイサカもカヤから距離を置いていく。

 

 それに気付かず、更に左右の頬に三本の髭を描き「ヒゲーーー! ヒゲぇーーー!アヒャヒャヒャ!」と豪快に笑い、更に鼻の下に髭を描き。

 

「オヤジヌコォオオオオオ!! ヴァハハハハハハ! ヒイイイィィ! おなかいたい! ヴハッ、ウワハハハハハ! はらいたぁあ~~~ ヌコォオオオ!」

 

 カウンターをドドドンドドンと叩きながら笑い転げていると――

 

「あらま。中々面白いことしてるじゃない。楽しい? ところでヌコってなに?」

「みてよ! これみて! オヤジヌコ! ウヒャヒャヒャッ! マンガにさ、ネコをヌコって呼ぶ場面があってね、なんかマヌケおもしろくない? ん? あっ!?」

 

 ボワワッと尻尾の毛が逆立った瞬間――それは来た。

 

 バゴォオオオオンンンンンン!!

 

 静かにカヤの背後に忍び寄ったモモカが、思い切り裏拳を後頭部に叩き込み、カヤは受付カウンターを破壊し入り口に向かって、もの凄い勢いで吹っ飛び入り口の大きな両扉にぶつかる瞬間、呪符が四枚現れて四隅に散り線で結んだ正方形の結界作り、そこにカヤが激突する。

 

 大気を震わす雷撃の嵐がカヤを包み、凄まじい雷撃音が娼館内に響き渡る。

 

 〝次元雷撃呪符・破天雷光(はてんらいこう)

 

「フギャアアアアア!」

 

 眩い雷撃の中カヤが叫び声を上げ、パタリと床に倒れて行った。

 

 チリチリコゲコゲ状態のカヤは、まるでコントの芸人みたくぷすぷすと煙を上げながら「やる、まえ……に、いってと……言って、るじゃん……」震える左手を上げながら言ってると、モモカがスタスタとカヤの前へ歩いて来て、腰後ろをガッと掴み荷物の様に持ち、壊れたカウンターから転げ落ちた首のレプリカの前に無造作に投げ捨てると。

 

「洗ってきな」

 

 マジもんの殺気を込めた目でカヤを睨み言い、「あ、あい」起き上がったカヤはボロボロの姿でレプリカの首を大事そうに抱え、娼館の女達の前に行き「ねえ、洗い場どこ?」と尋ね、一人の女が恐る恐る「あちらです」と一階の奥を指差し「ありがと」と、礼を言いテフテフと洗い場に歩いていった。

 

(俺ってとんでもねえ、組織に入ったんじゃないか……)

 

 イサカは(俺、早まったかなぁ)そう考えてるところへ、ベゼットと話してたモモカが来てホワッと微笑みながら声を掛けて来たもので、一瞬体をビクッと震わせる。

 

「あなたがイサカね。ベゼットから聞いたわ。奥さんと、息子さんが一人いるのね」

「あ、はい」

「じゃあ、あなたはテンペストに住みなさいな。家を一軒借りてあげるから、そこに家族と住みなさい。ここには〝転移魔法陣〟で通えばいいわ。テンペストなら、グラブゲの手下も手出しは出来ないもの、そうしなさいな。フフッ」

 

 モモカの提案に家族の安全の問題が、一気に解消されイサカは胸を撫で下ろして跪き、「ありがとうございます」と頭を垂れ感謝の言葉を述べた。

 

 「そうそう。さっきみたいな事は度々あるから、早く慣れなさいね。わからない事はベゼットや皆に聞けばいいわ。店の管理はあなたに任せるから、しっかりやりなさい。信用できる者がいれば、手下を雇ってもいいわよ。但し、一度は必ずわたしか、カヤに面通しすること。いいわね」

「はい、承知しました。モモカ姉さん」

 

 そこまで言うと今度は女達の所へ行き、今後の店の営業方針を女達に伝える。

 

「まず、最初に。この娼館から抜けたいものはいるかしら? もしいるなら、今までの働いた年数に応じて、金貨を支払います。組織はその時点で、抜けた者には一切関与しません。自由です。もし、テンペストでまっとうな仕事がしたいなら、紹介しますよ。魔物と一緒に働く事になるけども、はっきりいいます。人間よりテンペストの魔物の方が、あなた達を温かく迎えてくれるでしょう。わたしの責任で、それは保証します!」

 

 凛と通る声で言い切ると、四人の女性がおずおずと手を上げ、モモカは『思念伝達』でベゼットに、ミョルマイルさんに連絡を取ってと命じ、袂の空間収納から、リムルより特別に貸し与えられてる〝携帯電話〟を取り出しベゼットに渡す。

 

 ベゼットは〝三賢酔(リエガ)〟とネコマンマ商会の関係をモモカから聞かされていて、後はテンペストで焼き鳥屋を営む、ザーバとディーナが知っているだけである。

 

 いずれは皆に伝えるつもりなのだが今はその時期ではないので、今のところこの三人だけなのである。

 

 但しエル姉さんの存在だけは本人の承諾がない限り明かすつもりはなく、リムルの事も同意であった。

 

 だから、〝三賢酔〟のボスはミョルマイルだけしか三人共知らないのだ。

 

 ミョルマイルに関しては本人の勧めもあり、承諾を得ていた。

 

 この事で跳ねっかえりの組織が出た場合、即ネコマンマ商会が動くことが出来、たまに抜き打ちで、だらけている組織に戦争を仕掛ける事も出来るのだ。

 

 そうガチンコのマッチポンプである。

 あくまでも、ネコマンマ商会は〝三賢酔(リエガ)〟の敵対組織なのだ。

 

 奥で話していたベゼットが〝携帯電話〟を持ってモモカの所に来て、モモカがベゼットに渡していた〝認識阻害呪符〟を自分にも適応させると、ベゼットが「ミョルマイル様からです」そう言い〝携帯電話〟を返した。

 

『もしもし。夜分遅くにごめんなさいね。ミョルマイルさんも、色々大変なのに』

『いえいえ。ワシも片付けなければならない案件があったもので、全然かまいませんぞ』

『それで、歳は十九才が二人に二十一才と二十四才の女性なんだけども、お願い出来るかしら? 出来れば人間と一緒の仕事は、しばらくは避けてもらいたいの。『解析鑑定』したのだけど四人共手先は器用そうなので、工房とかいいかも知れないわね。あ、でも本人達の意見は尊重してあげてくださいね』

『ええ、もちろんですとも! お任せ下され! ここまで娼館の女性達に気を使ってもらって、ワシは嬉しいですぞ!』

『フフッ。ただの気まぐれですよ』

『盛大な、気まぐれですな。わっはっはっはっ!』

『それと、コントラバンド商会で取り扱う商品に、日用品雑貨、衣服等をテンペストから仕入れたいのですけども。ミョルマイルさんの部下で頼める方いるかしら?』

『わかりましたぞ。信用のおける者を手配しましょう』

『ええ、お願いしますね』

 

 商品仕入れに付いて軽く打ち合わせを済ませ、それでは明日の昼にと通話を終えた。

 

 四人の女性達に、すぐ荷物を纏める様にモモカは言い、残る十六人の女性達に、組織と女性たちの取り分の取り決めを始める話し合いを始める。

 

「ところで、あなた達今まで組織から幾ら貰っていたの?」 

 

 赤毛ロングヘアの女性のフォンテーヌ二十才が、モモカの問いに、前に出て跪き答える。

 

「私はフォンテーヌと申します、ボス。皆、殆ど貰っていません……」

 

 クッと唇を噛み言った言葉に、モモカは驚きもせず言葉を返す。

 

「でしょうね。まあ、どの組織もこの商売は、如何に女達を疲弊させずに、長く金を稼がせて搾り取るかだもの。一度飼った女は壊れるまで、使い潰す事しか考えてないわよ」

 

 その言葉に女達は皆下を向き、悲痛な顔を見せる。

 モモカはホッと短く息を吐き、女達を見回しながら言い放つ。

 

「まあ、行き場のない気持ちもあるでしょうけど……。ここに残ると決めたなら、覚悟を決めなさい! 今ままで、あんたらが体を張ってグラブゲのあほんだら共を、喰わせて来たんでしょうが! なら、今度はその体を武器に、男共から情報をもぎ取りなさい!あんたらが逆に男共を、手玉に取りなさいな!! それと、ボスでは無く。姉さんと呼びなさい。カヤもね」

 

 女達はモモカの言葉に皆、今までとは違うボスの態度に戸惑いの表情を浮かべていく。

 

 そんな中、何かを決めた目をしてフォンテーヌが、モモカに尋ねて来た。

 

「ボス、いや、あの、モモカ姉さん。具体的に情報って、どうやって聞き出すんですか?」

「決まってるじゃない。寝物語には、男はつい口を滑らせるものよ。覚えがないかしら?」

 

 モモカの答えに女達が「ああ、そう言えば」あの貴族がとか話しだし、少しづつ女達の目に生きる力が宿り始めて行く。

 

「あなた達が体を張って取って来た情報は、ネコマンマ商会が高く買います。情報の価値によって報奨金は変動しますけども。参考に一つ、最近配下の一人がある情報を仕入れてきて、貰った報奨金は金貨百枚です」

 

 金貨百枚の言葉に女達は「えっ!?」と言う様に固まり、それに構わずモモカは話しを続けていく。

 

「これは実行部隊の、配下の話し。娼館のあなた達でも貰える報奨金額は同じです。何故ならあなた達も、ネコマンマ商会の配下になるのだから。ベゼット達も体を張って依頼をこなしているけども、あなた達も同じく体を張ってるんだから、そこに優劣などないの。皆、ネコマンマ商会の一員なのよ」

 

 一員と言葉を聞いた瞬間、口に手を当て一介の娼婦でしか無かったフォンテーヌが目に涙を浮かべ嬉しそうな表情で周りの仲間の女達を見て、肩を抱き合う。

 

「女を磨きなさい。男を虜にしなさい。男に溺れず、男を溺れさせなさい。それを、あなた達はできるわ。通常の取り分は組織が五、あなた達が五、衣食住はこちらで、面倒見ましょう。身の安全もこちらで保証します。あとは、そうねぇ……仕事用のドレスとインナーは、テンペスト製の物を組織で仕入れるから、そこから買うといいわ。値段は市場に出てる物よりかは安く出来るから、心配はいらないわよ。あとは~化粧道具その他も、自費で頼むわね。これもテンペスト製があるから、一度見て決めるといいかしら。それと――準備金として後日、皆に金貨十枚を支給します」 

 

 優しく、まるで母が子に言い聞かせる様に言い、それに女達が「はい、はい」と頷き返事を返していく。

 

 最後にとモモカが今度は、ほんの少しだけ暗殺者の顔で告げた。

 

「いい、無理は厳禁です! 絶対にもう少し行けるんではと考えない様に、いいわね! この決まりを破った者には、組織から死んだ方がマシと言える、制裁を受ける事と成ります。そして優しく甘い言葉で言い寄って来る男には、最大限の警戒しなさい。大抵、自分の不幸を捏造して金の無心をしてくるか、あんたらを利用しようとするかの行動を取って来ます。いい、男を見る目を鍛えなさい! 見抜く目を養いなさい! あんたらは幸運ではないの。たまたま、グラブゲがわたし達に喧嘩を売って来たからなのであって、それが無ければあんたらは今でも、グラブゲの家畜なのよ!その事を努々(ゆめゆめ)忘れる事は、許さないわよ! いい、組織への裏切りは決して許しはしない!! 夜の蝶(・・・)の命は短いのよ――しっかり稼ぎなさい」

 

 言い終わるとモモカは、女達全員の〝呪言〟を解除した。

 

 〝呪言〟を解除されてその場に泣き崩れる者や、上を見上げ声を出して泣く者でしばしその場の空間は、埋め尽くされていった。

 

 娼婦である彼女達が、グラブゲの家畜から人間に戻った瞬間でもあったのだ。

 

 そして……二度と彼女達に〝呪言〟が刻まれることは、無かった。

 

 自分達より年下にしか見えない猫亜神モモカに、彼女達は真剣な眼差しで泣きながら、両膝を付き、皆が神に祈るかの如く両手を合わせ握り、頭を垂れてゆく。

 

 生きてきた年齢もあるが、重ねて来た経験と置かれていた環境の違い……。

 

 娼館の彼女達には到底太刀打ちできない、威厳をモモカは放っていた。

 

 この事で(のち)に彼女達は、情報収集能力に特化した集団となり、モモカの言った戒めが固く守られることになるのであった。

 

 いつの間にか戻ってきたカヤが、レプリカの首を入れた皮袋を肩に担ぎ、声を出さずに唇だけ動かし『かっこいいじゃん』と言いフッと口端に笑みを浮かべ、モモカも同じように『うるさい』と返し、フフっと笑みを返す。

 

 

 闇の絆が……また、一つ。

 

 昼組、夜組、夕組に続く――夜蝶(やちょう)組が、ここに生まれた。

 

 

 

 

 




 五十五話を読んで頂き、本当にありがとうございます!

 次回の更新も、ぜひよろしくお願いします!





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